神戸家裁判決要旨 97年10月18日 朝日新聞


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 少年Aは結局医療少年院に行くわけだが、これはまさにその理由を説明しているものだ。
しかし、この文章も相当硬く読みにくいもんだが、注目すべきなのは引用されている共同鑑定の文章!これは猛烈な悪文!!
それと、得体のしれない法律・医療関係の用語は各自検索してください。


第一 主文
少年を医療少年院に送致する。

第二文 認定した非行事実。
省略

第三 殺意を争った非行事実
 3月の連続女児殺傷事件について、付添い人はいずれも殺意を否認する。しかし、少年があらかじめ用意した、重さ約1,5キロの鉄のハンマーで頭部を殴打し、刃体の長さが約13センチもあるくり小刀で腹部を刺しており、攻撃が各一回限りであることから確定的殺意までは認められないにしても、仮に死の結果が生じてもやむを得ないとの認識であったと認めざるを得ない。

第四 少年の警官に対する供述調書等の証拠能力
 少年は、警察官の取り調べに対して、2月の連続女児殴打事件と、3月の連続女児殴打事件は自白したが、5月の男児殺害・死体遺棄事件に対しては、自白しなかったが、当時、警察で集めた証拠の中で、筆跡鑑定は証拠価値が最も高い位置にあったところ、科学捜査研究所が犯行声明文との筆跡と少年の筆跡とが同一人の筆跡か否か判断することは困難であると判定したため、逮捕状も請求できず、任意の取り調べにおける自白が最後の頼りであった状況において、物的証拠はあるのかとの少年の問いに対し、物的証拠はここにある旨言って、机の上の捜査資料をぱらぱらとめくって、赤い字で書かれた声明文のカラーコピー等を見せるなどして、あたかも筆跡鑑定により、声明文の筆跡が、少年の筆跡と一致しているかのように説明し、その結果、少年は物的証拠があるのならやむを得ないと考え、泣きながら自白したというのである。取調官がこのように少年に説明したことはもとより違法であり、同一取調官に対する少年の非行事実(男児殺害・死体遺棄事件)についての供述に調書全部を、刑事訴訟規則207条により本件少年保護事件の証拠から排除する。(略)

第五 非行時における精神状況
 付添人は,少年には基本的人格の偏りがあり、その偏りは著しく、サディズム・思いやりの無さ、衝動的・爆発的に行動する傾向をあわせ考えると、本件非行時、成人の刑事事件で問題となる心神耗弱の状況にあったと主張する。鑑定人2名の共同作成の供述調書(以下、両鑑定人の証言を含めて「共同鑑定」という)は、少年の非行時の精神状況についての鑑定主文において、少年は、「非行時、現在共に顕在性の精神病状態にはなく、意識清明であり、年齢相応の知的判断力が存在しているものと判定する。未分化な性衝動と攻撃性の結合により持続的かつ強固なサディズムがかねて成立しており、本件非行の重要な要因となった。非行時並びに現在、離人症状、乖離傾性が存在する。
 しかし、本件一連の非行は乖離の機制に起因したものではなく、乖離された人格によって実行されたものでもない。直感像資質者であって、この顕著な特性は本件非行の成立に寄与した一因子を構成している。また、低い自己価値感情と乏しい共感能力の合理化・知性化としての『他我の否定』すなわち虚無的独我論も本件非行の遂行を容易にする一因子を構成している。また、本件非行は、長期にわたり多種多様にして漸増的に重篤化する非行の連続線上あって、その極限的到達点を構成するものである」としている。共同鑑定は、少年を医学的検査並びに診察した上、心理テストの結果も踏まえ、少年に12回にわたり問診するなどして判断したもので、その内容も十分首肯できるものであり、これと少年調査票、鑑別結果通知書等他の証拠と照らして検討すると、少年は、年齢相応の普通の知能を有し、意識も清明である。精神病ではなく、それを疑わせる症状もないのであって、心理テストの結果にも精神病を示唆する所見がないと認められる。少年が本件各非行時、付添人の主張するような性格的偏りがあるにしても、成人の刑事事件にいう心神耗弱の状況にあったとまでは言えない。

