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322 ID:Pfuza+Yv0

鬱陶しくジメジメとした空気が蔓延する季節。
主が言うには梅雨という季節らしい。 しかも主はこの季節が好きでは無い、と言った。
消し飛ばしてしまいたいが、あまり派手に環境を変えては主が驚くのでやめておく。

私にとって周りの環境変化はさして体調に影響を及ぼさない。 当然のことだが。
だが私以外の軟弱者は大小だが影響を受けるようだ。特にリザードンは酷いことになる。
ああ、確かに湿気も雨も大敵だろうとも。
――私が何を言いたいか、だと。つまるところ、体調を崩したあの雌蜥蜴を心配そうに見つめる主のことだ。

「大丈夫か、リザードン」

心配そうな瞳の主。優しい声をかける主。熱を持った額に手を伸ばす主。弱々しく頷いて答えるリザードン。
長く続いた雨で弱っていたところに、運良く晴れた日に出かけ、丁度リザードンが出ている時を狙ったような豪雨。
悪条件が重なってしまった。主が心配するのはわかる。当然だ、優しい私の主なのだから。
そう、主が優しいのは当然のこと。その優しさに差別がないのもわかっている、が、気に入らない。

気に入らない気に入らない気に入らない。主の瞳が、声が、腕が私に向いていないことが気に入らない。
主の瞳で私を見て欲しい主の声で私を呼んで欲しい主の手で私に触れて欲しい主の主の主の私を私を私に欲しい欲しい欲しい

323 ID:Pfuza+Yv0

>>322 続き
気付けば私は豪雨の中に居た。このまま打たれ続ければ私も熱が出るだろうか、そうすれば主は私を診てくれるだろうか。
無駄だというのはわかっている、私はそこらの者とはあまりに違うのだから。
だが、期待してしまう。私は普段嫌悪するあの軟弱さを求めている。

主が私だけを見てくれるように、私だけが主の心に入れるように。
雨に打たれる、絶望的な希望の気持ち。遠くから声がする、心を打たれる大切な大切な響き。

「ミュウツー!」
「主!?傘も差さずに何を、ああっそんなにずぶ濡れになっ」主「お前も!何してるんだ!」

息を切らせて、全身を雨に打たれて主は強い口調で私に言う

「いくらお前でもこんな強い雨に打たれ続けたらどうなるかわからないじゃないか!」

声が出ない。息が詰まる。嫌な鼓動が強くなる。
怒らせてしまった。主を。どうしよう、どうしよう、どうしよう。
嫌われてしまう、そんなのはいや。イヤ。嫌。

「ごめ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!怒らないで下さい、嫌わないで下さい!」

嫌。嫌。嫌。嫌。 主がまた口を開く、嫌。 聞きたくない、冷たい声は嫌。


「…怒ってるけど、嫌いになんかなるもんか」
「え…?」


324 ID:Pfuza+Yv0

>>322>>323 ラスト
暖かい声。
顔を上げる。少しだけ怒ってるような、けど微笑んでくれている主の顔。

「いいかミュウツー。俺が怒ったのは、こんな雨の中で1人で勝手に飛び出したから、なんだ」
「……」
「何かあったらどうしよう、って焦ったんだ。 心配したんだよ」

優しい目、いつも私が望んでいる主の暖かい目。

「ほら、一緒に戻ろう」

私の手に重ねられる主の手。望んでいた感触。


ああ、ああ。私はなんて浅はかだろう。主はこんなに私を見て、思っていてくれた。

「はい、主。 一緒に。 ずっと一緒です」




次の日にはリザードンは元気になっていた。 尻尾の火が消えかかった一時的なものだったらしい。
――まあ、今回は別にいいとしよう。