久「そう。インターハイも終わって夏休みも残り少ないけど後身育成の為にね」

和「合同と言うことはまた以前の3校ですか?」

久「いいえ。今度は別の学校よ」

まこ「ほう。いったい何処とやるんじゃ?」

久「なんとあの白糸台! そしてもう1校、阿知賀女子が来るわ」

咲「白糸台!? それってお姉ちゃんの」

久「ええ。話を持ち掛けてくれたのは阿知賀の赤土先生なんだけど、じゃあ一緒にどうかって白糸台に連絡を取ったら先方も是非にって」

咲「わぁ、じゃあ久し振りにお姉ちゃんに会えるんですね」

優希「咲ちゃん嬉しそうだじぇ!」

和「よかったですね。咲さん」

咲「うん! ありがとう、優希ちゃん和ちゃん」

咲「あ、でも……合同合宿って事は京ちゃんは……」チラッ

京太郎「あ、はは……まぁ俺に気にせずみんなで行ってきてくれよ」

久「ああ、今回は須賀君にも参加してもらうから」

久以外「えっ!?」

久「言ったでしょう? 後身育成の為の合宿だって」

久「須賀君も立派な部員なんだから。もっと強くなってもらわないとね」

和「けど、私達は構いませんが先方は大丈夫なんでしょうか」

久「その点もだーいじょーうぶ。バッチリ許可を取ってあるから」

久「雑用を任されるって言ったら二つ返事でOKしてくれたわ」

京太郎「あはは、はぁ……雑用するのは確定なんですね」

久「そりゃ唯一の男手なんですもの。頼りにしてるわよ男の子」

京太郎「はぁ……わっかりました! 雑用でもなんでもやりますから是非連れて行ってください!」ペッコリン

久「よし! 良い返事ね」

咲「よかったね京ちゃん!」

和「頑張りましょうね須賀君」ニコ

京太郎「ああ! ありがとな咲、和」

優希「これで少しは成長してくれれば京太郎も練習相手になるんだじぇ! 今のままじゃよわよわ過ぎてただのカモだじぇ」

和「優希、そんな言い方をしてはダメですよ」

京太郎「はん! 見てろよ今にお前より強くなってやるからな!」

優希「ほほう! このゆーき様より強くとは大きく出たもんだじゃ」

まこ「くく、まぁ練習相手云々は置いておくとして合宿の間お前さんをシゴけるのかと思うとなかなか楽しそうじゃの」ククク

京太郎「う、お、お手柔らかにお願いします」

久「はいはい意気込みもいいけどこっち注目」パンパン

久「合宿は3日後。はぐれても行けないからいったん学校に集まること。良いわね咲?」

咲「な、なんでそこで私に振るんですかぁ?」

咲以外(そりゃ……)

