菫「ふう……」

京太郎「なんだよ、黄昏て」

菫「京太郎。居たのか」

京太郎「ん……まあな。帰らないのか?」

菫「そうだな。あと少し、対戦校のデータを確認してから帰ろうと思っている」

京太郎「ふーん。やっぱり菫は違うな。お前のそういう熱いトコ、悪くないぜ」

菫「何を気持ち悪い事を……大会が近いから当たり前だろう。おだてても何も出ないぞ」

京太郎「うるせえよ。褒めてんだから素直に喜んどけよ」わしゃわしゃ

菫「なっ……急に髪を触るな!」ばっ

京太郎「あ、ああゴメン。なんか、つい」

菫「い、いや。嫌な訳じゃない……驚いただけだ……」どきどき

京太郎「……ははっ」

菫「ふっ……」

京太郎「なんつーか、いよいよだよな……」

菫「ああ……」

京太郎「この三年、俺は楽しかったよ。菫や照と、高みを見させてもらった」

京太郎「一ヶ月後には全て終わってるんだよな……なんか、不思議な気分だ」

菫「不思議な気分か。解るな。言葉では言い表わせない」

菫「京太郎にはいろいろと助けてもらった。皆お前に感謝してる」

京太郎「ああ……」むくり

京太郎「な、なあ、菫……」ごくり

菫「ん?」

京太郎「俺、さ……ずっと、菫に伝えたいコト、あったんだ……」

菫「伝えたいコト……?」どきっ

京太郎「……ああ。大会が終わったら……聞いて欲しい」

菫「……」こくり

京太郎「今日はそれだけ、言いに来たんだ……じゃ、じゃあな! また明日!」だだっ

菫(……)どきどき

菫(京太郎のやつ。あんなに真剣な顔で、耳まで赤くして、震えた声で、熱い目で……)

菫(いくら私でも、自惚れるのを止められないぞ……)どきどき

菫(そういうコトで、間違いないのか……? 京太郎が、私を……)

菫(照でも、他の誰でもなく、私を……)きゅうう

菫(うう……勘違いでなくてくれ!)にやにや

菫「全く、こんなに嬉しい日は無い」ぼそっ


淡「インハイ三連覇、よりもですかー?」


菫「!!?」くるっ

淡「あはっ。一人で盛り上がってるとこスイマセン」にっ

淡「先輩……カオ、赤すぎですよっ……くく!」

菫「からかいにきただけなら帰れ」ぷいっ

淡「まあまあ。そんなツレないこと言わずに、私の話も聞いて下さいよー」ずいっ

淡「……ところで~、先輩は京太郎のコト好きなんですかぁ?」

菫「京太郎"先輩"だろう。一応敬意を持って欲しい」

淡「はいはい。で?」

菫「ふんっ」ぷいっ

淡「え~」ずずずっ

菫「寄るな寄るなっ! どうだっていいだろう!」

淡「……よくないですよ」

淡「京太郎センパイって、絶対、間違いなく、確実に……菫先輩のコト……好きだもん」ずるっ

菫「え!?」どきっ

淡「……」

淡「でも、トロいよね。大会が終わってから? 京太郎トロすぎだよ……あは」ぼそぼそ

菫「何をぼそぼそ言っている?」

淡「うん? ああ、スイマセン。今日は先輩に報告を一つ」

淡「明日の昼休み、屋上に来て下さい。少し遅れてもいいですよ」

淡「絶対に来て下さいね……」にやっ


──


かつっ かつっ かつっ

菫「淡のやつ……先輩を呼び出しとはいい身分だな。とやかく言うつもりはないが」はあはあ

かつっ かつっ かつっ

菫「……大会が終わったら、運動でも始めるべきか」はあはあ

菫「まあいい、ようやく屋上だ……」

ぴたっ

菫(ドアノブを回せなかった。私自身が固まってしまったからだ)

菫(窓から覗く光景に)

