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Introduction
「ケンタロス戦闘不能! よって男選手の勝利!」

 ジャッジが高らかに宣言すると共に、歓声がそこかしこから上がる。主は喜んでいてくれるだろうか
主は褒めてくれるだろうか。期待に胸を膨らませながら主のいるトレーナーゾーンへ戻っていく。


「よくやったな。凄かったよ」
「何てことは無い。私は主の命に従っただけだ」

 予想通り主は褒めてくれた、しかし面と向かっていわれるのは嬉しいが恥ずかしい、火照る顔を見られないように足早に控え室に戻る。
主は他のポケモンのように私をモンスターボールに私を収容しようとはしなかった。以前数度収容された事があるが自力で出る事が可能だったので
それを繰り返しているうち、いつしか私を側に置いてくれるようになった。きっと私を特別だと思ってくれているのだ。
そう思うとふと主の顔が見たくなった控え室の前で立ち止まり振り返る。

「どうした、主よ。早く控え室に戻ろう。ここは少し五月蝿い」
「ああ、そうだな」

 危ないところだった、顔が火照っているのをすっかり忘れていた。悟られていないだろうか?
私は失礼とは思いながらも主を先に控え室に押し込み、扉の前で一度ゆっくりと深呼吸をして扉を開けた。
主、どうか私をこれからもあなたの側においてください。私の主。私だけの主。そんな願いを込めながら。

 ジムから出ると、途端に主と私の傍に人の波が押し寄せてきた。
 次は僕と闘ってくれないか? サインしてください等、そこかしこから湧き出る言葉に主はただただ目
を丸くするしかない。ここ数ヶ月、主と出会ってからというものこういった状況に陥る事が多い。
 確かに私は世界でただ一匹のポケモンだ。自覚はある、自身が最強であるという自覚も。
しかし、興味本位だけで見に来る輩から私を守るように人垣を掻き分け進む主を見るのは私にとって耐え難い事以外のなにものでもなかった
(大丈夫だから)(心配しなくてもお前は俺が守るから)主の目がそういってくれているように見える
しかし、それでも私には我慢が出来なかった。
事もあろうに『中には手持ちのポケモン全てを譲るから交換してくれ』などという輩があらわれたのだ
主は気にする風でもなく無視していたが私は自分の中に溜まる黒い感情の一部を抑え切れなかった

「消えろ。目障りだ」

 よく考えれば。この感情を抑える必要はなかった。そうだ、私の主が困っている。
ここは主に仕えるものとして私が前に出ても支障はないだろう。自身を納得させる。

「去れ。主の邪魔だ」

 ゆっくりと人々が道を開ける。
 私が主を守るのだ。ポケモンからも人からも。そう思いながら開けた人の道を歩いていく。しかし主はなぜか周囲の人間に頭を下げながら私の後をついてくる
 なぜ頭を下げるのだ、主よ。もっと胸を張り堂々とするべきだ。
 何かあっても私があなたを護る。何かなどおきるはずも無い。もっと私を信じては貰えないだろうか。
 しかし私はそれを口にだす事はできなかった

「そう、それは大変だったわね」

 そう言ってジョーイはコロコロと楽しそうに主と言葉を交わす。
 どうにも得体の知れない女だ。時々主を誘惑しているのではないかと思わせる節がある。

 あの後、ポケモンセンターに着いた主はいつものように私を預けると、ジョーイと
世間話に華を咲かせていた。私の治療などもうとうに終わってるはずなのに
ときおりジョーイが私の様子を見に来て「タイマー」をいじる。そしてまた主のもとへ戻っていくのだ『もう少しかかる』と
主もそれを信用してしまっているのか。何もいわない。
全国規模で医療行為を行っているポケモンセンターで暴れ、主に迷惑をかけるわけにもいかず、私はただただ苛立ちを募らせていた。

