■S5

保奈美は、クルミに電話をした。なんとクルミは先程あんなに沢山のケーキを食べたにもかかわらず、帰宅後は何のためらいもなくすぐに沢山の夕飯を食べて、風呂に入り、まったりとくつろいでいるところだったのだ。
「もしもし、保奈美ちゃん?どうしたの?」
「あぁ、クルミ。…あのね、さっき沢山食べちゃったから、不安で…。」
「えぇ?何が不安なの?」
「その…もし、お腹がケーキに耐えきれなくておかしくなっちゃったら、どうしようとか」
「アハハ。そんなの平気だよぉ。吐き気とかしないんでしょ?」
「うん。クルミも平気なんだよね?」
「あたしなんて、ご飯も食べちゃったんだから。あ、でもさすがにお腹もパンッパンだよぉ。」
保奈美の耳には電話の向こうからタン!タン!という鈍い音が聞こえてくる。クルミは自分のお腹を叩いているのだ。
「うっそ!よく夕ご飯なんか食べられたね~。そんなにパンパンなの?」
「うん。すっごくパンッパンで、重たいけど、なんか張りが気持ちいい。」
「ねぇ、今からまた会えない?…うちに来て欲しいの。」
保奈美は不安で、このまま部屋に一人で夜を過ごすのが不安だった。かと言って、母や妹にすがれば後から何を言われるか分からないので気が引けたのだ。そこで、大食い経験者であり、友達であり、一緒に大食いをしたクルミが居てくれれば心強いと思った。それに、電話の向こうから聞こえてきた音を聞いて、あの雄大なお腹が更に膨らんで一体どんな風になってしまっているのだろうか、という興味が湧いてしまったのだ。
「えぇ~今からぁ~?…うーん、今からだと、お泊まりになっちゃうけどいい?」
「うん、それがいい!一緒に寝よ。」
保奈美の声は明るく弾んでいた。

40分後、クルミは保奈美の部屋に登場した。クルミが自分の家でどうやりくりを着けたのかといえば、…こっそり抜け出てきただけであった。つまり、次の日の朝はこっそり家に戻っていないと気づかれてしまうのだ。保奈美も、まさか自分の部屋に友達を泊めるなどという事は言えないので秘密であった。2人は携帯で連絡を取り、保奈美は家族が廊下や階段に居ない隙を見てこっそりクルミを招き入れた。その時は既に夜の10時半を回っており、リビングやキッチンにはもう誰も居なかったし、昌樹の部屋からもゲームの音は聞こえなくなっていた。

「おじゃましま~す。わぁ、まだ可愛く膨らんでるんだねぇ保奈美ちゃんのお腹。会いたかったよぉ。」
クルミは保奈美の部屋に入るや否や、保奈美のお腹に抱きついた。
「ちょっとぉクルミ、私じゃなくて私のお腹に会いに来たの?」
そう咎めながらも、保奈美はちっとも怒ってはいなかった。
「ごめんごめん。保奈美ちゃんに会いに来たんだよ。でも、重かったぁ~。保奈美ちゃんのおうちまで、いつもは歩いて15分くらいだけど、お腹が重くて20分以上も掛かっちゃった。」
「どれ?そんなに重たくなるくらいパンパンなの?」
保奈美は、クルミが羽織っている薄手のジャケットをめくってお腹を確認した。
「…うわぁ、凄ーい!さっきよりずっとパンパンだよ。」
今度のクルミのお腹は、さすがにもう、ゆったり目の衣類くらいでは誤魔化せないくらいパンパンに膨らんでいた。身長150cmの標準体型の女の子が保有するにしては、あまりにも不自然すぎる位に横にも縦にも大きく逞しく、堂々とした丸みを帯びた腹部だった。お腹からお尻にかけてのその巨塊は、大きさも丸さもスイカそっくりであり、例えるなら軽自動車に大型エンジンを積んでいるかのようなアンバランスさを醸していた。保奈美は「さっきのお返し」と言わんばかりに、クルミのお腹にギュッと抱きついた。先程は保奈美を柔らかく受け止めてくれたクルミのお腹の皮下脂肪も、内側からの圧力でギュンギュンに伸び、今は”受け止める”というより”跳ね返す”くらいの弾力を帯びていたのだ。

