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157 ID:N9Ch+yd/0


内容:ゲーム化企画
イベント名:リザードンvsミュウツーvs?????

「――前から気に入らなかったんだよッ! お前が!」

白昼の道々、照り返す陽光のほてりなど冷風でしかない……そう錯覚させうるほどに、
リザードンの怒りが巻き起こす灼熱の“ねっぷう”は、周辺の緑を燃える赤色に変色させていた。
象徴である先端に炎の灯った長い尾を地面に叩きつけ、口元を引き攣らせて殺意の波動を睨みつける。

「それはもう、聞き飽きた……」

怒りの対象にある色素の薄い――“アルビノ”を髣髴させる『存在』が、心底うんざりした面持ちで嘆息を吐き散らす。
あれだけの形相で睨みつけられ、更に相手は“それ”を可能にできるほどの強者であるというのに、
彼女は爪を齧りながら、それを悠々と流し見て、侮蔑の視線を浴びせるのだ。
それだけの余裕が――ミュウツーにはあった。

「止めろよ、二人とも!?」

紅蓮に燃える渦中を見て、俺は彼女達を放っておく事ができなかった。
いや、できるはずが無い! だって、こいつらは皆、大事な俺の『パートナー』なんだから。

「止めろ! 止めるんだ! 本当に取り返しがつかなくなるぞ!?」
「うるさい! 理屈じゃねえ、もうホントに我慢がならねえんだよ!?」

俺の制止に対して、リザードンは癇癪を起こしたように首を振って吠え立てた。
「理屈じゃない」って……一体どうしたっていうんだ?
リザードンは子供がやるような「イヤイヤ」を繰り返して、何が気に入らないのか、ずっとそれを続ける。



158 ID:N9Ch+yd/0


「理屈じゃねえ……マジで潰してやる!」
「変温動物風情に出すぎたな……至高の存在たる私を“殺る”ことは所詮、叶わない夢幻だと言うのに……」

親指から口を離すと、爪の先から赤い液が一滴、滴り下りた。
あんなに爪を噛んだのは始めてだ……ミュウツーは本当にリザードンを殺すつもりかもしれない。
何が……一体何があって、二人はこんな無意味な殺し合いをしなくちゃならないんだ?

眼前で猛り狂う『赤』と『白』。
どうする事もできない矮小な自分が惨めで……泣きたくなってくる。
不意に、背後から芳醇な花の香りが漂ってきた。

「ご主人様……離れていらした方がよろしいかと」
「フシギバナ……?」

そうだ、彼女も俺の立派なパートナーの一人だ。
こうやって、不甲斐ない俺の傍にやってきてくれて、優しい花の香りで慰めてくれる。
どうしてこうなったのか、一緒に打開策を考えて貰おう……我ながら情け無いが。

「なあ、フシギバナ? 二人はどうしてああなってしまったんだ?」

俺の情け無い問いに、彼女はやはり幾許の間を空けて、困ったように目を閉じてしまった。
ああ……なんて情けないんだ、自分で自分を殺してやりたい。
そんな下がりきったテンションの最中、思考から明けて、フシギバナは再び目を開いて俺を見てくれた。
よかった、俺を見限った訳じゃないんだな?



159 ID:N9Ch+yd/0


だが、その視線からは何を思っているのか汲み取る事ができない。
別にダジャレを言うつもりは無いが、不思議な思惑を滲ませた……表現しづらいけど、『男』の目とは違う気がした。

そして、彼女は驚くべきことを口にした。

「ご主人様……これは仕方がないのです。二人の事は諦めましょう」
「はあぁ!?」

分けが分からなくなった。
なんで“そう”なるんだよ!? 極端すぎるだろ? もっとイイコトを考えようよ?
しかし、フシギバナはそれ以上、二人へ関心を持たないよう、視線をずらして身を引いた。

「待ってくれよ……なんでいきなり『諦めろ』なんて言い出すんだ? おかしいだろ!」

俺の必死の制止は、まったく異なるところでも使われた。
こっちは余裕があるが、あっちの方は今にも血肉踊る凄惨の現場になりそうなのだ。
人事じゃない、彼女達は俺の大事な『家族』なんだぞ!

