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「わざわざ敵の間合いに入ってやることもない。」 俺は静かに言い、モニター内で大きくなるブレードライガーを見た。あれのブレードは強力な武器だが、所詮は近距離兵装だ。 「了解。」 ニックのエレファンダーは、パルスレーザーガンを撃った。ライガーはシールドを使わず、機動性のみでそれを回避する。シールドは温存といったところか…。それにしてもこいつらは、戦闘パターンから見ても、3ヶ月前に戦った奴らだろう。とすれば、ウルフのパイロットはあいつか…。 俺は考えながらライガーとの距離をとった。しかし、これ以上の後退は基地の防御を崩しかねない。ここで決着をつけなければ。そう思った矢先、ライガーはブースターを展開した。射程内に入ったら、あちらとて早く仕掛けたいに決まっている。 「ベルガス!どうするんです?」 ニックは叫びながらライガーに砲撃を加える。ライガーはブースターをしまい、回避に専念する。そこをコマンドウルフカスタムが援護する。 「ああ、この距離でしとめる。」 しかし、俺とニックのライフルは、一向にライガーを捉えることはできない。たいした機動性だ。 「…俺が前に出ます。これじゃあらちがあかない!」 ニックはそう言って、前に出ようとした。はやるのもわかる。しかし…。 「わすれたのか!俺たちは時間を稼いでいるんだ。らちがあかないほうがいい!」 俺は叫んだ。しかし、その直後に気付いた。奴が待っていたのはここだ。そう考えたときにはすでにライガーは眼前に迫っていた。俺はグリップを左に倒すのが精一杯だった。 ブレードライガーは、俺とニックの機体の間を疾走していった。 「…!」 俺のエレファンダーはかろうじて回避できたが、ニックの機体は両前足を切り裂かれ、地面に崩れた。そして、これはあの時と同じ戦法…! 「ニック!脱出を…」 そう叫んだ横で、ウルフがエレファンダーのコクピットに、ストライククローをねじ込んだ。奴はすれ違いざまにこちらを見た。そして、後ろ足に衝撃。ブレードライガーが反転してショックカノンを発射した。駆動系がイカレてろくに動けなくなった俺の機体に、次に迫るのはブレードだろう…。 そう覚悟した瞬間、赤紫色の閃光が奔る。ブレードライガーはギリギリで回避し、攻撃がきたほうを見た。 「ジェノザウラー?まだいたのか?!」 俺の声にこたえるように、サラ・ヘンドリックの顔がモニターにのぞく。 「大丈夫ですか?中尉。」 彼女はすぐさま発射形態を解除し、ライフルを撃ちながらエレファンダーの脇に着地する。 *==== その光を見た瞬間、手が震えグリップをずり落ちた。動かない私の機体をケベックのウルフがかばう。ATユニットに着弾し、炎を上げる。私はそれを見てわれに返り、撃ってきた敵に反撃する。 「ゴ…ゴメン、ケベック。」 「大丈夫です。それより今のは…。」 私は震える腕を押さえながら、敵陣の中、あの光をギリギリで避けたブレードライガーを見た。 「ケベック、ここにいて。」 私はそれだけ言ってウルフを走らせた。ケベックが「無茶です!」と叫び、私の後を追ってきたのが視界の端で見えた。途中で流れ弾がウルフの装甲を破壊したが、私はかまわず走った。 アークたちのところにたどり着いたとき、対峙していた黒いゾイド、ジェノザウラーは私たちを気にも留めず、ブレードライガーを見ていた。 「アーク!そいつはだめ!」 シールドが撃破されるフラッシュバックに苦しみながら、私は叫んだ。 「エリー?!どうして来た!」 非難されるのはわかっている。でもあいつと戦うのだけはダメ!敵は動けなくなったエレファンダーとジェノザウラー1機。今すぐに退けば、敵も無理には追撃はしないハズ。 しかし、私の期待は、倒壊しつつある基地の炎の中に浮かんだ機影によって打ち砕かれる。 「なによ…あれ。」 私の口をついて驚きの言葉が漏れた。赤いジェノザウラーは背中にライフルの代わりに大きなハサミを装備した改造機らしく、内蔵型のブースターで一気に距離をつめて来た。 「何かやばいぞ!」 アークはブレードを収納しながら言った。明らかに桁違いのスピードだ。私はあまりの速さに回避が追いつかない。赤いジェノザウラーはすでに眼前に迫っていた。 「!!」 恐怖で目を固く閉じた。 漆黒の世界に鈍い音が響く。あの大きなハサミで機体をえぐられたのだろう…。しかし、不思議と衝撃はない。…私は目を開いた。 [[NEXT>EP2.9]]

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