透華「あ、あの……お父様、お母様、お風呂いただきました……」
須賀父「狭い風呂で悪いね。でも、さすがにこの寒空の下、帰すのは気が引けるから……。ま、今夜は適当にくつろいでってください」
須賀母「ごめんなさいねー、私のパジャマがらいしか着るものなくて」
透華「い、いえっ、そんなことありませんわ!……ぁ、な、ないです」
須賀母「ウフフ、いいのよ別に無理して普通の喋り方しなくても。ちょっと変わってても、ウチの子で慣れてるから」
須賀母(下着、すぐ近くのお店で買ってきたものだけどサイズは大丈夫だった?)
透華(ピ、ピッタリでしたわ……悲しいぐらいに)
須賀母(ウフフ、おもちのサイズ判定は密かな特技なのよー。大きいおもちもいいけど、ちっちゃなおもちも可愛くていいのよねー、これが)
透華(……京太郎のおもちに対する執着って、もしや――――)
京太郎「ちょいウェイトだぜ、母さん!俺の喋り方のどこが変わってんの?」
須賀母「アラ、あなたよく変なこと口に出してるじゃない?ペーポンペーポンとかリーピンチャンタイーペードラドラーとか」
京太郎「それただの麻雀用語だよ……」
須賀母「あら、そうなの?ごめんなさいね、この子、最近大会で優勝したとかで、ずっと麻雀のことばかり口にしてるのよー」
透華「そ、そうですの……」
須賀父「しかし、京太郎が家にこんな可愛いお嬢さんを連れてくるとはなー。立ち振舞いも上品だし、本当にいいとこのお嬢様みたいだよ」
須賀母「あらあら、じゃあ京ちゃんには頑張って玉の輿を目指してもらわないと♪」
透華「た、玉の輿……」
京太郎「やめれ母さん!別にそーいう考えで透華さんと仲良くしてないから!」
須賀父「お、じゃあどういう考えなんだ?」
京太郎「そ、それは………………せ、切磋琢磨する麻雀仲間としてとか、イ、イロイロあんだろ」
須賀父「………………チッ、カスみたいなテンプレ回答しやがって」(ペッ
須賀母「本当に私たちの息子かと思うぐらいクズだわー」(ペッ
京太郎「やめてよっ、そんな道端のゴミ見るような目で我が子を見んなよ!」
須賀父「ゴミどころか、なあ?」
須賀母「ダメですよ、アナタ。透華ちゃんの前でそんな言葉口にしたら、彼女が卒倒しちゃうわ」
京太郎「どんだけヒドイこと言おうとしてんの!?」
透華「ゆ……ゆにーくなご両親、ですわね」
京太郎「ちが、違うんです透華さん。いつもはもう三割ほどマトモなんですけど、きょ、今日は透華さんが来てはしゃいじゃってるだけなんです……!」
透華「それって……か、歓迎していただけている、ということ……ですわよね?」
須賀父母「「ウェルカーム」」
京太郎「マジで恥ずかしいからやめてくれよ、そのノリ……」
透華「――――ウフフ……♪」
京太郎(うぅ、変な見栄張らずにイベントが被った、って言っとけばよかった……。つーか、家誘ってそのままお泊まりとか、いろいろすっ飛ばしすぎじゃねえの……?)
