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「さて、ついたぞ」
ここはマサラタウン、男の故郷である。
「ここが主の生まれ故郷ですか」
「ああ、狭いし、なーんもないけど、結構いいところだろ?」
「はい」
ミュウツーは少しだけ緊張していた、ここは男の故郷つまり実家がある、ということは当然男の親も・・・失敗しないようにしなければ
なだらかな下り坂をゆっくりと歩いていく。ミュウツーは考え事をしながら歩いていたせいか小さな小石につまづいて日ごろのミュウツーからは想像もできないほど豪快に転んだ
「なにやってんだよミュウツー」
男もその転びっぷりに負けないほど大きく笑った、それはもう豪快に。女性ファンがヒくほど。
ミュウツーはその恥ずかしさから白い顔をまるでブーバーのように赤く染め、早足で男の前を歩く
「行きすぎ行きすぎ!ここだよ」
自分の家を通り過ぎ早足で歩いていってしまったミュウツーを男が呼び止める
(何をやってるんだ私は、落ち着け、落ち着け落ち着け・・・)
「ただいまー」
ミュウツーの心の準備が整う前に男が扉を開ける。まぁもし心の準備ができるまで待っていたら
先に中からドアを開けられるか、不審者として通報されてしまうのが関の山だろう。
「おかえり」
「は、初めましてお義母さま!ミュウツーと申します」
      • 時が止まった、いや、止めたのかもしれない。


914 ID:wXIAVYOQ0

「ハハハ、いきなり『オカアサマ』だなんていうから何事かと思ったよ」
「も、申し訳ございません」
「こいつ真面目なんだ、あんまりからかわないでやってよ」
そこは男の実家のリビングだった
四角いテーブルに3人。男の母と男、ミュウツーが座っている
男は今までの旅の経緯を、母は息子の話をじっくり聞いている。ミュウツーはというと好奇心に目を光らせ男が育ったであろう家を隅々まで見ている。
そのリビングにはテレビがあった、本棚があった、窓の外には物干し台があった、そして、、階段があった
きっと2階には男の部屋があるのだ、そう思うとミュウツーは落ち着かなくなった
「こんな息子だからね、ミュウツーちゃんも苦労してるでしょう?」
「い、いえ、そんな事は、主はすばらしい方です。私は主の為ならばこの命も惜しくはありません。どうかお母様もあまり主を、自分のご子息を信じてあげてください」
そういうと男も母親も驚いたような顔をして、そして笑った、大爆笑だった。
何か変なことを言っただろうか?ミュウツーは困惑ている、なにか失礼なことをいっただろうか?
「アハハハ・・・ハァ、ごめんごめん、あまりにも真面目な顔していうもんだからさ。本当にいい子なんだねミュウツーちゃんは」
「ミュウツー、ありがとうな」
「あ、いえ」
ミュウツーはなぜ笑われたのか、なぜ褒められたのかもわからないままその話を終わらされてしまった
「さて、旅ばっかりしてたから疲れたでしょう、少し休んでおいでお夕飯になったら起こしてあげるから」
「うん、ありがとう母さん、行こうぜミュウツー」
「あ、はい。お茶ごちそうさまでした」
二人はそのまま二階にあがっていく

