(全国大会前。ホテル玄関)

ワイワイガヤガヤ

久「やっと着いたわねー」

和「やはりそれなりに時間がかかりましたね。結構疲れました」

まこ「そうじゃな。とりあえず今日はゆっくりと休むことにしよう」

優希「それにしても参加校は大体この辺のホテルに集まっているみたいだじぇ」キョロキョロ

咲「そうだね。周りにいる人たちも参加者の人たちみたいだし」キョロキョロ

和「えぇ、そうみたいなんですが」ソワソワ

久「どうしたの?」

和「いえ、何故か周りから注目を集めているような……」


ヒソヒソ

アレガキヨスミ
アクノソウクツ
アノオモチデオトコヲ
ヒトヲヒトトオモワヌ
サスガノウチモヒクワ
チクワダイミョウジン
ダレヤネンオマエ

ヒソヒソ


優希「……確かに」

久「まぁ、去年台風の目となった龍門渕を破っての進出だからね。大なり小なりマークはされてると思うわよ」

和「えぇ、もちろんそれは覚悟していたのですが」

久「?」

まこ「うむ、なにやら酷く怯えられていたり敵意を向けられているような……」

優希「ふふん、そんなに恐れられるぐらい私たちの武勇も全国に轟いているのか。これは楽しみだじぇ」

咲「……あれ? そう言えば京ちゃんは?」

久「あら? さっきまで着いて来てたような気がするんだけど……」

まこ「自分のホテルに行ってしまったのかのう?」

久「いえ、私たちの荷物も持ってるからそんなことは……あっ、来た来た」


京太郎「あっづい……」


俺は現在大荷物を抱えながら女性陣が泊まるホテルに向けて歩いている。
荷物の重さもそうだがこの暑さがやばい。
以前長野も暑いといったが訂正しよう。東京の暑さはやばい。長野の比じゃない。
つーかアスファルトの照り返しがきつすぎだろ、何だこれ。
ヒートアイランド現象ってのを昔習った記憶があるが体感することになるとは。
東京の人たちはマゾなのか常時セルフバーニング状態なのか。よく耐えられるもんだ。


京太郎「あ゛ー重いー」


愚痴が止まらない。
ちなみに俺が手に持っているのは自分の荷物のほかにパソコンやらこれまでの牌譜やら麻雀牌やらいろいろである。
パソコンもそうだけど麻雀牌は意外と重い。そしてマットもそこそこ重い。
それが2セットもあるのだから結構な重量だ。
最近麻雀の勉強もそうだけど筋トレしたほうがいいんじゃないかと思い始めてきた。

他のメンバー(部長と優希を除く)は手伝うと言ってくれたが、俺にも男のプライドと言うものがある。
見栄を張って個人の荷物以外は全部持つといった結果がこれである。
まぁ、俺を除いて大会を控えた大切な体だ。力仕事ぐらいは引き受けるべきだろうよ。

……自分で言ってちょっと悲しくなってきた。ちくしょーめ。
俺と同じ気分を分かち合える仲間が欲しいと最近常に思う。
仮に新たな部員を迎えるとしたら、どんな美少女よりも気のいい同学年の男が欲しい。

ハーレムだなってからかわれる事も多いけどそんな事でテンションがあがったのは最初だけだ。
そこまで役得があるわけでもないし、むしろ男だからって体よく使われている感がある。
向こうも向こうで最近俺を男として見なくなってきてるような気がする。
優希とかこの前パンツ丸出しヘソ丸出しでベッドに寝てたし。
俺もそんな姿にムラムラするよりゲンナリしてしまって黙ってタオルケットをかけてやった。

ちなみにその場面を丁度和に見られて何かを誤解したのか悲鳴を上げられ、
中高一本拳が俺の人中に食い込んだのは記憶に新しい。
ほんと理不尽だよね。優希が誤解が解いてくれて、痛みにもがく俺にひたすら謝ってくれたけどさ。


京太郎「……仲間が欲しいなぁ」


暑さのせいか、疲れのせいか、何故か緊張して眠れなかったせいか、思考が思わず口に出た。
丁度どこかの高校の制服を着た女子数名が俺の横を通り過ぎていて、ガッツリ聞かれたのだろう。すごい顔で見られた。
少し歩いてから後ろを振り返ると、ヒソヒソ話していた女子は何かに怯えるように早足に去って言った。
このやってしまった感。

