優希「それでは再会を祝して乾杯ー!」ゴクッ

京太郎「乾杯!」ゴクッ

咲「かんぱーい」ゴクッ

和「乾杯です」ゴクッ

京太郎「ぷはあっ! いやあ、まさにこの一杯の為に生きてるってやつだな!」

優希「京太郎、親父臭い」

京太郎「んだと、このやろー!」

優希「おおっ、やるか、こらー!」

和「クスクス……ゆーき、せっかくの席なんだから喧嘩はいけませんよ?」

優希「うっ」

京太郎「やーいやーい、怒られてやんの!」

咲「京ちゃんもだよ! 久しぶりに当時の清澄高校一年生部員で集まったって言っても、もう大人なんだから少しは落ち着きなよ」

京太郎「ぐっ」

和「いくら顔馴染みだけの集まりとはいえ、皆それなりに知名度もありますからね……
同じ麻雀の世界にいるのになかなか会えないのはちょっと寂しいですけど」

咲「最後にあったのは……3ヶ月前の京ちゃん達の結婚式だっけ?」

京太郎「そうだったな。 それにしても、もうあれから3ヶ月も経つのか……まだついこの前ような気もするぜ」

優希「うふふ、ラブラブで毎日が楽しいから時間が経つのが早いんだよな、あなた♪」

京太郎「そうじゃなくて誰かさんのお守りに忙しくて時間の間隔がおかしくなってんだよ、奥さん!」

優希「なにを!」

京太郎「なんだよ、このやろ!」

和「もう、だから2人共……」

咲「まあまあ、もう2人は放っておこうよ和ちゃん」

和「……そうですね。 夫婦喧嘩は犬も食わないと言いますし」

咲「と言うより、2人からしたらこんなの喧嘩の内に入らないんじゃないかな?」

優希「むきー!」

京太郎「ぐぬぬ……!」

和「確かに、笑ってますね2人共」

咲「仲がよくて羨ましいよね。 私もいつかはあんな風にじゃれあってみたいなあ……ね、和ちゃん」チラッ

和「えっ!? いや、しかし私は……」

咲「むう……いいよ、未だに手すらまともに繋げない和ちゃんにそういうのを期待した私がバカでした」ツーン

和「さ、咲さぁん」


優希「修羅場か?」ムニー

京太郎「痴話喧嘩じゃね?」ムニー

――


京太郎「えーっと何の話してたんだっけ?」

咲「4人でなかなか会えないよねーって話と和ちゃんがヘタレって話だよ」

和「咲さん!?」ガーン

京太郎「まあ和がヘタレなのは置いといて……確かに結婚して
地元の俺と優希、東京の咲と和で一緒に会える事はほとんどないよな」


和「須賀君まで!?」ガガーン

優希「咲ちゃんものどちゃんも東京のチームで活躍するプロ雀士だからなー。
テレビでもしょっちゅう紹介されてる……のどちゃんはヘタレだけど」

和「もう関係ないじゃないですか!」

優希「でも咲ちゃん達はすごいよなー、この前とうとうプロ麻雀せんべいのカードになったって聞いたし」

咲「そういう優希ちゃんだって地元のチームじゃエースだって聞いたよ?」

優希「ふふん、実はこの前【東風の神】という二つ名を頂戴したのだ!」

京太郎「鳴きと高火力を組み合わせた速攻型雀士。 特に東風戦の彼女は誰にも止められない。
今日もタコス片手に点棒の山を築く東風の神……だったか?」

咲「あっ、それこの前優希ちゃんの特集記事が組まれた時の……」

優希「なんだ京太郎、見てないとか言ってたくせにやっぱり私の特集ちゃんと読んでたのか!」

京太郎「まあ、な。 それにしても随分持ち上げられてたよなあ。 その正体が未だに
子供っぽいタコス娘だとわかったらイメージ崩れんじゃねーの?」

優希「むかっ! それはこっちのセリフだ!」

咲「あっ、確かに今の京ちゃんはテレビで見る時と全然違うね」



優希「こんなところ見られたら子供達の夢を壊しちゃうな、【牌のお兄さん】?」

京太郎「……頼むからその名前で呼ばないでくれ」

咲「最初に見た時はビックリしたなー……だって京ちゃんがテレビで
『みんなー、今日も京太郎お兄さんの麻雀教室の時間だよー!』って言ってて……きゅふふ……」プルプル

京太郎「笑うなよ! 瑞原先輩みたいに30過ぎでも頑張ってやってる人だっているんだぞ!」

優希「本人に聞いたらボロボロにされるぞ京太郎……それにしても昔は
あんなに弱かった京太郎が今や誰かに麻雀を教える立場……世の中はよくわからないな」

京太郎「まあ、それは俺も正直思う。 麻雀始めたのも高校からな俺が誰かに麻雀を教えられる立場なのかってな」

咲「京ちゃん……」

京太郎「でも、まあ……やってみてわかったけど教えるのってすっげえ楽しいんだ。
あの清澄の皆で行ったインターハイの熱気とか、色んなものを少しでも次の世代が
感じられる手助けが出来てるのかもしれないって思うと……そういうのって最高だろ? だから今の仕事はすごく充実してる」