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「あー、なんか久しぶりに母さんと話したら緊張しちゃったよ・・・ふー」
男は自分の部屋にはいるなりベッドに寝転んだ。それは確かに自分の部屋だった
出かける前と何もかわってない、細かい場所にもホコリがたまっていないので
きっと母親が毎日掃除をしていてくれたのだろう、布団もふかふかだった。
『母さんありがとう』男がそう思ったかどうかは知らないが、男は太陽の匂いのする布団に吸い込まれそのまま眠りについてしまう
この時、もし男が眠ることなく起きていたら、後の惨劇は防げたかもしれないが、そんな“IF”の話をしてもなんの意味もないのでやめておこう。
さて、一方ミュウツーはというと
自分の主である男の部屋を物色していた。部屋に入るなり早々に男がベッドで眠ってしまったので
足音をたてないようにサイコキネシスで数センチ体を浮かせながら移動し、出来るだけ音をたてないように机を見、本棚を見ていた
ふと、視線を下げると本棚の一番低い段に大きめのアルバムがあった
「主のアルバム・・・」ミュウツーはゆっくりとアルバムの表紙をめくる
「子供の頃の・・・主」そこには様々な写真が貼ってあり、ミュウツーは緩む頬を押さえることができなかった
愛しい人の生まれた頃から旅に出るまでの時の流れがそのアルバムの中にびっしりとつまっているのだ、それも当然かもしれない
しかし、あるページにさしかかったところでミュウツーの表情が一変する
男と見知らぬ女性(というには幼すぎる)がキスをしている写真があったのだ
「だれ・・・だ?」
よく見るとその女はある時期を越えたところでアルバムの至る所に写っていた
時には男の後ろに、時には男の横に、時には男の腕を組みながら・・・ミュウツーは怒りに震える腕を押さえられなかった
そしてアルバムの最後の写真・・・
そこには男がリュックを背負った男が写っていた。恐らく旅にでる直前のものだろう、しかし、写真の中心に写った愛しい男より、目に付いたのは・・・男の胸にだきつきカメラにほとんど背中を向けたまま顔だけカメラ目線でVサインをしている女の姿だった

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ミュウツーはアルバムから写真を取り出し、一通りやる事をすませると
ゆっくりと部屋をでていく
その間もサイコキネシスで体を浮かせ、扉をしめるのにも最新の注意をはらい音をたてなかったのは流石といったところだろうか
「あらミュウツーちゃん、おでかけ?」
母親が二階から降りてきたミュウツーに気がつき声をかける
「お母様、あの、この写真の女性は一体どちらの女性でしょうか?」
静かな声で言うミュウツーの質問に男の母親は迂闊にも真実を教えてしまう
「ああ、その子はね、男が小さい時のお友達でハルカちゃんっていうの
センリ地方にあるトウカジムのジムリーダーさんの娘さんでね。
オーキド博士に用がある都合でこのマサラタウンにもよく来るのよ。なんでか昔から男にべったりでね。もしかしたらこの二人結婚でもするのかしらね。ふふ」
もし、ミュウツーを良く知っている人物であれば今のミュウツーの様子がおかしい事に、
嫉妬の炎を燃やしている時のミュウツーだという事に気がついただろう
(鈍感な男は気がつかないかもしれないが)
そして最後の言葉がミュウツーにとってどれだけの破壊力があるのかを
しかし、男の母親はまだミュウツーに会って間もない、“迂闊”というのにはあまりにも酷だろうか。
「そういえば、男が帰ってくるっていったら、遊びに来るっていってたわね。明日にはつくんじゃないかしら。
うちは息子が一人だけだからねぇ、やっぱり女の子がくるのは嬉しいわ、ミュウツーちゃんも仲良くしてあげてね?あら?ミュウツーちゃん?」
母親のそばにもうミュウツーの姿なかった

