二月頭……松実旅館



宥「……はふぅ」(ペラペラ

玄「おねーちゃーん、炬燵入らせてー……って、どーしたの、難しい顔で本なんて読んで」

宥「わわっ、く、玄ちゃん……!?」(ババッ

玄「むむ、その反応……あやしい。なんの本読んでたのか玄ちゃんに教えてくださいなー」(ワキワキ

宥「な、なんでもないから……!」

玄「なんでもないなら見せてくれてもいーじゃないー……そーれ、とったどー!」

宥「み、見ちゃダメー……」

玄「どれどれー、『麻雀TODAYバレンタイン特集号ー少年雀士が喜ぶチョコ100選ー』……」

宥「あ、あぅぅ……」(カーッ

玄「ふんふむ、なるほどなるほどー。さてはおねーちゃん、バレンタインにチョコを渡したい人がいるんだ!」(キラッ

宥「な、内緒……」(ボフ

玄「アハハ、炬燵の中に隠れても無駄だよ、おねーちゃん。そのチョコ渡したい人ってさ、京太郎君でしょ?」

宥「っ!?ど、どーして知ってるの――――ぁ」

玄「フッフッフー、そんなの私のところにドラが集まるぐらいわかりきったことだよ!」(ドヤァ

宥「そ、そんなに……わかりやすい……?」

玄「全国大会の前後辺りから、おねーちゃんが京太郎と電話したりメールのやり取りしてるの、みんな知ってるし」

宥「み、みんなってー……」

玄「もちろん、穏乃ちゃんから赤土先生まで、みんな!」

宥「……………………!」(ボンッ

玄「あ、おねーちゃんが発熱した」

宥「あ……あついよぉ、顔……」(モゾモゾ

玄「おねーちゃん、あついって言いながら炬燵の中に引き篭るのはやめるのですっ!」

宥「玄ちゃん、ひっぱらないでー……」

玄「いいから出てきて!今から一緒にチョコ作ろー!」(ズルズル

宥「やーめーてー」(ジタパタ



そして、バレンタイン前日……長野


黒服A「それじゃあ、お疲れ様でしたっ」

黒服ズ「「「れっした!」」」

京太郎「あの、そういうのやめてください、マジやめてください、こんなとこ誰かに見られたら洒落になんないんで……」

黒服A「わかりました。あ、コレ、少ないですが今回のアルバイト料とのことです、どうかお納めください」

京太郎「あ、ども……。えっと、赤木さんとか原田さんによろしく言っといてください」

黒服A「かしこまりました。それでは、あっしらはここで」

黒服ズ「「「失礼しますっ!」」」

京太郎「だからそーいうのやめてって言ってるじゃないすか!?」




京太郎「……まったく、近頃は物騒だからって大袈裟なんだよ、赤木さんたち」


京太郎「しっかし、麻雀打ってアルバイト料貰うなんて、俺ってばちょっとプロっぽくねえ?プロっぽいよな!これはもう、麻雀プロの世界に足を踏み入れるしかないんじゃねー?」(ワクワク


京太郎「さてさて、麻雀で稼いだ初のお給料はおいくら千円になるのかなー、っと」


京太郎「…………なんだこりゃ、変な紙切れが……っと、なんか金額書いてある。小切手って奴か、初めて見た。どらどら……ひふみのよーいつむー………………え!?」


『¥500000』


京太郎「……………………次からは断ろう、絶対に、なにがあっても断ろう」(ガタガタ




京太郎「とりあえず、今度の休みに銀行に持っていって通帳に放り込んでもらうか……。つ、使っても大丈夫なお金だよな……なあ?」

晴絵「お、いたいたー。おーい、須賀くーーーん」(プップッー

京太郎「はい?って、は、赤土さん?どうしてこんなとこにいるんですか!?」

晴絵「どうしてって、君に会いにわざわざ奈良から車走らせてきたんだよー」

京太郎「俺に会いに……ですか」

晴絵「いや、まあね?ぶっちゃけたこと言っちゃうと、会いに来たっていうか……『拐いにきた』?」

京太郎「は?」

晴絵「おーいみんなー、出番だよー」


――――ガラッ!


