…これは夢か?
「須賀君…私は、あなたの事が」
夢でないというのなら、こんなに嬉しい事はない。
「私、あなたでないとダメなんです」
決して、届かないと思っていた。
「あなたがいたからこそ、私はあそこで勝ち残れたんです」
この想いは、決して叶いはしないと思っていた。
「だからこれは…ほんのお礼」
たとえ…和の言葉が嘘だとしても、俺に彼女を拒むことなど出来はしない。
「須賀君…いえ、京太郎君。どうか、どうか私を受け入れてください」
拒もうとさえ思わない。思えない。
そんな俺の罪を、咲の奴は赦してくれるだろうか。
この薄汚い男の浅ましさも、何も言わずに黙って受け入れてくれるだろうか。
私の想いは、あの人に告げられぬまま終わりを迎えた。
「あなたが好きです」
せめてその一言だけでも、伝えられてさえいれば。
そう思わずにはいられない。後悔せずにはいられない。
この愛は…もうどこにも向かいはしないのだ。
愛はもどかしさへと変わり、そして憎しみとなった。
あの二人が、憎い。憎くて憎くて、たまらない。
憎しみで人が殺せたら、とはよく言ったものだ。
恋に破れるまでは、単なるありきたりな言葉としか思えなかったのに。
…けれど流石に、殺してしまうだなんてことは恐ろしくてとても出来なかった。
―――だからこそ決めたのだ。二人の愛を、私の手で終わらせてしまおうと。
この行き場のない想いのはけ口として、犠牲になってもらおうと。
…一人だけみじめだなんて、嫌なの。
私だけじゃ、この苦しみには堪えられない。
だから、三人で分け合いましょう。三人で愛を、分かち合いましょう。
そうすれば…きっともう、誰も分かたれたりはしないから。
最終更新:2013年11月01日 23:01