他の高校も同じホテルに泊まっているのだろうか。
気付けばホテルに近いほど近いこの道に制服姿の女子があちらこちらにいる。
だが不思議と皆が皆、何故か俺の顔を見ながらボソボソと話している。
だが、視線を送ると揃いも揃って気の毒そうな顔をしながら露骨に顔を逸らしたり逃げ出したりしている。

俺の人生でここまで女の子から注目されたのは初めてだ。
とはいえ、『須賀君の頭は白骨温泉の源泉ですか? いい温度で沸いてるんですか?』
と和に言われた俺も、流石に好意の視線だとは思わなかったけど。
和も大概にひどいよな。ただ、こんな手牌から

33m22255599s西中中 ツモ9s

混一色狙うために3萬切っただけなのに。
そう説明したら今にも髪の毛が金色になって逆立ちそうなぐらいの勢いで怒られたけど。
俺はその時、和は怒ると本当に怖いなって思いました。
そんな小学生並の感想を抱いていると道の先から優希と部長が手を振っているのが見えた。


優希「遅いぞ犬ー。走れー!」

久「須賀くーん。あと10秒以内に来なさーい」


周りのざわめきが大きくなった気がする。
なんとも居心地の悪い感覚だ。
そして部長は心底楽しそうな顔でカウントを開始している。
人の皮を被った悪魔め。いつか男が狼だって事を分からせてやる。
そんな思考とは裏腹に、俺の体は反射的に最後の力を振り絞って残りの道を全力疾走していた。

後から思ったけど、別に走る必要はなかった。
そもそもこの大量の荷物は事前に宅配便でホテルに送ればよかったんじゃ。
そう突っ込む前に体が動いた俺も同罪である。



(女子部屋にて)

京太郎「あー、重かった!」ドサドサ

咲「京ちゃん、お疲れ様。はい、お茶」

京太郎「おっ、さんきゅ。……あー、落ち着くと動きたくなくなるな」ゴクゴク

和「須賀君のホテルはここからどれぐらいなんですか?」

京太郎「10分ちょいだったかな? 暑いからもう外でたくねぇ……」グテー

久「あら? 私、今から着替えようとしているんだけど?」ニヤニヤ

京太郎「……出て行きます」

まこ「すまんのう、汗かいたからさっさと着替えたくてな。夜になったら皆で食事にでも行くか」

京太郎「うっす。んじゃ、それまでは適当にホテルで休んでます」

咲「京ちゃんごめんね。後で連絡するからね」

京太郎「おう、じゃあまた後でな」ガチャッバタン

久「さーって、さっさと着替えちゃいましょ。それにしても、本当に東京は暑いわねぇ」ヌギヌギ

咲「アスファルトの照り返しって本当に強烈ですね」ヌギヌギ

和「長野は田んぼや山ばっかりですからね。それだけでも東京と比べれば涼しいんでしょう」ヌギヌギ

まこ「京太郎が外に出たくないと言う気持ちも分かるのう。……あー、大分汗かいとる」ヌギヌギ

優希「おぉ、のどちゃんのおっぱいの谷間に汗が垂れてるじぇ。えろいろい」ワシッ

和「ちょ、ちょっとゆーき、やめて!」ジタバタ

久「どれどれ、ちょっと先輩にも見せてみなさい」ニヤニヤ

まこ「やめんか阿呆共」


(中略)



