【第一章五人の巫女と一緒に暮らそう!Start】



最初は、皆と一緒に強くなりたいだけだった。



京太郎「ういーっす」

咲「おはよう京ちゃん!」

和「おはようございます、須賀君」

優希「おう、犬!私が頼んでおいたタコスは作ってきたか!」

京太郎「ったくよ、お前は本当に花より団子だな……。そんなんだと先が思いやられるぞ」

優希「犬のくせに何をーーー!どーーーーん!」

京太郎「ぐほっ!?いきなり、腹にタックルしてくるのはどうかと思うぞ……!」

和「騒がしいですよ、もう……」

咲「あはは……優希ちゃんも悪気があってやっている訳ではないんだし。まあ、京ちゃんですし」

京太郎「腹部に実害を受けた俺は無視ですか、そうですか」

咲「まあまあ。京ちゃんも抑えて抑えて……というか優希ちゃんはいつまで抱きついてるのかなっ!」ガタッ

優希「あれれー、咲ちゃんヤキモチかー!京太郎のことなんてどうとも思っていないんだろー」

咲「それとこれとは話が別だよっ!」

京太郎「わかったわかった、とりあえず優希は俺から離れろ。暑苦しいっての」

優希「むぅ……この天才美少女優希ちゃんの抱擁をどうとも思わないとは……お前本当に人間かー!」

和「優希もいつまでも捻くれてないで卓に座ってください。須賀君も来ましたしこれで四麻ができますし」

京太郎「和の言う通りだぞ。ほら、さっさと座れ。……俺の上に座るんじゃねえ!」

咲「む~~~~~~~~~~!」

京太郎「咲も膨れてないで座れって。部長達が来るまでのんびりやってよーぜ」




無邪気に信じていた。強くなれるって。



京太郎「はぁ……俺のトビか」

優希「京太郎よわよわだじぇー!」

京太郎「うっせー!俺は大器晩成型なんだよ!」

優希「ふふん、ニワカは相手にならんじぇ!」

和「まあ、麻雀は運で左右される競技ですし……」

咲「次は一位取れるかもだよ、京ちゃん!」

京太郎「そうだといいんだけどなぁ……」

久「遅くなってごめんね……ってあら、もう始めちゃってたのね」バターン

まこ「ドアは静かに開けんかい。すまんなぁ、騒がしい登場で」

京太郎「いえ、別にいいですよ。あ、部長達来たんで俺は変わりますね」

まこ「いや、そのまま打ちんさい」

京太郎「いえ、団体戦に出る部長達はもっと練習が必要ですよ。俺のことはいいですから卓に入ってください」

久「そう?じゃあお言葉に甘えて……」

まこ「…………それでいいんか、京太郎」ボソッ

京太郎「いいっすよ。染谷先輩こそ大丈夫なんですか、打たなくて」ボソボソッ

まこ「わしはいい。それよりも、お前さんの方が心配じゃ。今のお前は眼が淀んでおるぞ」ボソッ

京太郎「ハハッ、そんなことないですよ。気のせいじゃないんですか」ボソボソッ

まこ「そうだといいんじゃがな……京太郎、無理はするなよ」ボソッ

京太郎「はい、わざわざ心配してくださってありがとうございます」ボソボソッ

優希「おーい、京太郎!こっちに来るじぇ!私の華麗な麻雀を見せてやるじぇ!」

咲「京ちゃん早く!」

京太郎「はぁ……まったく、うちのお姫様達は元気なことで。じゃあ、染谷先輩。俺は咲達の所にいるんで」トコトコトコ

まこ「はぁ……それでも、わしはお前さんが心配じゃよ。わしにはお前さんが無理をしているようにしか見えん」

まこ「このままだと――――壊れてしまうぞ……京太郎」



どれだけ、強くなれば取り戻せますか?



京太郎「見知らぬ天井だ……っていうネタなんて今時はやらねーか」

京太郎(……嫌な夢を見たな。もう振り返らないって俺は決めたのに。まだ、未練があるっていうのかよ)

京太郎(さてと、どうすっか……気分的にも二度寝できないし。ああ、そういえば携帯の電源がずっと切りっぱなしだったな)ポチポチ

京太郎「和からメール……?珍しいこともあるもんだ」

『須賀君、連絡が取れなくなって皆心配しています。特に、宮永さんと優希は……。一応、家にも連絡してみたのですが教えてくれなくて……。
このメールを見ているのなら連絡をしてくれると嬉しいです。私個人としても須賀君のことを心配していますので。
お願いします……返事をください』

