そういえば、明日はエイプリルフールだったなぁ、と。
春休みであるにも関わらず部室にきて部活動に精を出す先輩たちの姿を眺めていたら、ふと思い出した。

エイスリン「ロン!エー……」

豊音「あー、その点の数え方はねー」

胡桃「エイちゃんも大分様になってきたね」

……ふむ。
誰かを悲しませたり怒らせたりするようなウソは勿論NGだが。
ちょっとしたウソに騙されてアワアワしている先輩の姿というのは、少し見てみたい。

京太郎「……なにか、いい案ないかなぁ」ボソッ

塞「こーら、集中する!」ぺしっ

京太郎「いてっ」

シロ「ダル……」

色々と考えていたら怒られてしまった。
うん、部活が終わった後で考えよう。


塞「それじゃ、戸締まりよろしくね」

京太郎「はい」

そんなこんなで部活も終わり、先輩たちも帰宅した後。
何か良い案が浮かばないかと、部室の片付けをするついでに一人で居残りをしていたら、あるものを見つけた。

京太郎「コレ、エイスリン先輩の……?」

いつも持ち歩いている画板。どうやら忘れていってしまったらしい。
今から届けるにはちょっと遅すぎるし、そもそもあの人の家の場所を知らない。

京太郎「……そうだ」

どうせ、明日の部活の時に取りに来るわけだし。
カンの良い人にはすぐバレてしまうかもしれないが、エイスリン先輩はどうだろうか。
あの白いほっぺたを赤面させてみたいなあ、と。そんなイタズラ心でペンを手に取った。


翌日。
エイプリルフール本番となったわけだが

京太郎「あれ?エイスリン先輩は」

塞「風邪ひいちゃったみたい。最近寒かったり暑かったりで大変だから」

京太郎「あれま」

胡桃「そんなわけだから、今日はビシバシと鍛えるからね!京太郎!!」

豊音「ファイトいっぱーつ!」

京太郎「お、お手柔らかに……」

シロ「……」

そんなわけで、徹底的に叩き込まれて。
俺がイタズラを仕掛けた画板のことなんて、すっぽりと記憶から抜け出てしまった。


さらに翌日。
朝登校して見ると、みんなの視線がなんだか温かい。

姉帯先輩なんかは通学路で遭遇したら「お、応援してるよー」なんて顔を真っ赤にしてそそくさと行ってしまったし
塞先輩は「あんたも隅におけないことするじゃん。ウリウリー」なんて肘で突っついてきたし
胡桃先輩は「あんま風紀が乱れることしないでよ」なんて説教をしてきた。


京太郎「なんかあったけな……」

首を傾げて部室の扉を開けると、そこには

エイスリン「ア……」

ほっぺたを真っ赤に染めた先輩がいた。
俺がイタズラで告白の文を書いた画板を胸に抱えて。

エイスリン「……」

京太郎「……」

なんだろう、ここまで初々しい反応をされるとは思ってなかったというか。
予定では、画板を発見した先輩が、日本語を読めなくて首を傾げているところに、意味を教えて慌てさせる、みたいな感じだったんだが。
こう、指を絡めてモジモジされると、激しく照れくさい。

エイスリン「……ウレシイ」

京太郎「え?」

エイスリン「ニホンゴ……コレデ、ベンキョウ、シタ」

京太郎「それは……恋愛小説、ですか?」

コクリ、と先輩は頷いた。

エイスリン「キモチ……ツタエタカッタ、カラ」

京太郎「え……それは……?」

エイスリン「ケド……キョータローッ!!」ダッ

京太郎「うわっ」

思いっきり抱きつかれて、少しフラついてしまった。
転ばないように何とかこらえて、先輩を見ると

エイスリン「ン!」

京太郎「あ」

背伸びをした先輩に、思いっきりキスされた。口に。

エヘ、と先輩は照れくさそうに笑って。

エイスリン「オナジキモチ、ダネ!キョータロー!!」

……これがウソから出た真、というヤツなのか。
エイプリルフールのネタのつもりが、可愛い彼女ができました。


シロ「……」

一部始終を見ていた先輩との間で修羅場ができるのは、また別のお話。


カンッ