2人はそのまま手を繋ぎ、一緒に保奈美のベッドに座った。普段は聞こえないような、ミシッという軋み音が静かな部屋に響く。そして2人はお互いの顔を見て静かにほほえんだ後、何も申し合わせていないのに互いに別の向きに体を横たえ、お互いの顔の前に相手のお腹が来るような姿勢を取った。一度この姿勢になるともう、お互いの顔は自分達のお腹が邪魔で確認出来ない。保奈美がクルミのお腹にほっぺたをくっつけると、自分のお腹にもクルミの顔がくっつけられているのを感じ取った。クルミのお腹は相変わらず熱を帯びており、そして中からは時々「ゴギュッギュッギュッ…」という音が響いていた。それは、保奈美が自分のお腹に聴診器を当てて聞いた音とはひと味もふた味も違う感じの音だった。それは何故かと言えば、中に取り込んだ食べ物の絶対量の差と、空気が含まれる割合、膨らんだお腹が元に戻ろうとする復元力による締め付けや、胃腸の筋肉の動き方などによる違いであろうという事は推測が着いた。とにかくクルミの方が圧倒的に勇ましく感じた。普段はポヤンとした天然な感じのあるクルミの中から、こんな獰猛な音が聞こえてくるのかというギャップに驚き、保奈美はただただそのクルミのお腹に吸い付けられてしまっていた。クルミの頭もまた、空豆のような形に膨らんだ保奈美の胴から離れることはなかった。しばらく2人の間に会話は必要なかった。20分…30分…そうしたまま、どれだけの時間が過ぎただろうか。保奈美はようやく上体を起こしてクルミに話し掛けた。
「久しぶり、クルミ。」
「久しぶりぃ、保奈美ちゃん。」
クルミも後ろに両手をついて、重そうな上体を起こして向き合う。
保奈美は、クルミのお腹と自分のお腹に手を置きながら話し掛けた。
「ねぇ、今、ケーキやご飯はこの中でどうなっちゃってるんだろうね。」
保奈美の問いかけに、クルミは優しく微笑みながら答えた。
「そうだねぇ…。多分、この中で、あたし達と一つになろうとしてるんだよ。」
クルミの表現はメルヘンチックだが、その内容は的確だった。食べたものは食べて終わりじゃない。お腹が食べた物のお陰で膨らんでいるからこそ、その事をいつもよりずっと強く認識させられるのだ。
「だから保奈美ちゃんも、優しく迎え入れてあげようね。」
「…うん。」
保奈美にはもう先ほどのような不安感は無かった。消化不良や摂取カロリーオーバーの話など、どうでもよく感じた。せっかく食べた大好きなケーキなのだから、愛を込めて消化して、少しも切り捨てることなく優しく取り込んであげたい。保奈美はそう思って、あらためて自分のお腹をさすり、優しくマッサージした。

「ねぇクルミ。今、私達が大食い対決したら、どっちが勝つかな?」
保奈美はケーキにお供を加えようと考えた。いくら大量とはいえ、夕飯がケーキだけでは寂しい。普通の夕飯も添えて一緒に消化してあげたいと思ったのだ。しかし今はクルミが居る。一人だけでご飯というのは気が引けた。クルミのお腹もギッシリと詰まっていて、今の状態からのスタートなら互角か、あるいは自分に有利な勝負になると保奈美は思ったのだ。勿論それは、クルミが引き受ければの話だが。
「アハハ。いいよぉ対決してみる?あたしもう結構お腹一杯気味だけど、まだ入るかも。それに対決したら、保奈美ちゃんのお腹もまたさっきみたいに可愛~い形に膨らむんだよね。楽しみ。」
クルミもまたずいぶんと不思議な趣味を持った女の子のようだ。一体思考回路はどうなっているのか分からない。とりあえず、パンパンに膨らんで苦しくなった時の保奈美のお腹に病み付きになってしまった事だけは分かる。

二人で台所に降りていったら、家族と鉢合わせしてしまうかも知れないので、保奈美が一人で降り、用意されていた晩ご飯に加えて4人前のうどんを茹で、ざるに空けて水で冷やし、さっさと自分の部屋に運び込んだ。幸い家族は全員寝静まっているようだった。

部屋に戻ってから、保奈美はご飯とうどんをきっちり半分に分けた。分量としては一人あたり2.5人前有る計算になる。
「さぁ、これで食べきった方が勝ちだからね。二人とも食べきったら、おかわりを作るから。」
保奈美にはおかわりを作る気までは無かった。自分の腹具合から言って、2.5人前は途方もない量だったからだ。おそらくこれは二人とも残して、その残った量の少ない方が勝ちになると思っていた。