京太郎「ははっ……和にこんなに心配されるなんて。前の俺なら手拍子を叩いて喜んでいたかもしれないな」

京太郎「だけど。だけどだ。俺はもう諦めたんだよ。麻雀も。それに――――お前への恋も。
全部だ、全部捨てたんだ」

京太郎「だから……これで、最後だ」

京太郎「お前の気持ちは嬉しい。何もかもが壊れちまっても。終わっても。俺には響いたよ。和――――」


『二度と俺に構うな。ムカツクんだよ、お前らのこと』


京太郎「俺は、お前達にはいらないようなもんだからな。勝手に逃げたケジメだ、区切り良く終わらせるさ」チャクシンキョヒッ

京太郎「もう、消えてくれ。和……多分、初恋だった」

京太郎(さてと!後腐れなく関係も消したことだし朝食でも食べるか。腹も減ったことだしなー)ドタドタ

京祖母「おう、京太郎。おはようさん」

京太郎「はよー、婆ちゃん。朝食ってできてる?」

京祖母「ちょうどいいタイミングだ、できとるよ。飲み物は何がいい?」

京太郎「麦茶がいいな」

京祖母「はいはい。テーブルに置いとくから冷めない内に先に食べてな」

京太郎「わーったよ。じゃあお先に、いっただきま~す」モグモグ

京祖母「どうだい、まずくはないかい?」

京太郎「全然。あいかわらず、婆ちゃんは料理がうまいな。俺もこれぐらい上手く作れればなあ」

京祖母「何言ってるんだい、京太郎はもう十分に上手いよ。いっそのこと料理人でも目指せばいいのさ」

京太郎「婆ちゃんはいつも褒めすぎだっての。俺の友達はもっとすごいぜ?目に見えない速さで極上の料理を作るからね」

京祖母「ふふっ、謙遜するんでないよ。料理だけじゃなく家事もできる男の子なんてそうはいないよ。
これで、いつでもお婿さんに行けるねぇ」

京太郎「ちょ、婆ちゃん!そんなこっ恥ずかしいこと言わないでくれって!」

京太郎(婆ちゃんが変なことを言うから想像しちまったじゃねえかよ……その、俺が結婚する光景が)


京太郎(……ああ。いつまで脳裏にいるんだよ、お前達は。妄想にまで出てくるんじゃねぇよ!
何なんだよ!忘れようと、無くそうと!消そうとしてんのに!)


京太郎(ホントさ――――もう消えろよ)

京太郎(嶺上開花、デジタル打ちの申し子、悪待ち、東場のみの最強。アイツらは俺とは違って恵まれている。それが、どれだけ羨ましいか)

京太郎(はっ……もう考えるだけで苛々する。アイツらは全然悪くない。それでもだ。俺は才能があって笑っていられるアイツらが――)

京太郎(――――憎いのかもしれない)


京祖母「さてと、京太郎。わざわざ鹿児島まで来てもらったのには理由があるのよ」

京太郎「改めてなんだよ。何か、手伝うことでもあるのか?」

京祖母「立直に言えばね……京太郎にはとある家で住み込みで家事をして欲しいのよ」

京太郎「え、俺が?確かその仕事って婆ちゃんのだったような……」

京祖母「そうなんだけどね……儂も歳なんだろうね、腰を悪くしてしまったのよ」

京太郎「じゃあ……」

京祖母「それで、最低限の家事しかできなくなってねえ……だけどその仕事は休むってことが厳しくてね。
私の代役を捜さないとって思ったわけよ」

京太郎「それが俺なんだね」

京祖母「そうよ。京太郎だったらその仕事をこなせると思うからね。無論、お金は京太郎に入るよ。
京太郎が働いて儂がもらってちゃあ悪いからさ」

京太郎「でもその間婆ちゃんはどうやって生活するんだよ」

京祖母「なあに、心配はいらんさ。コツコツとパチンコと競馬と競艇で稼いだ金がある。
これでも、儂はギャンブルに強いのさ。その貯金を切り崩して生活するよ」

京太郎(それはコツコツとは言わない。ったく、そんな嘘までついて。婆ちゃん、ギャンブルしないだろ……!)

京太郎(いつも、あくせく働いて少しづつ貯金して!そんな婆ちゃん放置して自分の懐に入れられるかよっ
少しでも、婆ちゃんの為にも。きちんと働かないとな)

京太郎「……まあ仕事をするのはいいけどさ。俺なんかで本当にいいの?もし、仕事でミスなんてしたら婆ちゃんの仕事が……」

京祖母「ハッ!そんな小さなこと気にしてんじゃないよ。一度のミスでクビになるくらいなら儂はもう数えきれないぐらいクビになってるよ。
自信を持ちな、京太郎。アンタは儂が認めた孫なんだ。それを否定なんてさせないよ」

京太郎「婆ちゃん……うん。俺やってみるよ!自分が出来る限り、頑張ってみる!」

京祖母「その意気だよ。さてと、仕事先の家なんだがね、神代家という。これまた格式が高くてね、普通では入れない所なんだよ」

京太郎(神代家……?どっかで聞いたことあるような……)

京祖母「さっきも話した通り、そこの家事やら何やら色々な雑用をやってもらう。最初は同じ立場の使用人がついていてくれるだろうか」

京太郎「その仕事ってのはいつから?」

京祖母「今日からじゃ。急ですまんな、色々と都合があってな……」

京太郎(その色々な都合っていうのは突っ込まない方がいいんだろうな)

