成人式

男友達A「あー終わった終わった」

男友達B「市長、話長過ぎだろ」

京太郎「この後は移動して同窓会だっけか?」

男友達A「おう。ところでさぁ、京太郎」

京太郎「んあ?」

男友達A「咲ちゃん。めっちゃ綺麗になったよな」

京太郎「ええ〜」


女友達A「ホント久し振りだね、咲」

女友達B「一昨年のインハイの中継も見てたよ」

咲「そうなんだ、ありがとう」

女友達C「大学はもう慣れた?」

女友達B「2年目でしょ? さすがに慣れたよ。ね? 宮永さん」

咲「え、え〜っと。まぁ……」

女友達C「あー、これはいまだに人見知り直ってないわ」

男友達A「ってか、改めて思うとうちのクラスの女子レベル高くね?」

男友達B「確かに。それはそれとしても、宮永はなんかすげー変わったな」

男友達A「そうそう。昔はもっと地味というか、大人しめだったよな」

男友達B「飛び抜けて美人ではないが、こう……素朴な愛嬌があったというか」

京太郎「そんなことね〜って。普通だよ普通。それよりほら、さっさと行こうぜ」

スタスタスタ

男友達B「どう思う?」

男友達A「ありゃ、まったく進展してないな。なぁ? C」

男友達C「ん? ああ、うん。どうかな」


京太郎「……」ピタ キョロキョロ

京太郎(右も左も振袖やスーツで着飾った女性が多くとても華やかだけど……)


女友達A「でねー」

咲「あはは、そうなんだー」

キャッキャッウフフ


京太郎(うん。やっぱり俺の咲が一番綺麗だ)

同窓会宴会会場

全員「かんぱーい!」

ワイワイ ガヤガヤ

<オラーノメー!

<ホドホドニシロヨー!

