久「須、賀、くん♪」ひょいっ

京太郎「うぇっ……部長、どうしたんすか、テンション高いっすね」

久「そう見える? 実は、良いことがあったのよね」

京太郎「へえ……どんな?」

久「これを見なさい、須賀くん」すっ

京太郎「これは……テーマパークのチケット?」

久「それが二枚。どういう意味か解るわね?」

チケットが、胸に押し付けられる。

京太郎「は、はい……」

久「私と二人で行きましょう♪」

京太郎「はぁ……」

久「?」

京太郎「ノった方がいいんすか?」

久「もしかして、からかってるって思ってる?」

京太郎「そりゃそうですよ。俺が誘われる理由無いじゃないですか」

久「でも私は、須賀くんと遊びに行きたいなーって♪」

京太郎「」にへらっ

京太郎「まったく、勘弁してくださいよ。それじゃ……」

ぎゅっ

袖を掴まれ、背中に彼女を感じる。
彼女の指が、俺の手に触れる。
チケットを握らされているのに気が付いた。

久「じゃあ、日曜日に……詳細は後で電話するわね」

京太郎「えっ、ちょ……」

たたっ

小走りで去っていく彼女を追うことは出来なかった。



久(やった♪ 誘っちゃった♪)

久(日曜日、どんな服を着ていこうかしら……♪)

ずっ

久「……和」

和「不思議ですか? 部活は終わった。みんなは帰った。後片付けを任された須賀くん以外は」

和「だから和が此処に居る筈が無いのに、何故。そう訊きたげな顔ですね?」

和「ですが、私から訊かせて下さい。生徒会で仕事をしている筈の部長が、何故部室から出てきたんですか?」

久「……よく喋るのね、和。まあ、そうね、ちょっと須賀くんに用があって」

和「どのような?」

久「一つ答えたんだから、次は和が私の疑問に答えるべきじゃない?」

和「……そうですね」

久「和。どうして此処に?」

和「……」

久「和?」

和「見えていますよ、ポケットから」すっ

久「!」

和「何かのチケットみたいですね。それ、何ですか?」

久「チケットはチケットでしょ? それより和、どうして」

だっ!

久「!?」

私の隣を走り抜け、和は階段を上がっていく。
咄嗟のことに反応が遅れたが、とにかく追わなくてはならない。



京太郎(嘘、だろ……?)

京太郎(まさかこれ、デートのお誘いというやつじゃ!?)

京太郎(やべえ……マジで死にそうなくらい嬉しいかもしれねー……)

京太郎(はは、部長のこと、あまり意識してなかったのに……)

京太郎(いや、出来なかったというべきか。何ていうか、遠い感じがして)

京太郎(でもこれは嘘じゃない……)

京太郎(二人きりで、日曜日を、テーマパークで過ごす。あの、部長と)

入部してから今日までの、部長とのやり取りが脳裏に浮かぶ。

京太郎(俺は……)


がらっ


京太郎「!」

京太郎「あれ、和か? どうしたんだよ、忘れ物か?」

和「そうですね。忘れ物です」ぜえぜえ

そう言いながらも、しばらく和はこちらを見つめ続けていた。

京太郎「な、なんだよ。てれるな……」

和「それ」すっ

和が見ていたのは、握り締めたままのチケットのほうだということに気付いた。

京太郎「あ、ああ。これか? 気になっちゃうか? 聞いて驚けー……」


久「忘れ物は、見つかった?」はあはあ


和「……」

京太郎「ぶ、部長!」がたっ

久「ふふ、須賀くんは可愛いなあ……♪」

京太郎「うぇっ!?」

久(いけないいけない。つい正直に口をついちゃった)

和「あっ、ありました。このペンを、此処に置き忘れてしまったんです」じゃらっ

和「それでは須賀くん、失礼しました。部長、行きましょう」

久「……ええ、そうね。須賀くん」

京太郎「はっ、はい!」

久「またね……♪」ふりふり

京太郎「はい!!」びしっ



和「……」いらいら

和「部長は、須賀くんとお出掛けするようですね」

久「そうね。ま、デートともいうわね」

和「好きなんですか?」

久「随分と直球ね。まあ……隠すこともないかな」

久「好きよ。須賀くんのこと」

和「へえ……」

久「……」

和「私は、嫌いですよ」

久「あら、あまり想い人の悪口を聞くのは」

和「貴女のことが」

久「……」

久「……そう」

和「貴女はまるで解っていません」

和「須賀くんの魅力を、何一つ貴女は解っていません」

久「心外ね。それに極端だわ。誰にだって、須賀くんの魅力を挙げることが出来ると思うけど?」

和「私のほうが多く挙げられます!」

久「は? ……ちょ、ちょっと。会話になってないわよ? 和、貴女らしくない」

和「部長、貴女はいつもそうでしたね」

和「気に入ったものは、何が何でも手に入れたくて仕方がなくて」

和「須賀くん……須賀くんでさえも!!」

和「部長、貴女は獣です」

和「勝手すぎます!」

和「ちょっと前まで、須賀くんのことをぞんざいに扱って」

和「勝手に須賀くんに惚れて、一人で態度を変えて!」

和「そうやって自分勝手に振り回して!」

久「和」

和「許しません……絶対許しません……」

久「和。これで涙を拭きなさい」すっ

和「馬鹿にしないでくださいっ……!」ぽろぽろ

和「受け取りませんっ。貴女のハンカチなんか……うっ」ぽろぽろ

久「ほらほら」ごしごし

和「っ……やめてくださいっ。やめ……」

久「……」

ばごっ!