しかし、うどんは意外とお腹に入りやすいようだった。夕飯のおかずを時々つまみながら、うどんをめんつゆに着けて口に流し込む。ケーキとは違って、呑み込む為の労力は少なくて済むのだ。滑るように喉から胃袋へと落ちていく。そうなると、あとは単純に胃袋の残容量の戦いだった。しかし保奈美は、戦いというよりむしろ、冷たいうどんがスルスルと自分のお腹に入っていく感覚に気持ちよさを覚えていた。うどんが食道を伝ってゆっくりと自分の胴内に落ちていく。見下ろせばピーナッツのように奇妙な形に膨らんだ自分のお腹。うどんをチュルチュル連続的に呑み込むと、お腹の中からひんやり感を覚え、そしてうどんによってギュッと押し広げられたお腹は張り感が強くなり、お腹の張り出し量も少し大きくなる。みぞおちから下腹部まで、広域に分かって自分のお腹の筋肉がキュンキュンにストレッチしている感じ。普段は殆ど真っ平のままだった自分のお腹が、こんなにも力強く膨らんで、こんなにも沢山の食べ物を蓄えることが出来るなんて。しかも、自分の体内にうどんを蓄えた感触が、その冷たさから感じることが出来るのだ。保奈美はしばし夢中になって、自分のお腹を見つめながらうどんを流し込み続けた。

遂に保奈美の箸はざるを突いた。いつしかうどんのざるは空っぽになっていたのだ。さっきまでざるの上に山盛りになっていたうどんはもうすっかり保奈美の腹部に収容されてしまっており、腹筋の収縮力による締め付けの洗礼を受けていた。
「うわぁ…すっごぉい保奈美ちゃん。もう食べちゃったの?」
ふと見上げると、ゆっくりペースのクルミのざるにはまだうどんが残っていた。
「まだ入りそう?よかったらあたしの分も食べる?あたし、負けで良いよぉ。」

意外なことに、保奈美はまだ限界を感じていなかったのだ。夕方のバトルでは、胃の中のケーキが急激に膨らんだから失神してしまったようだったし、それにあの時はブラウスによる締め付けがあった。今はTシャツに着替えているので、衣類の締め付けという外野からの邪魔は入らない。保奈美はクルミからのうどんを受け取ると、今度はゆっくりと、少しずつ呑み込んでいった。丸く膨らんだ自分の胴体が普段よりずっと重くなっているのを感じる。絨毯の床の上に座っているお尻が、普段自分の体重を受け止めているよりずっと高い圧力で押しつけられていて、だんだんしびれて来ているのだ。スレンダーな保奈美ならではの症状であった。細い手足、小さなお尻、華奢な肩、小さな顔。それらを置き去りにして今、保奈美のお腹だけはどんどん大きく逞しく、雄大な姿に成長していた。クルミはそれを、瞳をキラキラ輝かせながら見つめている。