京太郎「じゃあ当日の朝は俺が迎えに行ってやるよ」

咲「学校までなら迷わないよ!」プンプン

まこ「はいはいじゃれないじゃれない」

咲「じゃれてません!///」

久「と、まぁそう言うわけだから明日から当日まで部活はお休みね準備とかもあるでしょうし。いいわね」

久以外「はい」

久「じゃあこれで今日の部活は終了。解散!」

全員「お疲れ様でした!」


―――――
―――


1年生が帰った後

まこ「のう久、この合宿ってのは」

久「相変わらず聡いわね。そうよ」

久「あの子達のおかげで夢の全国制覇を達成できたこれはそのちょっとしたお礼よ」

まこ「また回りくどい事を、素直に慰安旅行だと言えばよかろうが」

久「嫌よそんなの、なんか……恥ずかしいじゃない///」

久「それに合宿って言うのも別に嘘ってわけじゃないわ。ただそういう言い方も出来るってだけよ」

まこ「はいはい。お前さんがそう言うならそういう事にしとくか」

久「あ、なにその言い方、可愛くない」

まこ「はいはい。さーてわしも帰るとするか」

久「早!? あ、ちょっと待って」

まこ「ほれ、はようせんか」スタスタ

久「言いながら置いていかないでよ! ちょっとまこー!」タタタ


ガチャ、バタン!、カチャン



電車に揺られバスに揺られやって来ました合宿場。


京太郎「へぇ、なかなか良いとこですね。落ち着いた感じで」

まこ「なんじゃノスタルジックな感じじゃの」

優希「そんなことより早く行こうじぇ!」

京太郎「そうだな。…………ん?」


優希に促がされながら歩き出そうとするとあるものが目に留まる。
その名も自動販売機。


京太郎「ふむ……」


逡巡、後の閃き。


京太郎「すまん。ちょっと待っててくれ」

咲「京ちゃん?」


咲の声を半ば無視しつつ、俺は自販機に硬貨を投入。
ボタンを押して商品を取り出す。うえぇ熱い。


和「飲み物ですか? それなら私、水筒にアイスティーを入れてきましたけど」


日傘を差した和がそういって少し手荷物を振ってみせる。


優希「うわぁしかもホットコーヒー。京太郎、暑さでとうとう頭までやらっれちゃったじぇ」

京太郎「ああ、これはこれで良いんだよ。その内わかる。和のは後の楽しみにさせてもらうよ」

和「はぁ……」


要領を得ないと言った感じだ。でしょうねぇ。


久「あなた達、しゃべってると置いてくわよ」

1年生「はーい」




旅館前

その玄関先でごろ巻いてるあの集団は、

久「弘世さん」

菫「! ああ、竹井部長か。先週の電話以来だな」


振り返ったのは白糸台の部長である弘世先輩。


照「咲、久し振り」


弘世先輩と並んで咲のお姉さんである照さんが振り返る。


咲「うん。直に会うのは久し振りだねお姉ちゃん」


咲は照さんに会えて本当に嬉しそうだ。


照「咲、少し見ない間にまた大きくなって」

咲「やだお姉ちゃん、親戚のおばさんみたい」クスクス


2人もいろいろあったが今となってはそれも過去。気兼ねなく話せている。
美しい姉妹愛だ。


誠子「お久し振りです!」ペッコリン

尭深「お久し振りです……」ペコ


亦野先輩と渋谷先輩が挨拶とともに会釈をしてくるのでこちらもそれに応える。
そして残りの1人は……


淡「サキー! ユッキー! ノドカー! 久し振りー!!」


さーてうるさいのが来たぞぉ。
周囲を見て回っていたんであろう一際やかましいのが向こうから突っ走ってくる。


淡「わーい!」ダキッ

咲「わわ、もう淡ちゃんってば」

和「お久し振りです淡さん」

優希「久し振りだじぇ!」

淡「うん! 2人とも久し振り!」


女の子が4人でニャンニャンしている。
微笑ましい。


淡「お?」


再会の挨拶もそこそこに、俺に気付いた淡がこちらに近付いてくる。


淡「よ!」

京太郎「おう」


かっっる……


淡「ふーん、ほーう……」ジロジロ


なんすか?