久「さて。夕食には早いけどどうしましょうかね?」

和「須賀君じゃないですけど、確かにちょっと出歩くには勇気のいる暑さですね……」

コンコン

咲「あれ? 誰か来た?」

優希「はいはい、誰だじょ?」ガチャ

ゆみ「失礼、久しぶりだな」

優希「あ、鶴賀の部長。どうしてここに?」

智美「ワハハ。部長は私だぞ」

モモ「いや、もう引継ぎしたからむっちゃん先輩が部長っす」

睦月「新部長です。よろしくお願いいたします」フカブカ

優希「あ、どうもこちらこそ」ツラレテフカブカ

まこ「……何を玄関先で話とるんじゃ」

佳織「すみません、皆さんの応援に来たので挨拶と……その、ちょっとお話がありまして」

ゆみ「悪いが上がらせて貰って構わないか?」

まこ「ん、構わんぞ」

モモ「お邪魔するっす。あー暑かった」

ドタバタ
ガヤガヤ

久「何はともあれ、わざわざ応援に来てくれてありがとう」

ゆみ「あぁ。我々長野県代表だからな。精一杯応援させてもらう」

智美「まぁ、うちの1~2年生は経験が浅いからなー。全国レベルの試合を見せたかったっていうのもあるけど」ワハハ

睦月「(元部長が部長らしいことを言ったのを初めて聞いた気がする……)」

佳織「(そんなこと言っちゃうと智美ちゃん可哀想だよ)」

睦月「(直接脳内に!?)」

佳織「?」

モモ「と言うわけで応援に来たっす。ぜひ頑張ってほしいっす」

和「ありがとうございます。精一杯頑張ろうと思います」

まこ「しかし、何やら話があると言っておったがなんじゃ?」

ゆみ「あー」ソワソワ

佳織「えっと」ソワソワ

智美「ワハハ。ここは新部長、スパッと聞いてくれ」

睦月「!?」

モモ「元部長は相変わらずキラーパスが酷いっすね」


睦月「え、えっと……」

清澄一同「?」

睦月「聞きたいことが、あるんですけど」

まこ「なんじゃ?」

睦月「その、清澄に須賀さんって居ますよね?」

久「須賀君? えぇ、ホテルが違うから今は居ないけど」

睦月「その、須賀さんなんですけど……」







睦月「皆さんのペット、だとか、奴隷、と言うのは本当ですか?」







久「」

まこ「」

和「」

優希「」

咲「」

清澄一同「はぁ!?」

睦月「ひぃっ! すみませんすみません!」

モモ「(むっちゃん先輩、ずいぶんストレートに行きましたね……)」

佳織「(もうちょっとオブラートに包めばよかったのにね)」

モモ「(直接脳内に!?)」

佳織「?」

和「ど、どうしてそんな話になるんですかっ!」

久「あまりにも想定外の話過ぎて変な声出しちゃったわ」

咲「わ、私も……」

ゆみ「やはり、出鱈目だったか……」

智美「ワハハ。おかしいな?」

まこ「……どういうことなんじゃ?」

ゆみ「その、だな。合同合宿中に須賀君が荷物を届けに来ただろう?」

優希「そういえばそんなこともあったじぇ」

ゆみ「その時に、何故か須賀君が皆の犬だとか、皆に仕えることに喜びを見出しているという噂が流れてな」

咲「(そういえば)」

優希「(風越のメンバーにそんなことを言ったような記憶があるじぇ……)」

ゆみ「と言うか噂の出所の半分はうちの蒲原が須賀君の言葉を曲解してとらえてしまったことが原因なんだが」

智美「ワハハ。すまんすまん、そんなことを言ってたような気がするんだが」

ゆみ「おいっ! すまん、あとで叱っておくから……」

久「そんな噂が流れていたとはね……。確かに須賀君はたった一人の男の子だからいろいろ力仕事を任せることも多いけど」

咲「そうです! 京ちゃんが奴隷だとかそんなこと……」

まこ「うむ。決して奴隷だとか、その、ペ、ペットだとかそういうもんではないけぇ。同じ麻雀部の仲間じゃ」

モモ「やっぱそうだったすか。まぁ、おかしいとは思ってたっすけど」

和「何事かと思いましたが誤解とわかっていただけてよかったです……」

睦月「その、それが、言いにくいんですけど……」ソワソワ

咲「ま、まだ何かあるんですか?」

佳織「この噂……なんだか全国的に広まってるみたいなんです」

久「」

まこ「」

和「」

優希「」

咲「」

ゆみ「最初は長野3校の中だけで話していたんだが何故かこの噂がネットに流れていてな……」

睦月「そこで尾ひれ背びれが付いてすごいことになってるんです」

モモ「いったい誰がネットに流したんすかねぇ……」







智紀「へくちっ」

一「どうしたのともきー。風邪?」

智紀「ううん、大丈夫」