とにかくこうしてミュウツーは難なく女の名前と男との関係、そして女の居場所を知る事が出来たのである


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場所は変ってトキワシティ
「ふふ、マサラタウンももう目と鼻と先かぁ、おば様の話だと今日には帰ってるはずだから、あいつもう家についてるかなぁ、あいつの事だから家についたとたんに寝てたりして」
図星である。これも一種の女の勘というやつであろうか、もしそうなら世の中から無くなって欲しいものベスト10に入れたいと思う
「どうしよっかなぁ、このまま行ってもつくのは真夜中になっちゃうし、今日はここに一泊するのがいいかしら?」
一応忠告しておくがこれは独り言をいっているわけではない
演出上、声にだしてはいるが心の中の声という事にしてもらわないと、完全に危ない女になってしまう。いや、それはそれでいいかもしれないが・・・
とにかくハルカは迷っていた。
「よし、このまま行こう!」
夜通し歩く事を決意してトキワシティをでる、マサラタウンに向けて歩き出す。そこに待っているのが再開の喜びと、恋焦がれる男との関係打破にむけての第一歩だと信じて・・・
場所を戻してマサラタウン、自宅から少し離れた位置にミュウツーはいた
「私は主と共にある・・・ビリ・・・私は主のもの・・・ビリビリ・・・・主は私と共に・・・ビリビリビリ・・・・主は私の物・・・ビリビリビリビリ・・・」
ぶつぶつと呟きながら写真を破っていた。一枚、二枚、もう何枚目だろうか、ミュウツーの足元には小さな山ができている。
そこに偶然パトロールに通りかかったジュンサーが現れ、ミュウツーの姿を捉えた
彼女には何も罪はなかった、ただもし今日この時間、この道をパトロールをしていなければ、、、、いや、やめよう意味のない話だ。
ジュンサーはミュウツーの後ろに回ると無理矢理肩をひきよせ振り向かせようとした。
「ちょっと、あなた。この辺りじゃみかけないけどどこのポケモン?トレーナーはどうし」パン!
乾いた音がした。そのままジュンサーは仰向けに倒れる。ピクピクと痙攣を繰り返し虚空を見つめていた
一緒にパトロールをしていたガーディが吠え立てる。しかしミュウツーの顔をみて慌てて逃げ出す。
『仮にも警察に仕えるポケモンが逃げるな』と彼をせめないで欲しい、本能的に力の差悟ったのだろう、賢明な判断だったと思う。
ビリ・・・ビリビリ・・・・ビリビリビリ・・・・ビリビリビリビリ・・・夕暮れに写真をやぶる音とミュウツーの呟きが響く・・・その白い肢体を夕日の光で赤く染めながら・・・

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男が目を覚ましたのは日が完全に落ちきってからだった
「ふぁああぁぁぁあ、寝ちゃったか・・・あぁ、おはようミュウツー」
「おはよう主。よほど疲れていただようだ。無理をしていたのではないか?」
「いや、久しぶりに自分の布団でねたからさ、昨日も野宿だったし」
男は苦笑いをしながら、そんな事をいった。旅にでたのは自分の意思だ、暖かい布団で眠れなくなる事があるのを覚悟こそしていても
やはりその柔らかさに甘えたくなることもあるのだろう。
余談ではあるが、この時ミュウツーは今後主のために布団を持ち歩こうかと真剣に考えていた。無理だ、かさばる、やめておけ。
「二人ともーご飯できたわよー」
階下から母親の声がした。男とミュウツーは急いで声のしたリビングへ向かっていった
「「「いただきます」」」三人でテーブルを囲み食事を取る。決して豪華ではなかったがそこには確かに愛情がある、ミュウツーはそれを感じて、この人が主の母親でよかった、と心の底から思った。
「そういえばさっき、ジュンサーさんが倒れたんだって、なんか事件らしいわよ、こんな時に物騒でいやねぇ」
三人は他愛ない話をしながら食事をとっている。
“ピンポーン”
家族の団欒を壊したのはチャイムの音だった
こんな時間に誰だろう?男は思う。あら、意外と早いのね。母親は思う。興味なさそうに料理を啄ばむミュウツー。
「こんばんわー」
女の声にミュウツーが反応する、まさか、こいつか?この声の主が?
「あら、ハルカちゃん、いらっしゃい」

コ イ ツ ダ!

