塞「ごめんね、京太郎」

京太郎「はい?」

臼沢先輩、シロ先輩、豊音さん、俺の4人で卓を囲んで打っている最中。
次の手をどうするか悩んでいると、真向かいに座る臼沢先輩が声をかけてきた。

塞「いや、来年からは苦労をかけるなって。私たちが卒業したら……」

シロ「京太郎、一人だけ……?」

豊音「あっ!?」

京太郎「ああー……」

宮守麻雀部の構成。
3年生の先輩たち。2年生はいない。1年生は俺一人。
たしかに、先輩たちが一斉に卒業したら残る部員は俺一人になってしまう。
先輩たちの活躍のおかげで大会後は見学者も増えたし、宮守麻雀部の知名度も大きく上がったので部が消滅することはないだろう。
だが、後輩たちの指導者が足りないというのは問題だ。
俺も頑張ってはいるが未だに先輩たちの足下にも及ばないし、トシさんも常に部室にいられるわけではない。

京太郎「はは……が、頑張ります」

シロ「……頼りない」

京太郎「うぐっ」

胡桃「今のうちにビシバシ鍛えておかないとね」

エイスリン「スパルタ!」

京太郎「お、お手柔らかに……」

ありがたい申し出ではあるが、先輩たちも進学に向けて忙しくなるはず。
こりゃどうにかしないとな――と悩んでいると、さっきまで顔を伏せていた豊音さんが勢いよく飛び上がった。

豊音「よし! 決めたよー!」

京太郎「なにを?」

豊音「留年して京太郎くんと一緒に卒業するよー!」

――ハァっ!?

豊音さんの大問題発言に騒然とする室内。

豊音「ぜったいぼっちになんかさせないよー!」

塞「いやいやいや!」

胡桃「本末転倒になっちゃうでしょ!?」

エイスリン「エエト……」オロオロ

シロ「……ダル」チラッ

どうにかしろ、とばかりの視線を向けてくるシロ先輩。
ええと、来年から俺がぼっちになってしまうのが問題なわけで。
つまり、この状況を解決するには――

京太郎「大丈夫ですよ豊音さん!!」

京太郎「俺、彼女いますからっ!!」

――ピシリ。

空気が凍り付く、そんな音が聞こえた気がした。

塞「……胡桃、エイスリン」

胡桃「わかってる」

エイスリン「……」

臼沢先輩が指示を出して、部室のドアを占めさせる。
ご丁寧に鍵までかけている。部室からの出入りが難しくなった。

シロ「……」

シロ先輩は瞬きもせずにじぃっと見詰めてくる。正直こわい。
だが、それよりも――

豊音「――」

無言で俺の背後に移動して、肩に手を置く豊音さん。
その手は驚くほど冷たい。暖房が効いているはずなのに、ひんやりとした感触が首の体温を奪う。
力が込められている様子はないのに、何故だか全く体を動かすことができない。

塞「さて、京太郎」

塞「詳しく、聞かせてね」

その声は、まるで罪人を裁く裁判官のようだ。
心臓が早鐘を打つ。背筋からどっと汗が噴き出す。

京太郎「いや、それが……ですね、…」

胡桃「言っておくけど」

シロ「くだらない、ことだったら」

エイスリン「……」無言で首をかっきるジェスチャー。

豊音「……ぼっちじゃないよー?」

口からの、出任せなんです。そう言えたら、どんなに楽なことだろう。
先輩たちから感じるプレッシャーは今更冗談でした、なんて言わせない重圧をかけてくる。

豊音「ぼっちじゃないよー?」

そして、何よりも背後のこの人が恐ろしい。
いつもの可愛らしい笑顔はどうしたんですか。

……結局、俺が解放されたのは、異変を感じたトシさんが部室にやってきてからのことだった。
俺のちょっとした冗談でとんでもない事態を招いてしまった。もう二度とこんなことは言わない。

豊音「京太郎くんはぼっちじゃないよー」

京太郎「ハイ……反省してます……」


カンッ