ギバード(紙袋装備)「ラジャー!」(縄

ひな(サングラス装備)「誘拐させていただく所存」(アイマスク

綾(黒マスク装備)「なんかゴメンねー」(手錠

京太郎「」


<イヤアァァァァァァ




透華「ハッ!?いま、京太郎の私に助けを求める声が!」

一「ハイハイ、気のせい気のせい」


バレンタイン当日……奈良・松実旅館


晴絵「はーいお待たせ宥ー。愛しの須賀君を運んできたよー」

宥「ふわっ!?い、愛しのって、そんな…………えと、『運んで』?」

晴絵「いやー、けっこー重いもんだね男の子って。ほーら、獲りたて新鮮だよー」


ドサー


京太郎「」(ビチビチ

宥「」

晴絵「そいじゃー頑張ってねー。さ、帰るよみんなー」

ギバード「宥ねーちゃんファイトー!」

ひな「玄ちゃんのおねーさんの恋路、応援させていただきます」

綾「あ、これ手錠の鍵です。よかったら使ってください。手錠かけたまま、っていうのもなかなかマニアックでいいんじゃないかって思いますけど!」

宥「え、えと……ど、どうもー」

京太郎「なんで俺がこんな目に……」(モゾモゾ

宥「ゴ、ゴメンね、すぐに縄とか外してあげるから……ん、ぁぅ、ちょっと……固ぃ……」(前屈み

京太郎「ちょ、ちょっと宥さん、近いです、顔……顔におもちが近い……てか、なんか声とかいい匂いがヤバいです……あっ、あれ、なんか妙に懐かしい衝動が……!?」(ビタヒ

宥「キャン!?ぁ、あまり暴れないで……」

玄「おねーちゃん、京太郎君ってもう届いたの………………え」

宥「く、玄ちゃん、どうしたの――ぁ」


京太郎→拘束されている

宥→拘束されている京太郎に体を寄せている


玄「お、おねーちゃん、まさか……」(ワナワナ

宥「ち、違うよ?これは京太郎君の縄とか手錠を……」

玄「いくらなんでもそんなプレイは早すぎだからやめるのです……!!」

宥「そんなプレイってなんなの玄ちゃん……!?」

京太郎(うん、頭冷やそう…………イーリャンサンスーウーチーパーキュートンナンシャーペーハクハツチュン、純チャンイーペードラドラ裏2ー)(ブツブツ








玄「……京太郎君、戻ってこないねー」

宥「少し頭を冷やしてくるって言ってたけど……どこに行っちゃったんだろーね。も、もしかして私のこと嫌いになって長野に帰っちゃったのかも……」

玄「いやいや、おねーちゃんのこと嫌いになれる男の子なんていないから!自信持って!」

宥「う、うんー、がんばる」(フンス


京太郎「…………ただいま戻りました」

宥「ぁ」(バフ

玄「おねーちゃん、即行で炬燵の中に隠れちゃダメだよ!」

宥「だ、だってー……」

玄「もー……それにしても遅かったね、京太郎君。どこ行ってたの?」

京太郎「少し自分を見失いかけたから、旅館のお客さん相手に少し打ってきました」

玄「あ、そうなんだ。じゃあ逆に早いぐらいだったんだね……」

京太郎「それで、俺が松実旅館に強制連行された件についてなんですけど……」(チラ…

宥「はぅ……」

京太郎「奈良に着くまでの道すがら、赤土さんを始め、阿知賀こども麻雀クラブの子たちに、ここ最近の宥さんの様子を延々聞かされまして……その」

宥「――――――――!?」(ボンッ

玄「あ、あぁ……このパターンはあれだね、もう相手が気持ちに気付いちゃってるのを知りつつ、改めて想いを告げるっていう高難度な……」

京太郎「…………なんか、すみません」

宥「わ、わわ……え、えっと、その……!」

京太郎「えーっと、正直なところ俺でいいんですかと念入りに確認しておきたいところですけど……」

玄「そんな心配は無用だよ!京太郎君と電話で話したり、メールでやり取りしてる時のおねーちゃん、本当にあったかーい顔で笑ってるんだから!」

宥「く、玄ちゃーん……」

玄「逆に京太郎君はおねーちゃんの気持ちを知ってどー思ったのか、今この場でババーンと口に出しちゃってよ!」

京太郎「お、俺は、そのー…………」

宥「や、やっぱり嫌、かな……?」(フルフル

京太郎「…………いえ、そんなことは。ただ、その、あまりに急な展開にイロイロ実感が足りないだけで……」

玄「なるほどなるほどー、タイミングを見計らってババーンと大きく和了という名の告白をするから、今は仮テンにしておいてほしい、ってことだね!」

京太郎「……です」

宥「ぁ、じゃ、じゃあ……京太郎君、は、はい」(ゴソゴソ

京太郎「これって……」

玄「京太郎君、今日はバレンタインデーだよ」

宥「えっとね……さ、最初は友達からだけど……これから、い、一緒にいっぱいあったかーい思い出作ろうね……」(テレ…

京太郎「」(ゲイ―――ボルグ!