京祖母「さてと、朝食も終わったことだし早速向かってもらう。頼むぞ、京太郎」

京太郎「任せておけって婆ちゃん。まァ、らくしょーってことで」

京祖母「その意気だよ、京太郎。頑張ってきな。もしかすると運命の人と出会えるかもね」クヒヒッ

京太郎「何を言ってるんだよ。もしいたら、全裸で踊ってやるよ!」

京祖母「言ったな、その言葉……忘れるんじゃないよ!」



【神代家前】


京太郎(とりあえず、急いで来たのはいいけど、家デカすぎィ!こんなん考慮しとらんよォ!)ズーン

京太郎「インターホンも押すのためらうなあ……」

京太郎(このまま帰ってもいいかな、俺?これは場違い感半端ねえよ!)

京太郎(でも、そうしたら婆ちゃんの顔に泥を塗ることになるしなぁ)

京太郎(よし、深呼吸してからのヨッシャ!!行くぞ、オラアアアアア!)ピンポーン

小蒔「ふぁー。だれですかーこんなあさはやくー」ドターン

京太郎「あ、はい!自分、今日からここで働くことになっ……た…………」

小蒔「はー。はたらくんですかーすごいですねー」

京太郎「」

京太郎(何で……何で……!何で半裸なんですかああああああああああああああああ!そんな格好で外出るとかマジありえないですって!
というか、この人神代さんじゃないですか、やだもー!!!!!)

小蒔「?」

京太郎(ああもう!というか上の服しか着てないってどういうことですか、というか……)

京太郎(この人、下着をつけてない……!)

小蒔「えへへー」

京太郎(これは、ヤバい。息子の弾道が上がるのは置いとくとして……こんな光景を見られたら!
俺、死んでしまう。わかんねー、全てがわかんねー!)

小蒔「おー、こんなところにだきまくらー。おやすみなさーい」

京太郎(って迷ってる内に抱きつかれたーーーー!?胸が!胸が当たってるよ!
助けて、誰かああああ!助けてええええええええ!)

小蒔「…………すぅ」

京太郎「こうなったら無理矢理引き剥がして……っ!よし、後は俺の服を着せて他の人を呼ぼう!」ピンポーン

霞「ふんふむ……随分と面白いことになっているようね」

京太郎「……どこがですか!このお姫様にどういう教育をしているんですか!外に半裸で出てくるなんて危機感なさすぎですよ!」

霞「小蒔ちゃんは天然だから仕方ないのよ……いくら教えても何故か半裸にね」

京太郎「理由になってませんよ!」

霞「まあまあ。落ち着いて。焦るとろくな事にならないわよ」

京太郎「こんな状況になれば焦りもしますって……」

霞「ふふっ、見た目とは違って初心な男の子なのね」

霞「うん、気に入っちゃったわ」ジーッ

京太郎「へ?な、何がですか?」

霞「おねーさんね、あなたに興味が湧いてきたっていうことよ。須賀京太郎君」

京太郎「俺の名前をどうして……」

霞「そりゃあ今日から一緒に働く仲間の名前を覚えておくのは当然のことでしょう?
まあそれはいいとして……もしこの先ね、期会があったら私の部屋にいらっしゃい」

霞「あなたとはじっくりと語らいたいものね、京くんっ♪」

京太郎「って、何ですかそのあだ名はー!」

霞「可愛いでしょう?まあ、これも親愛の証ってことね」



小蒔父「君が須賀さんの代わりに入ってきた使用人だね?」

京太郎「はい」

小蒔父「私が神代家当主を務めている小蒔父だ。君が娘と須賀さんが言っていた……」

京太郎「須賀京太郎です。これから少しの間ですが、よろしくお願いしますっ!」

小蒔父「うむ。若いながらも礼儀正しい若者だ。君には期待しているよ。京太郎君」

小蒔父「さてと……君は初日で仕事もわからないだろう。
だから、お付きの巫女をつけよう。その者から仕事内容について詳しく聞くといい」

京太郎「そのお付きの巫女さんって誰ですか?」

小蒔父「それはだな……」

小蒔父「君には霞君をつけよう」

京太郎「えっ。その人って……」

霞「ふふっ。まさかこんなに早く機会が来るなんてね、京くんっ」

京太郎「うわあっ!いきなり後ろから抱きつかないでくださいよぉっ!」

霞「あらあら……また顔を真赤にして。本当に初心なんだから」

京太郎「余計なお世話です……まったく、石戸さんには振り回されっぱなしですよ……」

霞「ふーん、そういう事言っちゃうんだー京くんはー。いいのかなー、これからの仕事を教えるのは私なのよー」

京太郎「うぐぐ……すいませんでした、石戸さん……」

霞「霞」

京太郎「へ?」

霞「霞って呼んでくれなきゃ仕事教えない」

京太郎「……霞さん」ボソッ

霞「もっと大きな声でお願いねっ」

京太郎「わかりましたよ、霞さん!」

霞「よろしい、じゃあ行こうか、京くん。おねーさんが色々と手取り足取り教えてあげる」

京太郎(なんだろう……なぜだか素直に喜べない)