「それにしても、ゴースに怖がっていた男君がまさかこんな有名人になるなんてねえ」

 このジョーイという女は不気味なもので全国の町という町に同じ顔のジョーイがいる勿論名前も同じだ。
こいつはもしかしたら私と同じ研究所で製造されたのではないかと思ったことがある。その事を主に言うと「まさか、偶然だよ」と笑われてしまった。
主はその数いるジョーイの中でもここヤマブキシティのジョーイと特に親しいらしく、このポケモンセンターにくるたびに長話をしている。
主と女性が仲良く話をしている様を見ているしかないこの状況が面白いはずも無いが、主から目を離すわけにもいかず感覚を研ぎ澄ませ二人の会話に耳を傾ける。

「そういえば、ナツメさんはどこにいるの?」
「ああ、リーダーなら少し私用があるからって。多分、そろそろ戻って」

 会話をしている主の後ろから女が現れた。

「やあ、男。さっきのバトル、見事だったわ」

私はただジョーイの治療が早く終わる事を願った


 私の治療はまだ終わりそうに無かった。
話中のジョーイの代わりなのか、ラッキーがきて再び「タイマー」をいじっていった

「すいません。ジムまで借りてしまって」
「いいわ。私も一人のトレーナーとしてミュウツーが気になったし」

 この女の声に聞き覚えがあった
確か“ナツメ”とかいうジムリーダーだ私と出会う前にジム戦を行ったのだと少し前に主から紹介された

「次が最後のジム戦らしいわね」
「ええ。先日、やっとトキワシティのリーダーが帰ってきたと連絡があったので」

そうだ、次のジム戦が終われば当面の主の目的が果たされる
そうなったらどうだろう、主はもっと私を褒めてくれるだろうか
ああ、早く戦いたい・・・

「オーキド博士はどうだった? 気さくな方でしょう?」
「ええ。ミュウツーを見せたら凄い興奮して」

オーキド、その名前を聞いて私は震えた
あの変人の事だ。
私の体をところかまわず触り、血を抜き、私の能力を見極めようとした。
主の頼みとはいえアイツに体を触られるのは本当に辛かった。我慢なんてしたくなかった。もう二度と会いたくない
主、どうか分かってください。私の体はあなたの為にこそあるのです。

「少しだけ、ミュウツーを貸してくれない?」

ふいに発せられたその言葉に私は思わず目を丸くした
何を言ってるんだこの女は?


さすがに我慢できなかった
気がつけば体中に張り付いてるコードを引き剥がし自然と主のもとへと足が動いていたのだ

「ちょっとっ、まだ治療は」
「黙れ」
「ひっ……!」
「借りるだと……? ふざけるな……! 私の主は主一人だけだ。それ以外、他の誰にも私は従わない。
 人間風情が、この私を御せると思っているのか……!」

 我ながらうまくいったと思った。これだけ脅せばこの女も妙な事は考えないだろう。
 その証拠に女が抱いていたケーシィも自らモンスターボールの中に逃げ帰っていった。当たり前だ、私にかなうポケモン等存在しない。
 ふと横をみると主が心配そうに見つめていた。
 大丈夫、私はあなたの物です。安心してください。

「い、言い方が悪かったのは謝るわ。別に交換したいとは言ってないの。ただエスパー系ポケモンの専
 門家としては、その頂点ともいえるミュウツーを、貴方を扱ってみたいとも思うの。けして悪いよう
 にはしないわ。無理なバトルはしないし、それなりに腕もある」
「黙れ!!」
 なんなんだこの女は『自分が正しい』とでもいいたげなその目が気に食わない・・・
「いいえ。貴方は全トレーナーの夢だもの。少しでも貴方に近づきたい、扱ってみたいと思うのは当然の」
「それが人間の驕りだと言っているのが分からないのか……! ポケモンを物のように見て……! 貴様
 もまたあの屑どもと同類かぁ……!」

 夢?近づきたい?なたば私の気持ちはどうなる、貴様などに近づかれたくない、扱われたくないという私の・・・主の気持ちは!
 そうだ、主が嫌がっている。私が『あんな女に使われている』状況を想像して苦しんでいる、不快に思っている
 しかしこの女に言葉は通じない・・・ならば・・・どうする?どうする?どうする?
 そうだ、簡単じゃないか・・・あの女の口をふさげばいい・・・二度と喋れないように・・・二度と言葉を発する事ができないように・・・主の為に!

