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俺は生まれてすぐに両親が離婚し、父に育てられた。父は中央大陸の有名な大学の教授で、よく俺に勉強しろと言った。それが嫌だった幼い俺は、よく祖父の元に逃げたものだった。大異変前まで、軍に籍を置いていた祖父は俺にゾイドの操縦を教えてくれた。家は父の稼ぎのおかげでそれなりに裕福だったが、俺が自分のゾイドを持つ事に父はとても反対した。
そもそも両親が離婚した理由というのが、母の父親が共和国軍の将軍という職だったことに始まる。穏健派の父としてはどうにも苦手な相手だったのだろう、と俺は幼心に思ったものだ。
10歳になるころには、俺は高速ゾイドすら乗りこなす事ができるようになっていた。ただし、父のいい付けで未だ自分のゾイドは持たず、祖父の友人が所有していた旧式のコマンドウルフなどに限定された操縦技術だったが。
祖父はZAC2090年の6月にこの世を去った。父はいい機会だと言い、俺にゾイドの操縦を止めるように言ったが、俺は表面上止めたように見せかけ、祖父の友人を頼り密かにゾイドの操縦訓練を続けたのだった。しかし、この状況は長くは無かった。すぐに隠す必要はなくなったのだ。
ZAC2092年の春先、父は事故で他界。俺は一人残された。不思議と祖父がなくなったときよりは悲しくなかった。
葬式の席にリタ・マックギルという女性が出席していた。葬式が終ると彼女は「ヘンリー、私はあなたの母です。」と言った。彼女は身寄りがなくなった俺を不憫に思い、引き取ると言い出したのだ。しかし、俺は断った。たしかに、幼いころからの夢だった「へリック共和国国防軍」への最短コースへの欲が無いといったら嘘になるだろう。しかしそれ以上に、ここで彼女についていったら、祖父や父に申し訳が立たないような気がしたのだ。あるいは、父が植え付けた母のイメージが俺を彼女から遠ざけたのかもしれないが…。

そうして1人身の俺は16にして傭兵となった。年齢の低さを侮る奴は多かった。しかし、俺はそんな事は気にしなった。ゾイド乗りに年齢は関係ない。どれだけゾイドを信頼し力を引き出せるかが問われる仕事だとすら感じていた。

俺は相棒といったようなものを持たなかった。それは人間にしてもゾイドにしても、だ。
常に1人。クライアントが用意した機体で、クライアントのために敵を倒す。そうやって6年の月日を過ごした。


= = = = =



「以上が“俺”です。」

俺はワードと名乗った共和国軍士官にそう言った。彼は「そうか」とだけ言って立ち上がった。

「来るか?共和国軍に。」

彼は最初に言ったのと同じ言葉を繰り返した。俺は立ち上がり「こんな俺でも…いいんですか?」と思わず質問した。しかし、彼は表情一つ変えずに、

「必要なのは“今の”おまえだ。」

といった。それはそうかもしれないが…
俺は考えるのをやめた。今目の前にいる人はたしかに夢見た「共和国軍」俺もそうなろうとしている。…迷いはいらない。

「登録名はヘンリー・ライトリーでお願いします。」

俺はそう言った。ワード大尉は「“マックギル”じゃなくていいのか?」と聞いたが、俺は「はい、ライトリーでお願いします。」と答えた。

これから俺が向かうところは間違いなく戦場だろう。俺の技量が外の世界に通じるかどうかなどわからない。しかし、今確かな事は俺が進むべき道が少し見えた。ということだ。


END


初出:バトスト同盟様