京太郎「え〜っと、これがこうで、こっちが……」ブツブツ

コンコン

京太郎「ん?」

晴絵「やっほ」

京太郎「先生?」

晴絵「もうとっくに下校時刻は過ぎてるのになにをしてるのかね少年?」

京太郎「え? もうそんな時間……うわぁ、マジだ! すんませんすぐ帰ります」

晴絵「さっさとしないと昇降口閉めるぞー職員室通らせてもらうのは恥ずかしいぞー」

京太郎「だぁーもう! だからちょっと待ってくださいって!」

晴絵「はっはっはっ」ケラケラ

京太郎「ったく、先生も人が悪いですよ」ブツブツ

晴絵「だから冗談だって。……それにしても、こんな時間までなにしてたのさ?」

京太郎「え、っと……忘れ物を取りに来てそのままこう……ずるずると」

晴絵「なるほど。勉強熱心なのはいいけどほどほどにね」

京太郎「はい」

晴絵「……」

京太郎「……」

晴絵「あのさ、麻雀部……楽しい?」

京太郎「え? ああ、はい」

京太郎「まだまだ、わからないことばっかりですけど」ハハ

京太郎「今は牌に触るだけでも楽しいです。部のみんなも親切ですし」

晴絵「そっ」

京太郎「……」

晴絵「……」

京太郎「先生ってなんか飄々としてるって言うか、つかず離れずみたいな態度のくせに本質は世話焼きですよね?」

晴絵「はぁ!? いや、ちょなに? 意趣返し?」

京太郎「別に〜」ニヤニヤ

晴絵「私は、一回挫折した側の人間だからね……」

京太郎「先生……」

晴絵「あの頃は、望……憧のお姉ちゃんね。望がいて、部のみんながいて、麻雀打って、
    バカみたいに騒いで、それで世界は完全だと思ってた」

晴絵「青臭いけど言い方だけど、今日より明日がもっと楽しくなるってそう思えた」

晴絵「瞬きするように過ぎていった、灼けるように熱い、黄金の日々」

晴絵「矛盾してるようだけど、須賀君には私みたいになってほしくないんだよ。もちろん穏乃や憧、玄、宥、そして灼にも」

晴絵「…………あはは、なに言ってんだろうね私? 須賀君って話しやすいからガラにもないことまで話しちゃったわ。忘れてよ」

京太郎「いえ、それほど似合ってないこともないですよ」

晴絵「くぅ、やっぱ話すんじゃなかった」

京太郎「ははっ」

京太郎「先生は、プロになる気はないんですか?」

晴絵「ん〜、まぁ目指してないって言ったら嘘になるけど今はまだあの子たちを見ていたいかな」

京太郎「そうですか」

晴絵「須賀君は、須賀君も私にプロを目指してほしい?」

京太郎「そりゃあ、阿知賀の伝説はいまだ錆びずってとこを見せてほしいですね」

京太郎「まぁ、俺たちがこの学校にいる間は俺たちの先生でいてくれてもいいですけど。……っと、もう昇降口か」

京太郎「それじゃあ俺はこれで」

晴絵「うん。気を付けて帰んな」

京太郎「うわぁ、教師くせぇ」

晴絵「一応、教師だからね」

京太郎「先生の話、面白かったです。またいろいろ聞かせてください。インハイとか県大会の時のこととか昔の学校のこととかも」

晴絵「はぁ? イヤよ、失敗談なら笑い話に出来るけど年上の自慢話なんて退屈なだけでしょ」

京太郎「んなことないですよ。それじゃあ、さよなら」

晴絵「はいはい。さようなら」

シーン…

晴絵「プロに教師……ねぇ」

晴絵「もうちょい考えてみるか」


カン!