和「そ、それでいったいどういう噂になっているんですか?」

睦月「えっと、いろいろあるんですけど大きく分けて2パターンあるんです」

咲「2パターン?」

ゆみ「あぁ、まずは須賀君が言葉通り奴隷として虐げられているというパターンだ。具体的に言うと」


  • 元々清澄高校麻雀部は数名の男子生徒で和やかに部活を行っていた。

  • だけどある日、議会長としての権力を笠に現在の女子メンバーがバイクに乗り肩パットを付けて乗り込んできた。

  • そして麻雀部の部室、備品の引き渡し及び男子メンバーに奴隷となるよう求めて麻雀対決を迫ってきた。

  • 当然拒否する男子メンバーだが女子メンバーの中に、広島に本拠地を置くヤクザの一人娘がおり、
 脅されて泣く泣く勝負を受けることに。

  • 持ち点10万点トビ無のルールで団体戦が行われたが先鋒戦東一局で男子メンバーは飛ばされ絶望に。

  • 対局中に豚足を丸かじりする先鋒メンバーはトビなしだから続ける旨を伝え更に嬲り続ける。

  • 更に次鋒、中堅、副将と嬲られ続け大将戦時には-15万点。

  • そして大将戦では男子メンバーはひたすら一向聴のままで手を進めることができず更に執拗に嬲られ続けた。

  • オーラスで男子メンバーが四暗刻単騎をテンパり、せめて一太刀と思って手を進めるも、
 聴牌時に切った牌で大明カンからの数え役満をアガられる。

  • アガリやめもせず親連荘を繰り返す大将の魔王に、男子メンバーは泣きながら全員土下座して謝ることに。

  • それでも魔王は「麻雀って楽しいよね」と無情にも続行を告げた。

  • 泣いて許してくださいと言う男子メンバーに魔王は「早く座れよ」と笑った。

  • 勝負が終わったのは男子メンバーの一人が発狂して倒れた時。

  • 男子5人のうちの4人は現在も病院で入院中。

  • 残った一人が女子メンバーの奴隷として日々こき使われている。

  • ろくに麻雀を打たせてもらえず、雑用を繰り返す日々。

  • 従わないと暴力を示された後、3対1の麻雀で叩きのめされる。

  • 教師に訴えかけようとするもやはりヤクザ後ろ盾があり助けてもらえない。

  • 最近の男子メンバーはこれがあるべき姿、これが正しいこと、
 皆に仕えることができて幸せ、と自分で思い込み精神の均衡を保っている。


ゆみ「まぁ、こんな感じだ」

久「(いつから私は漫画に出てくる悪の生徒会長キャラに……)」

優希「(豚足は……食べないじぇ)」

まこ「(ヤクザ……ヤクザ……)」

咲「(うぅ、私だけ一部分真実が混ざってる……)」

和「……と言うより私達じゃないほかの人たちの話が混ざってるような気がするんですけど」




透華「はっくしょん!」

衣「ぷしゅん!」

一「2人も? 風邪が流行ってるのかなぁ」





ゆみ「それで、もうひとつなんだが……」メソラシ

睦月「あの、その」モジモジ

佳織「……うぅ」モジモジ

モモ「あぅ」モジモジ

智美「ワハハ」ワハハ

久「……今度は何」

睦月「そ、その。奴隷は奴隷でも……その、性的な意味での、奴隷っていう噂も流れているんです」

久「」

まこ「」

和「」

優希「」

咲「」

ゆみ「大方の流れはさっきの話と変わらないんだが……」


  • 女子メンバーの中にヤクザの情婦がいる。

  • その女子メンバーは豊満な肉体を生かし残った男子メンバーに迫っている。

  • 男子メンバーは必死に拒絶するがそれでも女子メンバーは迫ってくる。

  • とうとう我慢できなくなった男子メンバーは女子メンバーと関係を持ってしまう。

  • 女子メンバーはそれをネタに男子メンバーを脅し、男子メンバーの調教を開始する。

  • 殴る縛る垂らす責める、ありとあらゆる苦痛を与える。

  • 最初は苦痛に身をゆがめていた男子メンバーも、徐々に覚えたことのない快感に身をよじることになる。

  • そしてある日、男子メンバーは開いてはいけない扉を開いてしまう。

  • 女子メンバーはそれに歓喜して男子メンバーを「犬」と呼ぶ。

  • 今では率先して女子メンバーにつき従う男子メンバー。その瞳に輝きはなかった。

  • 男子メンバーの下着は亀甲縛り。好物は蝋燭というクッソ濃厚なM奴隷となっている。

  • 最近は対局中も椅子(物理)になっている。


ゆみ「ざっとあげるとこんな感じだ」

和「」



(そのころの宮守女子宿泊地)