和「うっ……ぐっ……!?」


どしゃっ


崩れ落ちる和を見下ろす。
痕は残らない筈だ。

久「貴女はまた、獣の遣り口だと言うでしょうけど」

久「知ったことじゃないわ。気に喰わないものは、取り除きたくなるタイプなの」

久「ごめんね、和。本当にごめんなさい……」

久「次、何か邪魔をしたら、こんなものじゃ済まないわ」



和「……う……ううう……」ごほごほ

和(悔しい……)

和(私は、あんな人に、須賀くんを持って行かれてしまうんですか……?)

和(悔しい……)

和(悔しいのに、足が震えて、動きません……)

和(須賀くんが欲しいのに……)

和(……)


翌日

和「須賀くんっ♪」だきっ

京太郎「!!!???」

まこ「の、のどか……?」ぐらっ

優希「のののののどちゃん!!?? なな、何してるんだじぇええ!? いきなり!!! どうしちゃったんだ!!??」

咲「」ぶくぶく

和「須賀くん♪須賀くん♪須賀くん♪」すりすり

京太郎(……数秒意識飛んでた)

京太郎「ごほ、ごほん!」

和「す・が・くん♪」

耳元に、和の唇が寄せられる。

和「京太郎くん……って呼んでもいいですか?」ふぅーっ

京太郎「」

京太郎「はっ……! のどか!? 一体何してっ……離れっ、離れてくれ!」あたふた

和「離しません……♪」

和「聞いてくれますか? 私の気持ちを」

京太郎「きく! きくよ……! なんだってきく! とりあえず離れてくんない……!?」しゅ~

和「落ち着いて下さい、京太郎くん♪」

京太郎「落ち着くったって……!?」


数分後

京太郎(結局、和は身体をはなした)

京太郎(しかし依然、近距離で、俺の目をじっと見つめている)

京太郎(火が吹きそうなのを堪えて、なんとか和に向き合っている……)

和「ふふ、カッコいいです♪」

京太郎「そう……?」くしゃっ

京太郎(和の言葉を聞く度に、心がぽわぽわして、死にそうな気分だ……)

和「驚かないで聞いて下さいね」

京太郎「ああ……」ごくり


和「私、京太郎くんのこと、好きです」

京太郎「──……」


京太郎「俺は、和を追って、入部した」

京太郎「憧れたよ。お前、他の奴と全然違うしな」

京太郎「この気持ちはずっと、恋だと思ってた」

京太郎「けど、そうじゃなかった。俺はさっき、和に迫られたら、断れなかっただろう?」

京太郎「でも多分、俺は和に迫ることは無いと思うんだ」

京太郎「ありがとう、和」

京太郎「お前のお陰で、俺は自分の心を知ることが出来た」


和「……」

京太郎「あ、その……ごめん」

和「ふふ、謝る必要、無いですよ」

京太郎「?」

和「だって、私の気持ちが途切れることはありませんし」

和「知ってました。京太郎くんが私をよく見ていても、そこに恋愛感情は無いことを」

和「でも、私、諦めませんよ。これから京太郎くんとたくさんお話して、たくさん遊んで、たくさん触れ合って……」

和「いつか、振り向かせてみせますからね♪」にこっ

京太郎「!」どきっ

和(部長が知ったら、荒れるでしょうね)

和(でも貴女が私を取り除きたくて、今後何か仕掛けてきても、私は、負けません)

和(貴女の吭を掻っ切って、どちらが京太郎くんに相応しいか、解らせてあげますよ)

和(それに、京太郎くんはもう私の気持ちを知りましたから)

和(貴女の不誠実な手段を、京太郎くんは絶対に許さないでしょう)

和(ふふ……♪ 京太郎くんが私を選んでくれる日が楽しみです……♪)



久(ふーん……)

久(和。貴女にそんな度胸があるなんてね。正直、見縊ってたわ)

久(でも気付いてないでしょうね。私と貴女がまともにぶつかりあったとして、貴女に勝ち目は無いことに)

久(須賀くんは、誠実な人間よ。それは貴女もよく知っているでしょう?)

久(須賀くんは、貴女のちゃちで、ガキくさいアピールなんかよりも、彼を引っ張ったり、楽しませたりして)

久(あげられる私に惹かれるのは、自明の理)

久(ふふ……♪ 須賀くんが私のものになる日が楽しみだわ……♪)



カンッ