 次の瞬間、視界に私に向かってくる主の必死な姿が見えた・・・なぜですか?主


 主が私を止めようした。なぜだ?主は私と同じ気持ちではないのか?
 私は苛立ちと焦りで思わず叫んでしまった。

「なぜだ主! なぜ邪魔を」
「当たり前だ! なにやってんだよ!」

      • ひっ---思わず身構えてしまった。主が怒った主に怒られた。主に嫌われた?主が?主が私の事をきらいになった?
そんなはずはないそんなはずはないそんなはずはないそんナハズハナイソンナハズ・・・・

「だって……私は、主のため……」
「俺の為でこんなことをするのか! 俺の為にこんなに関係の無い人たちを滅茶苦茶にするのか!」

 主が怒っている・・・よく見ると私の周りは、いや、ポケモンセンターは酷い有様だった、治療中のモンスターボールもが弾けとびそこかしこに散らばっている
 待合室にいた人間もポケモンもガラスの破片をかぶったせいか所々に血が滴っていた。そうか、主はこれを怒っているんだ。
 ならばきっと誤解はとける。私はこんな事をしたかったんじゃない。 主の為にあの女を、そうだあの女が悪いんだ。ちゃんと説明しようきっと主は笑って許してくれる
 そう、主が私を嫌うはずなんて無い・・・嫌うはず無い・・・嫌うはずが・・・・

「主……私は」
「五月蝿い! お前なんかいるもんか!」

 頭の中が真っ白になった。主はなんといった?主は私の事をいら・・・ない・・・?
 目の前が真っ暗になり、体中の力が抜け。なんとか主の裾を握ってすがりつくのが精一杯だった
 いや、本当に主の裾を掴めたか、主に縋ることが出来たのかどうかもわからない・・・

「あああ……主……私は、だって……主と離れたく……離れたくない……主の為に……私の全て、主だか
 ら……ああ……ごめ、ごめんなさ……あ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん
 なさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいご
 めんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
 いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ」


夢をみていた
とても幸せな夢
主と共に歩き、主と共に笑い、主と共に戦い、主と共に生きる
そんな夢を

そこには何も無かった
主だけがいた、私の主が、私だけの主が
「ミュウツーこっちこいよ」
「ミュウツー何か食べるか?」
「ミュウツーバトルなんだけどいいか?」
「ミュウツー」「ミュウツー」「ミュウツー」「ミュウツー」
私は幸せだった
主だけがいる、主さえいれば他に何もいらない。主さえいてくれれば・・・

「お前なんかいるもんか!!」

それまで幸せだった世界が音を立てて崩れていく
私は走る走る走る、しかし背後から見えない手が私を闇へと引きずり込もうとする

「嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダぁぁあぁああぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

目が覚める。夢でよかった本当に良かったと思う。
そう、きっとあれも夢。主が私を嫌うはずが・・・

「目が覚めた?」

目の前にスリーパーと・・・あの女がいた!


 私は女に飛び掛った首を絞める
 この女のせいで、この女さえいなければ、この女が悪い。

 「ちょ、、や・・・やめ・・・・」

 横からフーディンが体当たりを仕掛けてきた
 そのまま女を殺しても良かったが背後にはスリーパーも迫っていた一度女を解放し思考する
 私の邪魔をする・・・そうか・・・まずはこいつらを殺さないとダメなのか・・・

 「かはっ・・・けほっ・・・ちょ、、ちょっと・・・ごほっ・・話を聞いて」
 「貴様と話すことなどない!主はどこだ!?私の・・・私の・・・わた・・・?」

 そうだ、主はどこだ?見たところここはヤマブキジムの控え室のようだった
 ほんの数時間前、主と過ごした場所、主に褒めてもらった場所。
 私は自分のおろかさに気がついた主を探さなければ。主の側が私の居場所
 まずジムを一通り探した・・・・いない。
 そうだ、ポケモンセンターだ、きっとあの女に無理矢理つれてこられた私を心配して待っているに違いない。
 急ぐ、サイコキネシスで目の前に立ちはだかるものを全てどかしながらただ一直線にポケモンセンターに
 そこには、悲しそうな目で私をみつめるジョーイがいた・・・