須賀母「―――さて、せっかくのクリスマスイヴだし、お茶とケーキでささやかにパーティーといきましょうか」
須賀父「よかったな京太郎、お前の好きな母さんお手製のイチゴケーキだぞ」
京太郎「オイ、マジでやめろよブッ飛ばすぞ、いつの頃の話してんのさ!」
須賀父「男はいつまで経っても母離れできないもんさ……」
須賀母「今度、私のケーキのレシピ教えてあげるからね透華ちゃん♪」
透華「ハ、ハイ、よろしくお願いいたしますわ、お母様!」
京太郎「うっわ、もう本気で部屋に引きこもりたくなってきた……。地味に透華さんもノリノリだし……」
須賀父「とりあえず何の話をしようか……。うん、普段学校で京太郎がどんな奇異な行動をしてるか、なんてどうだろう」
須賀母「まあ、面白そう♪透華ちゃん、いろいろ教えてちょうだいね、お礼は弾むから」
透華「お、お礼……?」
須賀母「例えば、この京ちゃんの成長を事細かに記録したアルバム(複製)とか」
須賀父「小さかった頃の京太郎の冒険譚から、当時の交遊関係まで網羅してあるよ」
透華「おまかせあれっ、ですわ!!お父様、お母様、何でも聞いてくださまし!」
京太郎「ヤメテッ!?」
そんなこんなで(京太郎を除いて)会話は弾み――――
――AM1:07
須賀父「おっと、もうこんな時間か……」
須賀母「あらホント、もう寝ないと明日に響いちゃいそう」
透華「そ、そうですか……。できれば、その幼少の頃に出会った女の子たちについて、もっとじっくりしっかり聞いておきたかったのですが……」
須賀母「大丈夫よ透華ちゃん、それについては巻末に私のレポートを掲載してあるから」
京太郎「もういっそ殺せよ……」
須賀父「さて、それでとうかちゃんの寝る場所だが……どうしようか」
須賀母「実は客間、お掃除サボっててあまり綺麗じゃないのよねー」
須賀父「すまないんだがね、京太郎の部屋を使ってもらうということで構わないかい?」
透華「(京太郎の部屋、京太郎の部屋で一泊……!)わ、私は問題ありませんわっ!」
京太郎「まあしょうがないよな、場所ないし。それじゃ、俺はカーたんと一緒に居間で寝る―――」
須賀母「あらあら、ホントにそこでいいのかしら?」
京太郎「は?」
須賀父(そんな場所で寝て、明日から父さんと母さんの目を見て話せなくなるような、トラウマ級の大人のイチャイチャを目撃しても知らないぞ、という意味さ)(ヒソヒソ
京太郎「」
透華「?」
京太郎「この……外道どもがっ……!」
須賀母「あら心外。京ちゃんはその場の勢いで一夜の過ちを犯しちゃう子なのかしら?」
京太郎「普通、逆だろ!なんで親が同衾せざるを得ない流れ作るかなあ!?」
透華「ど、同き……え……ええぇぇぇぇえっ!?」
親のごり押しなんかには負けない!
……親には勝てなかったよ――――
【京太郎自室】
京太郎「………………本当に、本当にウチの親がすみませんでした」
透華「い、いえ、わ、私は……たの、楽しませてもらいましたし……」
京太郎(せ、背中が当たってて、全然眠くなんねー……)
透華(ふわぁぁ……!?事情が事情とはいえ、背中合わせでいい、一緒の布団でねむ、眠るなんて……!)
京太郎「あの、ホントに無理だと思ったら言ってくださいね。すぐに俺、居間に行きますから……」
京太郎(それでトラウマ負っても……後悔なんてしないさ、ああ、しないとも)
透華「――――た、確かにこのままだと眠るのは……難しい、かもしれませんわね」
京太郎「じゃ、じゃあ……」(モソ…
透華「っ!……それでも、こ、ここで居間に行かれると……少し……いえ、とても傷つきますわよ、私……」(ギュッ
京太郎「――――ぅぅ……」
透華「…………」
京太郎「…………」
透華「あの、京太郎……?」
京太郎「な、なんですか透華さん……」
透華「お母様のお話に出ましたけど……や、やっぱり男の人というのは、その、ですわね…………た、玉の輿というのを気にしてしまいますの?」
いつの間に寝返りを打ったのか、背中にヒタリと寄り添うようにして投げ掛けられた質問。
その問い掛けの意味が分からないほど、須賀京太郎という少年の頭は鈍くない。
京太郎「俺、は――――」
トッ、トッと背中に透華の胸の鼓動を感じながら、京太郎は緊張に震える唇を静かに開いた――――
ちなみにその夜、京太郎が何と答えたか知っているのは、透華とカピバラのカーたんのみであることをここに記す。
そして、次の次の日の会話へ繋がるんだなこれが。
最終更新:2014年04月27日 23:32