662 :650:2011/03/29(火) 18:06:15 ID:1KkGVeYo0
今日もまた続きを投下。
ようやっと肥満化描写にさしかかりかけてきた・・・か?

*


翌日、私は学校に行った。
とても授業を聞いたりできそうな気分じゃ無かったけれど、休んでも解決しそうにない。
病院に行くわけにもいかない。
「うぇ…きもちわるい…」
昨日の夜、もの凄くたくさん食べたから、朝から胸焼けがする。
かと言って、朝食を抜くとお腹の中の蟲の餌が無くなるかもしれない。
そうなれば、私は死ぬ。体の中から食い殺される。だから、今日は朝から食パンを何枚か詰め込んできた。
胸焼けに加えて、お腹が張っているからさらに気持ち悪い。
教室に着いて自分の席に着いた後は、ずっとお腹を押さえて突っ伏していた。


しばらくそうしていて、そういえば今日は友達が誰も話しかけてこない事に気付く。
普段親しく話をする子は数人ほどだけれど、皆揃って遅刻したり休んだりするだろうか。
そう思って顔を上げると、目の前に“あいつ”が立っていた。
「…おはよう。」
栗色の髪の毛のクラスメートは、そう言ってにっこりと微笑む。
「な…!?」
「大丈夫…?顔色…悪いよ…?」

663 :650:2011/03/29(火) 18:07:47 ID:1KkGVeYo0
こいつは何を言っているんだろう。私の顔色が悪い原因はお前なのに。
「大丈夫…?顔色…悪いよ…?」
まったく表情を変えず、同じことを言うゴミ子。まるで人形みたいだった。
気持ち悪いというより、何か恐怖を感じる。
「何言ってるの…!あ、あんたのせいで…」
「…大丈夫…?顔色…悪いよ…?」
私の言葉を無視するように同じ事をくりかえすゴミ子。
「今日、保健委員の人、休みなの。だから、クラス代表の私が、保健室に、
 つれて、行くね?」
不自然にゆっくりそう言うと、ゴミ子は私の手を取って、私を支えるように立たせた。
「…昨日は、しななかったのね…」
「!?」
耳元でゴミ子が小さく呟いた。私は驚きで声が出なかった。
「誰もいない所で話そう…?ここだと、バレちゃうよ?みんなに…」
確かに、ここで昨日の事を騒ぐとクラス中に今の私の状態がバレる。それは嫌だ。
私は言われるままに体を支えられたまま、教室を後にした。

*


「…どういうつもり?」
校舎の裏、人気のない物置の所で、私は目の前のクラスメートに言った。
「なあに?」
「なあに、じゃないでしょ…!?だって、あなた昨日…!!」
「私からの贈り物…よろこんで、もらえたー…?感想が、聞きたかった…のー。」
虚ろな目でクスクス笑うゴミ子。やっぱり、薄気味悪い。いつもの事だけれど。
「喜んでない…!!どうすればこの蟲が取り出せるのか教えなさい!」
私はゴミ子の肩を掴んで揺すりながら聞いた。
「…しらない」
「知らないとか言ってんじゃ無い…!!」
「…本当に、しらないもの。」

664 :650:2011/03/29(火) 18:09:08 ID:1KkGVeYo0
けらけらけら、という乾いた笑いがゴミ子の口から漏れる。
「だって、取り出す必要、ないもの。調べて無いよ。」
「…っ!!!」
私は思わず目の前の顔に平手を食らわした。ぱあん、という高い音が響く。
「…いいもの…痛くても…いいもの…。」
叩かれたままの姿勢で、小さな声で呟くゴミ子。
「もう、私が殺されようが……えへへ…しのうが……へへ…えへ…良いの…
 もう、これでいいんだもの…」
「どういう事なの…!」
私の声に、ゴミ子は首をぐるん、と動かして私の顔を見た。
「あなた達が苦しめば、それでいいの。」
「は…あ…!?」
何言ってるのこいつ。
「私は、もういいの…。気が済むなら、殺して、いいよ…?あなたが、私を。
 いじめて、いいよ?なぐって、いいよ?けっても、いいよ?いいよ…?
 いいの…、あなた達の人生が、台無しになればいいんだもの…え…へへへ…
 私は、どうなっても、いいの。」
無表情で薄気味悪い笑い声を出しながら、訳のわからない事を言っている。
「あ、あなた何言って…」
「もう、あなたの、あなた達の人生は…普通のものじゃ、無い…。えへへ…やったー。
 あなたの人生、だいなしだー。みんな、みんな、だいなしだー…」
「あ、あの…」
「だいなしだー…だいなしだー…」