優希「京太郎……」

京太郎「まっ、俺は結局3年間打ち込んでも自分の手で全国には行けなかったけどな……
そんな奴が何言っても恥ずかしいだけか」

咲「そんな事……」

優希「そ、そんな事ない!」

京太郎「優希?」

優希「魔境長野なんて呼ばれてた私達の世代3年間で、最終的に県大会ベスト4に
なれただけでもすごいんだ! 確かに京太郎は全国には行けなかったけど……私はそれを恥ずかしいなんて思わない!」

京太郎「優希……」

優希「私は、あんなに部内の対局で負けても全然折れなかった京太郎が好きなんだ……だからそんな事、言わないで」

京太郎「……ありがとな」ナデナデ

優希「……うん」


咲「うーん、なんだか入り込めない雰囲気だなあ……これが夫婦の絆ってやつなのかな和ちゃん」

咲「和ちゃん?」

和「私はヘタレなんかじゃないのに……いいじゃないですか、未だに私から手繋げなくても、キ、キ、キスできなくても……」

咲「まだ落ち込んでたんだ……ごめんね和ちゃん」ナデナデ

――


咲「そういえば……ねぇねぇ京ちゃん」

京太郎「ん?」

咲「京ちゃん達は子供とかどうするの?」

京太郎「ぶっ!?」

優希「んぐっ!?」

和「さ、咲さん! いきなりなんてことを言い出すんですか!」

咲「えっ、でも2人は結婚したんだし別におかしいこと言ってないよね?」

和「そ、それはそうですけど……」

京太郎「子供、子供かぁ……」

咲「あれ、あんまり乗り気じゃないの?」

優希「……私はいつでも構わないけど」

京太郎「まだそんなに安定してないからなあ……俺も優希も忙しいし
そんな状態で子供の面倒ちゃんと見てやれる気がしないんだよ」

和「確かにゆーきも須賀君も大会やら何やらで忙しそうですね……」

京太郎「それでも2人の時間は取れるだけマシなんだけどな……だからもう少し落ち着くまでは俺は子供を作る気はないな」

咲「そっか……」

京太郎「……産まれたら優希似のすごい可愛い子なんだろうけどな」

優希「んうっ!?」

和「ゆ、ゆーき大丈夫ですか!? はいお水です!」

優希「んくっ、んくっ……はあはあ、喉詰まらせて死ぬかと思った……おい京太郎!」

京太郎「なんだよ」

優希「い、今のはいくらなんでも恥ずかしすぎるぞ! だいたい、それを言うなら……」



優希「京太郎に似てかっこいい子の間違いだろ!」

咲「うわあ」

和「2人共完全に出来上がってますね……」

京太郎「なんだとぉ、そんなわけないだろー。 最近の出生率を考えたら優希に似た可愛い可愛い女の子に決まってらあ!」

優希「それはIPS細胞での出生が増えたからだろー!
京太郎と私の子供なら京太郎に似てかっこいい男の子が産まれるに決まってる!」

京太郎「女の子!」

優希「男の子!」

咲「……もういっそ2人産んだらどうかな?」

和「双子という手もありますよ」

京太郎・優希「それだ!」

――


京太郎「……」

優希「……」

咲「黙っちゃったね」

和「2人共、自分達がどれだけ恥ずかしい発言をしたのか理解したんでしょうね」

京太郎「……」チラッ

優希「……」チラッ

咲「なんだろう。 すごくカンしたい気分だよ」

和「お、落ち着いてください、咲さん」

咲「むむむ」

京太郎「……そ、そういえば」

咲「なにかな京ちゃん、子供の名前でも決まった?」

京太郎「」

和「私もさっきのお返しに同じ話題をぶつけましょうか……ねぇ、ゆーき」

優希「の、のどちゃんが怖い……」

京太郎「そ、そうじゃなくて! 咲と和は付き合ってるんだろ?」

咲「そうだけど」

京太郎「い、いつになったら結婚とかするつもりだ?」

和「はいっ!?」

咲「……」

優希「そ、そうだそうだ! もう同棲してるんだし結婚しててもおかしくないな!」

咲「……」

和「え、えっと、あの、その」

京太郎「まさか世間体とか言い出さないよな? 同性婚が認められてそれなりに経つんだぜ?」

優希「そうだぞ、のどちゃん。 部長なんて染谷先輩と風越のキャプテンから同時にプロポーズされて困ってるらしいし」

京太郎「なんだそりゃ、竹井部長そんな事になってんのか?」

優希「うん、付き合ってもいないのにプロポーズされても困るのよねー……って苦笑いしてた」

京太郎「そりゃ困るわ……」

咲「……私は」


和「」ビクッ





咲「私は、別に結婚できなくてもいいよ」

