京太郎「せめてトイレくらいは自分の意思で行かせてもらえませんか。不自由で仕方ありません」

智葉「いいわけあるか。私が手足を自由にしたら、すぐにでもここから逃げ出していくんだろう」

京太郎「仮にこの部屋を出たとしても、外には怖そうな人たちがたくさんいそうなものですけど」

智葉「だからこそ言ってるんだよ、手荒な真似などさせたくはないからな。これは私の愛なんだ」

京太郎「愛、ですか」

智葉「不満そうな顔するなよ。二人きりだというのに、お前ときたらまるでつれないじゃないか」

京太郎「いつまで二人きりでいるつもりなんです。外だって今まで通りとはいかないでしょうが」

智葉「お前の言う通りだよ、普通は高校生が一人いなくなっただけでも大騒ぎだろう。普通はな」

京太郎「なんでも無理が通るようで羨ましいですよ。智葉お嬢さまは」

智葉「おいおい。それではまるで、私がなんの苦労もなくお前を監禁しているみたいじゃないか」

京太郎「違うんですか」

智葉「もちろん違うよ、親父どのには一生分頭を下げたさ。随分と渋って手こずらせてくれたが」

京太郎「…………」

智葉「刃物を持ち出したあたりで血相を変えたのは見物だったよ、お前にも見せてやりたかった」

京太郎「一体どういう気分なんですか。自分の命を盾にして、大切な人を思い通りに動かすのは」

智葉「最悪の気分さ、決まってるじゃないか。そうまでしてでも手に入れたいものがあるんだよ」

京太郎「智葉さん」

智葉「ああそうだ、そういえば親父どのからお前への言伝があるんだったな。聞きたいか京太郎」

京太郎「今さら何を聞かされようと思うところもないですが、それでよければ聞かせてください」

智葉「『娘を恨まないでやってくれ。君がそこを出ることがあれば、罪は私が償わせてもらう』」

京太郎「あなたはこれ以上俺から何が欲しいって言うんだ。そうまでして手に入れたい物なのか」

智葉「そうとも欲しいさ、喉から手が出るほど欲しいよ。私は唯一つお前との安心が欲しいんだ」

京太郎「安心」

智葉「思いつく手段なんて、こうしてお前を縛り付けることくらいだよ。私は弱い人間だからな」

京太郎「体だけ近くにあったってなんの意味もないでしょうが! 他に方法があるはずですよ!」

智葉「…………」

京太郎「智葉さん一人じゃ思いつかないって言うなら俺もいっしょに考えますから! だから」

智葉「あはは。はは、はははは」

京太郎「智葉、さん?」

智葉「きっとそうだな、何よりも大事なことを見落としていたよ。心がなければ意味はないんだ」



智葉「だから否が応でもお前の『親心』をもらうとするよ。たくさん注いでくれるよな、パパ?」