淡「やーい荷物持ちー」ケラケラ

京太郎「うっせ、力仕事は男の仕事なんだからいいんだよ」

淡「”男の”じゃないでしょ、”キョータローの”でしょ」ケラケラ

淡「それより私喉渇いた。なんか買ってきて」

京太郎「ああ、そんなことを言い出すんじゃないかと思って用意してあるよ。ほれ」


そう言って俺は先程買った缶コーヒーを差し出す。


淡「うえ、コーヒー……しかもホットで無糖。これやだ! 苦いもん」

京太郎「そうだと思ったから買った」

淡「むぅ~!」ブンッ

京太郎「おわっ!? おま、投げるなよあぶねぇな!」


こいつ、中身の入ったスチール缶を全力投球しやがった。
相変わらず無茶苦茶な奴だな。


菫「おい淡、遊んでるなら置いてくぞ」


部長と話をしていた弘世先輩が淡を呼び付ける。
どうやら話は終わったらしい。
って言うかこのやり取りさっき見たな。


淡「あ、待ってよスミレー!」


先立っていた白糸台のメンバーに合流していく淡の後姿を見ながら俺は地面に転がるスチール缶を拾い上げる。


照「じゃあまた後で」

淡「また後でね! サキ!」

咲「うん、また後で」フリフリ

淡「……」

淡「キョータローのアホ! べー!」


あっかんべーをした後そのまま照さん達に付いて建物の中へ入っていく。
まったく、やれやれだぜ。


久「じゃあ私達も部屋に荷物を置きに行きましょうか」

和「はい」


部長に促がされて歩みを進める清澄の面々。


咲「見てたよ京ちゃん。ダメだよああいうの」

京太郎「いやいや咲さん。あれは俺らなりのコミュニケーションでしてね」

和「どこの地域限定のコミュニケーションですか」

京太郎「き、今日の和は突っ込み厳しいね」


prrrrrrr

咲「ケータイ?」

優希「誰だじぇ?」

京太郎「すまん俺だ。ん、っと……」


ズボンの後ポケットに突っ込んでいて携帯電話を取り出そうとするが荷物が邪魔で上手く取れない。


咲「片方持つよ」

京太郎「あ、すまん」


咲に荷物を分担してもらい、俺は取り出した携帯電話の液晶を眺める。そこには『赤土先生』の文字。
嫌な予感がする。


京太郎「はいこちら宇宙大統領。イタズラ電話の場合は銀河的に抹殺……」

晴絵『もしもし須賀君? 私、赤土だけど』

京太郎「あ、はい。須賀です。はい」


もっと乗っかってきてほしかった。


晴絵『悪いねー急に。今どこ?』

京太郎「今ですか? ちょうど玄関前ですけど」

晴絵『お、タイミング良いねぇ。じゃあ裏の駐車場までヨロ』

京太郎「え?」

晴絵『そんじゃね、待ってるから! よろしくー!』ガチャッ、ツー…ツー…


そして唐突に切れた。
台風みたいな人だ。


咲「京ちゃん?」

京太郎「デートに誘われましたー」

咲「え!? デートって、ええっ!!??」

久「モテること」

咲「デートって、え!? 京ちゃん私聞いてい、聞いてないよ!?」

和「落ち着いてください咲さん。あれはどう見ても用事を押し付けられただけです」

咲「あ、え、そ、そうなの? 京ちゃん」

京太郎「まぁ、はい。そうなんだけどね」

まこ「で、誰からだったんじゃ?」

京太郎「阿知賀の赤土先生が。なんか駐車場まで来てほしいって」

まこ「駐車場か。地下駐車場じゃなくてよかったの」

京太郎「地下?」

まこ「いや気にせんでいい」

久「駐車場ってことは車までってことね。とするとなにかの荷物運びかしら」

京太郎「おそらく」

和「どうします? 私達も行きますか?」

京太郎「いや特になにも言ってなかったしたぶん俺だけで良いと思う。みんなは先に荷物降ろしてきてくれよ」

咲「じゃあ京ちゃんの荷物は私が運んでおこうか?」

京太郎「いいよいいよ、別に。玄関ホールのどっか適当に置いといてくれれば」

咲「でも……」

久「咲。ここは須賀君を立ててあげましょう。きっと須賀君の1ミリ程のプライドが許さないのよ」

事実その通りだけどそういわれるとなんか悲しい。

咲「わかりました。じゃあ京ちゃん、用事が済んだらお昼、一緒に食べようね」

京太郎「おう!」


女衆が引き上げていくのを見送った後、俺は1人建物の裏手に回る。
コンクリで綺麗に舗装された駐車場にはほとんど車が停まっていない。
俺は視界を巡らせ目当ての人物を探す。いた。


晴絵「やぁ、悪いね。わざわざ」

京太郎「どうも、お久し振りです」

晴絵「はい、お久し振り。で、早速で悪いんだけど」


そう言って先生は車の荷台を開ける。


晴絵「これ、運んでもらって良いかな?」


なんだこりゃ、いや日本人なら誰でも知ってるようなものだけどなんでこれが今ここに?


