千早 参


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[千早と仔犬の物語・完結編]


不幸は突然来た。




朝、いつもの様に出社し、事務所のドアを開けると、皆が集まっている。
いや正確には、ぐるりと一つの物を囲んでいるのだ。重苦しい雰囲気を瞬時に感じとった千早は、
その輪の中に飛び込んだ。

箱の中には仔犬が寝ている様に見えたが、苦しそうに息をしていた。
「…!、お前、大丈…。」
と手をだそうとして、一旦止める。しかし仔犬は威嚇すらしないで横たわっているだけである。
恐る恐る、その苦しそうに息をする身体に触れてみる……。
「………!!」
その痩せた身体はあまりにも残酷だった。
そして千早は解ってしまった。
なぜ仔犬が執拗にその身を触れさせなかったのか、いつも覚悟を決めた凛とした、
それでいてどこか寂しい目をしていたのか。
「…お前、解っていたのね…。」
と口元を撫でる指に僅かに、それでも確かに舐めてくれたその時。
再び閉じた目が二度と開くことはもうなかった。


その日765プロ中のアイドルのテンションはどん底になった。




雨が降っていた。
初めて仔犬に会ったのもこんな雨の日だった。
仔犬を拾った土手の下で仔犬の墓を作ってやり、ミルクを備えて手を合わせる。
不思議と涙が出てこない。悲しい筈なのに……。
「P…。」
「…なんだ。」
「どうしてー…。」
これ以上言葉が出ない。すぐにでも泣き出したいのに、涙すら湧かない自分に呆れてくる。
雨が代わりに自分の頬を濡らしていた。
「どうして、私が幸福を掬っても、すぐに指からこぼれ落ちていくのでしょうか…。」
と、やっと、搾り出す様に千早が呟いた。
Pは何も言わず、黙って肩を抱く。このままでは崩れ落ちそうな自分の身体を支えてくれた。
「この小さい手が掬いきれないのなら、俺が零れ落とさないようにしよう。だから……。」
Pの言葉が途切れる。見るとPが泣いている。頬に伝わる涙を拭おうともせずに…。
すぐにハンカチを出して拭こうとすると、
「先にお前から拭け。」
と言われて、初めて雨ではなく、涙に頬が濡れていた自分に気が付いた。
止まらない…涙が止まらないー…。
後から、後からどんどん湧いてくる涙。ぐいっとPが自分の胸に押し付けてくれる。
優しく頭を撫でてくれる。まるで仔犬を撫でる様にー…。
もう、意識に反して声を上げて泣き出した。
悲しみを押し流さんばかりに、激しく、切なくー…。



窓を叩く雨音に目が覚めた。誰かが涙を拭ってくれた気がした。
気が付くと、自分のベッドの横にPがいた。
「何か嫌な夢でもみたのか?」
コクリと頷くと
「思い出して辛いのなら喋らなくていい。」
と、優しく髪を撫でてくれた。

少し安堵の溜息一つ、つく。
「P…。」
「…なんだ。」
「あの仔犬…、幸福になれるでしょうか…。」
「なれるんじゃないか?たぶん…。」
昨日貰われていった仔犬。別れる時、あずささんや双子達はべそをかき、
千早も別れ際に指を噛み付かないで嘗めてくれた時、少し泣いた。
「まだ起きるには早いからな、眠るまで傍に付いていてやるよ。」
と、優しく頭を撫でてもらい、横になると、布団をかけてくれた。
「この小さい手が掬いきれないのなら、俺が零れ落とさないようにしよう。」
夢で聞いたあの言葉は前にどこかで聞いたようなー…。
と、思いつつも傍にいてくれるPの存在に安心感を感じつつ、まどろみの海に、たゆたう千早であった。
を想像した俺、眠くて目がむず痒い。