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「なんだハルカ、どうした?」
能天気な男が問いかける
「ふふ、ハルカちゃん、あんたが帰ってくるって行ったら、わざわざ来てくれたのよ。感謝しなさい。」
「久しぶりー、うわー、なんかまた一段とでっかくなってるカモ」
三人は楽しげに話をしていた
その輪にミュウツーは入らなかった。いや、入ろうとしなかった、その瞳に映るのは妬み、そして主を獲られてしまうという不安
そして・・・・・・・・・・やっと会えたという喜び・・・・・・・・・ミュウツーは不気味に笑う。
それから、どうやって食事を終えて、どうやって部屋に戻ってきたのかミュウツーは覚えていなかった、覚えているのは
二人が仲睦まじく会話をし、楽しそうに食事をし、笑いながらお互いの体に触れ合っている映像だけている事だけ。
ミュウツーの中の嫉妬の炎が一段と燃え上がる。

「ハルカちゃんは、男の部屋に泊まってね」
母親がそういいだした、まさか若い男女を一緒の部屋にするつもりだろうか、豪胆な母親だ
「それで、男はリビングね、ソファーあるから大丈夫でしょ」
そんなわけなかった、、、、
「なんで俺がリビングなんだよ!今日帰ってきたばっかだぜ?」
「あんたさっきベッドで寝たでしょ、もう十分。それともお母さんと寝たいの?」
その一言で男はひきさがる、いや、引き下がらざるをえなかった、どうせ何をいっても勝てない。そんな負け犬の目だった。
「それで、ミュウツーちゃんも女の子だからハルカちゃんと一緒ね」
ミュウツーは再び不気味に笑った

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部屋に入り、まず口を開いたのはハルカだった
「いやー、伝説のポケモンと一緒に寝れるなんて、私幸せカモー♪」
しかしミュウツーは黙っている
「ああ、私もこんなに嬉しい事はないよ・・・」
ミュウツーは冷静な口調でそう答える、しかしハルカはその真意には気がつかない
それから男が部屋にやってきてしばらくは他愛ない話やゲームをやっていた
蛇足ではあるがその間ハルカは男のベッドにあった枕を常に胸にかかえ時折フンフン鼻をならしていた・・・言わないほうが良かったかもしれない。
もちろんミュウツーがそれを見逃すはずもなくハルカは余計に怒りを買っている訳だが。
夜も深くなり、男が階下に戻る、部屋の明かりを消し就寝の時間となった
ハルカはまだ眠れないらしく頭まで布団をかぶってカタツムリのような格好をしながらミュウツーに話しかける。
「ねぇねぇ、旅してるときにさ、男に恋人とかって、、できなかったよね?」
当たり前だ、男に近づいてくる女性はことごとくミュウツーの前に敗北していた、だがミュウツーは答えない
「あれ?寝ちゃったの?ねぇってば!」ゆさゆさとミュウツーの体を揺する
「起きている・・・恋人はいない・・・」嫌そうにミュウツーは答える。本気で嫌そうだった。
「よし!」ハルカが小さくガッツポーズをとる
「ねぇ、明日、私男に告白しようと思うんだ、それで一緒に旅に連れてってて。応援してくれる?」
その一言がいけなかった、全く黙って眠っていればいいものを・・・ミュウツーが静かに立ち上がる

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本来ミュウツーの計画は実はそんなに大それたものではなかった
一緒の部屋で寝ることで眠っている間に“ゆめくい”さらに“悪夢”で男にふられ、罵られるところを見せハルカの心にダメージを与える事だったのだ
しかし、明日告白、旅についてくる、それほどの思いがを聞かされてしまっては我慢できない
自分の計画が失敗するとは思えなかったが、もし旅についてこられたら?
ミュウツーのまえで男とハルカがずっと・・・朝を、昼を、夜を共にするのをただ見ていなければならないとしたら?
これは我慢ができなかった、ミュウツーは静かに立ち上がる
ハルカは布団で丸々自分を覆って妄想にふけりながら『キャーキャー』とベッドの上を転がっていた
ミュウツーは腕をゆっくりと上げる・・・・サイコキネシス!
布団がハルカの体を締め付ける、中から『ムグームグー』という声にならない声が聞こえるきっと口も鼻も押さえつけられてしまっているのだろう。
その布団を窓ガラスに向かって放り投げた『ガシャーン!』という大きな音と共に布団とハルカが二階から外に投げ出される
布団がクッションになったのか、幸いハルカに怪我はなかった。布団の呪縛も解けていた
「ゲホッ、ゲホッ」
さすがに音できがついたのだろう、何事かと家から男と母親がでてくる
「な、これなんだよ、どうしたハルカ?!」「ハルカちゃん?」
男がハルカに駆け寄り、抱き起こす。
「説明しろミュウツー!これはどういうことだ!?」
「主?」
ミュウツーは確かに男の事をみていたがその瞳にはなにも写していなかった

