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青黒い空を3機のゾイドが滑るように飛ぶ。先頭を飛ぶのは、銀色の翼竜型ゾイドRZ-029 ストームソーダー。弱い日差しを受け、反射した光が自身の影を白く照らす。

脇を飛ぶ2機は、ストームソーダーよりも大型の翼竜型ゾイドRZ-045T3 サラマンダーカーゴ。元々地上に急接近する性能を持っていた大型ゾイドサラマンダーに、大型クラスのゾイドまでを輸送することができるユニットを装備した機体である。2機の腹部のユニットには、それぞれ、RZ-053 ケーニッヒウルフとRZ-009A2 コマンドウルフがマウントされていた。飛び交う戦火を華麗に避け、3機は開けた土地に出る。


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「隊長、前方に危ない友軍が。」

並走するサラマンダーにマウントされたウルフのパイロット、ヘンリー・ライトリー少尉が言った。確かに前方にはレッドホーン2機に攻撃されているディバイソンがいる。弾切れなのか武器がダメージを受けているのか一方的な戦いだ。

「よし。サムウェルズ大尉、送迎はここでいい。」

俺は、先頭を飛ぶストームソーダーのパイロットに言った。パイロット、リリー・サムウェルズ大尉は、少し黙った後「了解。」言って部下二人に合図を出す。それを見たサラマンダーは速度を落とし、高度を下げた。さっきまで眼下に広がっていた無数の戦いは地平線に消える。

「じゃ、死なない程度にがんばれよ、カーティス。」

そう言ってサラマンダーの軍曹は俺のケーニッヒウルフをパージする。同時にヘンリーのウルフもパージされたようで、地上数mを舞った。着地は重量差で俺のウルフのほうが先だった。

「いくぞ。」

俺はすぐさまケーニッヒウルフを走らせる。せっかく空路まで使って来たのだ、その奇襲性を生かさない手は無い。2機のウルフはレッドホーンの後ろに迫る。画面の中の赤い巨体はみるみる大きくなり、スナイパーライフルがほどなく彼らを射程に収めるが、まだトリガーは引かない。背後から撃っても一撃で致命傷を与えることは到底できないだろうから。しかし、事態はそれほど余裕は無かった。
レッドホーン2機の攻撃に、ディバイソンの装甲がそろそろ限界だったのだ。

「隊長、十分です!」

ヘンリーが言った。俺は「そうだな、突入する!」と言ってトリガーを引く。爆音と共に頭上の主砲が火を噴き、被弾したレッドホーンの後ろ足の装甲がひしゃげ、飛び散る。2機のレッドホーンは、その時になって俺たちの存在に気付いたようで、旋回を開始する。

「遅いぜ!」

ヘンリーは旋回が終わらないうちにレッドホーンに接近し、近距離からボディに砲撃を加える。俺はもう1機のレッドホーンの頭部、コクピットに狙いを定める。ガコン、という音と共にスナイパーライフルの弾丸が特殊鉄鋼弾に切り替わったという表示が出る。それを見届けた俺はトリガーを引いた。


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ジェノザウラーのパルスレーザーガンが、敵歩兵ゾイドに風穴を空ける。俺は、次の獲物へと狙いを変える。今回の作戦では、ビロフト平原に展開する敵の駆逐だった。しかし、始まってみれば、共和国軍はゆうに100個師団を超える大軍。いくらこちらが200個師団ちかい規模の部隊を持とうとも、この戦いはそう簡単には終わらない。

俺は次のゴドスをハイパーキラーバイトファングで引きちぎりながら、西方大陸戦争末期、ニクシー基地での出来事を思い出す。乗り手のいないジェノブレイカーに搭乗し出撃した上官、ガルム・ローランド少将と、失踪したサラ・ヘンドリック少尉。彼女は少なくともこの大陸、ニクスにいる。西方大陸から脱出するホエールキングの乗艦者名簿に、彼女の名前を見た。

「ライトスト中尉?」

部下のパイロットの声で我かえる。気付くと付近の敵の駆逐は完了していた。

「なんだ?」

俺はそのパイロットのゾイド、EZ-027c レヴラプターのほうを見る。彼は「いえ、次はどちらの敵を攻撃するのかと思いまして。」と言った。俺は少し考えた後、「左方だ」と言った。


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スナイパーライフルから放たれた弾丸が、ヘルキャットを撃ち抜く。それをモニターの左端で見ながら、俺はペダルを踏み込んだ。ウルフは低いうなり声を上げ、疾走する。アタックユニットのアシスタンスブースターは、どうやら今日は調子が言いみたいだ。

「ヘンリー、右だ!」

カーティス・アビンレン中尉はそう言いながら、目の前のイグアンにライフルを向ける。俺は「わかってます。」と答え、右のブースターを切る。ウルフは残った左のブースターの推進力で、右に急旋回する。それに合わせて敵に面と向かってトリガーを引く。どうやらこのエリアの敵はこいつで最後らしい。

「お前のウルフの足の交換シフトが、オズの機体の倍だった理由が今わかったよ。」

中尉はやれやれといった口調でそう言った。確かにこの操縦じゃ、機体の各パーツの消耗はかなり早い…。自分でもわかってはいるつもりだが、体が反応してしまう。

「機体を大切に使うのも立派な兵士の務めだ。アーク中佐は言ってなかったか?」

中尉の口から“アーク・ワード”の名前が出たことに俺は少し動揺した。しかし、すぐに「どうでしたかね。」と言い、ブースターの誤差を調整する。その時、ふいに低いうなり声が聞こえる。この独特な鳴き声は、中尉のケーニッヒウルフだ。…敵が近い。

このトリム高地は元々、火山噴火によってできた溶岩台地であることが調査によりわかっている。それゆえ、あまり戦いに向いているとは言い難い土地だ。この地から広大なビフロスト平原までの広い区間で、今回の戦いは行われている。史上空前の規模の戦いだ。

岩陰から姿を現したのは、3機のレヴラプターだった。高い跳躍力であっという間に俺たちに迫る。

俺は冷静にトリガーを引いた。火線はまっすぐ奴らに向い、レヴラプターのうち1機は左に跳躍してそれを避ける。しかし、その直後、ケーニッヒウルフの鋭い牙がその首筋を喰いちぎった。残りの2機は距離を取り、小火器で攻撃する。俺は攻撃を避けつつ、トリガーを引く。今度は完全に命中。頭部が吹き飛んだレヴラプターは音を立てて崩れた。
ケーニッヒウルフはさらにライフルを連射し、土煙が辺りを覆う。俺はスコープをどかし、集音機に耳を傾ける。足音は次第に小さくなっていく。ここから逃げる気だ!

「中尉!!」

俺はウルフを走らせる。中尉も同じ足音を聞いたのか、走り出すのはほぼ同時だった。煙を抜けたところで前方を逃走するレヴラプターを目視することができた。この距離なら俺の出番は無い。ケーニッヒウルフのスナイパーライフルならこの距離で十分奴を狙うことが可能だ。

2発の銃声と共にレヴラプターは動かなくなった。

「お見事、中尉。」

俺は火器管制をチェックしながら、コクピットの柱に貼り付けられた写真を見る。1枚は3人の兵士が写った写真。もう1枚は左頬に橙色のZiマークを持ち、焦茶色の髪を靡かせ屈託無く笑う女性のものだ。