ストーカーがいる

そう確信した俺は部屋に隠しカメラを設置した

ドアの隙間に小さな紙をはさんでいたのが落ちていることが時々あったので

どうやらストーカーの奴は俺の部屋に忍び込んでいるらしい

撮って正体を突き止めてやる


学校から帰ると俺はすぐカメラからSDをとり、パソコンで再生した

そこには

「玄さん…?」

奈良にいるはずの友人だった

彼女は俺の部屋に入ると何をするわけでもなく、ぺたんと座った

「どういうことだよ…」

玄さんが長野の、しかも俺の部屋に侵入したのも大きな驚きであったが、

それよりもう7時間、8時間と映像の時間はたっているのに玄さんはじっと座ったまま動かない

今日は朝は8時に出て、部活に顔を出して午後6時に帰ってきた

それなのに…


だが9時間を過ぎてようやく動きがあった

「…!!?」

彼女は、俺の部屋の、

いま俺がパソコンの前に座って、背を向けている、

後ろのクローゼットに入っていった


そしてようやく俺が部屋に入り、カメラを外したところで終わった



俺は転がるように部屋を飛び出し、階段をかけおりた

だが、恐怖で足がもつれ、あと5段というところですべり落ちてしまった

「ぐぅっ…!」

角にスネや腕をぶつけ、痛むが逃げなくてはならない

堪えて立ち上がったとき鳴り出した携帯電話に俺はびくりとした

ディスプレイを見ると和からだった

――和!!

彼女にとっても友人である玄さんの狂行を知らせるかどうかも迷ったが、

今すぐ誰かに助けを求めたかった俺は通話ボタンを押した

『須賀君、大丈夫ですか?』

「和っ!ああ、和!それが大変なんだ!」

『落ち着いてください須賀君』

「ああ、ああ、すまん!で、でもっ、いま…!」

『ともかくそこから逃げてください』

「ああ!」


通話を切り、玄関で靴をはいているとき急に違和感を覚えた

いまの会話

『大丈夫ですか』

何を大丈夫なのかと気遣ったのか

『そこから逃げてください』

どこから逃げろと彼女は指示したのか

それに、思い返せば今の和の声が

近くに聞こえた気がする


そう、例えば、居間のほうからだったかもしれない

無意識に俺は居間のほう見た

基本的に家中の戸はあけたままにしてあるのでここからでも居間の中の様子は分かる


置いてある大き目のソファーの下からピンクの髪が見えた、気がした



今度こそ俺は叫んだ

飛び出してめちゃくちゃに走った


気がつくとどこか知らないところに着いていた

衝撃的な体験と乱暴に足を動かした疲労で俺は吐きそうになっていた

眩暈もした

ともかく警察に電話を…

いや、それより咲に電話だ

俺の家にまだあの二人がいるとは限らない

仲の良い咲の家に逃げたと思って、そっちに向かうかもしれない

そうなったら咲が危ない

一言でも警告をしなくては

咲のアドレスを探し、電話をかける

「はぁっ、はあっ、咲…げほっ…無事でいてくれっ」


すると


ピリリリリ、と聞き覚えのある着信音がすぐ近くで聞こえた


そして


「京ちゃん、そんなに私のこと心配してくれたんだね、嬉しいよ」


今度は背後から聞こえた



カンッ