「おはよう」

私は先に起きていた彼に挨拶をする。

ちょうど彼は寝起きのティータイムだったらしい。

もっとも彼はコーヒー派なので、コーヒーブレイクといった方が正しいのだけれど。

私の挨拶に、彼は何も言わずこっちに軽く頭を下げてくるだけ。

普段の彼ならそんな省略はしないけれど、この時間だけは別だ。

私と彼が恋人になって、真っ先に取り決めたこと。

それは朝起きてからのお互いの目覚めの儀式は邪魔しないという、単純明快なものだ。

私は緑茶で、彼はコーヒーで一日を開始する。

なので私より起きるのが早い彼は直火式のメーカーでコーヒーを作るついでに私用のお湯も沸かしておいてくれる。

そして私はそのお湯で緑茶の準備をし、彼とともに朝の穏やかな時間を過ごすのだ。

でも、今日は。

「ん?どうしました、尭深さん?」

「ちょっとね。…ねぇ。私もコーヒー…一杯もらえるかな?」

別にコーヒー派に鞍替えをしたというわけではない。

ただ、私たちが付き合うようになったきっかけは…丁度、一年前。

彼が、緑茶で共に朝を過ごしてみたいと…そう言ってくれたからだ。

彼は一瞬驚いたあと…こちらまで嬉しくなるような笑顔で、

「もちろん、大歓迎ですよ」

こう言ってくれた。

この日の朝はいつも以上に幸せな時間が流れたことは、言うまでもない。

カンッ