282 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:12:42 ID:ouwto5Rh
京太郎×龍門渕編をちょっと書いてみました。
咲ほとんど出てこないし!




「えええ!転校ぉ!一体どうして!?」
場所は清澄高校麻雀部部室。
京太郎の唐突な言葉に咲は思わず声を上げてあげてしまった。

「えーと…まあなんというか一身上の都合でだな…」
「そんな急すぎるよ。だって私、全然まだ…」
「犬の癖に主の命令に従わないなんて生意気だじぇ」
俯く咲とは対照的に優希はそう言って京太郎の腕に噛み付き癇癪を起こしている。
「須賀君、私達を捨てていくのね…」
「鬼畜じゃのう」
うう、と久は口許を押さえた。それにまこも調子を合わせる。

「もう、部長まで誤解されるような事言わんでください!!部長達には昨日説明したでしょ!」
「あはっはっ、そうだったわね~」
からっと久は表情を変えあっけらかんと笑い出す。
「……あのどういう事でしょう?」
未だに解せないといった表情で和は久に訊ねかけた。
「そうねえ。ちょうど先日県予選の大会があったでしょう。須賀君はあれの後始末を付けにいくのよ」
「っということは…すぐ帰ってくるの?」
咲はびっくりした様子で京太郎の顔を見上げた。


「それは…須賀さんの協力次第ですね」
その時、部室の扉の入り口から部員ではない者の発声が清澄の部員の耳に届いた。
その声にぎょっとして振り向く優希と和と咲。
そしてその声の主を確かめ更に驚嘆の声をあげる。

「あなたは…沢村智紀!」
「龍門渕の次峰がどうしてここに!」
「ま、まさか京ちゃんの転校先って…」

「ええ。須賀さんにはしばらくの間、龍門渕高校に通っていただきます」
言って智紀は京太郎の腕を絡め取る。
そう断定したその声は恐ろしいほど冷たくて、きっと須賀京太郎本人には選択の余地などなかった。


283 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:13:32 ID:ouwto5Rh

「龍門渕へようこそ!歓迎しますわ。須賀京太郎」
そう言って尊大に龍門渕透華は眼前の京太郎を見下ろす。
「智紀!須賀京太郎の案内ご苦労様でした」
「…………」
智紀はコクリと頷くとその部屋の端へと体を寄せた。
そうしてまるで自分の役割は終わったかのように自分のノートPCへと視線を落とす。
その隣には同じ龍門渕の井上純、メイドの杉乃歩が立っていた。

「アンタが俺を呼び寄せた張本人か?」
「ええ、そうですわ…。貴方に少しお願いしたいことがありまして……」
言って透華はいったん言葉を切り、品定めするように京太郎を見つめる。
「……時に、須賀京太郎。あなた、原村和とはどういったご関係ですの?」
「はぁ!?」
「えっ!?」
驚き声は二つ飛び出た。
ひとつは質問を受けた京太郎本人。
そして、もうひとつは透華の隣に立つ、国広一の物だった。

京太郎は少しぷらぷらと宙を見上げてしばらく何かを考えているようだったが、
やがて、少し頬を染め、怪しく微笑を浮かべた。
「―マイステディ…かな?」
無論、そんな筈はない。
原村和の京太郎に対する好感度を1000倍にしようがそんな関係に到れるはずもなく、
その時のそれは単なる京太郎の見栄でしかなかったのだ。

「なるほど。あなたは原村和の”男”でしたのですね」
しかし、透華本人はその言葉にひどく満足した様子で頷いた。

「つまり、貴方がこの龍門渕に骨を埋めることとなった暁には……」
「ちょ、ちょっと透華……まさか……」
「あの原村和の”男”を奪ってやった事になりますのね」

ピシャンと落雷が落ちた。
透華の専属メイド、国広一の後ろにである。

284 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:14:27 ID:ouwto5Rh

「はぁ…?とにかく俺に頼みたいっていう用事を終わらせて早く清澄に帰りたいんだけど」
頭にはてなマークを浮かべながら、けだるそうに京太郎は呟く。
「まあまあ、それについてはおいおい。とりあえず貴方にはしばらくの間、龍門渕の麻雀部に在籍していただくことになりますので……」
「ふぅ~、俺に拒否権はないのかよ」
京太郎は嘆息しながら肩を落とした。


「よし、それじゃあその間は、俺たちは同じ部活のメンバーってことだな」
がしっ、と純は京太郎の首に腕を回してくる。
「ま、仲良くしようや」
「よろしくお願いします」

京太郎はほがらかな雰囲気とともに龍門渕の新たなメンバーとして受け入れられた。
「……みとめない」
「えっ…?」
…かに見えた。


「……認めない!…ボクは認めない!」
「……?は、はじめ…?」
透華の隣に居た一が静かに俯いたまま咆哮を挙げた。
透華は怪訝な表情をしながらその姿を見やる。

「こんな『男』の入部!ボクは絶対認めない!!」
目尻にうっすらと涙を浮かべながら一は京太郎を指差し、そう宣言した。
その背後には一の心の爆炎が立ち上がっている。


「第一、男の部員なんて、透華には…じゃなかった、この龍門渕高校には必要ないよ!」
腕を広げそう力説する一。
「男って、純さんもいるじゃないっすか」
「俺は女だ」
「えっ…」
京太郎は思わず純を振り返る。わお、本当だ。