京太郎「なんですかこれは?」

晴絵「なにって、炬燵だけど」

京太郎「それは把握してます(直伝)」

晴絵「悪いんだけどそれ、上まで運んでってくれない」

京太郎「はぁ、まぁ良いですけど」


なんで炬燵。真夏に炬燵?
いや待て、いるだろ。知り合いに1人。真夏でもこれを必要とする人が。


京太郎「これってやっぱり宥さんの?」

晴絵「そーそー、大正解」


っしゃーっ!! なんかやる気出て来た。


京太郎「OK! 任してください」

晴絵「君ならそう言ってくれると思ってた! よ! 男前!」

京太郎「よしてくださいよ! おだてられると調子に乗るタイプなんで」

晴絵(だからおだててるんだけどな~)

京太郎「それじゃあ、よっと」


掛け声で勢いをつけて一気に持ち上げる。あ、あんまり重くない。


京太郎「これなら炬燵布団も一緒に持っていけそうですね。どこですか?」

晴絵「へぇ、素直に驚いた。結構力持ちなんだ」

京太郎「そりゃあ、日々のあれこれの賜物ですよ」

晴絵「じゃあ、ホントに悪いんだけどよろしくね」

京太郎「はい。任されました」


同行していた赤土先生と途中で別れ、宥さんと玄さんの宿泊する部屋に向かう。


京太郎「え、っと確かこっちだよな」

?「京太郎?」


お、この声は……

京太郎「鷺森先輩、トゥーッスッ!!(舎弟風)」

京太郎「お久し振りッス!! お変わりないッスか!?」

灼「うん、久し振り。……その荷物、宥さんの?」

京太郎「うッス!!」

灼「ならそこを真っ直ぐ行ったところだよ」

京太郎「アザッリャッスッ!!」

灼「じゃあ私、ハルちゃんの所に行くから。がんばって」フリフリ

京太郎「トゥーッスッ!!(舎弟風)」


去っていく鷺森先輩が見えなくなってから下げていた頭を上げる。


京太郎「さて、行こうか」


コンコン

<ハーイ


京太郎「失礼しま~す」ソロ~リ


ノックの返事を聞いてゆっくり戸を開く。


宥「あ、京太郎君」

京太郎「どうもどうも、お久し振りです宥さん。本日もご機嫌麗しゅう」

宥「うん。久し振り」ニコニコ


そろそろ久し振りという単語がゲシュタルト崩壊してきそうだ。


京太郎「1人ですか?」


部屋で1人座っていた宥さんが立ち上がり出迎えてくれるが、我がベスト・オブ・マイフレンズの姿は見えない。


宥「うん。玄ちゃんは穏乃ちゃんや憧ちゃんと一緒に、和ちゃん達に会いに行ったよ」

京太郎「そうなんですか」


そりゃ残念。


宥「それ持ってきてくれたんだ。炬燵」

京太郎「あ、はい。赤土先生に頼まれて」

宥「そうなんだ。ごめんね? 自分で持って行くって言ったんだけど……」


申し訳なさそうにシュンとしてしまう宥さん。
なぜかこっちまで申し訳ない気持ちになってしまう。


京太郎「おっと、待ってください。俺はお礼を言われこそすれ、謝られるような事をしたつもりはないですよ?」


ちょっとキザったらしかったかな。
俺の言葉にしばしキョトンとした後、口元を押さえてクスクスと笑い出す宥さん。


宥「ふふ、そうだね。ありがとう京太郎君」


ああ、やっぱり女性の笑顔は良いね。明日への活力になる。
それが美人ならなおさらね。


京太郎「じゃあちゃっちゃと組み立てちゃいましょうか」

宥「ええ!? そんな悪いよ」

京太郎「いえ実はこう見えて僕、炬燵の組み立てが趣味でして1日に1回は炬燵組まないと気がすまないんですよ」