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(主があの女を抱きかかえている・・・主があの女を抱きしめている・・・主があの女を抱いている・・・?)
男には到底理解できる状況ではなかった、しかしそれはミュウツーにとっても同じ、いま目にしている状況を理解する事ができなかった、したくなかったのかもしれない。
自分の愛する主が自分と一緒にいる事を邪魔しようとする女を男が抱いているという現実に
自分の愛する主が自分と一緒にいる事を邪魔しようとする女をてこれなかった排除しなくてはというミュウツーの思考がついてこれていなかったのだ
ミュウツーはその二つを繋げるために一つの思考にたどり着いた
「そうか、その女が主になにか言ったんですね?その女の言ってる事は全て嘘です。大丈夫、今その嘘つき女を排除してあげます。さぁそこをどいてください主」
男にもう何がなんだかわからなかった、それも当然だ直接的には男は何も悪くないのだから、そう、直接的には
苦しそうにしているハルカと、ハルカに何かをしようとしているミュウツー。一体なにがあったのだろうか
先ほどのミュウツーの言葉から察するに何か誤解があるようだ、ならば早くとかなくては、しかし男にはその原因がなんなのか掴むことができなかった
ミュウツーがゆっくりと二人に近づいてくる。

「はかいこうせん!」
それはミュウツーの背後からやってきた、一体誰が?何のために???
前のめりに倒れるミュウツーの心配よりも先に男はその光線が放たれた方角をみた、カイリューだ
「ハハハ、男。自分のポケモンの制御もできないようじゃ、ポケモンマスターなんてまだまだだな!」
「お前!シゲル!」
そこにいたのは男のて最大のライバル、シゲルの姿だった

928 ID:wXIAVYOQ0

「全く君にはあきれるよ、伝説のポケモンをゲットしたと聞いたから少しは見直したつもりだったんだがね、制御できないとは・・・」
「な、お前には関係ないだろ!だいたいなんでこんな時間にお前がここにいるんだよ!」
もっともな質問だった、現在は夜の0時をまわり深い時間、確かに窓ガラスが割れた音がしたかもしれないが隣家とは数百メートル離れている、とても気がつくとは思えない
「昨日の夕方、ジュンサーさんが負傷する事件があったのを知ってるか?」
男は夕食の時に母親が話していたのを思い出した
「そのジュンサーさんがね、しきりにいうんだよ『ミュウツー、ミュウツーが・・・』ってね
さらにジュンサーさんが倒れていた現場にこんなものが大量に発見された」
シゲルの手にはつぎはぎだらけではあるが、男とハルカが映っている写真が握られていた。
「君がミュウツーをゲットしたのは周知の事実だし、もしミュウツーが相手だとジュンサーさんやガーディではさすがに手にあまるからね、警察がオーキド博士に相談して、僕にお鉢が回ってきた、というわけさ」
話は大体理解することができた、しかしなぜミュウツーがこの写真を?なぜジュンサーさんを?
「全く、伝説のポケモンがこんなに情緒不安定だとはね、僕がゲットするんじゃなくてよかったよ。これならまだキャタピーの方が使える」
様々な疑問が頭をよぎったが男にとってシゲルの最後の言葉だけは聞き捨てならなかった
「なんだと!ミュウツーがキャタピーに劣る!?ふざけた事いうな!あいつは世界最強のポケモンだぞ!!」
「ならこの様はなんだ!!」
男の周りにはまだ苦しそうにしているハルカ、それを開放する母親、そして背中をはかいこうせんで撃たれ倒れたままのミュウツー・・・凄惨な光景だった。
これからこのミュウツーを警察に引き渡す、気絶しているうちに処置しておかないと手に負えないからな
「ま、まってくれ!頼む、なにかの間違いなんだ、ミュウツーがこんな事するはずない!」
男の声が夜の闇に響く
(私は何をしている?これは・・・土?私が土をなめているだと?早く立ち上がらなければ!主の為に・・・私と主の世界のために・・・)
ミュウツーがゆっくりと立ち上がる

