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投下スルナラ今ノウチ

朝方ふと目覚めると、主が何かを熱心に読みふけっているのに気づいた。
真剣なその横顔はとても凛々しく、私の心を高鳴らせる。
いつまででも眺めていたかったが、それでは他のポケモン達も起きてきてしまう。
主と二人きりでいられる貴重なひと時、無駄にするわけにはいかない。
私と主が生きるこの時間には邪魔者が多すぎるのだ。

M「主、おはようございます、何をお読みですか?」
主「ああ起きたのか、ちょっとな。」

どうやら書類らしい。たくさんの紙束を糸でまとめたものだった。
主は私の質問には答えず、そそくさとその書類を封筒にしまい、リュックに収めてしまった。
主が私に隠し事をしたのが少しショックだったが、主が読んでいたものだ、
何か高尚な読み物なのだろう。
それからも主は何かを考えているのか、黙ったままどこか遠くを眺めていた。
私が傍にいるというのに、一人の世界に行ってしまうとは。
さすがに面白くないので、いつものように気を引こうと試みる。

M「主、不躾なこととは存じ上げますが、いまだにあのクズ共をお連れになるのは何故ですか?
  私が至高のポケモンであることは主もご存知かと思います。
  私のスピードとパワーは元より敵う物はおらず、技のさえも日々磨かれ続けております。
  先日は悪タイプの苦手な波導なる奥義も会得し、もうヘルガーなんぞには後れを取ることはあり得ません。
  これもひとえに私の主に対する強い思いがそうさせるのです。 
  このままだとクズどもとの実力の差はひらく一方、それではあまりに惨めで流石に気の毒かと思われます。
  ここであの者達を置いて行くのも、あの者達に対する最大限の情けと思われますが、いかがでしょうか?」

私が日頃から思っていることを、そっと告げてみる。
これはワガママであることはわかっているし、優しい主に受け入れられることはないだろう。
だがこれで私に関心が向くことは間違いない。

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主「ハァ・・・。」
それは重いため息だった。流石に予想していなかった反応に困惑してる自分がいた。
主を怒らせてしまったのか?どうすれば機嫌を治してもらえる?
一人でオロオロとしている私に向って、主が口を開いた
主「なあミュウツー、死って何だと思う?」
M「と、突然何を。死とは死ぬこと、命が無くなること。体の生命機能が止まることです。
  主もご存知かと思いますが。」
主「そうだな。じゃあさ、俺が死んだらお前はどうするんだ?」

俺 が 死 ん だ ら ?
突然の不意打ちに私の思考は完全に停止した。
主が死ぬ?死ねば主はどうなってしまう?
唯の肉塊になり、やがて腐り土に還る。
そこには主の意志も思考も夢も微笑みも優しさもない。
ただただ空虚な世界が広がるだけ。
否だ嫌だ厭だイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダ

そんな私の様子を主は辛そうに見ていた
だが意を決したかのように、言葉をゆっくりと続けた。

主「お前はミュウから生まれた。
  お前の体にはしっかりとミュウの細胞が生きている。
  ミュウは全てのポケモンの祖であり、そして永遠の存在だ。
  ミュウツー、俺はお前を置いて先に死んでしまうだろう。」

主の言葉の一つ一つが私の心を抉っていく。
胸が、痛い。

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主「その日がいつ来るかはわからない。
  何十年も後のことかもしれないし、明日やってくるかもしれない。
  その時は・・・、俺に、俺なんかに囚われるな。
  人間は弱い存在だと、嘲え。俺という鎖から解き放たれたと喜べ。
  わかるか?それがお前の生きる道なんだ。」
M「そんなこと・・・、そんなことできるわけないじゃないですか!」

その場で私は泣き崩れていた。
涙が止めどなく流れ、上ずった声が自然と洩れる。
情けない、主には見せたくない姿だった。
だがどうすることもできなかった。
いつか来る哀しみに、感情があふれて止まらなかった。

そんな私に見かねたのか、そっと私を包み込むものがあった。
主の腕のようだ。温もりが伝わってくる。
その腕は痛いほどに暖かかった。

主「悪かった、ミュウツー。
  こんなつもりじゃなかったんだ。
  俺は大丈夫。お前を置いていったりしないよ。
  泣くのをやめろよ。ホラ、不細工な顔になってるぞ。」

主はまるで赤ん坊をあやすように、私に言葉をかける。
その言葉が嬉しくて哀しかった。
情けない。実に情けない。

その頃からだった。主が考え事をする時間が明らかに増えた。
あの書類を読む姿も度々見かけるようになった。

糸売く?

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243の続き
ミュウツーと出会ってそれなりになる。
関係はすこぶる良好。アイツも俺を慕ってくれている。
ポケモンとの信頼関係を築く、
これ以上にトレーナー冥利に尽きるものはないだろう。
ただ時々心配になることがある。
俺にもしものことがあったら、アイツはどうするんだろうかと。

ある日の朝、珍しく俺はミュウツーより早く目が覚めた。
ドードリオだろうか、鳥ポケモンが遠くの方で元気よく鳴いている。
俺は寝床からそろそろと起き出すと、背伸びをして意識を覚醒させた。
朝の風は冷たくて気持ちがいい。アイツの肌の温度に似ている。
そんなことをボンヤリ考えながら、何をしようかと考えていた。
ポケモン達ははまだ起きる気配がない。暇な時間リュックの整理でもしようか。
俺はちょうどいい大きさの切り株に腰をかけると、
リュックを逆さまにして中のものをぶちまけた。
ミュウツーに頼めばサイコキネシスでささっと片づけるのだろうが、
あまり見られたくないものもある。自分でやってしまおう。

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荷物を眺めてみる。旅の記憶が蘇る。
一つ一つにポケモン達の笑顔がたくさん詰まっている気がする。
その中に紙の束を見つけて手に取った。
誰かが描いたレポート、ミュウツーについてのものだった。
パラパラとめくって見ただけなので、内容はよくわからない。
だが、なにか心に残るものがあったので、ポケモン屋敷から失敬したのだった。
そのことを考えると、アイツとの出会いも運命だったのかもしれない。

俺はそれを手に取ると、前よりは注意深く読んでみる。
といっても難しくて半分もわからなかったが。
目についた言葉を追いながら、情報を拾っていった。
その中に、俺は気になる言葉を見つけた。
何気なくサラリと書かれた言葉に、俺は釘づけになった。