宥「ええ~」

京太郎「ほらほら、ちゃっちゃとやりますよ。ちゃっちゃっちゃっと」

宥「わわわ、私も手伝うよ~」


そんなこんなで炬燵完成。
部屋の隅の邪魔にならない場所に設置。そこはまさに宥さんだけの聖域。


宥「よかったら京太郎君もどうぞ」ニコッ

京太郎「あ、これはご丁寧にどうも」ペコ


ゴソゴソ

あ~


宥「あったかいね~」ニコニコ















…………………………………………あっつ。



やっべぇ、これやっべぇ。


宥「~♪」ホコホコ

京太郎「……」ダラダラ


つい流れでご一緒することになってしまった。
いや、宥さんとご一緒するのはやぶさかではないのだがこれはちょっと。


京太郎「……」チラッ

宥「?……」ニコ


微笑まれてしまった。
普段の俺なら「暑い!もうお家帰う!」といって跳び出しているところだが、が!
そんな俺を見たら宥さんはどう思うよ? 涙目ぞ?
故意に宥さんを悲しませようと思えるほど俺はまだこの世界に絶望しちゃいないが、はてどうしたものか。


尭深「……」


な ん か 1 人 増 え て る !


尭深「……」ジョー


ティ○ァールですか、なかなか良いポットを使ってますね。


尭深「あの……お茶、どうぞ」スス

宥「あ、どうも~」

尭深「須賀君も」

京太郎「あ、すみません。ありがとうございます」

宥「……」ズズズ

宥「あったか~い」


平然と飲んだ。そしてめっちゃ幸せそうな顔してる。可愛い。


尭深「……」フーフー、ズズズ


湯のみ両手で持ってめっちゃフーフーしてから飲んでる。可愛い。


京太郎「……」ズズズ

…………………………………………あっつ。




その後、なんかすごい3人でお茶飲んだり積み木やったり趣味の園芸(録画)を見たり、
治安警察特殊機動隊(ユーバーファルコマンド)との激闘だとか、ラインアーク攻防だとか、第6聖女がうんぬんかんぬんだとか、
俺と宥さんと渋谷先輩の三角関係からなるラブロマンス(願望)だとか、
もうアカデミー賞とかバンバン取っちゃう位の大スペクタクルが展開されたが割愛。

まぁこれで夏休みの絵日記の宿題に書くネタが出来たからよしとするか。そんな宿題ないけど。
で、今は3校全員がホールに集まっている。


咲「京ちゃん、大丈夫だった?」

京太郎「ん? ああ、なんか炬燵運ばされたけどただそれだけ。平気ヘーキ」

優希「この万年発情期の犬はすぐ他所の女の子と仲良くおしゃべりし出すからな。きちんと見張ってないとダメだじぇ」

京太郎「しゃべるのもダメなのかよ。大体ここ俺以外みんな女の子じゃん」


まぁ1人、年季の入った女の子がいらっしゃるけど。


京太郎「逆に俺が1人で壁に向かってブツブツしゃべってたらどう思うよう? 嫌だろ? 同じ部活の仲間的に」

優希「あー……」

咲「ち、ちょっとイヤだね……」

和「咲さんよく考えてください。だいぶ嫌です」


清澄カルテットで相変わらず中身のない雑談に耽っていたが、それも自然に収まりそれに合わせてか場がシンと静まる。


久「コホン、この度は3校合同合宿にお集まり頂き誠にありがとうございます」


穏乃「こう言うのって先生がアイサツとかするもんじゃないんですか?」ヒソッ

晴絵「良いの良いの。先生は生徒達の自主性を重んじる派だから」ヒソ

憧(面倒だっただけじゃないでしょうね……)