塞「ねぇ、聞いた? あの清澄高校の噂」

豊音「うん。聞いた聞いた。ちょーこわいよー」ブルブル

胡桃「ヤクザの権力を盾につけて男子部員を奴隷に……」

白望「ダル……」

エイスリン「ニホンノmafia。ヤクザノオイコミ? エンコヅメ?」ガクガク

塞「ちょ、どこでそんな日本語覚えてきたの?」

エイスリン「コワイ。モシ、キヨスミトアタッタラ、ワタシノアイテハ」

胡桃「清澄次鋒は(麻雀雑誌ペラペラ)あっ、噂の広島ヤクザ……」

エイスリン「ユビ、ユビキラレル。アガッタラキットユビキラレル。ヤダ、コワイ」ポロポロ

豊音「だ、だいじょーぶだよ! そういうのは何かしでかした人が責任取るためにやることだから!」

胡桃「そ、そうそう。そんな一緒の卓についただけで小指切られるなんてことはないから」

白望「(あんまりフォローになってない……ダルい)」

塞「と、とにかく当たらないことを祈ろう。大丈夫、参加校は沢山あるんだしそうそう当たることはないって」

白望「塞、なんだかフラグっぽい……」

豊音「そういう私も相手は噂の魔王さんだし、ちょっと怖いな。アガれるのかな。ひ、酷いことされるのかな」プルプル

塞「見た目はおとなしそうな女の子なのにね。長野はどんな魔窟なんだか」

エイスリン「コワイ、ヤクザ、コワイ。キット……」



モワンモワンモワーン

――――――――――――――――――――
――――――――――
―――――



エイスリン「ロ、ロン! 8,000テンデス!」

まこ「ッチ」

エイスリン「ア、アノ。8,000テン……」

まこ「わかっとるわい! おらっ!」点棒バシッ

エイスリン「ヒッ!」ビクッ

巴「あ、あの。点棒の受け渡しはもう少し丁寧に……」

まこ「あぁん?」

巴「そ、その、ま、マナーというか」

まこ「ほーう。姉さん、言うのぅ」

巴「」ビクビク

まこ「……まぁ、そうじゃな。すまんすまん、以後気を付けるわ」

巴「い、いえ、わかって頂ければ」ホッ

まこ「ところで、最近こっちに店を出してな。よかったら働かんか?」

巴「えっ?」

まこ「なーに、ちょっと客と一緒に風呂に入って体を洗ってあげるだけじゃけぇ。大したことないわ」

巴「そ、それって」

まこ「客も気持ちよくなって自分も気持ちよくなる素晴らしい商売じゃ。給料も高いぞ。どうじゃ?」

巴「け、結構です」ナミダメ

まこ「そうか、残念じゃな。ベッピンじゃけぇ、売れっ子になるぞ」カチャカチャ、タン

由子「あ、あの。それ、ロンなのよー。5,200点」

まこ「あぁ? もうアタりけぇ。楽しそうでえぇなぁ、こっちは全然じゃと言うのに」

由子「す、すみません」

まこ「まったく、わしも楽しみたいのぅカチャカチャ

由子「」ブルブル

エイスリン「エ、エット、リーチデス」っ6ピン

まこ「あぁん? 3順目じゃと? わかるかいな、そんなもん」っ9ピン

エイスリン「アッ」ピクッ

まこ「なんじゃ?」

エイスリン「ア、アノ、ソノ」

まこ「はっきりせんかい!」ダンッ

エイスリン「ロ、ロン! リーチ、イッパツ、サンショク、ドラドラ。18,000……」

まこ「おどれ……」ビキッ

エイスリン「エット、ソノ」オロオロ

まこ「誰に向かって上等コいとるんじゃ! あぁ!?」タクヲケリアゲ

巴「ちょ、暴力は」

由子「お、落ち着いてほしいのよー」

まこ「黙れや! おまんらもいてまうど? あぁ!? それとも代わりにワビ入れるんか? あぁ!?」

巴「」

由子「」