霞「~♪」

京太郎「鼻歌をするぐらいに嬉しかったんですか……」

霞「そりゃあね~。京くんとはこうやってゆっくり話したかったし。まあこの家の案内をする間、付き合ってもらうわよ」

京太郎「霞さんは俺のどこに興味を持ったんですか……。
自分で言うのもどうかと思いますけど俺なんかつまらない男だと思いますよ」

霞「あら、少なくとも私はそうは思わないわよ」

京太郎「ははっ。何を言うんですか。そういうことを言うと本気にしちゃいますよ?」

霞「なら、ここで本気になってみる?」ダキッ

京太郎「ちょ、か、霞さん!?」

霞「ふふっ、冗談よ。さすがに廊下ではねぇ」


京太郎「……意地悪なんですね、霞さんは」

霞「それは京くんも同じだと思うけど。小蒔ちゃんの時もそうだったじゃない」

京太郎「えっ!何でそのことを……!」

霞「小蒔ちゃんが言ってたのよ。服を貸してくれた恩人さんは優しいけれど意地悪さんだったって」

京太郎「あはは……仕方ないですよ。神代さん可愛かったですし」

霞「……女の子の前で他の子を可愛いっていうのは良くないわよ」

京太郎(女の子……?いや、そういうツッコミはいいとしてあっれー。俺、もしかして失言しちゃった?)

京太郎(どうしよう、ここはフォローしないと……!)

京太郎「いやいや、霞さんも可愛いと俺は思いますよ?」

霞「またまた……どうせ口だけでしょう?」ツンッ

京太郎「そんなことないですって。俺にとっては霞さんは可愛い女の子なんですから」テヲニギッ

霞「ちょ……っ!京くんってば……!」

京太郎「何度でも言いますよ、俺にとって霞さんは可愛い女の子です」

霞「か、顔が近いわ……!」

京太郎「どうですか、このまま……俺と――――」

京太郎「なーんて、冗談っすよ」

霞「…………えっ?」

京太郎「いや、霞さんに同じようにからかわれたんで仕返しの意味を込めてやってみたんですけど……」

霞「もうっ!京くんってば!」ツンツンツンッ

京太郎「はははっ。でも、霞さんが可愛い女の子だって言うのは本当ですよ?少なくとも、俺はそう思っているんで」

霞「……本当にもう。京くんは女たらしねっ」

霞(ちょっとよ。本当にちょっとよ?ちょっとだけドキドキしちゃったなんて言えない……)

京太郎「それにしても、口では霞さんに敵いませんね、全く」

霞「おねーさんに勝つなんて百年早いわよ、京くん」

京太郎「百年ですか、俺生きてるからなぁ……」

霞「案外生きてるかもしれないわよ。この世の中には超常の力が溢れているんだから」

京太郎「超常の、力ですか……じゃあ俺は対象外ですよ。凡人オブ凡人なんで」

霞「本当に、そう思ってる?」

京太郎「……ええ」

霞「ふんふむ……じゃあ私の思い違いかしら」

京太郎「ええ。霞さんは考えすぎですよ……」

霞「京くんが言うならそうなのかもしれないわね。ごめんなさいね、変なことを言って」

霞(考え過ぎかしらね……京くんから強い力への渇望――闇の匂いがしたなんて)

霞「変な空気になっちゃったからお詫びのおねーさんだきつきーっ!」

京太郎「わわっ!な、何するんですかーーーーー!!!」

霞「あらあら。こんなのスキンシップよ。普通よ、普通」

京太郎「む、胸が!胸があたってますっ!」

霞「当たってるんじゃないわ、当ててるのよ」ドヤッ

京太郎(とんでもない人が付き人になったものだな……でも、こうして仲良くなれたのは嬉しいかな)







――力――が――欲――か?






京太郎(…………この声は、何だ?)



――力――が――欲――か?



京太郎(――――気のせいなのかな)

霞「どうかしたの、京くん?おねーさんの魅力にやられちゃったりした?」

京太郎「…………」

霞「もう、京くんってばっ!」

京太郎「“なんでもないですよ、ちょっとボーっとしちゃってて”」

京太郎(嘘だ。声は少しだけど、聞こえた)

霞「ホントに~。どこか熱でもあるんじゃないのかしら?」

京太郎「“心配ご無用です。健康体ですよ、俺は”」

京太郎(何か、声が聞こえた。ハッキリと。俺に対してだけに)

京太郎(全部は聞き取れなかったけど……。“力”ってのだけは確かに聞こえた)

京太郎(その声を辿ると、現状を変える一歩に繋がるかもしれない)

京太郎(だから、俺は嘘をつく。嘘をつくことで。力を得る手がかりをここで探ることで……取り戻す。こんなはずじゃなかった現実を)

京太郎(ああ、そうだ。諦める必要なんてないんだ。俺は、麻雀で一位になれる。力があれば、倒せる)