久々に友人達と山奥でサバゲーをやれたおかげで気分爽快!ヒャッハー!なまま帰宅した
千早は俺が疲れてるようなのに楽しそうな顔をしていることに疑問に思ったのか
「一体、何してきたんですか?」と聞くので夜な夜なサバゲーやってきたんだよと答えた
よく分からない千早にようはエアガン使った銃撃戦遊びだなと言いつつ
手持ちのエアガン、迷彩服、チェストリグ、ブーツなどなどの装備品を見せてみた
男の人ってこういうの好きですよねと興味深そうに手に取る千早に
着てみるか?と冗談交じりに言うと「そうですねこういうの服を着る機会はそうありませんし」と
珍しく乗り気だ
数分後、思っていたより重いんですねと大きいサイズの迷彩服と装備に着るというより
着られている千早になんだか可愛いなあと思い「うわぁあ!」と胸に手を当てて
わざとらしく倒れるてみる
「ど、どうかしましたか?」と目を丸くする千早に
「千早にハートを撃ち抜かれた!切なくてたまらない!」と言ってみたときの千早を
のほほんと観察したい今日この頃の俺
千早の香りが落ちるからしばらくは洗わないでくんくんしていよう



自宅に帰ると何やら地元の友人から留守電が入っていた
なんか久々だなと思いつつ再生すると俺がハナタレ小僧だった頃から
親しかった友人が昨日、交通事故で亡くなったとのこと
予定を見るとなんとか葬式には行けそうなのでクローゼットの奥から喪服を取り出していると
「喪服を出すなんてどうしたんですか?」と千早が帰ってきた
まぁ実は……と友人の葬式に行くことになったことを話しているうちに
いつの間にか彼との思い出話をするようになっていた
そこでふと自分の目頭が熱くなっていたことに気がついた
突然話すのを止めたのを不思議に思ったのか千早が「どうしたんですか?
プロデューサーらしくないですよ」とあまりにも優しく言うもんだから
つい我慢できなくなって千早の胸元に泣きついたときの
千早の反応はとりあえず置いといて時には千早にみっとみないところを
見せてもいいんじゃないかと思う今日この頃
千早の胸元ではかーなーり落ち着くのが判明した



千早と営業の帰りに教会の近くを通るとちょうど結婚式をやっていたのか
大勢の人に囲まれて晴れ姿の新郎と新婦が出てきていた
綺麗ですよねと少しだけ羨ましそうに見ている千早が可愛いのでちょっくら一念発起してみる
とりあえず早朝は走りこんで足腰を鍛え仕事中に暇が出来たら
所構わず腕立て伏せをすること一ヶ月
「最近、筋トレ頑張っているようですけどどうかしたんですか?」と尋ねる千早に
「好きな女の子にお願いされたら好きな分だけお姫様抱っこしてあげたいじゃないか!」と
期待を込めた眼差しで千早を見つめたときの彼女の反応をムキムキに観察したい今日この頃の俺
街歩いていたら兄ちゃんガタイいいなぁと戦う公務員に勧誘されました



最近、他の事務所のアイドルが変質者に襲われる事件があったので
諸君らも気をつけたまえよと社長から訓示があった
物騒な世の中ですねと顔をしかめる千早の安全保障のために
一大決心をすることにした
翌日、どこぞのシークレットサービスよろしくダークスーツにグラサン、小型インカムを着用し
プノンペンから香港経由で入手したマ●ロフさんと予備弾倉を脇に吊り
上着で外部から悟られないようにしてみる
何やってるんですか?と目を擦りながら起きてきた千早に
「君の安全は俺が守り抜いてみせる。バックアップも控えているから安心してくれ」と
あくまで無機質に応えてみたときの千早を今日もキュートだな俺に良しと思いつつ
殺伐と観察したい今日この頃の俺


亜美と真美にレッスン場が休業中なので歌の上手い千早に教えてやってくれないかねと
社長が持ちかけてきた
どうする千早?と尋ねようと見やると「千早お姉ちゃん教えてー教えてー」とせがむ亜美と真美に
流石の千早もたじたじのようだ
たまにはレッスンで教わるだけではなく教える立場になってみるのも良い刺激になると思い
頼みを引き受けることにした
いざやってみると千早は的確なアドバイスを亜美真美に与えつつ
自らお手本になって分かりやすく説明している
どうやら千早自身も珍しく熱心な二人の教育に熱が入っているようだ
境遇は何であれお姉ちゃんだった千早からすれば年下の扱いには
少しばかり慣れているだろうなとほほえましい光景をのんびり見ていた
休憩になって少しだけ嬉しそうに亜美と真美を見ながら一息つく千早に
「お疲れ様。なんかさっきの千早を見てて思ったんだけど
千早は将来はきっと良いお母さんになるんだろな」と言ってみたときの千早の反応を
いつか幸せな家庭の中に千早がいて欲しいと願いつつゆったりと観察したい今日この頃の俺