第六 少年の成育歴と非行に至る心理的背景
 少年は、長男として出生し、少年の両親や家族から期待されて、その後生まれた弟達と比較して厳しくしつけられて成長した。そのため、少年は、次第に両親、とりわけ母親に対して自己の感情を素直に出さなくなっていった。少年が小学校5年のとき、少年らと同居していた祖母がなくなった。祖母は、厳しいしつけを受けていた少年をときにはかばってくれ、少年は祖母の部屋に逃げ込んだりしていた。この祖母の死とのつながりは不明であるが、このころからなめくじやカエルの解剖が始まった。  そして、この傾向は進み、小学校6年の頃は猫を捕まえて解剖するようになった。しかし、中学校1年に進学すると、部活動や両親の定めた門限などで時間的余裕がなくなり、猫を捕らえて解剖することもできなくなり、そのころには、少年猫殺しの欲動が人に対する攻撃衝動に発展していったが、現実に人を攻撃すれば罰せられるため、その後、2年近くは、殺人の空想にふけることによって性衝動は空想の中で解消され、抑えられていった。しかし、次第に、現実に人を殺したいとの欲動が膨らんできて、少年は、学校に通っていたものの、学習意欲が失せ、教師に心を開かず、友達と遊ぶこともなく、タンク山で一人で遊び、自宅でも、一人で昼間からカーテンを閉めて薄暗くして過ごし、雨の日を好み、殺人妄想にさいなまれていった。このような状況にあって、少年の母親には少年気持ちを理解することはできなくなっていった。 少年は、自分は他人と違い、異常であると落ち込み、生まれてこなければ良かった、自分の人生は無価値だと思ったが、この世は、弱肉強食の世界であり、自分が強者なら弱者を殺し、支配することができる、などという自己の殺人衝動を正当化する独善的理屈を作りあげていった。このような心理的状況を背景に2月の非行が偶発的に行われ、次いで、3月の非行が人間の壊れやすさを試すために実行され、遂に、5月の犯行に及んだ。

第七 処遇の理由
 少年は、表面上、現在でも自己の非行を正当化していて、反省の言葉を述べない。しかし、恐ろしい夢を見たり、被害者の魂が入りこんで来たと述べるなど、心の深層においては良心の芽生えが始まっているようにも思われる。ただし、今後、表面上反省の言動を示し始めていても、それだけで少年が改悛(かいしゅん)したと即断せず、熟練した精神科医による臨床判定(定期的面接と経過追跡)と並んで、熟練した心理判定員による定期的心理判定を活用すべきである。これらによって、少年に、表面上だけでなく、好ましい方向への根本的変化が現れつつあるかどうかを追跡し、判定の慎重を期すべきである。少年は、自己の生を無意味であると思っており、また良心が芽生えてくれば、自己の犯した非行の重大さ・残虐性に直面し、いつでも自殺のおそれがある。また、少年は、精神分裂病、重度の抑うつ等の重篤な精神障害に陥る可能性もある。これらを予防し、あるいは、早期に治療するためにも、熟練した精神科医がおおむね週に一度は検診する必要がある。
 少年は年齢的に、人格がなお発展途上にあるから、今後、普通の人間のような罪悪感や良心が育っていく可能性がある。また、性的嗜好(しこう)も通常の方向へ発達改善される可能性もがある。そのためには、少年を、当分の間、落ち着いた、静かな、一人になれる環境に置き、最初は、一対一の人間関係の中で愛情をふんだんに与える必要があり、その後、複数の他者との人間関係を持たせるようにして、人との交流の中で、認知のゆがみや価値観の偏りを是正し、同世代の者との共通感覚を持たせるのがよい。また、社会的な良識を持たせたり、他人の気持ちを察したり、相手の立場を配慮して、自己表現できる力をつけさせる等、現実的な対人関係調整能力を身につけさせるためには、具体的な行動訓練により、一つ一つ教えていく必要がある。なお、少年の両親、特に母親との関係改善も重要である。
 少年の処遇について、共同鑑定は、鑑定主文において「この少年は、本件一連の非行が予後の厳しさを示唆する種類のものであり、また、現在まことに活然としているとはいえ、年齢的に人格がなお発展途上にあることを考慮すれば、罪業感や良心が今後自覚される可能性が全くないとはいえず、その自覚を通しての更生に希望を託すほかはない。この直面化には熟練した精神科医の接近法を要する。しかし、良心あるいは罪業感は両刃の刃であって、直面化の過程で、分裂病、重度の抑うつ状態、解離性同一障害等重篤な精神障害が生起する可能性もある。少年は今後それらの疾患の好発年齢に入る。さらに、少年に対して法を無視した制裁の危険も否定できない。以上のすべてを考慮すれば、隔離状況で今後の精神的変化に対応できる環境での境遇が望ましい」そこで、被害感情について触れる。
 被害感情は察するに余りある。当然のことながら厳しい。殺害された小学校6年生の男児の両親とは、少年の両親はまだ直接会っていないが、殺害された小学校4年生の女児の両親とは、最近、弁護士の立会いの下で直接謝罪しており、その際、小学校4年生の両親は「少年を捨てることなく、少年に本件の責任を十分自覚させてください。再び同様の犯罪を繰り返さないことにように、少年を十分指導監督してください」と述べたが、当裁判所は、少年及び少年の両親は、この亡くなった女児の両親の言葉にこたえる責任があると考える。いつの日か、少年が更生し、被害者・被害者の遺族に心から詫びる日がくることを祈っている。


処遇の勧告及び環境調整命令はめんどくさいので省略

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