「フシギバナ、頼む! 一緒に二人を説得してくれ……!」
「ご主人様……ですが――」
「これでもか!?」

俺は膝を折り、途端に彼女の前に上半身を倒して、そのまま額を――地面に押し付けた。
――『土下座』だ。これは決して、安い意味のものではない。分かってくれ、フシギバナ……。

「ご主人様、頭を上げてください……主従の契りを交わした者同士が逆転するなど……」
「それじゃあ?」


160 ID:N9Ch+yd/0


淡い期待を乗せて、俺は言われたまま頭を上げて眼前のフシギバナを見た。
だが――、彼女は首を横に振った。

「こればかりは出来ないのです。――あれは、彼女達の“問題”ですから」
「どうして……“問題”って?」
「『女の問題』なのですよ……」

そう言って、フシギバナは哀しげな視線で二人の闘技場を目に納めた。
火炎が照り返し、時空が歪んで風景が可笑しな色と形で溢れかえっている。
……もう、止められないんだな。

「『命令』だ……と仰られれば、私も渦中に身を投じ、二人の仲立ちを死力の限り尽くしてごらんにいれますよ?」
「そんな事をすれば……また一人、俺の大切な『家族』が死んでしまう……ナンセンスだ」

俺も馬鹿だ。よくよく考え直してみれば、フシギバナと二人の相性は最悪だ。
そんな事も考えないで、俺は彼女に二人の説得を持ちかけていたんだな……本当に馬鹿だ。
どうする事もできないジレンマ――葛藤が俺の内面を突き破り、外見に溢れて視界をぼやけさせる。

もう本当にどうする事もできないのか?
もう本当に二人と話すことは出来ないのか?
もう本当に……

「――そんな自分を責めんでもねえ?」
「…………え?」


161 ID:N9Ch+yd/0


跪いて涙を流す俺の視界に広がる影が、一際大きく拡大されて――肩口から四角いシルエットが踊った。
咄嗟に振り向く俺の眼前に、これでもかと大柄な水系ポケモン――カメックスが聳え立っていた。
手には多量のポフィンが収められた包みを握っており、間断ない勢いで口の中に放り込まれている。
……食ってんなよ。

「まあまあ、どうしたの? いきなし二人とも殺気立っちゃってまあ~?」
「呑気に食いながら実況しとる場合か!? 大変なんだよ、お前も何か考えろ!」
「考えろったって……さあ?」

カメックスは未だに事態の真意を把握できていない様子で、頻りにポフィンを頬張りながら首を傾げている。
いいから、食うのをヤメロ……!

「あ! そうですわ!?」
「え?」
「ん~?」

異口同音、俺とカメックスは、突然フシギバナの上げた声に反応して、一斉に視線を傾けた。
見れば、不思議な事に彼女の視線は俺ではなく……カメックスに向けられていた。
これには俺でなくとも、カメックス自体がかなり驚いている様子だった。思わず食べるのを止めたくらいだ、間違いない。

「な、なによぉ~? ポフィンなら上げないぜ?」
「そんな物いりません。それより、いい“打開策”が見つかりましたわ、ご主人様?」
「なんだって? それは本当かい、フシギバナ!?」


162 ID:N9Ch+yd/0


予想もしない彼女の発言に、俺は心から驚きと嬉しさを混ぜこぜにした声を上げた。
逆に――何故か、カメックスは落ち着かない様子で視線を泳がせていた。
……いい加減に落ち着けよ。

フシギバナは考えた提案を示すため、一度地面に作戦の実行書を書き記した。
流れる蔓さばきで素早く実行書を書き記していく。
急いでくれ! まだ二人はにらみ合いを続けているけど、いつ戦いが始まっても可笑しくないんだ!

「出来ました! これです!」
「おお!?」
「……おいおい」

書き上げられた作戦書を読み上げて、俺は感嘆の息を零した。
素晴らしい! そうだよ、問題は『相性』だったんだ。それさえクリアすれば問題は無い!

「……と、言うわけで頑張れよ――カメックス?」
「じょ、冗談じゃ……!?」

俺の檄を込めた肩叩きを受けた拍子に、カメックスは有ろう事かポフィンケースを落してしまった。
一応わかっちゃいたけど、そんなにショックか……?