 「主が・・・私を・・・捨てた?・・・ほんとう・・に・・・?」


それからの私はただの屍だった
主に捨てられた私に生きる意味などない、生きる意味など・・・
私にはもう何も無い、主が私を『捨てた』その事実だけが残った

今はヤマブキジムの控え室でなにもない時間をすごしている
体中を包帯だらけにしたあの女毎日この控え室のドアを叩く、なぜ傷だらけなのか
ジョーイの話によるとポケモンセンターで私が少し暴れてしまったようだ。その時のことは良く覚えていない
左目には眼帯、右腕にはギブス。両足は使い物にならないらしく車椅子にのってやってくる。
いい気味だ、覚えていないのが残念だが。この女にはもっと痛い目にあってもらわないと困る。
なんの反応もしめさない私にこの女は食事を運び、私に意味のない言葉を投げかけていく
そこまでして私の力が欲しいのだろうか?こんな力さえなければ主ともっと一緒にいられたのだろうか?そんな考えばかりが頭をよぎる

「ミュウツー?入るよ?まだ何か食べる気ない?ちょっとだけでもいいから少しはお腹にいれないと体に悪いよ?」
「私と一緒にバトルしない?少しは気がまぎれるかもしれないし」
「男だってあんたがこんなになってるの見たら悲しむよ?」

食欲なんてでるわけがなかった
バトルはしてもいいかもしれないと思った、指示など全て無視して私を殺してくれるポケモンが現れるのを待てばいい
しかし、『自分より強いポケモン』の可能性の低さに己の強さを呪ったりもした
主が私を見て悲しんでくれる、それはいいかもしれない・・・ならばこのままここで死ぬ事にも意味はある
主が私の事を思って泣いてくれるのなら。今はこれ以上望むことはない、これ以上のものは望めない
      • さぁ私の命よ早く終わってくれ・・・


それから何日たったのだろうか、一日か、二日か実際にはその程度だろう
私は倒れ、ポケモンセンターに運ばれた
栄養失調だとか脱水症状だとかジョーイが言ってたきがするが放っておいてほしかった
体中にチューブが取り付けられ私は無理矢理、生への道を開かれた
ああ、そうか、死ぬ事もできないのか、、、この世はなんと理不尽なんだろう・・・
私はもう体の中にあるかないかもわからない程の水分を搾り出して泣いた・・・

「男がきたよ!」

それは本当に衝撃だった。
あの女、ナツメがそう叫びながら入ってきたのだ
私は耳を疑った、本当に?本当に主にあえる?本当に主がきてくれた?

「うん、あんたとバトルがしたいんだって。私とあんたで」

主が私と?主と私と、ではなく?
なにかおかしいと思った、しかし私にはもう何も残されていない。、
この世で一番嫌いな女の言葉にすがるしかないほど、今の私は追い詰められていた
ジムの控え室につくと私は得体の知れない機械を体中に取り付けられた
頭にはゴーグル、体にはプロテクターのような防具を

「あんたは強すぎるからね、こうやって少し相手にハンデをあげてもいいでしょ?それとも入院してたから力なんかでない?」

女の言う事はよくわからなかった、私が主を傷つけるとでも思っているのだろうか?
ゴーグル越しに見える世界はほんのあり赤く左右の視界が若干狭まる程度、プロテクターもたいした重さもなくハンデにしてはあまり意味がない気がした
それに、『入院していたから力がでない?』私の力を過小評価するのはやめてもらいたい!主に早く会いたい私は女の言う事に素直に従い文句を言う事さえ忘れ控え室を出た
そして・・・
そこには確かに主がいた、笑っていた、私に向かって笑ってくれたいた。
その時の私は確かに喜んでいた
ゴーグルの本当の意味も知らないで・・・


バトル中おかしな事はいくらでもあった
まず使用ポケモン主が最初に出してきたのはユンゲラーだった
おかしい、私がいない間にトレードが行われたのだろうか、いや、しかし、
そして主のポケモンへの指示の仕方がおかしかった
どうも守りに徹するのだ普段の主ならもっと積極的に攻めているはず・・・
あの女の言うとおり、食事をとらない数日の間に弱っていたのかもしれない
思考回路がうまくまとまらず。チマチマとした攻撃を喰らう。

もしこれで負けたらどうなる?負けたら?
主が弱くなった私をみたら?また・・・捨てられる?
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ
もう捨てられたくない!