京太郎(引き返す道はいらない。このまま力を得られない人生なんて、ただ生きている人生なんて……緩やかな死と同じだ)

京太郎(才能が俺を選ばないなら。奇跡が起こらないなら――――無理矢理にでも奪い取りにいくしかない)

京太郎(強くなったら、部長も、和も、優希も…………咲も)



京太郎(麻雀で壊せるよなぁ?ああ、それはさいっっっっっこうに……気持ちいいんだろうなぁ)



京太郎(…………まだだ。俺は、俺は……!その快感を味わうことを躊躇っている。
あのひだまりが大切で、失いたくなくて……そこに俺がいることに気持ちよさを感じる心が残っている)

京太郎(割り切れないなら……力を求めて完全に狂うしかない。この声の源を探すことで俺は強くなる)

京太郎(ごめんなさい。霞さん……俺は貴方を騙すことになる)

京太郎(それでも、貴方や神代さんと仲良くしたいという気持ちだけは……嘘じゃない)

京太郎(どれだけ、強くなれば…………あの頃の俺を取り戻せるんだろう?)



京太郎「っと家の案内もここで最後ですね」

霞「台所ね。もう十二時も過ぎたしお昼にしましょうか」

京太郎「そうですね。ご飯はどうしますか?」

霞「うーん……どうしようかしら?」


初美「むむっ。なんとなくですがラブ臭が!そんなイベントここではさせませんよー」

霞「あら、はっちゃん」

京太郎「うわっ、相変わらずの痴女巫女だぁ!」

初美「痴女とは失礼なっ!これが私の正装ですよー」

京太郎(いや、それが正装なのはおかしいだろ……)

霞「それよりもはっちゃん、どうしてここに?」

初美「姫様を助けた人がどんな人なのかしっかりと見たくて見に来たのですよー」

初美「ふむふむ、なかなかの好青年なのですよー」ジーッ

京太郎「いやいや、数秒見ただけで判断っておかしいでしょ」

初美「こうみえても私は人を見る目はあるんですよー」

京太郎「…………体つきは育たないのに」ボソッ

初美「むむっ……何か私を傷つける言葉を言いましたね!」

京太郎「気のせいですよ、気のせいです。わーはっちゃんラブリー!」

初美「えへへ、それほどでもないですよー。でも褒められると悪い気はしませんねー」

京太郎(この人チョロいなぁ……)アセダラーリ

霞「……私よりも京くんははっちゃんを選ぶのね!」

京太郎「えっ」

霞「いいもん、いいもん。私には小蒔ちゃんがいるもん」

初美「あちゃー……」

京太郎「お、落ち着きましょう。はっちゃんも可愛いですけど霞さんも可愛いですよ?」

霞「嘘よ!最後にクエスチョンマークを入れたでしょう!やっぱり……やっぱりっ!」

霞「京くんは小さい女の子が好きなのよー!」ダダダダダダダッ

京太郎「」

初美「」

京初(何なんだろう、この展開は)

京太郎「と、とりあえず、えーっと」

初美「初美です。薄墨初美、十七歳ですっ」キラッ

京太郎「おいおい」

初美「むーっ!信じていませんね、これは教育が必要ですよー」

京太郎「だって、ねぇ……」

初美「そこまで言うなら証明してみせましょう!勝負です、勝負ですよー!」

京太郎「勝負ですか……どんなジャンルで戦うんですか?」

初美「ちょうどいいタイミングで今はお昼!ここは料理対決なのですよー」

京太郎「突然ですね……まあいいですけどお題はどうします?」

初美「お題はですねー……」

初美「チキン南蛮タルタルソースがけですよー!」

京太郎「まあ、作ったことはありますし打倒じゃないんですかね……審査員的な人はだれを選ぶんですか?」

初美「それはですねー……」

初美「審査員はこの人達ですよー!」

衣「きょーたろー!会いたかったぞーー!!」

ハギヨシ「お久しぶりです、須賀君。元気でしたか」

春「…………何で私が」ポリポリ

京太郎「うわっ!またどうして、衣さん達がここにいるんですか?」

ハギヨシ「それはですね、言ってしまえばちょっとした神頼みをしにこの神代家にお邪魔していたんですよ。
この土地は神聖な空気で包まれていますから、これから先の行く末が光ある様にということです」

京太郎「そうなんですか。いや、こんな辺境で友人に会えるなんて嬉しいですよ」

ハギヨシ「私もです。須賀君は私の初めての友人なので感慨深いです」

衣「むーっ!衣を無視するなーっ!」

京太郎「はいはい、衣さん、おとなしくしていたらあめ玉あげるんで黙っていてくださいねー」

衣「うむ、分かった!きょーたろーは優しいな!」

京太郎(天江衣……咲と同じくらい才能がある奴……ハギヨシさんが言うにはガキの頃から幽閉されて自由もなかったって聞かされた。
才能が、人生を変えたんだ)

衣「む?どうした?ふふん、衣の偉大さに怖気づいたか?」

京太郎(まだ、俺は咲達以外にも憎しみを放つくらい強く意志が凝り固まっていない。
というよりも、ハギヨシさんが世話を焼いているっていうのもあると思うけど)