931 ID:wXIAVYOQ0

ミュウツーは確かに立ち上がっていた、立ち上がっていたがその目は光を失ったどころではなく
何も見ていなかった、虚空をみつめ、ブツブツと何か呟きながら近づいてくる
「主と私の世界の為に主と私の世界の為に主と私の世界の為に主と私の世界の為に主と私の世界の為に主と私の世界の為に」
「く!カイリュー!もういちど破壊光線だ!」
カイリューの破壊光線が放たれる、今度も直撃だった。しかし、ミュウツーは止まらない怪我を負った部位が瞬間的に回復していく
「自己再生か!やっかいなものを」
もうなりふり構っていられなくなったのか、シゲルがさらにポケモンをだす
「いけ、バリヤード!エビワラー!ラプラス!リザードン!」
男はシゲルを止めようとした。「頼む!やめてくれ!話せばわかるんだ!いい奴なんだよ!」
「離せ!もうそんな段階じゃないのがわからないのか!!暴走してるんだぞ!」シゲルが男を突き飛ばす
しかし、それがまたミュウツーの怒りを買った
「主に、私の主に危害を加えた・・・殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「ヒッ・・・」そのミュウツーを見てシゲルが悲鳴を上げた。
ミュウツーが地を蹴る、まず一番近くにいたエビワラーをサイコキネシスで吹き飛ばす
次にバリヤードに向けてシャドーボール、バリヤードはそれを防いだがそれは目くらましだった、そのままバリヤードの背後に回るとかみなりパンチでバリヤードを麻痺させた
「な、ラプラス、冷凍ビーム!カイリュー、ドラゴンクロー!、リザードン、火炎放射!」
ミュウツーは全て避けるつもりで動いたのだが流石に三体同時では無理があった
火炎放射をうまく避けたミュウツーはドラゴンクローを防ごうとしたところを冷凍ビームで狙われ、左足を氷付けにされてしまった、さらに氷付けにされた部位をドラゴンクローで攻撃され、左足そのものを失ってしまったのだ
足一本なくしては流石の自己再生でも治療に時間がかかる上、移動速度も落ちる、ミュウツーも苦しそうだった。
「ふは、ふは、ふはははははは、ほぉらみろ!いくら伝説のポケモンといえどこの僕に勝とうなんて10年早いんだ!とどめだぁぁぁぁ!!」

932 ID:wXIAVYOQ0

パチ・・・パチパチ・・・パチ・・
家が燃えていた、先ほどミュウツーが避けた火炎放射が男の家の前の木に辺り、そのまま男の家にうつったのだ
さすがに町の住人も異変に気づき始め何人かがギャラリーとしてかけつけていた

男は何も出来ない自分をふがいない攻めていた
ミュウツーの暴走を止められず、さらにシゲルを止める事もできない。
ミュウツーは辛そうだった、片足をなくし、それでもまだ『主のために、主の仇』と呟いている
「もういい、もうやめてくれミュウツー・・・頼む・・・」
ミュウツーが暴走した、なぜこうなったかはわからない、でもこうなったのは自分の責任だ、
ここでただ見ていていいはずがない、満身創痍なミュウツーと悪魔のように笑うシゲルをみて
男は涙をぬぐう、そうだ、ミュウツーの主人である自分がなんとかしなければ、
もし自分のポケモンが何か問題をおこしたら責任をとる、それがトレーナー、それがポケモンマスターなのだから

「とどめだぁぁぁぁ!!」
シゲルの声が響く
「カイリュー、ラプラス、リザードン!りゅうのいかり!!!!!」
三体のポケモンから同時に巨大な衝撃波が放たれ
ミュウツーのもとへと収束する
ドカアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!


