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目が覚めた。部屋のカーテンの間から夕日が差し込んでいた。今日もほとんど何もしないまま過ぎた。唯一したことといえば、泣いたことぐらいか…。

私は座っていたベッドから立ち上がり、部屋の明かりをつける。

部屋の端に備え付けられている鏡を見る。そこにはボサボサの髪で目を赤く腫らした私がいた。


彼が死んで2日が経った。


ニクシー基地の戦いで、私の所属していた小隊はほとんど全滅。残されたのは私、エリー・ベッケロイドと同僚のゾイド乗り、ヘンリー・ライトリーだけだ。

2人だけでは部隊にもならないため、今後再編されるのだろうが、もはや私にはそんなことはどうでもよかった。彼、アーク・ワードの死が、私の心に大きな穴を開けてしまったんだ…。もう動けない。もう戦えない。あの日、私はヘンリーと誓いを立てたのに…でも、もう動けないんだ。

「…エリー」

私を呼ぶ声がした。懐かしい声。私ははっとして振り返る。しかし、そこには誰もいない。当然だ…。

私はしゃがみこんで泣いた。泣き声が壁に跳ね返り部屋の中を駆け巡った。
その時、部屋のドアがノックされる。「…俺だ。」とヘンリーが言う。私は答えない。

「いるんだろ?少しは外の空気を吸ったらどうだ?」

ヘンリーはドアの向こうで言った。そういえば、昨日もこんなことがあったけ。彼は平気なの…?アークやケベックの死が…。


そうじゃない。彼は彼で引きずっている。じゃなきゃ毎日朝から夜まで残党狩りなんかに参加するはず無い。

「…そうする。」

思い切って私はそう言い、立ち上がる。洗面所に立ち、ボサボサの髪に櫛を入れる。顔を洗ったが、泣いていたせいで目は赤く、鼻水が止まらなかった。

私は鼻をかみながらドアの前に立つ。深呼吸。ヘンリーになんていう?…おはよう…かな。

私はまた深呼吸をして、ドアを開ける。

「よっ。」

と私は作り笑いで右手を軽く上げた。思ったより自然だ。

「大丈夫か?」

ヘンリーは私の顔を見て言った。その途端、胸の奥が熱くなる。

「もちろん!…大丈夫じゃない。」

と小声で言って、彼に倒れこむように抱きついた。また涙が出た。

そうだ…彼に隠すことなんか無い。たった2人残った仲間なんだから。


====



目を開けた。今度は朝の日差しがカーテンの隙間から差し込んでいる。私は起き上がり、隣で寝ているヘンリーを見る。彼はまだ寝ていた。しかし、その表情には苦悶の色が浮かぶ。私は彼を起さないようにそっと立ち上がり、シャワーに向かう。昨日までよりは気が楽になっている自分に気付いた。


体を拭きながら部屋に戻る。ヘンリーは起きていて、ベッドに座っていた。わき腹に白い傷跡残っているのが目にはいった。おそらく彼が傭兵だったときに負ったものだろう。

「ありがと。ヘンリーに話聞いてもらったからかな、少し楽になった。」

私は彼のほうを見え言う。ヘンリーは「まぁ、半分以上は俺が思ってた通りの内容だったけどな。」と彼は言って笑った。私がぶすっとしていると、突然、ドアがノックされた。

「はい!」

私は反射的に返事をしてしまった。まだ下の服を着てない。早く着替えなければとスカートに手を伸ばした私の脇を、ヘンリーが通り過ぎる。いつの間にかジーパンをはいた彼は、少し確認してドアを開けた。

「なんですか?」

ヘンリーは軽く言った。ドアの前に立っていた女の子は、突然の出来事に驚いて顔を隠す。

「えっと…転属の通達が出ましたので…ベッケロイド少尉に。」

彼女はだんだんと落ち着いた声に戻り、さらにもう1枚書類を出し「こちらがライトリー中尉の書類です。」とヘンリーに言った。彼女の背丈は、ヘンリーの首ぐらい。ちょうど私と同じくらいかな。年齢は16.7歳くらいに見えた。

「はいよ。どうも。」

ヘンリーは2枚の書類を受け取る。その一部始終を固まってみていた私は、我に帰り、スカートをはく。顔を上げたときに入り口の女の子と目が合う。彼女は「邪魔してすみませんでした。」と頭を下げた。ヘンリーは「そんなことない。」と言ってドアを閉めた。

「ちょっと!!なんてことすんの?!今の娘驚いてたじゃない!」

私は足音を立て彼に言い寄る。

「そうか?」

とヘンリーは片眉をつり上げる。カチンときた私は「あんたね…!」といいかけたが、ヘンリーが目の前に書類を差し出したことによってその言葉は喉につかえた。

「ここから再スタートだ。」

彼は言った。どちらの書類にも、「特殊工作師団第107高速戦闘連隊 新設独立部隊 第2中隊への転属」と記してある。





アーク。私、やっぱりやってみる。我武者羅にやれば、きっと何かがわかる気がするから。





私は以前とは違う結い方で髪を上げ、窓を開ける。心地よい風が舞い込んできた。
「ええ。やってやりましょうよ。」

END