初めて出会ったあの時から、俺はずっとあの人のようになりたいと思った。

    彼は万能だ。

    出来ないことなど何もない。

    颯爽と現れるその姿は、まるでヒーローみたいで。

    そんな彼を目で追う俺は、いつの間にか彼に惹かれていた自分に気付いた。

    彼の名は萩原…通称ハギヨシ。

    俺の夢であり希望であり、そして道標である。



    咲「京ちゃん、最近全然部活に来ないね…」

    優希「だじょ…」

    和「部長、須賀君からは何か聞いていないのですか?」

    久「しばらく龍門渕で修行してくるとだけ聞いたわ…何の修行かは分からないけれど」

    まこ「なんじゃ、部長も聞いとらんのかい」

    久「ええ。何度聞いても口を閉じたままだったわ」

    和「…まさかとは思いますが、部長と優希がこき使ったせいで雑用のスキルを磨いているのでは?」

    咲「ああ…」

    まこ「ひょっとしなくても、その可能性は十分にありそうじゃのう」

    久「ちょ、ちょっと待ってよ!NOと言えない彼の方にも非があるはずだわ!」

    優希「そ、そうだじぇ!」

    まこ「だとしても、アンタらはやりすぎたと思うぞ…無論ワシらにも責は及ぶが」

    和「今度須賀君が来たら、労う為にパーティーでも開いてはどうでしょう?」

    咲「あ、いいねそれ」

    久「それじゃあ早速、パーティーの内容を考えないとね」

    優希「ですね!」

    まこ「二人は単に騒ぎたいんじゃろうに…まあ、やる気がないよりはマシかのう」



    そして…運命の日はやってきた。

    京太郎から修行が終わったとの連絡が来た。龍門渕に行っておよそ数週間後のことである。

    久し振りに仲間が戻ってくる。

    5人は喜び勇んで、早朝からパーティーの準備をしに部室へ赴いた。

    しかし…




    「お帰りなさいませ、お嬢様方」




    彼女達が部室の扉を開けると、そこには変わり果てた仲間の姿があったのだ。





    「え…京、ちゃん?」

    「これって…一体どういう事なんだじょ?」

    「そんなの、私にだって分かりませんよ!」

    「…どうしたもんかのう」

    「須賀君…あなた本当に須賀君なの?」

    困惑した5人に彼は答える。

    「その通りでございます。私は、あの方の薫陶を受け貴女方に相応しい従者となったのです」

    …彼女達の知る須賀京太郎は、もうどこにもいなかった。

    ふと周りを見ると、部室の内装がすこぶる豪勢なものになっている。

    当然昨日まではそうでなかった。とすると、彼が何かしたと考えるのが妥当だろう。

    京太郎は部内の雑用を一手に受けるだけあって、器量は悪くなかった。

    けれど…ここまでの者になろうとは誰が想像出来ただろうか。

    まこ「京太郎…一体お前さんはここ数週間何をしとったんじゃ?」

    京太郎「一人前のバトラーになるべく、日夜研鑽を重ねておりました」

    和「どうして、そんなことを……?」

    京太郎「私はあの方のように…いや、あの方そのものになりたかったのです」

    優希「…あの方って一体誰なんだ?」

    京太郎「以前にお話致しました、龍門渕の執事こと萩原様のことでございますよ」

    咲「京ちゃん…いつものように話してはくれないの?」

    京太郎「誠に恐縮ですが、その命にはお応え出来かねます」

    咲「えっ?」

    京太郎「主である貴女様にそのようなことをするのは、誠に恐れ多いことだからです」

    京太郎「それに、以前の私に戻ってしまえば萩原様のようにはいられなくなる」

    京太郎「私には…それが堪えられないのです」

    咲「何を…言ってるの?」

    京太郎「私は…萩原様に身も心も捧げた身。あの方の生き方こそが、私の生き方なのです」

    京太郎「あの方と違うことをしてしまえば、私はもうあの方と志を共に出来ない」

    京太郎「あの方と私を唯一繋げているものが…永遠に失われてしまう」

    京太郎「それだけは…出来ない」

    咲「…きょう…ちゃん…?」





    私のすべては…萩原様の志と共にある。

    それが続く限り、たとえ隣り合えなくても私達は繋がっている。

    ―――――永遠に。