玄「あ、因果率が逆転した」

宥「……?」

京太郎「こ、こちらこそよろしくお願い、します……」(プルプル

玄(あー、これはもうゴールまでカウントダウン入っちゃったよーですよー)


玄「京太郎君、今日はウチに泊まっていきなよ!いい部屋空いてるからさ!」

京太郎「そ、そうですね、ここに来るまでろくに眠れなかったですし、一晩お世話になります」

玄「おまかせあれ!」

玄(ふふーんふーん、さーて離れの二人部屋のお掃除お掃除ー。あ、あとストーブと羽毛布団も用意してー……)(トタタ…



京太郎「玄さん、なんかやけに張り切ってましたね……」

宥「うん。きっと京太郎君がウチの旅館に泊まってくれるのが嬉しいんだよー」(ポワー

京太郎「そうなんでしょうか……?」

宥「たぶん……」

京太郎「…………えっと、せ、せっかく貰ったんですし、早速チョコをごちそうになりますね!」

宥「う、うん、頑張って作ったから……お、美味しいよ」(ニコッ

京太郎「それは楽しみです―――」(パカ





京太郎「…………溶けてますね。ポケットに入れたまま炬燵に入ってたから」

宥「わわっ!?」(ガーン




後日……長野、清澄高校麻雀部


京太郎「」(ボー

咲「もー京ちゃんってば、バレンタインデー前後に行方不明になるなんてヒドすぎだよ!せっかくチョコあげようと思ってたのに!」(プリプリ

京太郎「おー、そりゃ悪かったな……」

咲「…………京ちゃん?どうしたの、なんか気もそぞろっていうか、なんか心なしかやつれて見えるし」

優希「どーせどっかの雀荘で耐久麻雀でもやってたんだじぇ!ホレ、のどちゃん、おもちでも拝んで元気だせ!」

和「ちょ、ちょっとゆーき!?」

優希「ノリが悪いじぇ、のどちゃん!ここらでパーッと弾けられるとこ見せてギャップ萌えでハートゲットだじょ!」

和「弾けろと言われても……ほ、ほーら須賀君、きれいなクッショ――――もう無理です、もう許してやめさせてください……!」

咲「ズルい!おもち使うなんて卑怯だよ和ちゃん!」

和「そこ怒るところなんですか!?」

京太郎「――――おもち、か」

優希「ん、おもちがどーかしたのか京太郎?」

京太郎「ある意味で邪悪なクッションの魅力を耐え抜いた俺に、もう怖いものなんてないぜ……へへ」(ゲッソリ

まこ「行方不明になる度に変な体験しとるんじゃの、お前」

京太郎「なんでしょーね……こんな辛い思いするぐらいなら、おもちの魅力なんて思い出さなきゃよかったよ……」

優希「……マジで病院に行った方がよくないか、お前」

まこ「なんじゃろーな、一晩欲望と理性の狭間で苦しみ抜いた末に、自分にごちそうをお預けしてしもうたワンコみたいな悲しい目をしとるの……」



松実宥編……カン!



阿知賀にて……



玄「で、で、おねーちゃん、どーだった?」(ワクテカ

宥「ど、どうだったー、って?」

玄「またまたー、照れ隠ししなくていいよー。せっかく気を利かせて、離れの二人部屋用意してあげたんだよ?もー、二人してあったかーいことしちゃったんでしょ!」(キラキラ

宥「あったかい……う、うんー」(ポッ

玄「ど、ど、どうだったの?やや、やっぱり痛かったりしたの……?」(ドキドキ

宥「痛かったり……ううん、ぜんぜんそんなことなかったよー?」

玄「えっ、じゃあじゃあ気持ちよかったのでしょうか!」

宥「な、なんで玄ちゃん敬語なの……?えっとね、玄ちゃんに勧められて京太郎君の部屋にお邪魔した後ー……」

玄「うんうん……!」(ゴクリ

宥「さ、寒いから同じお布団に入れてもらってね、だ……抱っこしてもらうような形で寝させてもらうったの。す、凄く恥ずかしかったけど、とってもあったかかったよー」(テレテレ

玄「そ、それだけ……なの?」

宥「う、うんー。わ、私はあったかくてすぐに寝ちゃったんだけど、京太郎君はあんまり眠れなかったみたいだし、ちょっとだけ悪いことしちゃったかな……」(ションボリ

玄「朝、起こしにいったら部屋の隅で京太郎君が黙々とツモ切りの練習してたの、手を出すに出せなかった末の正気を保つための行為だったんだねー……」

宥「ど、どーしたの玄ちゃん……?」(純粋無垢な瞳

玄「おねーちゃん、『その機会』が訪れた時に溜まりに溜まったものを受け止めてあげられるよう、もう少しアダルトな保健体育の勉強しておいた方がいいよ……」

宥「ア、アダルト……?く、玄ちゃん、えっちぃのはいけないと思うよ!」(ワタワタ

玄(おねーちゃんに一からえっちいことを教えていくのも、ある意味役得な気がするし、京太郎君にはイロイロと頑張ってもらいたいところだよー。そしてゆくゆくは、松実旅館に来てもらって――――!)(ゴゴゴ…

宥「玄ちゃんが燃えてる……。あ……こ、今度いつ会えるか京太郎君に電話で聞いちゃおうかな……♪」(ニコニコ



松実玄の松実旅館経営戦略編……カン!