久「移動の疲れもあることと思いますので今日は自由行動ということで、よろしいでしょうか」


和「聞き覚えのある挨拶ですね」ヒソヒソ

まこ「考えるの面倒じゃったんじゃろ」ヒソッ


久「それと、今回はうちの須賀君が参加することになりましたので。よろしくお願いします」


部長の言葉に自然と全員の視線が俺に集まる。
俺は一歩前へ。ぐるっとみんなの顔を見回


淡「……」ムスー


なんかすげー目してる奴がいるんだけど。


穏乃・玄「……」ニコニコ、フリフリ


にこやかに手を振ってもらえた。天使や。


淡「ふん……」プイ

京太郎「えっと、この度は俺の参加を認めて頂いてありがとうございます」

京太郎「えー麻雀とかいろいろ不慣れ、不勉強なことも多いでですがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」ペッコリン


<ワー、パチパチパチパチ


久「まぁ本人もこう言ってる事ですので、皆さんもビシビシこき使ってあげて下さい」

京太郎「任せてください! やりますよ俺は」

久「お、やる気満々ね男の子」

京太郎「もちろんですよ」

京太郎「なんか前回、長野でやった4校合同合宿で俺だけハブられましたけれど」

京太郎「それでも俺は部長に着いて行くという忠誠心の高さと心の雄大さここぞとばかりにアピールしていくって」

京太郎「そういう気概なんで!」


白糸台「……」ジトー

阿知賀「……」ジトー


久「ちょっ!? 須賀君あなたなに言ってるのよ! 違、みんな違うの! 仕方なかったの!」

久「だって来るのはみんな女生徒なのよ! 今回のが特例なの! やめて、私の悪者にするかのようなそんな目で私を見ないで!」


部長孤立! 経済制裁。


京太郎「……」

久「あなたも黙ってないでなにかフォローしてよ!」

京太郎「え? あー、大丈夫です! 俺、部長のこと尊敬してます!」

久「……」

久「なにが!? あなた連れて来てあげた恩を忘れてるんじゃないでしょうね」

京太郎「や、まぁそうなんですけど。けど言う時は言わないと」

久「良い度胸ね。須賀君は後で反省室に来るように」


え? ここそんなのあんの?


まこ「はいはい。そこら辺にしときんさい。お前さんらが漫才始めたら日が暮れるわ」

それを言われたら反論の余地がない。

まこ「それじゃあ、堅苦しい挨拶はこの辺にして解散ということで」

全員「はい!」


染谷先輩が締めてこの場は解散となった。


咲「京ちゃん、さっきの約束」

京太郎「おう。昼飯のな、先に部屋に荷物置いてくるから待っててくれ」


宥さん達の部屋から直でこの場に来た為、俺はまだ自分の部屋すら確認していない。
部屋割りは、清澄、白糸台が5人部屋。阿知賀がティーチャー赤土を含む6人の大部屋らしい。

かく言う俺は1人部屋。まぁ個室って言うのも気楽でいいよね。
誰に気兼ねすることもない自由さと解放感、これは同室の人間がいては味わえない個室ならではですよね。
自己暗示で孤独感を誤魔化していたら俺の泊まる部屋に着いた。
まぁまぁゆーても外観が立派でしたし、きっと内装もなかなか趣のある……










…………………………………………せっま。


べぇ、まじやっべぇ。
これたたみ二畳くらいしかないですやん。これ。
布団敷いたらもうほとんどスペースないですやん。
部屋って言うか倉庫じゃん。
俺は部屋から顔を出して表を確認する。

