咲の用事を断った京太郎は優希とタコスを食べに行っていた。
「はい。あーん」
「おお……」
 タコスを差し出してくる優希。
 その行為に京太郎は照れながらも素直にあーんをする。
「京太郎美味しい?」
「ああ、美味しいよ」
「えへへ、よかったんだじぇ」
 京太郎の事であるのに、まるで自分の事のように喜ぶ優希。
 そんな優希が京太郎は愛しくてたまらなかった。
「なあ優希、そろそろ皆に俺たちの事を言ってもいいんじゃないか?」
「えー、やっぱり皆に言うのは、恥ずかしいんだじぇ……」
 京太郎としては同じ部活で付き合っているのだから変に隠さず、堂々と公表した方がいいと思って

いるのだが、優希が恥ずかしがっているために中々皆に言えないでいた。
「まったく、いい加減慣れろよな」
 軽口を叩きながらも、 今までのお気楽な優希と違う可愛い一面を見れたので京太郎としても満更

でもなかった。
 しかしそんな軽口に返ってきたのは、意外な言葉であった。
「京太郎はこんな私嫌い?」
 優希にとって京太郎との事は、初めての恋愛でどうすればいいか分からなかった。 
 だからちょっとの事で不安にもなる。自分なんかでいいのかと思ってしまう。それゆえの確認。
「嫌いなわけないだろ。俺は優希がいなかったら駄目になってたんだ」
 自分の軽い言葉で優希を不安がらせた事を後悔しながら、京太郎は自分の真摯な気持ちを告げる。
 県大会も終わり、全国に向かって頑張って皆が成長している中、何も出来ずに取り残されている京

太郎は惨めだった。
 部活を止めようと思った事だってある。
 そしてそんな気持ちに誰も気が付いてくれもしない。
 幼馴染である咲でさえも姉の事があり自分の気持ちに気が付かない
 そんな中優希だけが気が付いてくれた。慰めてくれた。
 京太郎とて最初は優希の事をどうとも思っていなかった。
 だが度々アピールされて気持ちが揺らがないなどという事はなかった。
 故にこうなるのは必然だと言えた。
「俺は優希と付き合えて良かったよ」
「私も京太郎と付き合えて良かったじぇ」
 互いに気持ちを確認した二人は、黙ったまま唇を重ねていった。

 優希と別れ家に帰える京太郎。日も落ち暗くなっている。
 ふとみると人影が見えた。
 咲が俯いた様子で手に何かを持っているように見える。
「咲? どうしたんだ?」
 京太郎の言葉に何も返さず咲は京太郎に近づく。
 そして手に持った包丁を京太郎の腹部へ突き刺した。
「がはっ……咲……何を……」
 京太郎の腹部に刺し込んだ包丁をエグりながら咲は泣いていた。
「これしかなかったの……こうしないと京ちゃんが私の前からいなくなっちゃうから……」
 京太郎には咲が何を言っているのか理解ができなかった。
 だが今、自身が生命の危機に立たされているのだけはハッキリと分かっていた。
「さ、咲……自分のしていること……くっあぁぁぐ!」
 京太郎の言葉など届かないのか刺さった包丁を咲は更に深くねじ込ませてきた。
「ごめんなさい……京ちゃんにこんな痛い想いをさせて。でも、でも!」
「でも……?」
 京太郎は立っているのもやっとの状態で震えながら咲の言葉を聞いた。
「京ちゃんも私の気持ちを知っていながら優希ちゃんと……だからこれは私の心の痛みの分だから…


「なっ……」
 優希との関係が知られていたという事よりも咲の気持ちというものに京太郎は驚いた。
 実際咲が自分に好意を抱いているのは感じていた。
 だけどそれは愛情と呼べる程のものではないと思っていた。
 そして嫉妬によりこんな手段に出るとは考える事など想像さえも出来なかった。
「咲……悪かった。俺がもっとお前の気持ちをもっと考えてやれれば……
 咲をそこまで悩ませることもなかったのに……本当に……ゴメン……」
「謝らないで! 京ちゃんは私のことなんて、私のことなんて!!」
 そう叫びながら京太郎に抱きついてくる咲。咲の手も服も京太郎の血で真っ赤に染まっていた。
 まるで真っ赤に咲き誇る花のように――

 DEADEND『真っ赤に咲き誇る花』

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