933 ID:wXIAVYOQ0

ミュウツーは無傷だった、いや、無傷というには少々言いすぎだし、虫がよすぎるかもしれないがそれでも致命傷はうけなかった。
なぜなら・・・・
「あ・・・あ・・ある・・・じ?主ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
ミュウツーの腕には黒こげになった男の姿があった
「あ、あ、あ、ああいや、いやだ、主、血が、血が、止まらないどうしよう、主、血が、あああああダメ、でていかないで、血、止めなきゃ。主、主!!」

シゲルは呆然としていた、もちろん母親もハルカも当然ギャラリーも
男は手から、足から、背中から、頭から、口から血を流し、ミュウツーの腕にすっぽりと収まっていたのだ
「ミュウ・・ツー・・・ごめ・・んな・・・」
「ああ、あるじ、喋らないで、今病院へ」
ミュウツーは男を抱え立ち上がろうとしたが足が無いことを忘れていたため
そのまま倒れてしまった、なんとか男の庇おうと反転しようとしたが、今のミュウツーにはそれをするだけの体力ものこされておらず、ただ無様に転ぶだけだった
「おま・・えは・・・悪く・・・ないから・・・ぜんぶ・・・俺が・・・悪いんだ・・・」
「ああ、主すいません、今、今すぐに病院へ」
ミュウツーは必死で手を動かす、這ってでも男を病院へ連れて行こうというのだろう、しかし、男の体は動かなかった
「おれは・・・もう・・いいんだ・・・ごめんな・・・おま・・えの・・きもち・・わかって・・やれなくて・・ダメな・・トレー・・・ナー・・で・・ごめんな・・」
「違う、主は悪くない、全部、全部私が、私が全部悪いんです、お願いです、目を開けてください、ダメ、息を止めないで、私を、私を見てください、主!主!」
男は静かに目を閉じるとそのまま息を引き取った
「主ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

935 ID:wXIAVYOQ0


それからミュウツーは男を離そうとはしなかった延々と男に話しかけては周囲に近づく人間をサイコキネシスで牽制していた
「主、あの時は楽しかったですね、ふふ、そうですね、たしかにそうかもしれません」
「ああ、主、次はどこの町にいきましょうか、大丈夫、どこの町のどんなジムでも私は負けません」
主、主、主、主、主、主
ミュウツーの口からでるのはその言葉だけだった
母親がせめて息子の亡骸をだかせてくれと願ったがそれも叶わなかった
今ハルカとともに肩を震わせ泣いている
シゲルはなにをするでもなくただ二人の姿をみつめていた・・・
男の家はまだ燃えていた、二階まで火の手があがり、もうたとえ火を消し止めても何も残らないだろうと思われた
突然ミュウツーが立ち上がった、自己再生がおわったのだろう、なくなったはずの左足も元通りに直っていた
その手には男を抱えている
「さぁ、主、帰りましょう、あなたの部屋へ。主は自分の布団がお好きでしたものね。やっぱり野宿なんかより布団が一番です
大丈夫、明日からは私がちゃんと主の布団を干して上げます、毎日太陽の匂いのする暖かい布団で眠れますよ、もう旅なんかする必要もありません。
ああ、ジムバッヂなら私がとってきますよ、心配しないでください、主の夢は私がかなえて見せますから」
そういいながらミュウツーは男を抱え燃え盛る家の中へと入っていく。
それが合図だったかのように柱が崩れ、屋根がおち始め、家は倒壊をはじめた。
「主、、、これからは、、、ずっと、、、ずっと、、、一緒です」

後には母親とハルカの泣き声だけが響いた
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最終更新:2007年12月09日 22:33