「これぞ、『カメックスの命を懸けた二人の仲裁作戦』! 完璧です!」
「完璧に駄案だと思うんですけど……」
「そう言わずに、頼むよ……カメックス?」


163 ID:N9Ch+yd/0


顔を顰めてあからさまに嫌がるカメックスを前に、俺は両の手を合わせて頼み込んだ。
俺も卑怯だな……こうすれば彼が断らないって事を知っててやってる。
彼はどこか抜けていて、やる気の無い態度が普段のポリシーだが、本当に危機が迫っている時は名誉挽回をしてくれる男だ。

その証拠に、彼は人差し指で顔の側面を掻きつつ、唸りつつも断りきれないでいる。
そして、最終的に長い溜息を吐いた。

「わぁ~ったよ……やりゃあいいんでしょ? やりゃあ……」
「ありがとう!」
「ちくしょう~、墓前には『まろやかポフィン』を供えてくれよ?」

最後まで食い意地の張ったコメントを遺し、カメックスは両手で頬を強く叩いて気合を入れた。
向かう先は……常軌を逸した二人の下、この煉獄の輪に入場して仲裁をする。

「……やっぱ明日にしない?」

凄まじい殺気に当てられ、カメックスは振り返りつつ日和見なことを言い出す。
当然、駄目。

「今日の今すぐで、お願い」
「あ~死んだわ、絶対……」

再度、挑戦。
どうやらリザードンは、事前に自分が有利な地形に変えて戦うつもりだったらしく、地形は日差しが強かった。
不味いな……これでは幾らなんでも、相性が良くても威力が半減する。


164 ID:N9Ch+yd/0


「カメックス、ちょっと作戦のへんこ……」

[カメックスは からにこもった! ぼうぎょが ぐーんとあがった]

「え、なに?」

殻から首を覗かせ、カメックスは恐る恐る俺とフシギバナの方を見た。
もう、アドバイスなんかしない。勝手に死ね。

「馬鹿ヤローーーーーーッ!?」
「? おお、ありが……とう?」

本当に馬鹿だ。俺の怒りの声が、アイツには声援に聞こえたらしい。もう、好きにして……。

「あ、ご主人様! いけません、二人が臨戦態勢に入ったようです!」
「なんだって!? ――カメックス、早く二人に特大の『冷水』を見舞うんだ!」

俺の指示より早くカメックスは事態を飲み込み、普段からは想像も出来ないほど素早さに切れがある。
よし、その距離から『なみのり』を見舞うんだ! ヤレーッ!

「……って、どうしてやらないんだ!?」

カメックスは当初の作戦とは違い、長距離からのなみのり攻撃を行わないつもりだ。
一体、なにを考えているんだ? それ以上近付いたら、いくらお前の殻でも防ぎきれないぞ!
不意に、カメックスが含み笑いを浮かべて、俺に一瞬だけ視線を向けた。


165 ID:N9Ch+yd/0


「『なみのり』だって? そいつは二人には効かねえよ。もっと特大のを見舞ってやるのさ!」

何をやるつもりだ? ……『特大』だって?
考えている暇にカメックスは激突直前の二人の近辺まで寄ってしまった。
至近距離からの「だいもんじ」、対する「はどうだん」の余波は、いくらカメックスでも防ぎきれるものではない。
――カメックス!

「おいおい、ケンカは止しなさいよ? ――ハイドロォカノンーーーーーッ!!」

直進してきた慣性の力と強靭な足の力で踏ん張り、カメックスは唐突にその『技』の名前を叫んでいた。
まったく聞いた事のない、技の名前は――『ハイドロポンプ』と似て非なる水の奥義。
圧倒的質量と足場の支えがあって尚、射手のカメックスの全体が後方へ押しやられてしまった。
肩より伸びる砲身から凝縮された水圧を吐き出し、『ハイドロカノン』は確かに直進して行き、二人の間を駆け抜けた。

突然の横槍に二人は驚き、咄嗟に後方へ飛び去る。
やったぞ! さすがカメックスだ。見事に二人へ向けて“水を差して”くれた。
さしもの二人も、当面は面食らった影響で大人しくなってくれる筈だ。

「凄いな、カメックス。さっきの技は一体なんだい?」

以前まで覚えていた水系の技を圧倒的に凌駕している。
それに、あの技は聞いた事がない。だけど強い。
カメックスは得意げに胸を張り、落語家がそうするように口上前に膝を叩いた。



166 ID:N9Ch+yd/0


「ああ、あれはだな……ミュウツーに嵌められてシンオウ地方に追いやれた時に――」
「あん……?」

凍てつくほどの殺気が首筋を撫で、途端にカメックスの顔面から汗が噴出す。
そして――“正しい”説明が始まった。

「あれは、ミュウツーお姉様に僕がせがみまして~、どうしてもシンオウ地方に行きたいと駄々をこねたんです。
 そうしますと、お優しい慈母たるお姉様が、僕をシンオウ行きのフェリーに乗せて下さいまして、晴れてそこで修行をして会得しました」
「……そうか」

泣きながら説明しなくても……。
しかし、凄い威力だ。日照りの影響で水系の力が弱まっているというのに易々と二人の喧嘩を止めてしまった。
今の話が本当なら、シンオウは俺の知らない技やポケモンで溢れているに違いない。
いけね、長いこと忘れてた『トレーナー』の血が騒いできやがった……!

