京太郎君と私は、文通を通して知り合った仲だ。

私の趣味は、女性の中じゃ間違いなくマイノリティなものである。

だからこそ、本気で語り合える相手が欲しかった。

ただ、ネットなどでは簡単に自分を偽れてしまう。相手を窺い知れないのはとても怖かった。

それは文通にも言えることだけど、ネットと比較すれば可能性は大いに下がる。

郵便を利用する以上、お互いの個人情報を明示しなければならないから。

つまり、文通と言うコミュニケーションは、相手への信用無しには成立しないのだ。

私が女性の胸を好んでいること、そして…私が女性であることはいいふるいになった。

そのかわり、募集をかけて暫くしても一向に連絡は来なかった。

――京太郎君から連絡が来たのは、募集をかけて一月ほど経ってからだ。



案の定と言うか、メールの内容は色々とあけすけ過ぎるものだった。

知己の前で時々、女性の胸をおもちと称して愛でている私でも少し引いてしまうほどに。

けれど、不思議な事に不快感は感じられなかった。

それどころか、むしろすがすがしささえ感じられた。正直と言うか愚直さが伺えた。

…この人となら、語り合えるかもしれない。

何度かメールのやり取りをしてそう確信した私は、自分から文通することを申し出た。

ひょっとしたら…と言う不安もあったが、何ら問題は起こることなく彼と私は文通を始めた。



彼との文通はとても楽しかった。

気兼ねなくものを書けたし、否定される事もなかった。

彼は何でも受け入れてくれたから、そのうちお互いの家庭事情までやり取りするようになった。

重い女って思われたらどうしよう…なんて考える自分がいた。

彼とはそんな仲じゃないのに。

けれど、彼とならそんな風になってもいいなって思ってた。








アレを見るまでは。


私が阿知賀の皆と来たインハイの舞台。

そこに彼は…京太郎君はいた。部員だかマネージャーだかよく分からない立場で。

…こんな所で会えるだなんて!

お互い相手の立場は知っていたが、何だか無性に嬉しかった。

少し軟派な雰囲気があるけど、あの時感じたすがすがしさは嘘じゃなかったんだって思った。

彼は…私がインハイに出場していた事を、まるで自分のことのように喜んでくれた。

この人が文通相手で、本当によかった。




「もう…京ちゃん、こんな所でナンパだなんてダメだよ!」

「ち…違うんだ咲、この前話していた文通相手は松実さんの事で…」




…この子、誰?

何で私と彼の間に割って入るの?

何で彼の事をそんなに気安く呼べるの?

この子は彼の何なの?

何で彼の隣に立つの?

そこはあなたの場所じゃない。

私の場所なの。

それを奪おうとするのなら、私は――――――。