「京太郎」

 親戚の相手は面倒くさい。特に普段から俺が介護――もとい面倒を見ているこの従姉とかは、本当に俺がいなくなったら生活できないんじゃないかっていうぐらい俺に面倒を見させる。
 まあこの人なら一人でも飄々と生きていけそうな気がするけど。

「この人、誰?」

 彼女が差し出したスマホの画面には、俺になれなれしく腕を絡ませている巨乳の女性が写っている。
 背景はネオンの光が眩しい夜の繁華街で、女性の紅潮した頬、金髪の俺という組み合わせが最高に(同時に最悪に)淫靡な雰囲気を醸し出していた。
 かの牌のおねえさんと知り合いになれるとは思っていなかったが、できれば泥酔状態でない普段の彼女が良かった。数時間もぶっ通しで愚痴を聞かされるのは精神にクるぜ。迎えに来た 三尋木プロがガチで天使に見えたぐらいだ。
 まあ『はやりのはじめてあげるから、京太郎君のはじめてをちょうだい?』とか言われたのは役得だったしすげえグッと来たけどさ。

「あーシロ姉、別にその人は東京で会っただけで……」
「この人、誰?」

 これを聞きにわざわざ俺の家まで来たのか。残暑の熱気が風に吹かれてシャツの内側まで滑り込んでくる。こうしてドアを開けているだけでも暑いぐらいだ。
 ネト麻に精を出していた俺としては早く戻りたいし、付き合ってくれているハギヨシさんを待たせたくもない。

「上がらないんならもう閉めるけど」
「この人、誰?」

 こうなったシロ姉は面倒くさい。普段だれてるときの彼女が可愛く見える。俺は頭を掻いて、じゃあねと言ってドアを閉めた。鍵は開けてるし、暑さに負けてそのうち入るか帰るかするだろ。
 一応テーブルには麦茶を出して置こう。ネト麻は部屋からノートPCを持ってきてリビングでやればいいし。
 まあなんだかんだでしっかりしてる面もあるシロ姉だし、熱中症で倒れたりはしないはずだ。
 とりあえずはお茶請けがあるかの確認だけでもしておこおう――――



「この人、誰?」

「この人、誰?」

「この人、誰?」

「この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰? この人、誰?」



「この人は、京太郎のなに?」

 まだ、夏は終わっていない。