京太郎「はぁ、やっと一息つける」

咲「京ちゃん」

京太郎「おお、咲」

咲「はい、これ料理。好きだよね?」

京太郎「お、さんきゅ」

咲「お酒は?」

京太郎「いや、俺、誕生日2月だから一応まだ19だし」

咲「そう言うと思った。はいジュース」

京太郎「これまた、気が利くね」

咲「ふふ、京ちゃんのことならなんでもわかるよ」

男友達A「おい、そこの夫婦。なに2人でまったりしてんだ」

女友達B「相変わらず仲良いよね」

男友達A「つーかなんだ、その長年連れ添った熟年夫婦みたいな空気は」

男友達B「こいつ完全に酔ってるな」

男友達A「うっせ。実際どうなんだよ2人。まったく進展とかないわけ?」

女友達A「あ、それは私も気になる」

咲「え、っと。実は……」

京太郎「あ、おい。待て咲!」

咲「……」スッ

そこには左手の薬指に煌くエンゲージリング。

京太郎「あー……」

男友達A「うおおおおおおおおおおお」

男友達B「遂にか! ったくやきもきさせやがって!」

女友達B「おめでとう。宮永さん」

咲「うん! ありがとう」

女友達A「いや、結婚するならもう宮永じゃないでしょ」

女友達B「ああ、そっか」

咲「あ、でもまだ婚約だけで籍も入れてないし。ほら、お互い大学とかあるから」

男友達A「んだよ、肝心なところで締まらねぇな京太郎は」

女友達B「ちなみにどっちから?」

咲「えっと、京ちゃんから……」

男友達B「まぁこれは当然」

女友達A「ってかあたしらには教えてくれてもよかったのにー。それで? いつから付き合ってたの?」

咲「高校2年生の夏頃」

女友達A「よし! どんピシャ!」

女友達B「ええ!? じゃあそんな前からってこと!?」

男友達A「おーい! 誰だよ、大穴で成人しても一向進展してないとか言った奴」

女友達A「はいはい。いいから負け犬はさっさと出すもの出す!」

男友達A「ちぇー」ブツブツ

京太郎「お前ら、人で賭けてやがったな!」


男友達B「お前はさっきから静かだな」

男友達C「いや、ってか俺。知ってたし」

京太郎「あ! おいそれは秘密って、もががっ!?」

女友達A「男共は須賀押さえといて! で? で?」

男友達C「実は俺、大学の学部が京太郎と同じさ。こいつ、宮永にプレゼントしたいものがあるって講義休んでずっとバイトしてたんだよ」

京太郎「もがー! もがー!」

咲「ほ、本当なの? C君」

男友達C「まぁね。で、講義のノートとか課題とかよく写させてやったんだけどさ」

男友達C「まぁ不正っちゃ不正だし、褒められたことじゃないけどさ事情が事情だし助けてやりたくなるのが人情じゃん?」

京太郎「てめぇ! C! あれほど秘密だって言ったろうが!」

男友達C「うるせぇ。少しは恥じかけ」

女友達B「でもさぁ、男子ってなんかそういうの隠したがるよね」

男友達A「男というのは女の前では常にかっこつけていたいんだよ」

男友達B「お前、彼女いないじゃん」

男友達A「うっせ。これから作るんだよ」

男友達C「彼女作る前にお前はきちんと進級しろよ。別の大学の奴まで面倒みれねぇよ」

男友達B「そういえば、俺も風の噂で京太郎がなんかすごいバイトをしてるって聞いたな」

女友達B「へぇ、どんな?」

男友達B「なんでも奈良の山中で虐殺人食いアライグマのジャッカルを素手で殴り倒す仕事だとか」

女友達A「バイトの話ならあたしも聞いたことあるかな。なんか東京で、ドラム缶に詰められながら遠洋漁業に出たとか出ないとか」

女友達B「鹿児島で人身御供になったって話はどうなったの?」

男友達A「あれはガセだ。間違いない。それより、岩手にあるクノッソス迷宮の奥のマヨヒガでアリアドネの糸玉を織る仕事は」

京太郎「全部ガセだよ!」

咲「京ちゃん、うう。ごめんね? 私のためにそんな……」グスグス

京太郎「咲、違うからね? 俺は普通に染谷先輩の店で働かせてもらってただけだから」

女友達A「意外と普通ね」

男友達A「つまらん」

京太郎「うるせぇ!」

女友達B「あんたはさっきからどうしたの?」

女友達C「私……」

女友達C「私、実は中学の頃……須賀君のこと好きだったんだ」

咲「え……?」

京太郎「はい?」

咲「あの、えっと……」オロオロ

女友達C「あ、ご、ごめん。別に今更どうこうってわけじゃないの。ただ、このまま言わないでいると、ずっと後悔しちゃいそうで」

咲「Cさん……」

女友達C「私たちが3年の時の最後の体育祭で須賀君と宮永さんが借り物転がし二人三脚棒高跳びに参加したでしょ?」

男友達B「ああ、あの惨劇の……」

女友達A「借りてきたものを転がしながら走るのよね。しかもなぜか借りてくるものに人名が多いという狂気染みた謎の采配」

女友達C「最後の棒高跳びで2人が蒼天を切り裂く流星のように美しい放物線を描きながら宙を舞って」

京太郎「なんか本格的な表現来たな」

男友達C「こいつのセンスなのか」

女友達C「けど、着地の瞬間。バランスを崩して、でも須賀君が身を挺して宮永さんを庇った時」

男友達B「確かこの時、京太郎は左脚の股関節脱臼したんだよな」

女友達B「会場全体は異常な熱気に包まれて、客席は全員スタンドオベーションで拍手喝采の地獄絵図」

女友達C「それで確信したの。須賀君が護るべきは、そして護られるべきは宮永さんしかいないって」

女友達C「だから、幸せになってね」グス

咲「Cさん……。うん、ありがとう」

女友達C「うん……うん……」

男友達A「よし! じゃあもう一回乾杯するか!」

男友達B「お、いいねぇ。それなら音頭は俺が」

女友達A「はああ!? そこは咲と一番仲の良かったあたしに譲りなさいよ!」

男友達A「てめぇはすっこんでろ」

ワーワー ギャーギャー

男友達A「えーそれでは、酒杯や料理や人体が宙を舞う醜い争いの末。僭越ながら俺が」

女友達B「いいから早くしてよ」

男友達A「こういうのは手順が大事なんだよ! えー、どうか因果律よ2人を護りたまえ。
         その前途にその身に耐えられぬほどの影を落としたもうな」

男友達B「長ぇよハゲ」

男友達「チッ……今日成人する俺たちと、幸せ絶頂の須賀京太郎と宮永改め須賀咲の新しい門出を祝して!」


京太郎「咲……」

咲「なに? 京ちゃん」

京太郎「これからも俺たち、ずっと一緒だ」

咲「!……うん」ニコッ


カンパイ!