『犬の間』
っと書かれていた。嫌なネーミングだ。


京太郎「いやいやいや、俺庶民だし? あんま広くても落ち着かないし? むしろこの閉塞感が心地良いし?」


狭い所が落ち着くのってなんでだろうねあれ?
自分を叱咤しつつ、この部屋唯一の特徴と言っても良い窓へと歩み寄る。


京太郎「ほら、窓を開ければこんな自然豊かな景色が……」ガラララ

…………。

ガララ、ピシャ










京太郎「崖じゃねぇか」


もうこの時点で先行き不安なんだけど。



ガラッ

淡「……」

京太郎「? ……淡?」


今を生きる俺は部屋の間取りと言う5分前の絶望を過去へと追いやり、飯でも食って気持ちを落ち着けようと部屋を出た。
出た先には壁に凭れ掛かってる淡。


京太郎「どうした? 女子の部屋は向こうだろ? それとも俺になんか用?」

淡「あの、えっと……」

京太郎「ん?」

淡「さっきは、ごめん……」

京太郎「なにが?」

淡「だから、自分でもさっきの態度は酷かったかなって……だから……」


泣きそうな顔で、長く伸びた上質な金糸のような髪を弄っている。


京太郎「ちょっとごめん」ガラッ


断りを入れて一旦部屋に戻る。


淡「あ、え? なんで……!?」


戻ろうとするのを遮られた。


淡「やだ、怒らないで。謝るから! 嫌いになっちゃヤダ!」

京太郎「怒ってないから、ならないから。ちょっとだけ、な? すぐ戻るから」ポンポン

淡「ホントぅ?」

京太郎「ホントホント」

淡「絶対だからね?」

京太郎「おう!」


再び自室(仮)。
俺はわき目も振らずに窓へと駆け寄り盛大に開け放す。
うむ! 改めて見ても崖だ。
俺は肺いっぱいに空気を吸い込み、そして一気に解放した。










京太郎「可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

カワイイイイイイイ

イイイイ

イイ


おい、なんだあれあんな可愛い生き物おるんかい?


ガラ

京太郎「悪い。待たせたな」

淡「///」

京太郎「なにモジモジしてんの? なんかキモいよ」

淡「っ…………もう! キョータローのアホ!」アワー!

京太郎「そーそーお前はそういう風に不遜な感じでいろよ。そっちのがお前らしい」ナデナデ

京太郎「まぁたまにはさっきみたいなしおらしいのも悪くないけどな」

淡「あ、う…………うん///」アワワ…

京太郎「よし! じゃあ飯でも食いに行くか」

淡「うん! えへへ」ダキ

京太郎「おわ!? おおい、いきなりしがみ付いてくるなよ」


さっきと打って変わって上機嫌な淡が腕に抱きついて来る。


淡「いーんだもーん!」アワワ!

京太郎「ったく、現金な奴」


まぁそういうとこ嫌いじゃないけどね。


淡「そだ、ついでにちょっとジュース買ってきて」

京太郎「おい、あんま調子に乗るなよ」



咲「……」

京太郎「買出しですか?」

久「そうなのよ。実はここ、食事は自炊なんだけどどうも備蓄が空みたいなのよ」

京太郎「なるほど。そこで俺の出番ってわけですね」

京太郎「優希、お前なに食べたい?」

優希「タコス!」

京太郎「でしょうねぇ。言うと思ったよ」

京太郎「他のみんなは?」

和「そうですね。なにか軽いものでお願いします」

京太郎「あいよ。じゃあ、そうだなぁ……」

京太郎「今から行って帰ってくるとそんなたいした物作れないし簡単に出来るサンドイッチかなにかにするか」フンフム

まこ「すまんの。お前さんにばっかり雑用を押し付けて」

京太郎「気にしないでくださいよ。これはこれで結構楽しいんですよ」

まこ「ありがとうな。……っで、それはそうとさっきから気になっとったんじゃが」

久「ああ、うん。実は私も気になることが1つ」

京太郎「なんですか?」


「なんで、京太郎(須賀君)の腕に大星さんがしがみ付いてるの(んじゃ)?」


淡「えへへ、キョ~タロ~」アワスリスリ


優希「やっぱり京太郎は天然ジゴロだじぇ」

和「麻雀もこのくらい熱心に取り組んでくれればいいんですが……」

京太郎(ボロクソ言うなこいつら)

咲「……」

京太郎「うわ、無言の咲めっちゃコワッ!?」

優和ま久「……」ジトー、シラー

咲「……」


ああ、ing系で俺の信用とかなんかいろいろが低下している……


照「話は聞かせてもらった」バーン!!


な ん か ま た や や こ し い の が 来 た !