和「えっ……」

京太郎「咲!? お前何を……」

咲「そりゃあ、ね。 そうなれたらいいなーとは思うよ?」

優希「だったら!」

咲「だけど和ちゃんにそれを求めるのが酷なのもわかってるつもり……
未だに和ちゃんの両親に私がよく思われてないのもね。 だからこのままでいいの。
今だって私は十分幸せなんだから下手に波風立てたくない……もう、大切な人を失うなんて嫌だよ……」

優希「咲ちゃん……」

和「……」

咲「……ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね!」

京太郎「咲! おい、和……いいのか、咲にここまで言わせておいてだんまりなんて」

和「……」

優希「私もそう思うぞ、のどちゃん。
最終的には当人同士の問題だけど今の咲ちゃんは見てて痛々しい……泣いてないのが不思議なくらいだった」

和「私、は……」

――


優希「きゅう……」

京太郎「全く、飲み過ぎでダウンしやがって……よいしょっと」

咲「あはは、優希ちゃんハイペースだったからね」

和「……」

京太郎「4人で集まれたもんだからテンション上がっちまったんだろうな……しょうがない奥さんだよ」

咲「京ちゃん、そんな事言ってるけど本当はそんな優希ちゃんが好きなんだよね?」

京太郎「……まあな。 たまには風に当たるのも悪くないし俺達歩いて帰るわ」

咲「んふふー、頑張って家まで背負ってあげなよ京ちゃん?
じゃあ、私達はタクシー捕まえたいからこっち……ここでお別れだね」

京太郎「おう。 今日は楽しかったぜ咲、和」

咲「私も楽しかったよー。 ねっ、和ちゃん?」

和「あっ、はい……」

京太郎「そりゃあ良かった。 じゃあまたいつか会おうぜ2人共!」

咲「うん! 京ちゃん達も末永くお幸せにー!」

京太郎「もちろんだー!」


咲「ふう……じゃあ私達も少し歩いてから帰ろっか和ちゃん」

和「はい」

咲「綺麗な星空だね」

和「そうですね……東京だとあまり星なんて見られませんから余計にそう感じます」

咲「見てる余裕もあんまりないからね……やっぱり地元は落ち着くよ」

和「咲さん……」

咲「どうしたの、和ちゃん?」

和「……いえ、なんでもありません」

咲「ふふっ、変な和ちゃん」

和「……」

咲「……」

和「……あの」

咲「なぁに?」

和「手、繋ぎませんか?」

咲「うん、いいよ」ギュッ

和「あ……」

和(私が決死の想いで伝えた事をあなたはこんなにもあっさりと……)

咲「えへへ、和ちゃんの手あったかいね」

和「……///」

和(おまけにこんな言葉までセットで……咲さんにはかないません)

咲「嬉しいなあ」

和「えっ」

咲「いつもは私から手を繋ごうって言うから……今日和ちゃんから言ってくれて本当に嬉しいの」

和「……!」

和(こんな些細な事でここまで喜んで……私が、そうさせてしまったんですか?)

咲「あはは、私も酔っちゃったのかな? なんだか頭がフワフワしちゃってるや」

和「……」

咲「そんなに飲んではいないはずなんだけどなあ……」

和「咲、さん!」

咲「今度はなにかな、和ちゃ……」

チュッ……

咲「……へ?」

和「あ、う、その……」



和(寸前で恥ずかしくなって唇じゃなくて頬にキスしてしまいました……ああもう、私ったら何をしてるんですか……!)

和「あ、あの咲さん……」

咲「……」ポロポロ

和「!?」

和(さ、咲さんが泣いてる!? ま、まさか嫌だったんですか? それとも土壇場で怖じ気づいた私に情けなくなったとか……)

咲「和、ちゃん」

和「は、はいぃ……!」

咲「ありがとう……」

和「……はい?」

咲「それとごめんなさい、さっきちょっと嘘ついちゃった」

和「嘘?」

咲「うん……私が結婚しなくていいってあの時言った理由は本当はたいした事じゃなかったの」

和「それ、どういう……」





咲「本当は私ね、正直わからなくなってたの……和ちゃんは本当に私が好きなのかなって」

和「えっ……!?」

咲「だって和ちゃん、私から言わないと何もしてくれないし、
私が何かしても反応悪いし、付き合ってから一度も……好きって言ってくれなかったし」

和「あ……」

和(ああ、なんという事ですか……私、そんな簡単な事すらしてなかった……
そのせいで咲さんをこんなに不安にさせて……最悪、です)