それからゴミ子は私の前で、虚空を見つめながら「だいなしだー」を繰り返し続けた。
一時間目の始まりのチャイムが鳴るまで、ずっと…

*


一日中、私は心ここに在らずだった。

665 :650:2011/03/29(火) 18:11:01 ID:1KkGVeYo0
とにかく、いつお腹の中の蟲の餌が無くなるか、怖くて仕方ない。
私にこの蟲を飲ませた張本人も、何を聞いても乾いた笑いを漏らすばかりだった。
というか、なんだか今日は彼女の雰囲気が尋常じゃない。
何処を見ているかわからないというか、魂が抜けてる感じに無表情で、
しかも時々体を左右に揺らしている。二度と話し掛けたくない雰囲気だ。
それは皆も同じな様で、ゴミ子は今日一日、ずっとクラス中から無視されていた。

お昼休み、私は学生食堂でお昼を食べた。いつもは友達と食べるけれど、
今日はそんな気分になれない。というか、それは困る。
「…やっぱり…多いかな…」
私の目の前には、今日のお昼のカレー。2皿目。
学食のカレーを2皿も食べる所を、友達に見られる訳にはいかない。
確かに、別に友達と食べなくても、ここは学食だからかなり人目はある。
でも、ちょっと時間をおいて2皿目を買ってくれば遠目からは解らないハズ。
一応、カウンターのおばさんには「友達の分」と言っておいたし。
「ん…(もぐ…もぐ…)」
昨日からの暴飲暴食もあって、今かなりキツい。
実は1皿目から胸がつかえて厳しかった。お腹の中に鉛でも入っている感じだ。
「う…(もぐ…)ぶ…ふ…(もぐ…)」
でも、食べない訳にはいかない。いつでも胃の中を満たしておかないと。
今の私はもしかすると、「小腹がすいた」程度でもお腹の中の蟲に食い殺されるかもしれないのだ。
食べすぎで頭がガンガンするけれど、死ぬよりはマシ。
それよりも、早くこの蟲を誰にもバレないうちに体の外に出さないと。


666 :650:2011/03/29(火) 18:12:27 ID:1KkGVeYo0
4、

*


あの“事件”から五日経った。
今日は週の終わり。日曜日。学校は、無い。
部活は、体調不良という事で休んだ。運動部なれど、元からそこまで厳しい部では無かったし。
「うぅ…」
ベッドに仰向けになってお腹をさする。
結局、この蟲を外に出す方法は何も分からなかった。
コレを飲ませた張本人は、何を聞いても何をしても「しらない」と薄気味悪く笑うだけだし、
かと言って誰かに相談するなんてできない。
そんな事をすれば、私のあだ名が“寄生虫女”になってしまうだろう。
教師なんて、論外。家族も嫌だ。何処から話が漏れるかわからない。
…そういえば最近、仲の良かった友達が私に声を掛けなくなった。
誰かと話をしていてうっかり秘密がバレる、という心配が無いから、それはまあ良いのだが。
「…はぁ…」
一応、自分なりに解決策も探した。
でも、病院に行くわけにもいかないから、全部自分で思いついた方法で。
近所のペットショップで虫下しの薬を買って、少し飲んでみるという大冒険もした。
効果は無かったけれど。
「どうすればいいの…」
思わず口から声が漏れる。
毎日毎日、お腹の蟲のせいで、お菓子やらご飯やらを無理やり詰め込んで食べ続けるのはもう嫌だ。
「はぁ…」
憂鬱なため息が出る。本当にどうすればいいのだろう。
枕元に置いてあった袋から、お菓子を取り出す。
なんだか、いつ何処にいても何か食べている気がする。

667 :650:2011/03/29(火) 18:13:45 ID:1KkGVeYo0
一週間ほど前まで、間食を控えてダイエットしていたというのに。
…そういえば、テレビで寄生虫ダイエットなんて話を見たことがある。
いま私のお腹の中にいる蟲は、そういう効果があったりするのだろうか。
いや、そんな生半可な物じゃないか。普通の回虫とかそういうのは、
宿主を内側からストレートに食べたりはしないはずだ。
「本当に、何て物を…」
飲ませてくれたんだろう、あいつは。私が何をしたって言うんだ。

