背が高いことは得ばかりではない。

学校のクラスでは前にいると後ろの子が見えないので半強制的に後ろにされる。

並ぶ際は当然後ろ、振り返っても誰もいないから前の奴と話すことしかできない。

同い年の子には背が高いと怖がられるのか、避けられることすらあった。

私服で歩いていれば年を間違えられる。

中学時代に高校生にからまれた時は凄く怖かった。

更に言えば、中性な顔立ちと体つきなら性別も間違えられる。

女性専用車両に乗った時一回間違えられたのは泣きたかった。

下手すると同性からモテる、正直に言って凄く困った。自分はそんな趣味をしてないのにそう見られるのも辛かった。

まぁ、今となっては良き友に会えたし。就職先も半分決まったようなもんだから、笑い話にはなる。

そんなオレ、もとい私。

井上純、花の高校生は

他校の一年後輩である男子生徒と

喫茶店でデートしてた。

・・・いや、待って欲しい。

デートというのはちょい語弊がある、つーか誤解だ。うん。

まずこうなった経緯を思い出そう。

オレが住み込みでいる屋敷の執事がいるんだが。(愛称はヨッシー。恐竜もどきじゃねーぞ)

そのヨッシーに友人兼弟子っぽいのができた。

名前は須賀京太郎、キョータローとタローで悩むがキョータもありだろうか。いや、須賀で良いか、うん。

全国IH県予選決勝で対戦した、あのタコスとか透華がご執心してる原村や、あの衣を倒した五人目がいる清澄高校麻雀部唯一の男性部員だ。

ヨッシーと須賀が出会った二人の経緯は省くが、屋敷のキッチンでオレと須賀は会ったわけだ。

小腹が減ってたオレはキッチンで何か食べようとしてたんだが、知りもしない男がいた事にメッチャ驚いた。

いや、あんた家に帰ったら知らねー奴いたら怖いだろ?

んでこっちが固まっているとあいつがオレに気付いてな、突然頭下げたのよ。

「すみません!キッチン使わせて貰ってます!」って。

もうこっちは「お、おう・・・」としか返せねぇって。

すると動揺してるオレの隣にヨッシーが現れてな、ご丁寧に教えてくれたわけ。




「龍門淵高校の井上さんですよね?タコス作ってみたんですけどどうですか?」

なんでタコス?と思ったがあのチビスケの為だって言うじゃないか。

素直に感心したよ、仲間の為に精一杯頑張ってる奴は嫌いじゃない。

で、折角だから一つ貰ったがこれがヒドい。

まぁ普通には食える、だが決勝の時に食べたあのタコスよりグッとランクは下がる。

聞いたら料理はほぼ初めてだとか、よくやる気になったと思う。

レシピ通りにやった筈なのにこれなもんだから頭を抱える須賀、そこでオレは一つ提案してみた。

タコス作ってる店なら知ってるし行ってみるか?って。

そしたらあいつ頭をこれでもかと下げて「お願いしますっ!」って言ってよ、ここまでされるとは思わずちょい引いた。

んで約束して後日行くことになったんだが・・・

・・・なんで一緒に行くことにしたんだろうか、自分。

店教えたら良い話じゃん、大体ヨッシーならもっと美味いタコス作れそうじゃん・・・

そのヨッシーも今朝はニコニコと笑顔で、「行ってらっしゃいませ、須賀君をお願いしますね。」とか言ってるし・・・



・・・でも、もしかしたら

一緒にいて、同等の高さで、見上げたりも見下げたりもせずに

変な扱いとかしないで、楽しめそうな奴だと感じたからかもしれない・・・

・・・えぇいっ!だいたい須賀のせいだ!こんな変なモヤモヤ抱えさせやがって!

待ち合わせはあっちが先にいるし!

服装は褒めるは偶に胸元見るわ!

「やっぱ井上さんって綺麗ですね」とか口説き文句じゃねぇか!

思わず恥ずかしくて顔背けちまったよ!

チャラ男か!?と思ったらそういうわけでもない、ただの天然野郎か?

いや馬鹿であることは間違いない、さっき胸のデカい若い女性店員に鼻の下延ばしてやがった。チクショウ、少し分けろ。

・・・まぁでも。

タコス片手に真剣な顔してメモってるのはなかなかカッコいいじゃねーか。

口元に付いたソースで台無しだけどな。

・・・よし、今度また遊ぶか、こいつと。

須賀といると、なんだ。

飽きねぇな、うん。

透華や衣達といる時とは違う感じがあって、悪くない。

今まで男友達がいなかったってのもあるかもしれない。

「なぁ、須賀。」

「なんすか?井上さん。」

「その『井上さん』止めてくれねぇか?こそばゆいんだ。」

「えー・・・あって間もない男性に下の名前っすか、しかもそっちは先輩ですよ?」

「いーんだよ、オレが許す。つーわけでオレもキョータローと呼ぶ。」

「・・・ういっす、純さん。」

っ・・・!

なんか、今。変な心臓の鳴り方、したかも・・・


背が高いというのも、なかなか悪くない。

気になる男性と、同じ高さの目線でものが見れるというのは

けっこう、得した気分だ。

カンッ