ライブラ「これを使えば…お前達の世界とDWを行き来することが出来る。」
剛輔「これを使えば…」
春名「私達…帰れるの?」
ライブラ「もし戦いたくないのであれば帰るといい…明日、決断を聞こう。それまでゆっくりと考えることだ」

第59話 決断

前回のあらすじ
大量の敵たちと戦うことになったが確実に疲労はたまり、劣勢であった。
ところがそこへ突如アリエスモンが現れ、彼等を運び出すのであった。

剛輔「ふぅ…」
俺は一人、部屋の中に座っていた。
今まで、戦ってきた目的はもう果たしてしまった。
…だが、このまま逃げる訳には行かない。
それでも、気がかりなことがひとつだけある。それは…
良平「お、剛輔ここにいたのか」
成川良平。俺の友にして唯一気がかりな存在。
剛輔「良平…目が覚めたのか」
良平「あぁ…とはいえ、実は全部覚えてるんだ」
良平はスラッシュモンとして俺の敵となっていた。
俺もスラッシュモンを憎み、殆どそのために戦ってきた。
良平「なんていうかさ…もしかしたらアレは僕が心の奥底で望んでることなのかもしれない。そう思ったらさ…」
良平はゆっくりと俺の隣に腰を下ろす。
剛輔「怖いか?」
良平「いや、むしろ安心した」
剛輔「安心?何でまた」
良平「それってつまり僕はお前を越えたいって思ってるってことだろ?ずっとお前の下のつもりは無いってことだ。それっていいことだろ?今回はそれが悪い方向にでちまっただけってこと」
なんともすばらしいポジティブな意見だ。
…俺はそんなあいつが羨ましく思う。
剛輔「なるほどな…で、どうするんだ?お前ももらったんだろ?」
良平「あぁ、気が付いてすぐにこれ渡されてさ…びっくりしたよ、全く」
剛輔「お前は戻ってもいいんだぞ?お前にはパートナーが…」
良平「まった」
俺の言葉を良平は制止する。
良平「…言っただろ?僕はお前を越えたい、だからこそ僕も残るよ。どうせお前も残るんだろ?」
剛輔「だ、だが…」
良平「幸いアレは使えるみたいだし、大丈夫だろ…で、だ」
剛輔「何だ?」
良平「…あの2人だけどさ…どっちがいいと思うか?」
剛輔「…あの2人って?」
良平「決まってるだろ!あの姉妹だよ!可憐なお姉さんもいいが純粋そうな妹もまた捨てがたいし…」
剛輔「…全く…」

雪名「お姉ちゃん、大丈夫?」
春名「うん、大丈夫だよ」
私は雪名と一緒に丘を眺めていた。
雪名はすっかり昔に戻った様子だった。
それは本当に良かった…でも。
雪名「お姉ちゃんはどうするの?」
春名「…どうしよっか?雪名はどうしたい?」
雪名「…私は残りたい」
それは、妹が決意したこと。
無論、私はそれを止めたかった。でも、止められるわけが無い。
自分で考え、自分で出した結論なのだから。
雪名「私ね、今までお姉ちゃんに守ってもらってた。あのときだって、お姉ちゃんに助けてもらった…だから、今度は私が何かをしたいの。私が出来ることをしたいの…」
妹は自分の答えを出した。なら私の答えは何なんだろう。
私は皆を騙して一緒についてきた。
皆の信頼を裏切って、今またここにいる。
…私は皆に償いたい。それが、私に出来ることなのだろう。

バルト「…行くのか?」
ワイバー「あぁ…」
少し離れた森の中、僕はワイバーモンを見送りに来た。
ワイバー「今となっては一緒にいても役には立たない…だったら、俺のできることをしたいんだ」
バルト「そうか…なぁ」
ワイバー「何だ?」
バルト「…また、会えるよな」
僕には記憶が無い。
僕が無くした記憶の中にはワイバーモンと共にいた思い出もあるのだろう。
そして、僕が何も覚えていなくても僕を気に掛けて接してくれたワイバーモン。
僕がワイバーモンとともにいた理由もわかる。
ワイバー「何言ってんだよ、当たり前だろ?」
バルト「…そうだな」