菫「なんというか、その……すまない」


お付の人も来ちゃったよ。しかも第一声が謝罪って……
苦労なされてるんですね。


久「え、えーっと……宮永さん?」

照「買出しに行くんでしょう?」

久「ええ、まぁ」

照「私も行く!!」ドーン!!

清澄「……」チラッ

菫「うう、すまない……」

京太郎「さ、作戦タイム!」

照「了承」


照さん(と淡)をいったん放置し、弘世先輩を加えた6人で顔を突き合わせて作戦を練る。


京太郎「どういうことですか弘世先輩!?」ヒソ

菫「わからん! 買出しの件で竹井部長や鷺森部長、赤土先生と相談せねばと言ったら突然自分も行くと言い出して」ヒソヒソ

菫「というわけで須賀、申し訳ないがよろしく頼む」ヒソヒソ


ええ~また俺ぇ~?


京太郎「あの、そういう面倒ごと俺に丸投げするのやめて頂けません?」ヒソヒソ

菫「あれを制御出来るのお前と、妹さんだけだ。だからお前に頼らざるを得ない」ヒソヒソ


まぁもう一方がこれだからな。

照←あれ

咲←これ


咲(今、酷い扱いを受けた気がする)

久「良いじゃない。人手は多い方がいいんだし」

さすが部長。他人を使うことには余念がない。

京太郎「そもそも、危険ですよ。知らない土地で宮永の血族を無闇に歩き回らせるのは」

咲「え? それ私も含んでるの?」

菫「う、うむ。それもそうか……」

京太郎「ダメですよ、きちんと管理しないと。この2人迷子の頻度が多いですから」

京太郎「ちょっと常軌を逸してるんで、その辺管理しないとやばいですよ」

照「まだ?」


しびれを切らした照さんが俺達が囲んでいた円陣を覗き込んでくる。


「……」

淡「~♪」


誰も何も答えない。あ、これ俺が交渉する流れだ。


京太郎「え~っとなんで照さんは自分から買出しを申し出たんですか?」

照「それは、えっと……」ワタワタ


ジェスチャーでなにかを必死に伝えようとしている。
ふ~む。なるほどなるほど、なるほど~


京太郎「お菓子なら買いませんよ」

照「…………え?」テルガーン!


そんなこの世の終わりみたいな顔されても。
なんか久々に会ったら嗜虐心を擽られるなこの人。


照「どうしても?」

京太郎「どうしても」

照「なんでいじわるするの?」

京太郎「なんででしょうねぇ?」


黒目の縁の辺りがフルフルしてる。可愛い。


咲「だ、大丈夫だよお姉ちゃん。私がお菓子持ってきたからそれ一緒に食べよう? ね?」ナデナデ

照「うん……」テルテル

京太郎「咲、そうやってお前が甘やかすからいつまで経っても照さんがポンコツなんだぞ」

咲「ううぅ……」

菫(この男、順当に宮永の血統に火をくべているな)

京太郎「なんつって」

照咲「……ふぇ?」

京太郎「お菓子ですね? もちろん買って来ますよ」

照「本当?」

京太郎「本当本当」

咲「よかったね! お姉ちゃん」

照「うん!」


ふぅ、好きな子に意地悪しちゃう系の小学生の心境が少し垣間見えたな。
しかしよかった。これでめでたしめでたしだな、うんうん。


咲「あ、そうだ京ちゃん」

京太郎「うん?」

咲「そう言えば、さ……」

京太郎「お、おう……」


なんだこの、得体の知れない悪寒は……


咲「な ん で 淡 ち ゃ ん と ベ タ ベ タ し て た の ?」ゴッ

京太郎「え?」

咲「京ちゃんのぉ…………」



咲「バカァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!」ドゴォッ!!



京太郎「どぅごっふぉっ!?」


なんか……魔貫光殺砲みたいなエフェクトのボディブローが腹部に突き刺さった。
お前、ずっと気をためてたんか……


優希「見え透いたオチだじぇ」

和「予想外という程のものではないですね」