エイスリン「ユ、ユルシテ」ガタガタ

まこ「おう。で、どうワビいれるんじゃ?」

エイスリン「エッ?」

まこ「どうワビいれるんじゃって聞いとるんじゃボケがっ!」

エイスリン「ゴ、ゴメンナサイ」ペコペコ

まこ「アホか。ワシもガキの使いで来とるんじゃないんじゃ。誠意ってもん示せや」っドス

エイスリン「ヒッ!」

まこ「おらっ、指出さんかい。それで許したるわ」

エイスリン「Noooooooooooo!」


―――――
――――――――――
――――――――――――――――――――


エイスリン「キットコーナル。ヤダヤダ」ポロポロ

豊音「落ち着いて! 審判の人もいるんだからそんなひどいことにはならないから!」ワタワタ

塞「……何でこんなに怯えてるの?」

トシ「あー私がこの前貸したヤクザ物のVシネマで変なイメージができちゃったのかねぇ」

胡桃「あー……」

白望「ダルい」



(またまたそのころの阿知賀女子宿泊地)

穏乃「嘘だよ、ね」

玄「そうです。嘘に決まっているのです」

灼「話を聞く限り、その、男の子を、せ、せ……奴隷にするよう子には思えないけど」

宥「た、確かお父さんやお母さんは弁護士や検事さんですごく真面目な人だったんでしょ? 
   ヤ、ヤクザの愛人だなんて。まだ15歳なのに」

穏乃「はい。本人もすごく、すごーくお固い真面目な子で」

憧「……でも、さっき別の学校の人が話してたけど清澄の人が男の子1人に大荷物持たせて走らせてたって」

玄「ほ、ほんとなの。それ?」

憧「うん、それでその男の子のことを、その、犬、って呼んでたって」

穏乃「そんな……」

灼「奈良から引っ越していってもう数年経つんだよね。……朱に交われば、ってやつなのかな」

宥「な、長野って怖いところなんだね」

灼「それにしても、せ、性奴隷って」カァッ

宥「あ、灼ちゃん。やめて」マッカ

穏乃「ほ、本当にそんな世界があるのかな。ねぇ、憧」

憧「(性奴隷……)」

穏乃「憧?」

憧「(それって……)」

モワンモワンモワーン


――――――――――――――――――――
――――――――――
―――――


「なぁ、和。もう、もうやめよう」


放課後の麻雀部部室。今日は練習もなく、部室にいるのは男女が1人ずつ居るだけだった。
京太郎は後ろ手に手錠をかけられた窮屈な体勢のまま、目の前で椅子に座りながら悠然と見下ろす和に言った。
苦しげな京太郎の表情とは裏腹に和は慈愛すら感じさせる柔らかい表情で京太郎に微笑みかけた。


「須賀君、何を言っているんですか」

「こんな、こんなことはやっぱり、やっぱりよくない」

「ふふっ」


京太郎の口から出る拒絶の言葉を聞きながらも、何故か和はとても楽しそうに笑った
和にはわかっていた。


(結局、言い訳と逃げ道を用意したいだけなのに)


和に無理やり従わされた。
手錠をかけられてどうしようもなかった。
脅迫されていたから仕方がなかった。

京太郎はこの関係を続ける際にそういう言い訳を用意しているということは和にはよくわかっていたのだ。
だが、この日まではそれを許していた。
目に苦痛と怯えしかなく、ただただ苦しんでいた時期まではそれでもよかった。


(だけど、それもお終いです)


先日の京太郎との逢瀬で彼の眼に灯ったその光を和は見逃さなかった。
責苦を受けている間、京太郎は先日口では拒絶の言葉を吐きつつ、苦しそうな表情を浮かべつつも確かにその光が宿ったのだ。


(『理解』と『許容』の時期ですよ、須賀君)


