京太郎「・・・・・・」ガタガタ


俺の名前は須賀京太郎。何処にでも居る普通じゃない高校1年生だ。


京太郎「・・・・・・」ガタガタ

智美「ワハハ」ガタガタ


そんな俺は今、長野のとある山奥に来ていた。


智美「ワハハ、中々着かないなぁ」ガタガタ

京太郎「そうっすね」ガタガタ


なぜ、俺がこんなところに居るのか、それは5時間ほど前に遡る――
5時間前――とある道裏にある事務所


京太郎「化け物退治?」

良子「イエス」


昼食と食べ終え、その片付けをしている俺に向かってそう言ったのはこの事務所のボス戒能さんだった。
戒能さんは日頃はプロ雀士として活躍する傍ら化け物や良く解らないナニカを駆除する専門の業者を営んでいた。
俺は此処でその業者見習いをやっているのだが


京太郎「俺一人ですか?塞のやつは如何したんですか?」

良子「塞さんなら里帰りで岩手に居ますよ」

京太郎「まじか・・・」


塞こと臼沢塞と言う少女は京太郎と共にこの事務所で働いている。
ただ、京太郎と違うのは京太郎のように見習いではなくこの事務所の正社員として働いていることだった。


京太郎「今回はあいつ抜きでか・・・ちと辛いな・・・」


単純な戦闘力では京太郎のほうが何倍も上である。
しかし、塞と言う少女にはほかの人間には無い特殊な能力を備えていた。
この異能により塞は戦闘力に勝る京太郎の何十倍もの戦術価値を待っていた。


良子「大丈夫です。これ位なら京太郎君1人で十分です」

京太郎「随分と軽く言ってくれますね。この前戒能さんの言葉を信じて一人で行って死に掛けたばっかなんですが・・・」

良子「それは君が弱いのが悪い」

京太郎「ひでえ」


しかしそれは京太郎自身がよく解っている事だった。
自分はまだ半人前、一人ではまともに戦えないと。しかし彼もまた男の一人。
何時までも女の子に守られっぱなしと言うのは納得がいかなかった。
だから毎日血反吐を吐く思いで修行に取り組んでいた。
しかし、まだ自分の目標とする人物の足元にも及ばないのが現実だった。


京太郎「まあ、良いですよ。で、今回の標的は?」

良子「グールです。英語の発音的にゾンビーヌの方が近いかもしれませんね」

京太郎「グールですか・・・」


グールとは、RPGや怖い話等に出てくるゾンビ見たいな奴である。
一体いったいの戦闘能力はそれ程高くは無いが奴らの厄介な所は兎に角沢山居る事である。グールに食われたものはグールになる。
1匹が2匹に、2匹が4匹にとまるでねずみ算の用に増えていく。まるで台所に出てくるアイツのようだ。


京太郎「分かりました。でも移動は如何するんです?まさか歩いて逝けと?」

良子「いえ、今回は協力者が居ます。鶴賀の三年生の蒲原さんです」

京太郎「あの人か」


蒲原こと蒲原智美とは鶴賀学園の麻雀部の部長である。
何時もワハハと独特な笑い方をしている不思議な少女だが
実は高校生にして警視庁公安課に所属する何だかよく分からない凄い人である。
彼女に繋ればどんな難解な事件でもたちどころに丸裸にしてしまう情報の鬼であった。


京太郎「あの人が一緒なら安心か」


――そして時は現在へと戻る
今は彼女の愛車であるフォルクスワーゲンバスタイプ2に乗って事件があった場所へと移動していた。
しかし思ったよりも遠くかなりの時間がたってしまいもう回りはすっかり暗くなってしまった。


京太郎「暗いな~て言うか暗すぎるだろ!何で星どころか月すら出てねーんだよ!」


そう、余りにも暗すぎた。
いくら山の中と言えども車のヘッドライトで照らしても1メートル以上先が見えないと言うのは幾らなんでも異常事態だった。
こんな状況でも事故らずに運転できる蒲原の運転技術にはただただ感心するばかりだった。