「しかし、困りましたわね。どうすれば一も納得するんですの?」
「須賀京太郎。麻雀でボクと勝負するんだ!もしボクが勝ったらとっとと龍門渕から出て行け!!」

いや、本当ならそうしたいんですけどね。と喉まで出かかった本音を京太郎はぐっと飲み込む。
これも…全てはアイツの…、いや、自分が選んだ選択なのだから。
「ところで…もし俺が勝ったらどうするんでしょう?」
「フン。そんな事は万に一つもないと思うけど。そうだね…。
その時はボクが一日、君の専属メイドにでもなんでもなってやるよ!」
こうして転校初日、京太郎と一の戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

285 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:16:13 ID:ouwto5Rh

(まったく一ったらどういうつもりですの…?)
爪を噛みながら龍門渕透華は戸惑いを隠せない。
いままで透華は一の反逆など受けたことがなかった。
それ故、耐性のついてなかった透華は予期しない一の申し立てた勝負をあっさりと認めてしまったのだ。
(しかしこれでは、せっかくの私の立てた計画が…)
まあ、そんな透華の思惑とは裏腹に京太郎は意外とやる気だったりするのだが、そんな事は透華に伝わるはずもない。

「仕方ありませんわね。純、歩。一と一緒に須賀京太郎の相手をなさってください。
私はちょっと観戦させて頂きますわ」
「うぃっす」
「は、はい…」

「フフフ…フフフフフ……」
一は席に向かおうとする京太郎を見つめながら怪しい笑みを浮かべているのだった。


東一局
親は歩からだった。
(ほぅ…なるほど)
京太郎の最初の配牌をみて透華は息を漏らす。
思っていたほどには悪くない。
少し牌の並べ方がたどたどしいが、これならかなり高い手を作れそうだ。
一巡目に引いた牌はさい先の良い有効牌。これでリャンシャンテンである。
(さぁ、まずは何を切りますの!)
透華の見守る中、京太郎はノータイムで手牌の一番右端を切った。

ドテーッ
「と、透華!どうしたの!?いきなり壮大にすっ転ぶなんて!」
「な…何でもありませんわ…」
(他にも不要牌はまだあったというのに…一巡目にその捨牌…。ありえませんわ)

よろよろと頭を抑えながら透華は立ち上がる。
京太郎の捨て牌は「東」。
あぶれていたとはいえ、ドラの「東」である。



286 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:17:19 ID:ouwto5Rh

透華は再び口元に手を当てて思考を巡らす。
(ハッ!冷静になりなさい、わたくし。いくら彼が麻雀素人だといっても初手から考えもなしにドラ切りをするでしょうか?
まさか、このドラ切り…誰かの上がり牌だと察知して!?)
透華はアンテナをピンと立て、慌てて対局者の顔色を観察する。
しかし、一や純などからはその動揺は感じ取れない。
(…では何故?)
幸いにも京太郎の捨牌を鳴く者はいなかった。
だが、それは透華の認識が甘かったといわざるを得ない。

2巡目
京太郎の引いた牌は一巡目で捨てたのと同じ「東」、ドラの「東」である。
(完璧に裏目ってますわーーーっ!!)

一瞬の逡巡のあと、京太郎は再びドラの「東」を捨てる。


3巡目
透華は戦慄を覚える。
京太郎は再び「東」を引く。ドラの「東」を。
そして、それを三度ノータイムで捨てた。
(ドラ捨て三連続。既に何かわけが分からなくなってきましたわ…)
よろりと額を押さえる透華。
その後、あろうことか京太郎の口からとんでもない言葉を聞いてしまう。

「あ、しまった。「東」はドラだっけ…」
その瞬間、透華のデータ麻雀としての根底にある何かにピシリとヒビが入るのを感じた。

その局 10巡目
「ロン!満貫8000だ」
純が歩から先制のあがりをあがる。
その時、京太郎はリーチをしかけていたのでその局、京太郎と一の点差は-1000点となった。



287 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:18:25 ID:ouwto5Rh

東二局
続く次局、親は一であった。
ロンを恐れず強打する京太郎。その打牌の傾向は一局目と同じだった。
あからさまな一の筒子待ちに対して危険牌の五筒・六筒・八筒を連打。
はっきり言って透華はもう途中から見てられなかった。

しかし、その局を上がったのも井上純だった。
「ツモ。…裏ドラみっつで三倍満6000,12000だ」
一はリーチ後、歩から上がるチャンスがあったにもかかわらず京太郎直撃を固執したためにわざとあがり牌を見逃しをしたのだ。
一の親っかぶり+リーチ棒、これで一との点差は京太郎+6000となる。