菫「嘘……だろ……」

ぺたん

菫「どういう、ことだ……」




京太郎「──ぷはっ!」

京太郎「どういうことだよ──淡!!」

京太郎「急に屋上に呼び出したかと思えば……こ、こんなこと!」

淡「ん~……美味しかったぁ……」

淡「京太郎のくちびる!」にっ

京太郎「一応初めてだったんだぞ……お前マジでふざけんなよ?」

淡「えっ! 初めてだったの……意外! でもそれすごく嬉しい!」

淡「てか、私も初めてだし、おあいこだからいいじゃん、京太郎!」

淡「それにさ……何もふざけてなんかないよ」すっ

淡「私、京太郎のコトが好き」

京太郎「!!」

淡「ずっと、この感情がなんなのか解らなくて戸惑ってた。こんなの初めてだったから」

淡「でも、ふとしたきっかけに気付いた。京太郎が菫先輩を眺める視線」

淡「それは私が京太郎を眺める視線と同じだった……」

京太郎「淡、それは……」

淡「うん。京太郎は菫先輩のコトが好きなんでしょ? 知ってる」

京太郎「……そうだ」

淡「三年も過ごしてて、絆が深いことも、京太郎が菫先輩にそれを伝えてしまえば何もかもはっきりしちゃうことも、知ってる」

淡「でも京太郎、私は京太郎が本当に好きなの」

淡「京太郎みたいな人いないし、絶対に京太郎が欲しい」

淡「京太郎を手に入れるためなら、菫先輩との三年を追い抜くくらい、私は京太郎に自分を尽くせる」

京太郎「あ、淡……それは嬉しいよ、でも……」

淡「ふふん。今は菫先輩のコトしか考えられないって? 知ってる知ってる! そう言ってんじゃん!」

淡「その上で!」

淡「私も、京太郎を諦めないから……めちゃくちゃアタックするから……ってコト!」

淡「予言しとく! 一ヶ月後とか絶対京太郎は私のことを好きになってる!!」

淡「もう止まんないんだからね!」ちゅっ

京太郎「!!」どきっ

淡「えへ……じゃ、放課後に!」たたたっ

ぴゅー


京太郎「……」

京太郎「くそっ……なんなんだよ……」どきどき


──


がちゃ

淡「やっぱり見てたんですか」にや


菫「あわい……おまえぇ……」ぎろっ


淡「文句は言わせませんから」

淡「恋ってのは奪い合いで」

淡「奪うってのは後から来た奴の特権ですよ」


淡「そう思いますよね? 菫先輩!!」にこっ


菫「……」

菫「そうだな、間違ってないよ、淡」

菫「だが正直、お前を見ていると、私はどうにかなりそうだ」

菫「消えてくれ、淡」

淡「はいはい、そうしますよ。あ、でも一つだけ」


淡「今、確かに京太郎は賭けられた。二度と自分のモノ面して京太郎と歩くな」ぎろ

淡「それじゃ、またー」ひらひら


菫「……」

菫「くそっ……一体何がどうなったんだったか……はは……」

菫「はは、はあ……」ぐたっ

──

淡(やっちゃったやっちゃった! 初めてのキス~京太郎と!)

淡(どんな顔してまた会えばいいんだろ? フツーに居られるかな?)

淡(ま、アタックしまくるから何れにしろフツーなんて、もう有り得ないんだけど!)にや

淡(……間抜けな菫には悪いけど、京太郎は私が貰っちゃうから)ごろごろ

淡(三年過ごして付き合えないって、正直トロすぎる。ま、それにも感謝しなきゃね。おかげで私が京太郎を預かれるんだから)

淡(ありがとう菫……京太郎は私に任せてね)にやり



菫(私はしばらく呆然とした後、何もかも放り投げて逃げてしまいたくなった)

菫(けれど、止めた。アタマを冷やしてよくよく考えれば、まだ唇一つを奪われたに過ぎない)

菫(唇くらい、くれてやる)

菫(何だかんだ、淡には京太郎にアタックする時間が必要だ。それは淡が私にチャンスをくれているってことだ)にや

菫(私は、勝たなければならない)

菫(面だけじゃないさ、淡。大会後なんてトロいコトももう言わない。京太郎は、私のモノだ。誰にも渡したりしない)

菫(ありがとう、淡。お前のおかげで、私は目覚めることが出来た)

菫(待っていろ京太郎。お前の心が誰の許に在るべきか、ハッキリ教えてやるからな)にやり



カンッ