「ミュウツー!サイコキネシス!!」

あの女が何かさけんでる、しかしそんな事気にしてはいられない
私はユンゲラーに体当たりをしかけ、そのまま近距離で破壊光線を撃つ
よし、仕留めた
ガクガクと痙攣しているユンゲラーをそのまま捨て置いて主の元へ
「主!見ていてくれましたか?私は弱くなってなんかいません!」
しかし主は応えてくれなかった、慌ててユンゲラーを戻し次のポケモンを出してくる・・・マルマインだった
まただ、私の初めて見るポケモン。
この数日の間にゲットしたのだろうか?その力を試したくて私と戦いたいのだろうか?ならば新参に負けるわけには行かない
ユンゲラーを倒した位置からでは少々遠すぎた、急いで次の行動に移ろうとしたが
先ほどの破壊光線の反動で足が言う事をきいてくれない。まずい
主はその隙を見逃してはくれなかった「大爆発」マルマインが私の目の前で弾け飛んだ


どれほどの時間がたったのだろう
数秒か数時間か気がつけば私は倒れ
ゴーグルも粉々に砕けていた
まずい、こんな姿を主に見られたら!私は慌てて起き上がり
主の姿を探した・・・が相手のトレーナーゾーンには主はいなかったその代わりに
見知らぬ男が一人拳を上げて喜んでいた
主じゃ・・・ない?
私はふとあの女、ナツメの方を見た「しまった」という表情をしたままこちらを見ていた
そうか、、、やはり主は戻ってきてはくれなかったのか・・・
私は自分が負けた事等忘れそのまま目を閉じた・・・

目が覚めるとそこは控え室だった、そしてやはりあの女がいた
ここで目を覚ますのは何度目だろう
「ミュウツー大丈夫?ごめんね変なことしちゃって。さっき薬を使ったからまだ頭がぼーっとするでしょ?」
ああ、もういい・・・もう・・・疲れた・・・
「あのね、あのゴーグルはね、見た人物をあなたが一番会いたいと思う人のイメージに変換して脳に伝え錯覚させる、催眠装置みたいなものなの」
そうか・・・あの主は偽者だったのか・・・
「あのままじゃミュウツーが死んじゃうと思ったから、嘘でも男に会わせてあげたくて」
もう・・・いいんだ・・・もう。・・・少し・眠らせて欲しい・・・
「でも失敗だった、本当にごめんなさい。嘘で会わせてもらっても嬉しくなんかないよね。本当にごめんなさい」
「待ってて!今度こそ本当に男に会わせてあげ・・・」

そこで私の意識は途絶えた


再び夢の世界
しかしそこに主はいない
あるのは闇
あるのは影
あるのは自身の肉体

そんな何もない世界
どこからか声が聞こえてきた
しかしそれらは主の声ではない
5人、6人、もっとだろうか
ああ、騒がしい・・・
私はまた目覚めなければならないのだろうか
目覚めて何になるというのだろう、そこに主はいないのだろうから


「あんたたちミュウツーに何する気!?」
「ここはポケモンセンターです!警察をよびますよ!出て行ってください」

なにやら騒がしいふと辺りを見渡すと
どうやらまたポケモンセンターに運ばれていたらしい
更に私は黒い服をきた男たちに囲まれ銃口を向けられている
一体どういうことだろうか
部屋の外ではナツメとジョーイが叫んでいた
状況を整理しようにも情報が足り無すぎた

「なんだ貴様ら?」
「う、うるさい黙れ!おとなしく私達についてこい!この化け物め!」

男の一人がそう怒鳴ると私の両腕に枷を取り付けた
一体なんだというのだ

「私を殺したいのならいつでも殺してくれて構わない、抵抗はしない」
「殺すつもりはないさ、大人しく私に従ってくれれば危害は加えない」
部屋の外から声が聞こえ、ゆっくりとスーツ姿の男が入ってきた
こいつがリーダーか?