智美「ワハハー先が全然見えないぞー。これも怪異が原因なのかー?」

京太郎「はい、おそらく」


奇異や化け物が現れると周りの空間にも影響を及ぼす。
今回のは周りを闇の世界へと変貌させているようだ。
さながら常夜の世界と言った所か


京太郎「蒲原さん気をつけて下さい。もう既に敵のテリトリーに入っています。何処から現れるのか分かりません」

智美「ワハハー分かったぞー」

そうして暫らく道なりに走っていると赤い光が見えてきた。
よく見るとパトカーが2台ほど止まっていて道を塞いでいたのだ。
すると近くに居た警官らしき若い男性が近づいて来た。


警官A「すいません、今この通行止めになっていまして今は通れないんですよ。申し訳ありませんがUターンして貰えないですかね」

蒲原「何か有ったのですか?」

警官A「何でもこの山奥の集落で大量殺人事件が有ったみたいでいま今この一体を封鎖してるんですよ」


若い警官は話しながらこの体の奥から来る振えと戦っていた。生存本能が今すぐに此処から逃げろと叫んでいた。
此処に来たときからずっと変だと思っていた。まず周りが暗すぎる。
碌に前も見えず此処にくるまでに何度も事故かけた。その移動中もずっと変な視線を感じていた。
誰かが自分たちを見ているのだ。それも1人や2人ではなく何十人と言う視線を感じていた。
そしてつい15分ほど前に集落の探索に向かった班からの通信が途絶えた。
この時点で嫌な予感は確信へと変わった。この山奥に何かが居る。
それもとんでもない何かが


智美「そうですかーあ、そうそう紹介が遅れました。私警視庁公安部公安総務課第七事件担当課長の蒲原です」


そう言うと蒲原はポケットの中から名詞を取り出した。それを受け取った若い警官はとても驚いて直ぐに敬礼をした。


警官A「け、警視庁公安部!?し、失礼しました!しかし公安部の方がなぜ此処に?」

智美「この先で起こっている事を解決しに来たのさ」ワハハ

警官A「少々お待ちください」


そう言うと若い警官はパトカーの中に居る中年の警官と話し始めた。
一方その頃京太郎はこんな所で人に会えるとは思っておらず少々ほっとしていた。
しかしその思いも次の瞬間崩れ去る。

京太郎(ん?この臭いは・・・)


それは今までの経験で嗅ぎ慣れた血のにおいと肉の腐った臭いだった。
程なくするとビチャ、ビチャと水が滴る音と金属質の物を引きずる音が聞こえてきた。


京太郎「はぁ・・・仕方ない」


そう言うと足元においていたケースからあるものを取り出した。


警官B「ん、なんだ?」


京太郎以外で最初に異変に気ずいたのは、若い警官に代わって見張りをしていた警官だった。
暗闇の先に目を凝らしてみるとなにか人らしき物体が見えた。

警官B「人?すいません、ちょっと良いですか――」


声をかけようとして固まった。否、固まってしまった。人の用に見えた物体、確かに形は人だった。
しかし、その容姿が問題だった。

ボロボロの服、よく見ると拘束具の残骸が着いていた。
肌は真っ青で傷だらけだった。そして何より目を奪われたのは
目から流れ出る大量に血と鼻が曲りそうなほどの腐臭。
そして右腕に絡みついたガン○ムハンマーの様な物。
ハッキリ言って全てが以上だった。


警官B「な、何だこの化け物は!」


警官Bは直ぐに腰に挿していたチーフスペシャルを引き抜くと直ぐにハンマーを起こして構えた。


警官B「止まれ!止まらないと撃つぞ!」


中年の警官は必死に人の様なモノに呼びかけた。
しかし、残念なことにそのかつて人だったモノは既に人語を理解できる生物では無くなっていた。
いや、そもその生きているかさえ怪しかった。


グール「ア”ア”ア”・・・・・・」

警官B「ひぃぃ・・・と、止まれって言っているだろ!」バン!