和は無言で立ち上がり、京太郎に近づいた。
びくりと体を震わせる京太郎を気にも留めず、黙って後ろに回り込んで京太郎の手錠の鍵穴に鍵を差し込んだ。


「……えっ?」


きょとんとした京太郎がそんな声を漏らすが、和は何も言わず鍵を回し、手錠を話した。


「そうですね、やめましょう。もう、自由の身ですよ」

「なっ」

「大丈夫です。今までのことは誰にも言いません。私の心にしまっておきます」

「あ、あぁ」

「さぁ、もう、行ってもいいですよ」


和は呆気にとられる京太郎ににっこりとほほ笑みつつ黙って入り口を指した。


「ふふ、行かないんですか? 解放されたんですよ」


和の言葉から3分ほど経っても京太郎はその場を動かなかった。
顔を伏せ、何か顔をしかめ辛そうにしている。


「ほ、本当に誰にも言わないんだよな」

「えぇ、本当に」

「本当だよな」

「しつこいですね。本当ですよ? データ類ももう消しました」


これ程念を押しても京太郎はそこまで言っても不安気な顔だった。
いや、これは『不安』ではなく『不満』の顔だった。
それに気づいた和は黙って椅子に座って京太郎に向き直った。


「須賀君」

「……なんだ?」

「跪きなさい」


京太郎の体がびくりと震える。
それを聞いた瞬間、京太郎の顔に一瞬浮かんだ喜びの表情を見逃さなかった。
だが、慌てて取り繕うように真剣な表情に戻る。


「の、和。もう終わりにするって……」

「えぇ、終わりにしました。これは私がただ単に、須賀君に『お願い』しているだけです」


今までの優しげな笑みから一転、酷く蠱惑的な、官能的な笑みを浮かべる。
事に及んでいるときに和が浮かべる笑みだった。
京太郎はその笑みを見るとぞくりと背筋に走る何かを感じた。


「この『お願い』を聞かなかったからと言って、今までのことを誰かに言うことはありませんよ。安心してください」

「う、嘘、だ」

「ふふ。須賀君、私が今まで嘘をついたことありました?」


その言葉に京太郎は黙り込む。
そう、和は一度たりとも嘘をついたことはなく、京太郎に言ってきたことはすべて真実だった。
京太郎自身、好まざるものではなかったが和との付き合いも長くなってきているからこそ理解できた。


「さぁ、もう一度『お願い』しますよ」


そういいながら和は足を組む。
比較的短めなスカートだ。おそらくかがみこめば下着が容易に見えるだろう。
さらに和は組んだ左足のソックスを脱いですっ、と軽く前に出した。


「跪きなさい」


京太郎は胸を抑えて何かを耐えるようにかきむしった。
呼吸が荒くなる。
ちらりと出口の扉を見た。
ほんの数歩歩けばたどり着く距離。


(行かなくちゃ)


だが、京太郎は踵を返そうとするが、足が張り付いたように動かなかった。


(この部屋を、出ていくんだ)


和に対して必死に拒絶の言葉を吐こうとするが、軽い息が漏れるだけだった。


(逃げ、なきゃ)


意志とは無関係に膝ががくりと折れた。
踵を返そうとしたときは全く動かなかった足がゆっくりと折れていく。


(お、俺は、に、にげ、こ……こん、な)


膝が麻雀部の冷たい床に触れる。


(こんなこと、い、いや、嫌なん、だ)

ぺたりと、そのまま床に手をついて、

(あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ)


心の中で狂ったように叫びつつ、京太郎は床に額を付けた。


(なんで、なんで)

(逃げなきゃ、逃げなきゃいけないのに)

(せっかく、せっかく終わったのに)

(何で、何で俺は、こんな、こんなことを)


必死に芽生えたそれから目を逸らし、必死に取り繕おうとするも結局逆らうことはできなかった。
京太郎は、わずかに震えながらも和の前で跪いた。


(あぁ!)