「いやいや、君がミュウツーか。なるほど強そうだ」
「貴様何が目的だ」
口に出して我ながらおろかな事を聞いたと思った
どうせ私の力に目がくらんだ連中の一人だろう
「目的、目的か。それは簡単だよ、君を従えたいと思っている人間がいるそれだけだ」
「私にはもう主がいる」
「それは承知している、しかし、我々もそう簡単に君をあきらめる程軽い気持ちではないのでね
 失礼かとは思ったが調べさせてもらった。今の君には主はいない、、、そうだろう?」
勝ち誇ったように笑うその男に、私は何も言い返す事ができなかった
そうだ、私は捨てられた
「そ、、それでも、、私の主は、、、一人、、だけ、、だ、、」
「ハハハハハハ!忠誠心の高さは噂通りか!いい!気に入った!ますますほしくなったぞお前のことが!」
耳障り以外のなにものでもない甲高い笑い声が私の胃にまで届く。吐きそうだ。
「さて、冗談はさておき、ミュウツー君。実は私は君の主の男君とも面識があってね。」
「!?」
「いやぁ、ミュウツーを捕まえた男というから君がいなければたいして強くないだろうと思ったが」
「・・・・」
「彼、意外とやるねぇ、君なしでトキワジムを制覇してしまったよ」
「!?!?」
「そういえば戦った後にこんな事もいってたかな『こいつらがいればミュウツーなんてもう必要ない』って。酷いよねぇ」
「な・・・そん・・・な・・・」
「どうだい?もうそんな男君のことは忘れて、私と一緒にきてみないか?きっと気持ちいいぞ」
「きもち・・いい?」
「そう、新しい主に仕えて、沢山バトルをして。」
「アタラシイ・・アルジ・・・バト・・ル」
「決めるのは後でもいいさ、とりあえず我々と一緒に来てはもらえないかな?」
「・・・・イ・・ク・・・」
薄れいく意識のなかで男の後ろにユンゲラーの姿を見た気がした・・・



3度ミュウツーの夢の世界

なにしてるの?
「なにも」
主のところの行かなくてもいいの?
「主にはもう私が必要ないんだ・・・」
じゃぁ新しい主を作るの?
「・・・・・・・・」
新しい主の言う事を聞くの?
「・・・・・・・・」
主の事は忘れちゃうの?
「忘れるものか!!!!忘れるわけがない!忘れてたまるか!わすれて、、、わすれて・・・」

同時刻現実世界
なんだか頭がぼーっとする、またキズグスリの使いすぎだろうか・・・
男に背中を押され私は歩いていく

「やめなさい!ミュウツーを離して!」
あの女がこの男となにやら言い合いをしている
「ここはポケモンセンターですよ?正式なトレーナーである方以外にポケモンの引渡しはできません!」
ジョーイが何か叫んでる
「うるさい、もうミュウツーの意思は確認済みださっさとそこをどけ。怪我をしたくなければな」
「ミュウツー、本当にいいの?今男がこっちにむかってるって!あなたを迎えにきてるの!」

ああ、まただ、、、この女は、、、また
 ウ ソ ヲ ツ イ テ イ ル  ワ タ シ ヲ ダ マ ソ ウ ト シ テ イ ル 

ドカ!!!!!!!!!!
サイコキネシスで女を吹き飛ばす。車椅子の下敷きにされた女は動かなくなったいい気味だ
ああ、バトルは気持ちい、そうだ、こんなにも気持ちいいんだもっとやりたい。もっと気持ちよくなりたいモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモット


「ミュウツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
振り返る
嘘だ、そんなわけない。どうせまたあの女が仕組んだに決まってる
でもその顔が、その笑顔があまりにも眩しくて、あまりにも嬉しくて
私知らず知らずその人のもとへ歩きはじめていた

