やえ(今日は私の誕生日。出来る者の立ち振舞いとは?)

やえ(私程ならどんな状況にも対応出来るけど、決して受け身でいてはならない)

やえ(既にプランは完璧。京太郎とのデートを楽しみ、誕生日を最高のものにする)

やえ(それにしても、京太郎はどんなプレゼントを用意してくれるだろ……♪)

やえ(用意してない、なんてことはない筈……さりげなく、この日が私の誕生日だってこと、アピールしておいたんだから)



初瀬「そういやさー、さっき部室に小走先輩が来てたよ」

京太郎「卒業したのに、わざわざ? まあ、夜から遊ぶ約束してるからな」

初瀬「……デートってことね」じとー

京太郎「やっぱりそうなるかな?」てれてれ

初瀬「はーあ、面白くないなあ。浮かれちゃってさ」

京太郎「小走先輩とデートするんだぜ。浮かれないわけがない!」ごごごご

初瀬「……ま、いいや。小走先輩誕生日だしね。あんまり間抜けな面見せないようにしなよ」

京太郎「……初瀬」

初瀬「ん?」

京太郎「小走先輩が、何だって?」

初瀬「誕生日。え、知らなかった?」

京太郎「何だと……」

京太郎「やべえ……やべえ……」

初瀬「知らなかったっけ?」

京太郎「いや、知ってた……小走先輩、自分で言ってたし。俺が間抜けだったよ。今日がその日だって気付かなかった」

京太郎「マジでやばい。どうしよう、初瀬」

初瀬「そうだねー……」

初瀬「……」

初瀬「いっそ、そのまま忘れちゃえばいいんじゃない?」

初瀬「……小走先輩も解ってくれるよ。京太郎」

初瀬(何言ってんだろなー私)

京太郎「いや、そういうわけにはいかない」

京太郎「やっぱり、今日に俺と予定を入れてくれたってのは、小走先輩は楽しみにしてんだよ」

京太郎「欠片も失望されたくないんだ。勝手だけど、何か用意しないと……」

初瀬(やっぱり、ね……本当、嫌だ)

初瀬(憧と疎遠になって、京太郎に一番近くなったのは私なのに)

初瀬(今日、先輩と何かある筈……ないよね? 急接近したりなんかしないよね?)

初瀬(祈るよ。最後に京太郎をもらうのは私だって)

初瀬「じゃあ、今から一緒にすぐ選ぼうよ。小走先輩の気に入りそうなの、私解るし」

京太郎「おお……ありがとう初瀬!」

京太郎「じゃ、急ごうぜ!」だっ

初瀬「……そうだね!」だっ

──

やえ(待ち合わせ時間まであと3分……京太郎らしくないわね。でも)

やえ(私も少し、緊張してきたか。やっぱり好きな人と会うのは、ドキドキして仕方ないなあ……)


ぽんっ

京太郎「小走先輩っ……♪」


やえ「っ……!!」ぞくぞくぞくっ

やえ「京太郎……っ! 背後から声を掛けないでくれない!? びっくりしたあ……っ」にやにや

やえ(はっ)

やえ(いけない。京太郎の突然の登場とその声で、スマートさが崩れてしまった)

やえ(気を取り直して)


やえ「じゃあ、行こう。京太郎」ぎゅっ

京太郎「!!?」


京太郎(こっ、これは……手を繋がれてるのか……!?)

やえ「……」にこっ

京太郎「っ」

京太郎(なんだこれ。すげえどきどきする。小走先輩……!)

やえ(成功した、か……)

やえ(可愛いな、京太郎……)

やえ(死ぬほど恥ずかしいけど、やってみるものね)

やえ「京太郎の手、あたたかいね……」ぎゅー

京太郎「そ、そうですか? 先輩の手が冷たいからじゃないですか?」

やえ「知ってる? 手が冷たい人は心があたたかいんだって」

京太郎「えー? 本当ですか? 先輩は確かにそうですけど」

やえ「ふふっ」

京太郎(……)ぽー


ぱっ


やえ「京太郎……?」

やえ(手、離されちゃった……)

京太郎「今、渡しておきたいと思います」ごそごそ

京太郎「目、閉じててくださいね」

やえ(!! まさか──)

京太郎「動かないでくださいよ?」そー


しゃら……


京太郎「ありがとうございます。目……開けていいですよ」

やえ「ん……」どきどき

やえ「これは……」

京太郎「気に入るか、解んないですけど」

京太郎「似合うだろうなって思って、差し上げました」


王冠に小さなフェザーがジョイントされた、金色のペンダント。


やえ「~~っ!」

やえ「綺麗……! 嬉しいっ! ありがとう京太郎!!」にこっ

京太郎「……いやいや」にこにこ

京太郎「めちゃくちゃ似合ってますよ」

やえ「ふっ……当然! 京太郎が選んでくれたんだから!」

やえ(一生大切にする……♪)

京太郎「誕生日おめでとうございます、小走先輩」

京太郎「大学でも……頑張ってくださいね」

やえ「ありがとう、京太郎……」

やえ「ねえ……」ずっ

京太郎「は、はい!?」

京太郎(ち、近いっ!)

やえ「これからは、会える時間がぐんと減るわけじゃない?」

京太郎「そう……ですね」

やえ「こうして京太郎と過ごしてきた時間を思い返すと」

やえ「女の子が好きって感じの京太郎ばかり浮かんでくるな」

京太郎「うぇっ……」

やえ「可愛い子や、胸の大きな人を見かけたら目で追わずにいられない。たまに話し掛けちゃったりする軽薄な男?」

京太郎「な、なんか散々言われてますけど。酷くないすか?」

やえ「ふっ……まったく……」


やえ(そんな京太郎も……好きになってる)

やえ(私故の余裕と言いたいけど、ベタ惚れしてるだけか)

やえ(……繋いでおきたい)


やえ「初瀬がいるから、好き勝手は出来ないだろーけど」

やえ「やっぱり私が居ないと、京太郎はどうなってるか解らないんだ」

やえ(どこの女狐とも知らん奴に、京太郎を渡せないし)

やえ「だから……」すっ


京太郎「……!!」


やえ「ん……」すっ

やえ「今日はとびっきりの思い出の日にしよう、京太郎♪」

京太郎(頬に、先輩の唇が……)くらくら

京太郎(嘘だろ……)くらくら

やえ「おーい、京太郎?」ふりふり

京太郎「……はっ」ぱちくり

京太郎「せ、せんぱい!? い、いま……」

やえ「っ……いいでしょ!」かああ

やえ「とにかく、行こう!」ぐいっ

京太郎「は、はいっ……」

京太郎(先輩の手、やっぱり冷たいな)

京太郎(でもそんな手の感触も)

京太郎「好きだな……」ぼそっ

やえ「!!?」

やえ「ななななな、なんか言った!!!??」

京太郎「? いや、何も?」

やえ「そ、そう……ならいいんだけど!」

やえ(ま、まったく……)

やえ(ちょっとフライングしたお陰……かな?)

やえ(……)


やえ(そう、今日、私は京太郎に気持ちを伝える)

やえ(京太郎にはペースを崩されてばかりだけど、スマートに決めてやるんだから)

やえ(そして……いつか……二人で……)

やえ(白い家を建てて、子供はたくさん居て……って気が早いかな)

やえ(でも必ず、そうなるんだからね、京太郎♪)にこっ



カンッ