The End of the World


    本当に彼を幸せにできるのだろうか、と

    傘に守られながら私はふと考えた

    私たちがデートをしようと決めた日は必ず雨が降る、偶然にしてはおかしいほどだ

    これについて彼――京太郎君に聞いてみたことがあった

    「日ごろの行いのせいかな」と彼は笑った

    私も笑おうとしたけれど……

    「ご、ごめん!冗談のつもり、だったんだ…」

    分かってるよ、笑顔もまともにできなくなった私の不器用さがいけないんだ


    「ごめん健夜さん!待ったよね」

    京太郎君が来た、思い出の中と同じ申し訳なさそうな顔をしてる

    それがちょっとおかしくて

    「ううん、全然!」

    今度は笑顔を見せられた

    楽しいデートの時間はあっという間、グランドマスターと男子高校生のカップルは好きなときに会えないんだから
    時間を長くできる神様がいたら二人が一緒のときは一日を48時間にしてほしいというお願いを聞いて貰いたい

    締めくくりに私たちはホテルに入って、ベッドの中で求め合う

    まるで普通の恋人同士のように、一日を楽しむ

    行為を終えたあと、窓から夜の街を見るのが恒例になっていた

    あの明かりのひとつひとつに色んな人がいて、色んな生活をしている

    例えばそこの赤い屋根の家の明かり、お父さんとお母さんと可愛い子供がいるんだろうな、と想像する

    やがてそれぞれがそれぞれの消灯時間を迎えて、ぽつぽつと暗くなっていく

    この光景を見るのが好きだった

    誰にも見つからないでデートが無事に終わった、と実感できるから…

    「健夜さん、消すよ?」

    ちょっと待って、とベッド脇の電気スタンドの紐に手を伸ばす京太郎君を止めた

    こちらをまっすぐに見つめる京太郎君の瞳をのぞく

    どこまでも純粋な愛がそこに溢れていた

    私にはもったいないほどの純愛だ

    彼は彼を愛した分だけ人を愛する男の子なんだ、それが全て私に向けられている

    15歳の彼は私に会わなかったら、どれほどの人から愛し愛され、どれほどの可能性と未来があったのだろう


    ……ごめんなさい、あなたを好きになって

    京太郎君に腕枕をされながら、あの時以来聞かなかった話題を出した

    「ねえ、どうして私たちが会う日は雨が降るのかな?」

    少し沈黙した後、京太郎君は優しい声で答えてくれた

    「神様の粋なはからいだよ
     傘をさして一緒に歩くとさ、健夜さんを近くに感じられるから…俺は良いと思うな」

    「ふふっ…」

    「あー、笑ったな、この」

    「きゃんっ、くすぐったい」



    『本当にごめん健夜さん…』

    『もう、こんなこと言わないから…』

    『大好きだよ…』



    『だったら…』

    『もう、そんな世界の終わりみたいな顔でキスしないで…』

    『私たちは…普通の恋人同士なんだから…』


    大好きだよ、京太郎君

    これがいけない恋だって分かってても、また雨のなか一緒に歩こう

    ずっと一緒に歩いていこうね


    カンッ