「ある……じ……?」
「ミュウツー!」
「あるじ……フフ……にせも……どうせ、このあるじもにせもの……にせものは……にせものはいらな」

“その”主は力強く私をだきしめてくれた、ああ、私が欲しかったもの。主の顔が目の前にある
主の手が私の腰を強く引き寄せる。主の体温が、主の匂いが。主が。

「あ……あ……」
偽者じゃない、偽者であってほしくない、偽者なわけない、私が主を間違えるはずが無い。私が主を間違えてはいけない

「ミュウツー……今まで悪かった。俺はお前の存在に、お前の強さに甘えていたんだ。お前がどこまでも俺
 を信じてくれていたから、俺が信じるって言うことを忘れていたんだ。ごめんな、ミュウツー。お前は俺の
 大事な、大事なポケモンだ。俺はお前をこれからずっと信じる。お前がお前らしくいられるために、お前が
 自分を見失っても俺はお前の傍にずっといる。お前を信じて、俺もお前を信じて、そうして最高のポケモン
 マスターになりたい。その為にお前が必要なんだ。俺が信じるお前がいてくれなくちゃいけないんだ。お前
 が信じてくれる俺でなきゃダメなんだ」

本物だ・・・・・


「くっ! おい、こいつらを引き離せ! 男の方は殺して構わん!」
 男が叫ぶ・・・今、、、なんといった?私はすぐさま近くにいたユンゲラーをサイコキネシスで吹き飛ばす
「なっ……」
「無駄だ……主には触れさせん」
「くぅっ」
 殺す?そういったのか?この男?私の主を?次の瞬間男がボールをとりだす
私はとっさに身構えたが男はそれ以上動かなかった、いや、動けなかった
振り返ると私が吹き飛ばしたはずのあの女、ケーシィを抱いたナツメがそこにいた。
なら、さきほど吹き飛ばしたのは??慌てて視線をもどす、そこにはメタモンが一匹こちらに振り向きもせず這っていた
「貴様……!」
「ジムリーダーは色々と危険がつきまとうからね。影武者ぐらいはどこでも用意してるわ」
「じゃあこのかなしばりはなんだ……!」
「ああごめんなさい、この子ね、レベル50なの」
「ケェー」

 ああ、もういいんだ、もう私は何もしなくていい。私は主の危険がなくなったのを確認するとそのまま主の胸に飛び込んでいた
はしたない事をしていると思う。もしかしたらまた嫌われてしまうかもしれない、でも今は大丈夫、きっと私を抱きしめてくれる、そんな確信があった
瞬間“キュ”と主の手に力が入り私を抱きしてめくれた。ほら、やっぱり。

「ミュウツー、ただいま」
「お帰りなさい、主よ」

 また主と一緒にいられる、そう思うともう自分の心臓を抑える事ができなかった。ああ、主どこまでもついていきます。どうか二度と私を捨てないでください。
 先ほどまで曇っていたはずの空が晴れ、太陽がでていた。
 しかし私は外の太陽よりも主の笑顔が何よりも眩しくて、つい泣いてしまったのはあまりにも恥ずかしいのでここだけの秘密にしておきたい。


数ヵ月後

「おーっと! ギャラドスの破壊光線決まったー! ミュウツー苦しそうだー!」
「もういい! ミュウツーもどれ!」
「くっ……! ああ」

 情けない、こんなところで引かなくてはならないとは。しかしダメージは与えた
 今回の相手は主の最大のライバルと呼ばれる男だった。
 この勝負は私のプライドよりも重い。絶対に勝たなくてはならない相手だった。頼んだぞ、私の仲間たち・・・。

「行け! リザードン!」
「グォォォォォォォ!!」

 リザードンが咆哮をあげる。どうやら調子が良さそうだ。そうだ、大丈夫、主を、主の育てた仲間を、私の仲間を信じよう。

「……なあ主よ」
「行け! ってなんだよ、ミュウツー」
「……あのトカゲも雌だ」
「へ?」
「……一応私は忠告したからな」

 リザードンに指示をだす主の背中を見ながら 「鈍感・・・」と思わずつぶやいてしまった。慌てて口をふさぐ、主が気がついていないようなのでよかった。
 と、勝負を見るのをつい忘れていたがどうやら勝利したようだ。最後は・・・地球投げ?まぁリザードンらしいといえばリザードンらしいか。だが主と抱擁を交わすのはそれぐらいにしておいた方がいい
 しかし、これで主が、私の主がポケモンマスターだ。今回は大目にみてやろう。
「おめでとう、主。いや、これからはマスターと呼ぶべきか?」
「いや、主で良いよ」
「フフッ、まあどちらでも構わん。これからもずっと一緒だ、主よ」

おわり