咲「だから嬉しい……今日は和ちゃんから手を繋いでくれた、
和ちゃんがキスしてくれた……私の事を好きだって表してくれたのが本当に、嬉しいよ……」

和「っ、咲さん!」ギュッ

咲「和ちゃん……」

和「好き、です……告白したあの日から変わらず……いいえ、今はそれ以上に咲さんが好きなんです……!」

咲「あ……」

和「ごめんなさい……私は自分の気持ちすらちゃんと伝えようとしてませんでした……本当にごめんなさい……!」

咲「あはは、なんだろう……私夢でも見てるのかな?
あんなにこうなったらいいなって思ってた事が1日でいっぱい叶っちゃった……ぐすっ」

和「夢じゃありません、夢なんかにしてたまるものですか!
それにこんなのまだまだ序の口なんです、これからはもっとたくさん私の気持ち伝えますから……」

咲「うん……和ちゃん」

和「なんですか?」

咲「大好きだよ」

和「私も大好き、です……」

――


京太郎「……で、いつまで潰れたふりしてるつもりだ優希」

優希「んっ……」

京太郎「2人きりにしてやりたいからって下手くそな芝居打つか普通」

優希「しょうがないだろ、他に思いつかなかったんだから……もうおろしてもいいぞ京太郎」

京太郎「……いや、このままでいい。 たまにはこういうのもいいからな」

優希「そうか……じゃあお言葉に甘えるじぇ」

京太郎「……」

優希「どうしたの?」

京太郎「いや、その口調久々に聞いたから」

優希「ああ……そういえば私、いつの間にか普通に喋ってたっけ」

京太郎「嫌いじゃなかったんだ、お前のその喋り方。 久しぶりに聞けてちょっと嬉しいかも」

優希「そ、そうなのか? 私京太郎に振り向いてもらえないの、この喋り方のせいもあると思って必死に直したのに……」

京太郎「……いつの間にか普通になったんじゃなかったのか?」

優希「あっ……」

京太郎「なるほどなあ、俺の嫁さんは意外に努力家だったと」

優希「う、うるさいうるさいうるさい!///」ポカポカ

京太郎「いてて……」

優希「……」ギュッ

京太郎「優希?」

優希「京太郎、咲ちゃん達大丈夫かな?」

京太郎「……」

優希「2人共大切な友達だからどうしても気になっちゃう……大丈夫だってわかってるはずなのにどこかで不安でもあるんだ」

京太郎「なるほどね……でも大丈夫だと思うぜ」

優希「どうして?」

京太郎「根拠なんかないさ。 ただあいつらがダメになるのが想像できないってだけだ」

優希「なんだそれ?」

京太郎「なんなんだろうな?」

優希「……京太郎は単純過ぎるじぇ」

京太郎「ははっ、確かにな」

優希「でも……京太郎の言葉なら信用できるから不思議だな」

京太郎「お互いに単純ってわけか?」

優希「そうなのかもしれない」

京太郎「じゃあお似合いってわけだ」

優希「っ……うん///」

京太郎「そうかそうか……おっ、流れ星」

優希「……」

京太郎「今日も星が綺麗だなー」

優希「京太郎」

京太郎「んー?」

優希「私があの時言ったのは本心だから」

京太郎「……」

優希「京太郎が望めばいつだって、私はいいから」

京太郎「……ああ、その時は俺もフォローするし頑張るよ」

優希「んっ……京太郎、大好き」

京太郎「俺も大好きだよ、優希」

――1年後


京太郎「優希、優希!」

優希「ドタバタ走るなー! それでどうしたんだ?」

京太郎「届いたぜ、招待状!」

優希「本当か!?」

京太郎「ああ、やっとだよ」

優希「そうかー、のどちゃんもとうとう覚悟を決めたんだな」

京太郎「だからほら、早く出かけようぜ」

優希「えっ、なんで……」

京太郎「おいおい、そんなの決まってんだろ」

――


咲「ううっ、ドキドキするなあ……」

和「本当ですね……」

咲「でも、これが私達の門出の第一歩なんだから頑張らないと」

和「はい……咲さん」

咲「な、なに?」

和「愛してます」

咲「……」

和「咲さん?」

咲「不意打ちはやめようよ和ちゃん……」

和「す、すいません」

咲「ううっ、なんか言うことが頭から飛んじゃったよ」

和「だ、大丈夫ですよ、簡単な話ですから」

咲「い、行く前にもう一回復唱しとくよ……こほん」




京太郎「妊婦でも着れるドレスを買いに行くんだよ!」


――


咲「私、宮永咲は原村和さんと結婚します!」


カン!