稀代の歌姫、如月千早は歌に生き
そして歌に死んでいった
誰も登りつめることの出来ぬ高みへ独り
その孤高の鳥は舞い、落ちていった
歌を、翼を、散らした鳥はしかし
ようやく人になれたのだ



食材の確保しつつ千早を遊ばせたいので釣り道具一式を持って千早とスズキ釣りに出掛けてみた
仕掛けを作るのも楽しみだが千早にはきついかもしれないので今回はルアーを使うことにする
とりあえず釣り方を教えようとするもなかなか要領がつかめないようなので
二人羽折の形になって教えてみることにした
リールの巻き方を教えるときに重なり合う指に「プローデューサー…その…」と
妙に恥ずかしがる千早も気にもせず一通り教えてようやくスズキ釣りが始まった
穴場と聞いてやって来たものの一向に釣れず少し退屈そうな千早に
まぁ掛かっただけでも御の字さと話しかけ、最近可愛さが増したんじゃないかと
からかいながら楽しく会話してしばらく投げ続けていると千早の竿に当たりが来た
引きから見て大物そうでふらつく千早を支えながら応援し続けた
夕方、二人で苦労して吊り上げたスズキの刺身を嬉しそうに
頬張る千早を俺の心はとっくに千早に釣られてるんだよなと
感慨にひたりつつほわほわと観察したい今日この頃の俺



千早に今までありがとうとこれからもよろしくということで給料3ヶ月分と
秘蔵のコレクションの一部を売り払って手に入れた金で
今度は高いプラチナとダイヤのシンプルなリングを買ってみた
ただ渡すのもそっけないのでとりあえず何か言おうと考え
とりあえず軽くリハーサルしてみることにする
「君にはいろいろとパートナーとして世話になった
俺にとって今まで君と過ごした時間はかけがいの無い財産であり
君という素晴らしい人とここまで来たことは何よりも誇りに思っている
もしよかったら俺とこれからも楽しいときも苦しいときも互いに支えあいながら
良きパートナーとして共に歩んでくれないか?」と言って
リングの入った箱を振り向きざまに前に差し出すと
俺のお気に入り湯飲みを落とし嬉しそうに泣いている春香がいた
はい?とあっけにとられていると周りから拍手喝采とヒューヒューと
歓声が事務所中で沸きあがっている
待て違うんだ!今のは練習だから!つか渡す相手は千早であって
別に愛の告白とかそんなんじゃねぇから!と全否定するも何故か聞いてくれない
そうこうしているうちに騒ぎを聞いてやってきた千早を見つけ
いいから来てくれと突然のことに驚く千早の手を握って走り出した
人気の無い事務所の屋上で一息ついてから何ですかいきなりと
問う千早にリハーサルのように上手く言えないけれど伝えたいことを言って
リングを渡してみたときの千早の反応をゆるやかに観察したい今日この頃の俺



なんか昼飯作るのも面倒くさいので千早とカップ焼そばを食うことにした
何気なく湯を沸かして作っていると突然後ろから千早が呼びかけてきた
何だ何だと振り返ると気の悪そうな顔でカップ焼きそばを見ている
どうやらお湯を捨てる前に粉末ソースと液体ソースを入れてしまい
お湯を捨てたところで気付いたらしい
そんな千早に「お!なんだ俺の好み知ってて作ってくれたのか。じゃあこっちは千早の分な」と
自分のと千早の分を取替え、何も無かったように振る舞い
カップ焼きそばを頬張る千早を見守りながら千早と食べる飯は
何よりも美味くて暖かいんだよなと思いつつ緩やかに観察したい今日この頃の俺


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