京太郎「助け合って肩貸し合って、少し進んでは立ち止まって、息を吸って深呼吸して、」


『今週の呪い』


京太郎「うん?」


『来週になるまでに愛してると言われなければ蛙になる』


京太郎「なんだ?この声」


『来週になるまでに愛してると言われなければ蛙になる』


京太郎「幻聴?いや、幻覚はともかく幻聴が聴こえ出すのは本気でヤバい」

京太郎「まさか本気でカエルになるのか?」

―――――
―――


霧島神社

京太郎「うおおおおおおおおお!!」ダダダダダッ

バーン!

京太郎「巴さん!」

巴「え?」←着替え中

京太郎「あ」

巴「な、なな…………///」プルプル

京太郎「すみません。間違えまし」

巴「何してるんですかっ!?」ドゴォ

京太郎「ありがとうございます!」ゲフッ




京太郎「ひゅみまひぇんでひた……」ボロッ

巴「まったく。身内でなければ裁判沙汰ですからね」

京太郎「仰るとおりです」ドゲザー

巴「それで、いつもは礼節を大事にする京太郎君が今日はどうしたんですか?」

京太郎「そう!そうなんですよ、巴さんお願いです助けてください!」

巴「はい?助けてとはどういう……」


『来週になるまでに愛してると言われなければ蛙になる』


巴「これは……」

京太郎「いてててて……っ!?」

巴「緑の肌に水掻き……さっきの幻聴と合わせると、なるほどカエル化の呪いだね」

京太郎「はぁ……はぁ……あ、戻った」

巴「大丈夫?」サスサス

京太郎「ありがとうございます。うう、なんでこんなことに……」

巴「う~ん、今見聞きした情報だけじゃあ判断できないけど、鹿児島の上甑島に蛙息子っていう伝承があるんだけどその辺のかな?」

京太郎「あの、もしかして俺、マジでカエルになるんでしょうか?」

巴「蛙になるなんて御伽噺としか思えないだろうけど、学術的には成立します」

京太郎「マジっすか?」

巴「たとえば、素人が下手に丑の刻参りをしても普通は呪いなんて掛かりません」

京太郎「はぁ」

巴「何故なら、私たちが扱う呪術などの原理は外部的な量子観測効果による物理干渉ですが、これは他人の体内では極めて発動しにくいんです」

巴「その原因は、相手側の量子観測効果という抵抗力があるためです」

京太郎「え?じゃあ、なんで俺は……」

巴「今回の京太郎君の場合は体内に直接呪いを打ち込まれてるので、一見不可能に思える全身変成を可能にしています」

巴「似たような事例だとトンカラトンっていう妖怪が有名かな?」

京太郎「あの、「トンカラトンって言え」って言って言わなかったら刀で切りつけて同じトンカラトンに変えられるって奴ですか?」

巴「そう。あれも似たような事例で、刀で切りつけることで相手の体内に直接呪いを打ち込んで抵抗力を無効にして体表面の分子組成を変成するって感じだね」

巴「うちのはっちゃんが使う石化の呪いも似た感じかな」

巴「原理としてはシラフィンっていう酸化珪素の結晶を作る酵素を、生物の細胞膜に発現させて、細胞膜に珪素沈着を起こさせて全身の細胞を珪酸質に置換していく」

巴「今回の京太郎君の場合だと、仕組みとして体中の分子組成を変化させ、哺乳類から両生類に退化させる強引な呪術だね」

巴「難易度の高さと効果の遅さからこんなのを扱うものはほぼいないけど、一度発動したら止められないよ」

京太郎「あの、薀蓄はその辺にしてもらって、俺、カエルになっちゃったらどうなるんですか?」

巴「どうなるも何も、死ぬだけですよ?」

京太郎「え?」

巴「はい」

京太郎「死ぬんですか?」

巴「そりゃそうですよ。どうなると思ってたんですか?」

京太郎「いや、予想って言うか願望的にはクロノトリガーのグレンみたいな、ほら俺、魔王と縁があるし」

巴「それは物語だからですよ」

京太郎「あ、そうなの?」

巴「はい。まず、人間の脳の容積が約1500ccなのに対してカエルの脳はわずか10数ccしかないので人間の思考を維持できません」

巴「人間の思考を保てないため、カエルになったことを悲しむことすら出来ません」

京太郎「マジすか」

巴「次に、両生類は横隔膜や気嚢がないので皮膚呼吸頼りになりますが、身体が変成しても京太郎君はあくまで人間なのでまったく足りません」

巴「脳の過負荷と酸欠状態で京太郎君がカエルの身体に適応する前に絶命します」

巴「仮になんらかの方法で一命を取り留めても、減少した脳の知識や記憶は復元不可能です」

京太郎「」

京太郎「どどど、どうすればいいんですか!?カエルになるなんて絶対いやですよ!」

京太郎「お願いです巴さん助けてください!!…………俺まだ童貞なんですよ」

巴「なにさり気無くセクハラしてるんですか!///」

京太郎「うう、だってぇ……」

巴「こほん。いいですか、特殊で複雑な呪いだけどそれ故に解呪条件が付帯されています」

京太郎「あ、もしかしてあの声の通り「愛してる」って言われれば……」

巴「その通り、京太郎君はまだ助かるかた安心して」

京太郎「巴さん」

巴「なにかな?」

京太郎「俺、前から巴さんのこと」

巴「いや、そんなお世辞とかなくてもわかってるから」

京太郎「じゃあ!?」

巴「はぁ、まぁこれも人助けのためと思えば。え~…………愛してますよ///」

京太郎「……」ペタペタ

京太郎「これ、解けたかどうかってどうやったらわか、いてえええええええっ!?」

巴「ええっ!?」

京太郎「解けてない……だと……?」

巴「まさか、心が込もってないと駄目……とか?」

京太郎「なんでそこだけ御伽噺チックなんだよ!?っつうう……も、戻った……」

巴「大丈夫?」サスサス

巴「これは予想以上に大変かもしれないね」

京太郎「説明が足りな過ぎるだろうが!」

巴「相手からしたらそれで十分なんだろうね」

京太郎「とにかく、なんとかして一週間以内に相手を見付けて呪いを解かないと」

巴「乗りかかった船だしね。私も可能な限り協力するよ」

京太郎「巴さん……」ウルウル

巴「はいはい。泣かないで」ナデナデ

京太郎「すみません。なんか、感極まっちゃって」ゴシゴシ

京太郎「よし!じゃあ行きましょう」

巴「ええ」


続カンッ