※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

コマンドウルフの後ろ足が地面を蹴る。まだ土煙が消えないウルフの足跡を、ジェノザウラーの加速テイルがえぐる。舞い散った砂が装甲に当たる音を聞きながら俺は、ジェノザウラーの格闘射程範囲から離れる。ジェノザウラーの強力な格闘兵器の相手をする気など始めからない。

テイルをはずしたジェノザウラーはすぐさま姿勢を低くし、ホバリングでその場を離れる。奴はカーティスのケーニッヒが狙っていることを承知で俺のウルフに襲い掛かってきたのだ。ニクシー基地で戦ったジェノブレイカーはゾイドの性能を過信していたが、こいつはジェノザウラーの性能・特徴をよく理解した上で、それを使いこなしている…エースだ!

好敵手の登場に俺は高揚していた。


「ヘンリー!荷電粒子砲だ!!」


カーティスが叫ぶ。奴は頭部口内に装備された砲塔をこちらに向け射撃体勢をとる。間合いと時間的に回避はギリギリといったところか…。だが発射の前後、奴だって無防備になるハズだ。2体1で使用するとは…相手を買被っていたのか…?俺は。


「任せろ!」


俺が何も言わずとも、カーティスはケーニッヒをジェノへと向ける。俺は射程外へと愛機を走らせながらその光景を見た。ジェノザウラーの口内が青白く光るが、ケーニッヒの爪のほうが早い!!


====



「なめられたな…。こんなときに荷電粒子砲など使うか!」

俺はジェノザウラーのフットロックを外し、荷電粒子供給を停止する。
そして眼前に迫ったケーニッヒウルフを見据える。すでに地面を蹴り俺に飛び掛ってきているところだった。瞬時にバランサーを加速テイル攻撃時のものに変更し、ケーニッヒのわき腹にテイルを勢い良くぶつける。
まともに加速テイルを受けたケーニッヒウルフは地面に叩きつけられる。俺はケーニッヒが動かなくなったのを確認し、パスルレーザーガンの照準をコマンドウルフへと変える。コマンドルフは未だにこちらに攻撃ようとチャンスを狙っているのだろう、俺のジェノザウラーと距離を取り走っている。
こいつがどんな手馴れだろうと、コマンドルフ1機でジェノザウラーの相手をしようとは思うまい…。


「…ということは、ケーニッヒの回復か…?」


俺は一人そう言ってモニターの端、動かないケーニッヒウルフの姿を見た。小さくないダメージを与えたが、あの程度ではパイロットもコアも無事だろう。先にコマンドを始末するか。そう考えながらトリガーを引く。レーザーガンから放たれた閃光をコマンドウルフは難なく回避し、すかさず撃ち返して来る。着弾した地面がえぐれ、パラパラと石屑が舞う。

ニクシー基地で戦死した、ガルム・ローランド准将はEZ-034 ジェノブレイカーを駆ってコマンドウルフに撃墜されたという報告をふと思い出した。元々彼はパイロットとしての腕はそれほどではなく、それに加えジェノブレイカーの操作性の悪さ、コマンドウルフに負ける条件がなかったわけではない。その件を知った後の俺は、ウルフタイプの敵を執拗に狙うようになった…いつかそのパイロットに出会えると信じているのだろうか…?
しかし、それはガルムの仇という意味合いは欠片もなかった。実際、彼は尊敬に値すべき人物だったかといえば、そうではないのだ。…ただ、権力はあった。俺が欲したのは”それ”だ。だから、彼が敵対する旧ゼネバス派軍人であるベルガスやニックに対しても冷たくあたった。
今になって思えば、なんと愚かな振る舞いだったか。軍人として学ぶべき点はベルガスのほうが多かったというのに…。今となってはそれも全て遅い。
ベルガス、ガルム、彼らは西方大陸の土に還ったのだ。いまここにいるのは俺ただ一人…。


ジェノザウラーの火砲がコマンドウルフの後ろ足の装甲板を捕らえた。コマンドルフは着弾でバランスを崩して失速する。ジェノザウラー、いや俺がそこを見逃すはずもない。急速接近し、キラーバイトファングのロックを解除する。獰猛な鳴き声が響き、コマンドウルフの首は宙を舞う…はずだった。
直後、俺の機体を衝撃が襲う。この感じは口径の大きい速射砲だ。


「ケーニッヒかっ!!コマンドに時間をかけすぎた…!」


俺は目の前のコマンドウルフを睨みつけ、ブースターで後退する。ジェノザウラーの被害箇所は比較的軽微だったが、OSシステムが異常な高ぶりを見せ、機体のバランスに影響を与える可能性が表示されていた。その間にも視界のケーニッヒウルフは大きくなり、背面のライフルがこちらを向き光る。
撤退を決めた俺は、方向展開する間際にケーニッヒの装甲に大きく書かれたナンバー「D2」を目にした。


「今度会うことがあれば…この借りは返す。」


ジェノザウラーのブースターに火が入り、俺はその場を後にした。


====



「遅いっすよ、カーティス」


ヘンリーはどうやら無事らしい。俺はジェノザウラーへ向けていた砲塔をたたむ。


「自走可能か?無理なら置いてくが。」


俺はそう言ってコマンドルフに近寄る。



トリム高地とビロフト平原全域において行われた戦いは、1ヶ月にもわたる長期戦となり、双方甚大な被害を出す中、共和国軍に増援が到着したことで帝国軍は後退した。
しかし、冬になる前に首都ヴァルハラを攻略したい上層部の考えとは裏腹に、兵力と勢いを大幅に削がれた共和国軍主力部隊は高地にとどまり、部隊再編を余儀なくされた。