白望「ダル……」

京太郎「寝起きの第一声がそれですか」

白望「んん、京太郎おはよう」

すっかり白望の保護者ぷりが板についてきた京太郎
白望の起床の手伝いをするのも彼の仕事の一つだ

白望「今日も京太郎が作ってくれたご飯美味しい……」

京太郎「当たり前です!俺も伊達に先輩のお世話をしてませんよ」

京太郎「昨日も先輩の家に一緒に帰って、麻雀の練習したり勉強見てもらったりした後、朝食の仕込みをして」

京太郎「そのあと……そのあと……あれ?」


「俺、いつ自分の家に帰ったんだ?」


京太郎「大体、俺昨日学校行ったのか?授業の内容も部活の活動も、何も、思い、だ」

白望「京太郎」

京太郎「えっ、ああ、先輩何ですか?そんなしかめっ面して」

白望「ずっと話しかけても上の空で……心配になったから……」

京太郎「……先輩に心配されるなんて、いつもと逆になっちゃってますね。ここは早く学校行って賽さんやシロさんに……」

白望「学校なんてもういいんだよ」

白望は立ち上がり座った京太郎のそばに近づく
そして京太郎の頭を手に取り、まるで愛し子のように胸に抱きしめる

白望「京太郎はもう頑張らなくてもいいから、他の女の子に会わなくていいから」

京太郎「白望先輩、これ先輩の柔らかいのが当たって……でも、これ前にもされた記憶が……」

京太郎「それも一度じゃない、何度も何度もこうやって抱きかかえられて……」

京太郎「他のことは思い出せないのに、これだけは、先輩のぬくもりだけは……はっきり……して」

白望「それももうすぐどうでもよくなる。今はいつもの私みたいに、京太郎もダルくなればいい」

京太郎「せん……ぱ…………」

そのまま意識を失った京太郎を白望は優しく見守りながら床に寝かせる
そして近くの窓から外の風景を見る


そこには怪しく光り輝く不気味な七色の空間が広がっていた


白望の家は四方を崖のように切りたれ、スプーンに削りとられたアイスクリームのような形で異様な空間にポツリと浮かんでいた
周囲の空間には地平線も水平線も存在せず、白望の家以外の物体も生命も存在しなかった


果たして白望の家が世界から切り離されたのか、それとも白望の家以外の世界が消え去った結果なのかは今となってはわからない
しかしこの現象が小瀬川白望という少女の能力の暴走によるものだということは断言出来るだろう


「迷い家は迷い込んだ者に宝を与える……」
「でもそんなこともうどうだっていい」
「私は、もう何者にも変えられない宝物をもらった」
「この宝は、誰にも渡さない」


まあ、そんなことは微睡みに落ちた金髪の少年を光のない瞳で、しかし優しく愛おしそうに見つめる少女には関係ないことなのだろう