ばりばりとスナック菓子の袋を開ける。塩っぽくて良い匂いがする。
こんな非常時だけど、素直に美味しそうだと思う。
ずっと何か食べているから、別にお腹は空いてないけれど。
でも食べる。蟲の餌が無くなると、私は内側から食い殺されてしまう。
「う…く…」
朝からずっと、部屋に籠ってお菓子を食べ続けていたから、お腹がいっぱいで苦しい。
右手でちょっとさすってみても、パンパンに張ってるのがわかる。
「苦し…い…」
でも、食べるのを止めるのが怖い。

668 :650:2011/03/29(火) 18:14:50 ID:1KkGVeYo0
…実は、お腹が空いていない時でも、お腹の中で何かが動いている感じがする事がある。
体の中に何かがいるという感覚と現実が私を掻き立てる。
だから、食べるのが止められない。止めてはいけない。
「う…ぅ…」
スナック菓子を頬張りながら涙をこぼす。
何で私が、あんな奴のせいでこんな目に遭わなければならないのだろうか。
私は、何もしていないのに…
とにかく、明日こそ何とかゴミ子から解決の方法を聞き出さなくては。

*


「そんな…」
私は愕然とした。今聞いたことが、信じられなかった。
「そんな…うそ…」
「…ほんとう、だよ。」
ここは校舎裏。なるべく人目のない場所で、私はゴミ子にもう一度、
お腹の蟲の取り出し方を聞いていた。
いつも、「知らない」「わからない」ばかりで、何の手がかりにもならなかったけれど。
私をこんな目に遭わせた張本人にこんな事を聞くのは、少し間抜けだけれど。
こっちが下手に出なければいけないのがすごく癪だったけれど。
…でも、この蟲の事を知っているのはこいつしかいないから、
だから、蟲を取り出す方法を知っているのもこいつだけだと思っていた。それなのに…
「…その蟲、飲み込んでから、何日かすると、内臓と…同化…?するんだって。
 胃腸の?壁に?めり込む…感じ?らしいよ。最近、お腹の中で蟲が動くような…
 感じが…してたんじゃない?」
「ちょ、ちょっと…何なの…それ…」
「さあー…?そういう蟲、らしいよ…。やったね、もう取り出せないよ。ふ…ふふふ…?」
それなのに、私が知ったのは、既に「手遅れ」という事だった。
何だ、そのふざけた話は。
「ふざけないでよ!私が何をしたの!?何でこんな事っ、私がされなきゃいけないの!?」
私は思わず叫んでいた。
人気の無い校舎裏に私の声が響く。
誰もいないからこそこんな大きな声が出せたのかもしれない。
「……。」
ゴミ子が一瞬顔をしかめた気がした。いつも無表情だから、気のせいかもしれないが。
「私が、そうしたかったから。」
すぐにまた無表情になったゴミ子の口が、自分勝手な事を言った。
「ふざけんな!」
私が怒鳴ると、ゴミ子は無言で近づいて来て私の顔を覗き込んで
「…やだ。」
と、一言だけ言った。

669 :650:2011/03/29(火) 18:18:37 ID:1KkGVeYo0
「…っ!?」
あまりに頭にきて思わず、その顔を殴る。
鈍い音と同時にゴミ子の姿勢が崩れる。こんなに誰かを殴りたいと思ったのは初めてだ。
「う…ふふ…」
「え…?」
殴られた時の姿勢のまま、ゴミ子が不気味な笑いを漏らす。普通ではない、異様な雰囲気。
そしてそのままゆっくりと姿勢を直していく。
「ふ…ふ…」
あまりの薄気味悪さに思わず固まってしまっていた私のお腹に、ゴミ子の手が伸びた。
「ひゃ…!?」
ゴミ子の手が私のお腹を撫でる。
ここしばらくの暴飲暴食でいつでもパンパンに張っているお腹を他人に触られるのはすごく変な感じで、
私は間抜けな声を上げてしまう。
「う…ふ…ふ…」
気色悪い笑い声を漏らすと、ゴミ子はそのまま私の横を通りぬけて、ゆっくりと歩き去った。
後姿がゾンビみたいで気持ちが悪い。
「……。」
ゴミ子の後姿が校舎の角に消えた後、しばらく私はその場に立ち尽くしていた。
どうしてこんな事になったんだろう。
右手で自分のお腹をさする。
手遅れ。どうして。
この一週間、誰にも相談できなかったからだろうか。
一人で悩んだ挙句がこの結果なのだろうか。
でも、誰に相談できたのだろうか。
そんな事を考えると、目の奥が熱くなった。

止めよう、そんな事を考えるのは。どうしようもなかったのだから。
誰かに話したら、私はおしまいなのだから…

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最終更新:2011年03月30日 07:51