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 The 32nd talk ~擦違い~

『お帰りなさいませ、ご主人様』
家に帰ってきた僕を待っていたのはその一言だった
メイド服を着た彼女の姿に思わず僕は苦笑してしまう、そして目の前の光景がぶれ、過去を思い出してしまう

~何でそんな格好してるの…?お姉ちゃん~

『メシア…なんでそんな格好してるのさ?』
僕は思わず苦笑していた…正直言えば似合っていない訳では無い…だが何故か苦笑した
その理由が僕自身にも分からなかった…唯一つ言える事…それはもう居ない恋人の姿が重なって映った事だった
『何ニヤケてるんですか?お兄様』
『フフ…ちょっと…ね…』
そう言うと僕は彼女の言葉をサラリと流す、それは客人を待たせたくないと言う気持ち故だった
『(ねぇ…この人誰なの…?)』
テイルモンは小声で目の前の不思議な人間の事を僕に問う
『(私の妹…かな…いや…化物…って言った方が…分かりやすい…かな…?)』
彼の表情が僅かに曇り悔しさが漏れ出てくる…優しすぎる故なのか…彼は顔に直ぐ思いが出てしまう
彼女がその肉体を獲る事に成ったのは彼が悪い事訳では無いのに…まるで自らが全て悪いという様な表情を見せる…

『…もしかしてメイド服着れなくて怒ってます?』
『私は…メイドさんには成りたくありませんから』
意外な彼女の一言に呆れ苦笑してしまう、だがこれは彼女のせめてもの罪滅ぼしなのだと思う…
お互いがお互いを思ってしまう故に起こってしまう…全てを自分の所為に…その結果が生み出した連鎖…
どうして救われないのだろう…彼女だけでも…彼女だけでも…そう言ってどれほど嘆いた事か…
でも何処かで思ってしまっているのだ…このままで良いと…このまま彼女が笑ってくれるなら…と…
『そうそう…今日はお客さんが沢山来ているから…夕食の準備を整えないとね…』
『あっ!お荷物お持ちします!』
そう言ってそっと荷物を持ってくれる…そう言った気遣いはとても嬉しいのだ…けれど…

~貸して下さいな、荷物を置いてくるわ~

どうしても重なってしまう…こう言った感情を殺す必要は無いのかもしれない…
【失ったものは戻らない】けれど【戻ってしまった物を失い直すことも出来ない】これが現実なのだ…
どんなに嘆いても彼女は戻ってこない…そしてどんなに嘆いても彼女を消す事は出来ないのだ…
『(どうして…どうして私は…彼女を…なんで私は誰一人守ることが出来ないの!?)』
どんなに嘆いても…どんなに哀れんでも…どんなに変わろうとしても…変わらない現実…
だから…もう1人の私は憎む…【自分と言う存在】を…【敵】と【胸を張って生きる】言う言葉を作り出した主宰者を…
『今日は何を作ろうかな…?』
けれど嘆いても仕方が無いのだ…今此処に居ると言う事実は消せないし、消しては成らないのだから
だから私は生きたいと思う…あと1年しか持たぬ鎖で縛られたこの肉体で有っても…あの人が帰ってくる気がするから…

僕は無意識の内にキッチンに立って包丁を握っていた…今の僕が出来る精一杯の事をする為に…
『サラダ類(野菜)は必要ですし…けれど油も調整しなくては成らないし…』
そんな事を言いながら僕の体は勝手に包丁を振り下ろし食材を切り刻んでいた…
魚は鱗を取り食べやすく…そして極力無駄な油が取れる様に…野菜はその美味しさが生かせる様に…そして何より…
『(他者を犠牲にしてしまっている…だから…せめて食べる人の笑顔に出来る様に…)』
そんな事を思う度に自分に深い憎悪と嫌悪が指して仕方が無い…生きる為に必要であったとしても…
だからこそ生きなくてはいけないのだと俎板に刻まれる音と共に考え思う
犠牲にしたぶん…その命を懸命に生きなくてはいけないのだと…

『何で貴方がここに居るの…?』
テイルモンは目の前に居る人物の顔を見た時…深い憎しみに囚われようとしていた
『俺が此処に居ちゃ悪いかね?』
赤髪の少年は彼女を睨みつけながらそう言う
『えぇ…人殺しの存在は害に成る…』
そう言うと背筋がゾクッとする様な殺気が辺りに立ち込める…
『そうかね?では君の存在は害では無いのかね?』
嘲笑うかの様に彼は言い放つ
『殺して…扱使わせる様な悪魔が言える事じゃないでしょ?』
彼女はおぞましい形相で目の前の試験体を睨み付けていた
『散々な言い草じゃないか!!望んでも居ないのに…訳も分からぬ薬を入れられる日々の苦しさ…アンタに分かるとでも言うのか!?
 それに俺は…俺は・・・』
彼の声がだんだんと小さくなっていく…そして…次に彼が発した言葉はとても過細く…とても印象に残る言葉だった…
『…殺したくなんか・・・殺したくなんか・・・無い・・・のに・・・』
ずっと気付く事ができなかった彼の本心…ずっと唯の殺人鬼だと思い…疑おうとしなかった自分が其処に居た…
何で…なんで気が付けなかったのだろう…今の私に残るのは…弱者を潰す事しか出来ない恐ろしい自分しか居ないと…

『如何したんですかぁ~?大きな声を出すとご近所迷惑に成るですぅ…』
ゆっくりと自分の背丈の倍もの高さの有る扉を必死に成って開け、ルナモンが私達に注意してくる
『あぁ…そうだな…すまないな…注意させてしまって…』
彼がそう言うとルナモンは少し顔を赤らめる…男性との経験が少なすぎたかしら?と一瞬思ってしまう
そして相槌を打つくらいの間が経った頃、彼の持っている機械から声が辺りに響く
『ごめんね~、この【馬鹿】の所為でリリスモンさん怒る事に成ったから~』
『おい、誰が【馬鹿】だ?誰が…』
そう言うと機械の画面に映る赤き魔龍に、彼は低くそして顔だけが笑っている奇妙な?声を出す
『【馬鹿】は【馬鹿】だもんね~』
『そうですぅ~【馬鹿】は【馬鹿】ですぅ~』
馬鹿にされた…パートナーにだけでなく今日始めて会ったデジモンにまで馬鹿にされた…
『キサマァ!子どもに一体どういう教育をしているのだ!?』
赤髪の少年が声を荒げる!!
『あら?どういう教育と言われてもねぇ?』
『私…リリスモン様の子どもじゃないですし…』
その瞬間彼の中の何かが弾ける
『貴様ら其処に直れ!!正座だ!!』
そんな俺の発言に彼女らはさわやかな笑顔で…そして、とても悪意の有る声で彼女らは言い放つ

『『『ヤダ♪』』』

『きさ・・・』
其処まで行った時に俺の最後の気力を剥ぎ取る残酷?な声が青き龍から発せられる
『馬鹿が、馬鹿みたいに、馬鹿の様な大きな声を出すな、馬鹿者が』
その瞬間なぜか気力が完全に消え去ってしまった…