東三局
親は純。
そして今度は12巡目にツモ上がりを決めたのは一であった。
「ツモ。跳満で3000,6000だね」
これで京太郎と一の点差は再度-9000点へと逆転した。

一瞬、一は河を見て僅かな自分の震えに思わず腕を押さえる。
(…なんだろう、さっきからこの違和感は?)
その時の透華はもう欠片も京太郎には期待をしてないなかった。
また、純や歩はそれに気付いていない。
(…この人、手の作り方を見ても素人だ。それは間違いない。
でも、変なんだ。何か口では言えないけれど…捨て牌がおかしい)

その局も京太郎は危険牌だろうと全く気にせずに切ってくるのだ。
それは河を見ない素人の打牌ともまた微妙に違う。
(ボクが怯えてる?そんな…こんな男に…?
駄目だ…。点数上勝ってるのはボクだけどこれじゃ勝ったことにならない…。
これは気持ちの問題なんだ。最後の局、相手から直撃、直撃させなきゃ駄目だ。
そう、透華に近づく男はボクが殺す…!)

そうしてこの東風戦オーラス。京太郎がラス親の東四局が始まる。

288 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:19:51 ID:ouwto5Rh

東四局 7巡目
一の手牌、既にテンパイ。
一二七八九九九①②③123 中 ドラ:九
この時点でジュンチャン・三色・ドラ3。
倍満の16000点確定で京太郎に直撃すれば飛び終了である。
(殺してやる…殺してやるよ……。須賀京太郎…)

その時、一方の純は
(一のやつテンパったか。まあ、これはあいつと須賀の勝負なんだから降りとくか…)
空気を読んで降りることを選択する。
また、杉乃歩はメイドとしての意地をかけて勝負を続行する。

3巡後、歩がリーチをかける。
「リ、リーチです!」
その時の歩の捨て牌、「三萬」。それは丁度一の当たり牌であった。
しかし、国広一は上がらない。あくまで京太郎への直撃へ固執するのだ。


「あの…ちょっと質問いいですか?」
そこで不意に京太郎が言葉を発する。
「何でしょうか?」
「俺、まだ初心者なんでちょっとルール分かってないんですけど、
ダイミンカンからのチャンカンって有効なんですか?」
「えーと。ロン上がりを見逃しの場合ならチャンカンは無効です」
龍門渕透華は京太郎の意図を図りかねる様子のまま答える。
「そうですか。いいんですよね。国広先輩」
「……どうしていきなりボクに振るのさ」

289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:21:28 ID:ouwto5Rh

一瞬、クスリと京太郎は微笑んだような気がした。
「カン!」
(な…)
三萬をダイミンカン。一の待ち牌である三萬を握りつぶしだ。
(やってくれるじゃないか!)
一は咄嗟に京太郎の顔色を伺う。
だが、その表情はといえば真剣そのもの。

純(まさか、こいつ!)
透華(清澄の大将と同じく…!)
一(リンシャン使い!!)
ダン!
京太郎の引いたリンシャン牌は白。
「もういっちょカン!」
更に白をアンカンした京太郎は再度リンシャン牌を引く。
だが、いくら待っても京太郎からリンシャンツモ上がりの宣言は出ない。

どうやら、もう一度引いたリンシャン牌はあがり牌ではないようで
京太郎は引いた一筒をしぶしぶと捨てたのだった。
「フフ…やっぱり…咲のようにはいかないか…」
そう語る京太郎の表情はどこか物悲しげであった。

290 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/26(土) 21:23:02 ID:ouwto5Rh

次巡、一のツモ牌は、一萬。
しかも京太郎の二度のカンの新ドラは九萬が二個。
つまり、京太郎のカンは自らの首を絞めたようなもので一の手牌は

一二七八九九九①②③123 一 ドラ:九,九,九
二萬切りで三色は消えるが、それでもジュンチャン・ドラ9の12翻。
そのままの直撃でも三倍満。
ツモ上がりでツモ付き、数え役満。
いずれにしても親の京太郎は飛び終了である。
(ボクの待ち牌、そのまま黙って握りつぶしていれば良かった物を…。
流れはまだボクにある。後悔させてやるよ!須賀京太郎!!)

(シネ!)
一は「二萬」を手から捨てた。
その時、京太郎の口元が静かに歪む。

「それです…」
(えっ…!)
京太郎の手牌がゆっくりと倒れていく。

京太郎
         白白   三
二二四四789 白白 三三三  二
「ロン 白のみ。70符1翻だから…えーと」
「…3400ですわね」
(その手牌!!)
一は京太郎の手を見て愕然とする。

先ほどの二度のリンシャンツモにおいて京太郎は有効牌を引いていなかった。
そんな、ふざけている。
ということは先程の歩の三萬から上がれたということじゃないか!?
それをメンゼン・一盃口を捨ててのダイミンカン。
(何なんだ、そのあがり!!意味が分からない!理解不能だよ!)
「さあて、国広先輩。連荘だ」
「くっ…」
これで京太郎と一の点差は歩のリーチ棒を加え、-1200点まで縮まった。


続く
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