衣「その、何というかだな……そんなに見つめられると照れるというか……」

京太郎(俺がこの先、更なる力を得たとしよう。さっきの声を取り込んだら……きっと衣さんのことも憎むかもしれない)

衣「そうか、きょーたろーはそんなにも衣のことが好きだというのか?でもだぞ!そういうのはちゃんとした過程を踏んでからなんだぞ!」

京太郎(うーん、というか衣さんを見ているとどうも憎いとか泣かすとかいう気分がなくなっていくんだよなぁ……。
衣さん、俺にすごく懐いているし)

衣「で、でも!きょーたろーがどうしてもって言うなら……ほんっっっっっっとうにどうしてもだぞ!
それだったら、衣は……」

京太郎(そもそも、どうして俺に懐いたんだろう?ハギヨシさんと友達になって色々と料理を教えてもらう過程で衣さんとも話したからかな?
手料理も振舞ったしナデナデもしたし)

衣「衣は……きょーたろーだったら、いいぞ?」

京太郎「はいはい、衣さんはいい子ですねー」

衣「ふぇっ!?もう、衣を子供扱いするなーーーーーっ!」

京太郎「まあまあ。衣さんの頭は撫でてて気持ちいいですから」ニッコリ

衣「むぅ……それだったら仕方ない。特別に衣の頭をなでることを許可してやるっ!」ドドーン

京太郎(うん、グチグチ考えるのはやめよう。というか衣さんとハギヨシさんはいいとして、もう一人は……)

春「……」ポリポリ

京太郎(我関せずだよ、この人っ!)

春「……何?」

京太郎「い、いや。美味しそうなもの食べてるなーって」

春「美味しそう?」ガバッ

京太郎「いや、あんまり見たこと無いものだから珍しくて……」

春「そう……なら、食べてみて」ヒョイッ

京太郎「うわっ!」

春「どう?美味しい?」

京太郎「……美味しい。食べやすいのに風味があっていいな、これ」

春「それが自慢……」ニコッ

初美「はるるが笑ってる……この男、まさか審査員をたらしこむことで私に勝とうというのですかー!」

春「黒糖好きに悪い人はいない」

京太郎「そこまで断言されるとこっちも困るんだけどな……」

春「大丈夫、私が保証する。黒糖は悪い人を見極めるから」

京太郎(ちょっとこの子は頭がオカシイな)

春「そういえばまだ自己紹介をしていなかった。私、滝見春。貴方と同じ、高校1年生。」

京太郎「あ、これはご丁寧に。須賀京太郎です、俺も高校1年生です。今日から使用人としてお世話になります」

春「うん、わかった。困ったことがあったら聞くといい}ドヤッ

京太郎(無駄にドヤ顔をする必要はあったのだろうか)アセダラーリ

春「む。何か変なことを考えてない?」

京太郎「いやいや。滝見はかわいいなーって考えただけだから」

春「本当のことを言っても私の目はごまかせない」ズズイッ

京太郎(案外図々しいな、この子っ!)