ガンム「とうとうここまで来たんだな…」
アクア「そうね…全く、長かった」
ガンム「あぁ、お前とも結構長かったな」
アクア「あんたの第一印象は『アホ』だけどね」
ガンム「俺だって始めてあったとき『バカ』だったよ」
アクア「何よ!」
ガンム「何だよ!」
…こうしてケンカするのも随分久しく思える。
俺は、こういう生活を望んでいたのかもしれない。
ガンム「…ッハハハハハハハ!」
アクア「アハハハハ!」
こうして笑えるのも何時ごろぶりだろうか。
私は、こういう毎日を望んでいたのかもしれない。
ガンム「さてと、明日でこの戦いも終わりか…」
アクア「そうね…長かった戦いが、終わるんだ」
ガンム「それじゃまたこうして笑えるように頑張んなきゃな」
アクア「そうね、珍しくあんたと意見があったわ」
ガンム「確かにな」

スネイク「…やはり、カプリコモンのことか」
ナイフ「えぇ…私にとってあの人は剣の道を教えてくれた師でした。それが何で…」
師匠は私の敵となった。それは揺るぎの無い事実。
だが私はそれを受け入れられずにいた。
スネイク「…レオモンは、おそらく向こう側に操られているのだろう」
ナイフ「えぇ、明らかに様子がおかしかったですし」
スネイク「それなら、カプリコモンも何か理由があるのではないのか?」
そう、スターレジェンズであった2人が何も無しに我々を裏切ることなど無い。
おそらくは何か理由があったのだろう。我々に言えず、スターレジェンズとしても果たせない目的があったのかもしれない。
スネイク「ならば我々に出来ることはひとつだろう」
ナイフ「…彼等の理由を知り、そして…」
全力で戦う。それしかない。
かつてレオモンは言った。力が無いから誰かを救えないのだと。
ならば力があれば救えるはずだ。私はそう信じたい。
私は、師匠を信じたかった。

龍「もう、ここまできちゃったんだな」
誡「そうだね、ここまでいろいろなことがあった」
本当にいろいろなことがあった。
裏切って、裏切られて、傷ついて、傷つけて、死んで、殺して…
本当にいろいろなことがあった。
龍「いろんなことがあったけど、結構楽しかったよな」
誡「楽しい?」
龍「あぁ、歩いてるときとかふざけあったりしてさ…それは本当に楽しかったと思う」
龍は僕の顔を見てニッコリと笑った。
あぁ…なんて明るいんだろう。
彼は僕がなくしてしまったものを持っている。
だからこそ彼の笑顔は暖かくて…そして、眩しすぎた。
誡「変わらないね、龍は…」
龍「そ、そうか?」
誡「僕は変わりすぎちゃったから…ねぇ龍」
僕は変わってしまった。
もう、彼と一緒に笑うことも出来ない。泣くことも出来ない。
それほどまでに僕は変わってしまった。
だから…
誡「龍は…変わらないで、僕みたいにならないで」
龍「それって…」
誡「じゃ、僕は行くね」
僕は龍の側を離れる。
僕はもう、龍とは一緒にはいられない。
だから…僕は戦う。僕は戦わなくてはいけないから。

あれからいろいろなことがあった。
春名たちと会って、剛輔たちと会って、誡とはぐれて、一人になって、皆を助けて、そしていまここにいる。
俺は…どうする?
ライブラ「…結論は出たか?」
春名「私は戦います、ここで逃げるわけには行かないから」
妹のために苦しみ、そして最後まで俺達のことを思ってくれていた春名。
剛輔「こちらとしては、どうしても決着を付けたい相手がいるからな」
自らの復讐のために戦い、自分の希望を手に入れた剛輔。
誡「きっと、これでいいんだよ」
昔と変わってしまった、大切な親友の誡。
良平「俺達だって戦うぜ」
雪名「私達にも力があるもの」
敵に利用され、そして今は俺達を助けようとしている二人。
そして俺は…
アリエス「龍君、君はどうしますか?」
龍「…俺も戦う」
世界のためなんかじゃない。これは自分自身のため。
この世界に来た理由を探すため、そのために俺は戦う。
きっと、この先に答えがあるはずだから。

第59話 完
次回 集結

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最終更新:2007年06月09日 10:54