「…ごちそうさま。もうお腹一杯」
ついに保奈美は限界を迎えたようだった。それと同時に、クルミが差し出した1人前弱のうどんも丁度無くなった。保奈美は単にお尻がしびれただけでなく、もう一人で立ち上がる事が出来なくなっていた。カチカチに張ったお腹は腹筋が全て伸ばされ、立ち上がることはおろか、腰を安定させる事すら出来なかった。保奈美はお腹を前に投げ出し、腕を後ろについてややのけぞった姿勢のまま、動けなくなった。立ち上がることは出来ないし、背筋を伸ばして座ろうとすれば下腹部が太股の付け根に圧迫される。しかし完全に横に寝そべれば食道の方に逆流してしまいそうだった。保奈美はそのような姿勢で身動きが取れなくなったにもかかわらず、なぜか恐怖感は感じなかった。それは大食い経験者のクルミがそばに居たからという事もあり、もう一つはそんなにカチカチに食べ物が詰め込まれた自分のお腹の形にうっとりしていたからだ。枝豆のような、ピーナッツのような、はたまたスヌーピーの頭のような、不思議な形に突出した大きな大きな自分のお腹。クルミはそのお腹に近寄り、Tシャツをめくって、そっとさすった。
「うわぁ!固~い!…それにひんやり冷た~い。」
「そうだよぉ。だってこの中には、さっきまでそこに一杯あったざるうどんが殆ど全部入っちゃってるんだから。」
保奈美はTシャツの上から声を掛けて、クルミの想像を煽る。そして自分でも片腕を持ち上げ、自分のお腹をさすってみた。そして…
「うわっ!やだあたしのお腹、本当にカッチカチ!」
予想以上に固くカチカチになっている自分のお腹に驚いたのだ。うどんも、ケーキも、つい夕方前までの自分のお腹もしっとりとしていて柔らかかった。それなのに、最後にうどんが限界まで詰め込まれた自分のお腹はそれらのうちのどれよりも固い、未知の固さだった。生卵を押しつけたら、そのままくしゃっと割れてしまいそうな位だった。勿論、腹筋に力は一切入れずに…というよりむしろ、力など入れられない状態だが。
それに比べてクルミのお腹は、保奈美よりもずっと横に広くどっしりと構えて凛としたふくらみを帯びていた。先程の電話の向こうで聞こえていた凄い音は、これを叩いて出したのだろうか。保奈美はその音を生で聞いてみたくなった。
「クルミもさっき電話した時以上にパンパンなんじゃないの?」
「うん。もうパンッパン!」
クルミが振り下ろす手の動きに合わせて、バン!バン!という衝撃的な音が部屋に響いた。あまりに音が大きくて、保奈美の家族が起き出さないかと心配になるくらいだった。あんなにゆっくり食べているのに、うどんと一緒に空気が入ってしまったのだろうか。それとも、先に食べた食べ物がクルミの腸内で発酵を始め、ガスを発生させているのだろうか。保奈美はそのお腹に手を添えた。表面はやはり柔らかいままだった。腹筋だけでなく、ややたっぷりと蓄えた柔軟な皮下脂肪がしっとりと伸びて、食べた物達を柔らかく包み込んでいたのだった。その層は厚く、中の様子は全く窺い知ることが出来ない。冷たいうどんが入ったにもかかわらず、表面はなま暖かいままだった。何がどれだけ食べられたのかは、食べている最中を直接確認しなければ分からない。叩いた時の音と、もの凄く大きい砲弾のような膨らみだけが、クルミのお腹の器の大きさと力強さを表していた。天真爛漫なクルミはその脳で、自分のお腹の状態をどう感じているのだろうか。クルミはこれだけ食べて、これだけしたたかにお腹を大きくしておきながら、まだまだ限界容量には達していないようだ。
「でもさぁクルミ、こんなにカチカチに張っちゃってたら、消化できないよね。胃袋だって動かなきゃいけないんだから。あたし明日の朝になっても昼になっても、ずっとこのままだったらとうしよう…。」
「大丈夫だよ保奈美ちゃん。胃袋は動かなくても、ちゃんと液が出てくるんだから。それで少し溶けたら少し縮んで、最後にはちゃんといつも通り動くようになるよ。」
さすがは経験者のクルミだった。さすがに食べ物をここまで胃袋に詰め込める人は希有だが、いざ詰め込んだ人の場合でも、胃袋というのはちゃんとよく出来ているのだ。だれが考えて作った訳ではない。動物として、野生の中で人間が進化してくる間に培った手段だろう。食べ物が手に入らなくなる前に、目の前に沢山あるうちに出来るだけ胃の中に詰め込んで消化し、栄養を蓄えて冬に備える。子供を腹の中で育てなければならない女ならば尚更、栄養摂取は重要だ。

クルミの助言通り、15分もすると何となく楽になった保奈美。試しにそのまま体を横に倒してみても、食道に逆流して来そうな感覚は無かった。但しまだ立ち上がって歩く気にはなれなかった。保奈美はそのまましびれたお尻をひきずってベッドの縁まで行き、クルミに手助けを貰ってベッドの上に横たわった。クルミもその隣に横たわる。保奈美の可愛いシングルベッドは、巨大な腹を抱えた美少女二人が乗ることで、かつて受け止めたことのない100kg以上の重みを受けてミシミシと軋んだ。狭いベッドの上で二人の膨らんだお腹同士は再びぴったりとくっついた。それはお互いのお腹を励まし合うかのようだった。

明け方5時前、クルミは家族が起きる前に保奈美の家を出て行った。クルミのお腹はだいぶへこんで戻っていた。保奈美のお腹もまただいぶ収まっており、その膨らみも下腹部に集中していた。トイレに行って、保奈美自身も驚く程のお通じの後は、全く元通りに戻っていた。しかし保奈美はこれで全てを終わらせる気がしなかった。
「これを続ければ、きっとクルミみたいに容量もどんどん増えるんだろうなぁ…。そしたら、晶君においしい料理をいっぱい作ってもらわなきゃ。」
保奈美は、その後の高校生活に更なる楽しみを帯びた。

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