春「まあいい。須賀、期待しているぞ。私の舌を満足させる料理をしっかり作るんだぞ」

京太郎「言われなくてもそのつもりです。まあ、やれるだけやってみますよ」

初美「むむむっ。はるるまで手懐けるとは……須賀京太郎っ!恐ろしい子!」

衣「むーーーーーーっ!だから衣を無視するなーっ!きょーたろーっ!」

京太郎「ああ、ごめんなさい。はい、特別に飴玉二つあげますからもう少し待っていてくださいね」

衣「うむっ、大義なり!早く済ませて衣のタルタルを作るんだぞっ!」

京太郎「はいはい。もう少ししたら作り始めるんで」グルリッ

京太郎「さてと、薄墨さんでしたよね?料理対決、始めましょうか」ニッコリ

初美「やっと、私の方に目が向きましたかー!いいでしょう、その余裕……粉々に打ち砕いてくれましょう!」

京太郎「で、料理対決についてなんですがどのように進めるんですか」

初美「そんなの簡単です。審査員に十点満点で点数をつけてもらって総合点数が多い方が勝ちなのですよー」

京太郎「わかりました。では、始めましょうか!」

初美「ふふん、私の料理スピリッツに跪くがいいですよー!」

衣「どうでもいいから早く食べさせろー!」

ハギヨシ「衣様。もう少しお待ちいただければ出来上がるのでどうか大人しくお座りください」

春(正直、どうでもいい……)ポリポリ


京太郎「さて、作るとしますか!」
初美「負けないですよー!」


京太郎「できたっ!」
初美「完璧ですよー!」


初美「ふふーん!思い知ったですかー!」
京太郎「なん…だと…」

京太郎陣営。


1点
ハギヨシ
3点
はるる
10点


初美陣営


9点
ハギヨシ
9点
はるる
8点




京太郎総合点数――14点

初美総合点数――26点

京太郎「……っ!なぜだ……俺は今回はパーフェクトに作ったはず……!」

衣「きょーたろーっ!料理ができるのを待っている間にこいつから聞いたぞっ!
お前はまた性懲りもなく女の子を言葉巧みに自分の領域へと落としたそうだなっ!」

京太郎「……えっ?そんなことをした覚えはないんですけど」

衣「見知らぬ女に自分の服を貸してアイスまで食べさせあったらしいじゃないか!
衣だってまだやってもらってないのにっ!衣は怒ったそっ!」

京太郎「いや、別に衣さんには関係ないと思いますが……というか何喋ってるんですか、滝見さんっ!」

春「ちょっとした情報の共有。この世界じゃよくあること」

京太郎「ありませんよ!衣さんが変な誤解をしているじゃないですか!
というか神代さんも何おかしなことを喋ってたんですかぁ!」」

衣「衣が誤解しているだとーっ!それは認めんぞ!」

京太郎(うわああああああああああああ!また、ややこしいパターンに入ってしまった……!)

衣「というかだな。飽きたらず、半裸の巫女と抱き合ったり、お姉さん系の巫女と手を繋いでイチャイチャしたり……!
衣というものがありながらそのふらふらした態度は何だ!」

春「見ていておもしろかった。黒糖の肴になった」

京太郎「もうやめてください、滝見さーーーーーーんっっっ!」

ハギヨシ「……すいません、須賀君。料理自体は大変美味しかったのですが衣様が低い点数をつけろと申しまして……
私としても逆らえませんでした」

春「ちなみに、私は満点。とても美味しかった」

京太郎「……満点は嬉しいですけど勝てなきゃ意味がないですよ」

春「そんなことない。少なくとも、私の好感度はグーンと上がった。おめでとう」

京太郎「それは嬉しいですけど今の状況では焼け石に水ですよ!」

春「私の好感度は焼け石をも冷やす」

京太郎「自分で言うのもどうかと思いますよ……」

春「これでも、私の好感度は上げるのには大変。それはもう、鹿児島から北海道まで自転車で旅をするくらいに」

京太郎「どんだけ上がりにくいんですか、滝見さんの好感度っ!」

春「まあ落ち着いて。これからは私のご飯を作ればこの先の未来は安泰」

京太郎「滝見さんの未来がですけどねぇ!」

春「こんな可愛い女の子の面倒をずっと見れるってとても幸せ」

京太郎「どこまでが冗談でどこからが本気かがわからない……!」

春「須賀、現実をきちんと見る。そして、これからは私のご飯を作る」

京太郎「なんでさっ!」

春「そこの金髪ロリよりは私の方が胸もあるし成長もする。これはお得」

京太郎「そもそも、俺はロリコンじゃないですよ!?」

春「ぱんぱかぱーん。須賀京太郎は滝見京太郎に進化した」

京太郎「いつの間にかに結婚!?」

春「これは冗談。というか須賀と結婚したら闇討ちされそう」

京太郎「それはないっすよ。俺を本気で好きな人なんている訳ないですって」

春「……ニブチン。これは姫様と霞が報われない」ボソッ

京太郎「何か言いました?」

春「いいや。とりあえず、一つだけ言わせて。須賀の認識は間違っている。少なくとも、私は須賀を好意的に見ているよ」

京太郎「またまたー、それも冗談なんですよね」

春「だったら、確かめてみる?」

京太郎「えっ?」

春「というのは少し冗談。だけど、須賀は自分を低く見過ぎ。須賀をきちんと見てくれている人はいるよ。
例えば、そこの金髪ロリとか」

衣「さっきから黙って聞いていれば!きょーたろーは衣のだぞ!」

春「ほらこの通り」

京太郎「この通りの意味がよくわかりませんが……一応肝に銘じときます」

春「その方がいい。そう言えばすっかり忘れていたけれど」

初美「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!私をむしするなーーーーですよーーーーーーーーーー!」

京太郎「……そういえばいましたね」

春「残念なことに。お邪魔ロリ虫が一匹」

初美「お邪魔ロリ虫とはなんですか!そこの子も同じようなものでしょう!」

衣「衣を一緒にするなっ!衣はまだ成長するぞ!」

京太郎(どっちもどっちだろってのは言ってはいけないんだろうなあ……)

初美「と・も・か・く!勝負は私の勝ちですよー!」

京太郎「まあ、それは仕方ないですね……負けは負けです」

春「実質負けていたようなものだけどね」ボソッ

初美「はるるは後で教育ですよー。ということで須賀君は午後は私がみっちり教育するのですよー!」

京太郎「別にいいですけど、霞さんとかほったらかしでいいんですか?」

初美「ほっときましょう。時間が経てばひょっこり現れますよー」

初美「ということで午後の行動を決めるのですよー!何か意見はありますかー」

京太郎「俺は……」



京太郎「ということでここでお別れですね、衣さん」

衣「仕方ないな……いつまでもこの家にとどまる訳にもいかんしな。
だけど、この近くにトーカの別荘があって衣はいつもそこにいるから会いたくなったらまた会えるぞ」

京太郎「へぇ……ちょっとした旅行みたいなものでこっちには来てるんですか?」

衣「そうだ!だから、きょーたろーっ!寂しくなったらいつでも来てもいいんだからな!」

京太郎「……その心配は無さそうですけどね」チラッ

初美「なんですかー!ハッ、まさか……私に惚れちゃったりしたのですかー!?」

京太郎「それはないです。地球が滅びてもありえません」

初美「そこまで、ひどく言うこと無いじゃないですかー!」プンスカ

京太郎(こんな騒がしいちびっ子が一人いるんだからなぁ……)