つい迫り来る恐怖に耐え切れず発砲してしまった。
銃から放たれた38口径の弾丸はグールの眉間に吸い込まれるように命中した。
すると呆気無いほど簡単に崩れ落ちた。


警官B「し、しまった・・・」


殺してしまった。もしかしたらこの先で起こった事件の生存者だったかもしれないのに殺してしまった。
その事実が警官Bに重くのしかかった。


警官C「大丈夫か!?何があった!」


するとさっきの銃声を聞きつけたのかパトカーの社内で待機していた同僚の警官Cが駆け寄ってきた。


警官C「おい、大丈夫か!?」

警官B「あ、ああ・・・大丈夫だ・・・だが・・・」


そして崩れ落ちたグールの残骸に目をやった


警官C「な!?と、兎に角本部に連絡を――」

京太郎「その必要は無い」


ハットして声のするほうに顔を向けた。其処に居たのは10代後半の少年だった。
Gジャンにジーンズにウエスタンハットという変わった服装だが
特に目に付いたのは腰にぶら下げられたホルスターに入ったリボルバーだった。


警官B「な、何だね君は、大体こんな時間にこんな所で何をやっているんだ!」

警官B「それに、例え玩具でもそんな物を持って外を出歩いたらいかんぞ!」


色んな事があり過ぎてつい怒鳴ってしまった。
異常気象に分けの分からない人似たいなモノ、
さらに先ほどから捜索隊は愚か本部にすら繋がらなくなってしまった通信機、
彼を極度の混乱に追い込むには十分すぎることが一度におきていた。


京太郎「いや、だからソイツまだ死んでないぞ」

警官B「な、何を言って――」


その瞬間その場に居た警官たちの顔は凍りついた。先ほど眉間を鉛弾で撃ち抜かれたはずの死体が動き始めたのだ


警官B「う、うわぁぁぁぁ!!」バンバンバンバン!!!!


驚いた警官Bは残った弾を全てグールに叩き込んだ。しかし、何事も無かったかのようにゆっくりと前進してきた


グール「ア”ア”ア”ア”ア”!!」


やばい死ぬ、そう思った。横をチラッと見ると警官Cが放心状態のまま棒立ちしていた。
無理も無い、あんな非現実的な光景を見せられたら誰だってそうなる。しかし今は状況が悪かった。
何だかよく分からない物は右腕に巻きつけたガ○ダムハンマーをブンブン振り回しながら近付いて来た。
たぶん、あれを食らったら一発で物言わぬ肉塊の変えられてしまうだろう。
そんな絶望的な妄想をしていると突然背後から凄まじい爆発音が聞こえてきた。


京太郎「相手は俺だ、化け物」


さっきの少年が腰に挿していた銃であの化け物を撃っていた。
少年の持つ銃の威力は凄まじく化け物の顎から上を跡形も無く吹き飛ばしたしまった。


京太郎「まだまだあるぞ。44マグナムの味、たんと味わって逝きな」


ドゴォ!と言う爆発音と共に今度は化け物の腹部から上が奇麗に無くなっていた。


京太郎「ま、こんなもんか」

智美「おーい、京太郎君。終わったかー」

京太郎「ええ、奇麗さっぱり消し飛ばしておきました」

智美「そうかーじゃあ、さっさと行くぞー」

そう行ってさっさと行ってしまった蒲原を追いかける前に放心している2名の警官に向かって忠告しておこう。


京太郎「貴方達も早く此処から立ち去ったほうがいい。今は此処は安全だがいずれ亡者達で溢れ返ります」

京太郎「それに、恐らく先行して入って行った捜索隊も今頃全滅しているでしょう。貴方達が此処に留まる理由は無いはずです。」


そう言うと京太郎は警官たちを後にした。警官たちは何もいえなかった。
自分たちの息子とそう変わらない年齢の少年から言い知れぬ強者のオーラが見えたような気がした。
さらに少年が銃を撃った瞬間確かに見えた。少年の背後で翼を広げた
巨大な悪魔の姿を――


智美「ふう、しっかしグロかったなー」バン

京太郎「ええ、あの姿は何度対峙しても慣れませんよ」バン

智美「そんな相手をこれから何十体も相手にしないといけない私たちって何なんだろうなー」キュルキュルキュル、ウォン!

京太郎「言わないでください、死にたくなります」

蒲原「こりゃ、帰ったら戒能プロに何か奢って貰わないと割に合わないなー」ワハハ

京太郎「そうっすね~焼肉なんてどうでしょう?いい店知ってるんですよ」

蒲原「お、いいな~じゃ、さっさと終わらせて焼肉パーティーとでもしゃれ込もうか」ワハハ

京太郎「はい!」

カン