目の前で跪いた京太郎を見て、和は脳がどろりと溶けたかのような快感を覚えた。
あれほど言ったのに、逃げなかった。
言うとおりに跪いたのだ。
間違いなく京太郎は一歩を踏み出したのだ。
自らの意志で。
ぐつぐつと頭の何かが熱くなってくる。
下腹部の奥の奥がぎゅっとする不思議な感覚を和は味わっていた。


「須賀君。『お願い』を聞いてくれてありがとうございます」

(だけど、まだ『お願い』を聞いただけって言い訳をするかもしれませんね)

「とっても嬉しいです」

(次は、もっと明確な一歩を)

「だから、顔を上げてください。須賀君」

(踏み出してもらいましょう)


京太郎は跪いた体勢のまま顔を起こした。
瞬間、ドクリと大きく心臓が跳ねた。

椅子に座った和よりさらに低い体勢にいる京太郎が顔を上げると、ちょうど和の組んだ脚の隙間から下着が見えた。
薄手の赤い生地が見える。
和はそれを隠そうともせず、むしろ見せつけるようにそれを晒していた。

だが、京太郎の体を熱くさせた原因はそれだけではなった。
伸ばされた和の足。
ソックスを脱いで外気に晒されたその足に京太郎は目を奪われていた。
親指から小指に至るまで繊細に整った指。
珠のようにつるりとした美しいな踵の丸み。
ぷくりと程よく膨らみ、官能的なカーブを描いた脹脛。
美しい山の清水が常に滴り落ちているのではないかと疑うほどの美しい肌。

しかし、その美しい芸術品にわずかな疵があった。
脹脛の一部にわずかに青く、痣となった個所があるのを京太郎は気づいていた。
そして、その痣を付けたのも自分だということに気が付いていた。


(あれは、この前……)


そう、京太郎が和に言われるがまま和の足を舐めた時に付けたものだ。
その時京太郎は何気なく力を入れてしまったせいか、軽く歯が当たってしまったのだ。
その後和に沢山殴られたことも忘れ、京太郎は不思議な幸福感を味わっていた。


(あの、あの疵。あの足に疵をつけたのは、俺だ)


体が震えてくる。怯えでも恐怖でもなく純粋な喜びから。


(あの綺麗な足に)


京太郎の下腹部が熱くなってくる。
それが、固く熱を持ち始めてくることを京太郎は感じていた。


(俺が、俺が疵をつけたんだ)


そして京太郎は、小さく口元に笑みを浮かべた。


「さぁ、須賀君」


和も笑う。これから始まるであろう享楽的な時間を思い浮かべて。
京太郎の笑みを見て和はもうわかっているのだ。
これから京太郎がどう答えるのか。


「これから、どうしますか?」


和自身、もう我慢ができそうになかった。
少しでも返事が遅れれば欲望に身を任せ、京太郎をひたすらに嬲っていただろう。
だが、それは無用の心配であった。


「足を」


和の問いに即座に口を開く。
そして京太郎自身も和の望んでいること、自分の望んでいることを理解した。
倫理観や常識といった煩わしいのは京太郎の心にはどこにもなく、ただ純粋な本能だった。


「足を、舐めさせてください」


そういって、京太郎は笑みを浮かべたまま頭を下げた。
それを見た和は叫びだしそうな歓喜に包まれていた。
目の前の雄が愛おしくて仕方ない。
下腹部がさらに熱くなる。
恐らく、下着はひどいことになって居るだろう。
だがそれは和にとって些末な問題だった。


「まったく、本当に仕方ない人ですね須賀君は」

「はい。すみません」


和の侮蔑の言葉に、今までとは比べ物にならないほど従順な声で京太郎は謝罪の言葉を吐いた。
だが、謝りつつも京太郎の伏せた顔は今まで浮かべたこともないような歪んだ笑みを浮かべていた。


「ふふ、いいですよ」


ごくり、と唾を飲み込む音が部室に響いた。
それが京太郎のものなのか、和のものなのか、それとも両者のものなのか。
和は足をゆっくりと、京太郎に軽く差し出した。


「……さぁ、どうぞ」

「ありがとうございます!」


和の許しの言葉を聞いて、京太郎はまるで飢えた犬のように和の足に飛びついた。
自分の眼前で自分の足に縋り付く京太郎を見ながら、和はとろけきった情欲の表情を隠そうともせずその感覚に身を預けていた。


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憧「いやあぁぁぁぁぁ! 和が、和がそんなことをするなんてぇぇぇぇ!」

宥「きゃっ」ビクゥ!

穏乃「うわっ! あ、憧?」

灼「いったい何を考えたんだか……」