衣「ともかくだ、衣に会いたかったら遊びに来いってことだっ!」


ハギヨシ「須賀君、少しお時間はよろしいでしょうか」

京太郎「はい、大丈夫ですけど、何かありましたか?」

ハギヨシ「率直に申し上げますと、清澄の皆様がここを嗅ぎつける可能性があります」

京太郎「……!」

ハギヨシ「須賀君が鹿児島にいるという事実は今知っているのは貴方の両親と私、衣様以外はいません。
今日ここでお会いしたのも偶然でしたので」

京太郎「そう、ですか」

ハギヨシ「衣様には私から須賀君が鹿児島にいることを黙っておくようにとは伝えておきますが……」

京太郎「いつバレるか、わからない。そういうことですよね」

ハギヨシ「はい、衣様がつい口を滑らせて透華様方に喋る可能性もなきにしもあらずです」

京太郎「アイツらが来ることだけは……駄目です。染谷先輩ならまだ大丈夫です。
後の四人が来たら、俺は、俺を抑えきる自信がないんすよ……」

京太郎「壊して、犯して、潰して、最後には消して……悪くないのに、アイツらは悪くないのに」」

ハギヨシ「須賀君……」

京太郎「ごめんなさい、こういうことを吐けるのがハギヨシさんしかいないんです……。
情けないですよね、俺は。アイツらを憎みきれない、まだやり直せるかもしれないなんて思ってるんですから」

ハギヨシ「それが普通だと思いますよ。私とて貴方の立場に立てばどうなるかは予想がつきません。
ただ、これだけは覚えておいてください」

ハギヨシ「私は、他の誰が貴方を恨んでも、見捨てても。私は“絶対”に見捨てません」

ハギヨシ「初めてできた友達を見捨てる屑にはなりたくないのですよ、須賀君。だから、貴方はどんな時でも一人ではありません」

京太郎「……嬉しいな、やっぱ、ハギヨシさんが友達でいてくれてよかった。貴方の言葉で……俺は、まだ境界線を踏み越えないでいられる。」

ハギヨシ「私は正しく強くなろうとすることには意味があるって信じています。そうすることが強さだって昔、貴方は私にいいましたね」

京太郎「そうでしたね。だけど……」

京太郎「無理でした」

ハギヨシ「須賀君……?」

京太郎「正しく強くなろうとしている“俺”はもういないんです。
もうどこにもいないんですよ――ハギヨシさん」

ハギヨシ「いますよ、まだ貴方はここにいる」

京太郎「努力をしても、経験を積んでも……勝てないのなら――――」



京太郎「――――無理矢理“奇跡”を奪い取るしかないんですよ。どんな手を使ってでも」



ハギヨシ「それでも私は願い続けます。須賀君が本来持っていたはずの日常が戻ることを」

京太郎「俺の日常はもう粉々に壊れているのにですか?」

ハギヨシ「ええ、この体がある限りは私はそのように動きますよ」

京太郎「……」

ハギヨシ「なに、その過程で突然不幸な事故にあって“いなくなった”としてもすぐに代わりの執事がやってきますよ」

京太郎「ハギヨシさんこそ人のこと言えないじゃないですか。自分のことが勘定に入っていませんよ?」

ハギヨシ「時間が止まればいいとさえ思ったあのひだまりが私にはとても眩しくて大切だったものですから。
その大切なものを取り戻す為に、躊躇いなんてありません」

京太郎「そうは言いますけどね、俺はこうも思うんです。そんな簡単に戻ってくるものに価値なんてあるのかって」

京太郎「俺はアイツらとの関係を壊しました。修復するにはすごく時間がかかると思います。
その修復した結果が前と同じになるとは俺には思えません」

ハギヨシ「……そうですね。ですが、それでも抗ってみるのも一興ってことですよ」

京太郎「祈れば叶う、泣けば奇跡が舞い降りるなんて物語の中だけです」

ハギヨシ「いいじゃないですか、ご都合主義。誰だって、好きなように生きてみたいって思ってますよ?」

京太郎「だったら、何で……俺には力がなかったんですか……力さえあれば、アイツらを見返せたのにっ!」

京太郎「女の影でコソコソ雑用するのが嫌で、俺は前に出て……最終的には全部壊しちまった俺にはもう、祈る気も起きませんよ」

ハギヨシ「……だけど祈らずに入られませんよ、苦しんでいる貴方を見ている私からすると」