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私は迷っていた。
西方大陸、あのニクシー基地で、ベルガスについてきて本当に良かったのだろうかと…。


暗黒大陸に帰還した私とベルガスは正規軍に合流せずに、”鉄竜騎兵団”と呼ばれる特殊部隊と行動を共にした。彼らは旧ゼネバス派、親ゼネバス派にあたる軍人のみで構成されており、私が今まで見てきたどの部隊よりも士気が高かった。


ZAC2101年10月 帝都近郊の基地に私たちはいた。すでに主力部隊…いや皇帝警備隊、PK師団を残して全ての部隊といってもいい。それらが出撃した帝都は静まり返っていた。この日、私はベルガスから”真相”を聞くことになる…。


「サラ・ヘンドリック。お前に話しておきたいことがある。」

ベルガスが言った。ここは格納庫のキャットウォークの上、眼下では私のジェノザウラーが整備されているところだ。

「なんです?中佐」

ベルガス=ロックの現在の階級は中尉だったが、PK師団と合流した後は皆にそう呼ばれていた。



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「…そんなことできません。」

話を聞き終え、私はすぐにそう言った。ベルガスは顔色一つ変えずに私を見た。これも想定の内か・・・。


「理由が…私には”そこまで”する理由がありません。」


…彼の話をまとめるとこうだ。

摂政 ギュンター・プロイツェン閣下はゼネバス帝国初代皇帝 ゼネバス・ムーロアの正統な後継者で、時期を見て彼が帝都でガイロス帝国に反旗を翻し、ゼネバスの旗を立てる。それを討伐すべく手を組み、帝都に入るであろうガイロス、ヘリック連合軍主力部隊を道連れに自爆する…というものだ。
さらに、真の狙いはここからだ。
主力部隊を派遣させ、防備の疎らな中央大陸に、あの”鉄竜騎兵団”が新型ゾイドを連れ上陸。中央大陸を再び統一し、第2のゼネバス帝国を築くのだ。
私には”鉄竜騎兵団”と行動を共にし、プロイツェン閣下の実子であり、中央大陸を統一せんとするヴォルフ・ムーロア大佐の元に仕えろと…。ベルガスはそう言った。
しかし、それは同時に、この暗黒大陸…帝都で散るベルガスの意思を背負うことに他ならない。そんな大役を、ベルガスとの血のつながりもなければ、純血地底族でもない私が…。


「運命」…
私はそんなものが嫌いだった。幼い頃、父が死んだときに誰かが言った「この星に生まれた限り、いつか死は訪れる。運命なのだ」私を前線に立たせることとなった「ジェノザウラーの因子への適正」…いつも運命は私を縛り付ける。ベルガスのことを、自由な世界へと連れて行ってくれる父のような人だと思い込んでいた私の心は、音を立てて崩れた。


「地底族でもない私が、あなたの意思を背負ってこれから生きていくことなんて…てきません。」

私ははっきり言った。そう…夢はここで終わり。ベルガスは私に背を向け、天井を見た。

「かつて…愛した人がいた。君は彼女に似ていた…だから。」

だから私を選んだの?…違う。嘘だ。彼のゼネバス帝国への気持ちはそんな安いものではない…!!

年の割りに若々しい口調で喋るベルガスへと向き直り、私は手すりを叩いた。今までこんな乱暴なことはしたことはなかった。叩いたこぶしが痛さに震える。

「嘘…ですね。本当の理由はなんですか?!」

私は食い下がる。自分でも驚くくらいムキになっている。ベルガスが死ぬから?それとも私がそれを背負わなきゃいけないから?
…違う、違う!

「それは…」

ベルガスが私に向き直り、口を開きかけたとき、キャットウォークの向こうから走ってきた青年兵が立ち止まり、ベルガスに敬礼した。

「中佐、カシーム・テクスタ准尉です。お呼びでしょうか?」

私と同い年かそれより少し若いくらいの准尉は、目を輝かせてベルガスを見た。彼からすれば、ベルガスに呼ばれたこと自体が光栄と言った感じだ。
私にもあったはずの希望や若さ…遠い昔のよう…。

「紹介しよう。私の娘、サラ=ヘンドリック・スタフォード大尉だ。」

ベルガスは准尉に私を紹介する。娘?また嘘を。これで”鉄竜騎兵団”に合流した後の私の待遇を保証するつもりだ…。

「彼女はこれから”鉄竜騎兵団”へ合流する。君は彼女の副官として、これを補佐しろ。」

とベルガスは続ける。私は反論しようと拳を強く握り締めた。今叫べば、まだ間に合うかもしれない…。でも、それでどうなる?私は射殺され、ベルガスは汚名を着る。

「光栄です。大尉」

准尉は私に向き直り、ベルガスに向けたのと同じ目を私に向ける。


「…ええ。では参ろう、准尉。」

私は静かに言って、ベルガスに背を向け歩き出した。
自分が選んだ道だ…泣くな、サラ!自分に言い聞かせたが、涙が頬を伝った。准尉に涙を見せるわけにはいかない…。私はキャットウォークの下のジェノザウラーを見た。

「”鉄竜騎兵団”にこの機体ももっていけるのか?」

私は下を見たままで准尉に言った。

「は…はい。必要とあれば。しかし、大尉ほどのお方ならば、到着と共に新型のゾイドが受領されるはずですが…」

准尉の話を背中に聞きながら私は振り返り、ベルガスを見た。

本当の父のような人。彼が残してくれた未来を、私は精一杯生きて見せよう。そして、背負うのだ。彼の意思を…。

涙をぬぐい、ベルガスに敬礼した。彼も敬礼を返す。
准尉は明るいトーンで喋り続けていた。