行きたい……行って、俺の実力を試してみたい。
俺は――『ポケモントレーナー』なんだからな!
行くぞ、これからの進路は「シンオウ地方」に決定だ!

「さあ、行こうぜ!? みんな、新しい旅路の始まりだぜ!」

だが、俺の舵を取る指先に、乗ってくる奴はいなかった……なんでよ?
原因究明のため、振り返ると、俺は思わず呻き声を漏らしてしまう。
そこでは、あまり歓迎されない状況が繰り広げられていた……。



167 ID:N9Ch+yd/0


「てめえ……いきなり俺等に仕掛けてくるたぁ、随分えらくなったもんだな?」

ヤンキー、チーマー、ヤクザ、マフィア、セ○ールすら慄くであろう剣幕で、リザードンはカメックスの首筋を掴んで持ち上げていた。
眉間に皺を寄せ、大柄のカメックスを悠々持ち上げる怪力を発揮して、彼女は再び理性を失っていた。
カメックスは首を絞められている影響で、普段以上に顔の色が青い……殺す気かよ?

「あ、あれは……りゆうがござ……いまして~」
「あん? 誰が口を利いていいつったよ?」

弁解の機会を与えられないまま、カメックスはますます首を強く締められて、遂には泡を吹き始めた。
どうやら俺たちの作戦は“水を差す”どころか、むしろ“焼け石に水”だったようだ。
いや、“日に油を注いだ”というのか? どちらにせよ、歓迎されない事態だ。
さっさと事情を説明して、リザードンの怒りを解いてやろう。

「――!?」

突如、背筋に悪寒が走った。冷や汗が噴出して、胃の中が焼け付くような気持ち悪さを感じる。
これは……本当にヤバイ。

「なんで、邪魔をした……?」
「あわわわ……」

圧倒的プレッシャーを放射しながら、新たに怒りの持ち主がカメックスの下へ歩み寄ってくる。
爪を頻りに噛みながら、唇を鮮やかな深紅色に染めて、彼女はおよそ窺い知れない表情で、吊るし上げに遭う彼を睨んでいる。


168 ID:N9Ch+yd/0


「あのう……ミュウツーさん?」
「貴様……何の権限があって私の動向に指図をくれた? 何の権限があってこの私に……」

ミュウツーは俺の呼び止める声にすら反応を見せず、完全に自分の世界に入ってしまっている。
噛みすぎて、爪の先からは絶えず血の赤が唇から顎にかけて伝って地面に降り注ぐ。
客観的に見て、これは冗談抜きにやば過ぎる……!

「あ、あああああああれはマスターに命じられて、仕方なく実行したんですよ!?」

心の底から生命の危機を感知したカメックスは、首の絞められた状況からはっきりと発言した。
涙と同時に鼻水を多量に垂れ流し、恐怖満面で必死に事情の説明を開始する。
しかし、それも相手には通じず、ミュウツーは血の滴る指から口を離すと、今度は逆の手から――『小刀』を取り出した。

――カメックス、さようなら。

小刀が逆手に握られて大きく振り被られた瞬間、俺は咄嗟にカメックスから視線を外して振り返った。
一瞬、カメックスと目が合い、何とも嫌な後味が広がったが……全力で「ど忘れ」する事にする。それが一番だ。

「ああああああああああああああああああああああああああああ!?」

すぐ後ろでは凄まじい悲鳴が轟いているが、これも俺には聞こえない。
俺は続けられるミュウツーの『儀式』が終わるまで、暫くこの場から退散する事に決めた。
腿を引き上げて、俺は一歩、一歩と大股で耳を劈く怒号の渦から離れていった。



169 ID:N9Ch+yd/0


「――主?」
「はいッ……!?」

後ろから掛かった突然の呼び出しに、俺は飛び上がって返事をした。
逃げようとした事がばれたのだろうか……ああ、助けてくれ……。
俺の返事に、ミュウツーは低く笑いながら――息を吸った。

「今日の晩御飯は……期待していいぞ?」
「はい……」

そう答えることしか、出来なかった。
カメックス……『まろやかポフィン』で、良かったっけ?

―fin―

既に故人と化してスポットの当てられない
防御力に定評のある彼に今回は出張ってもらった。

イベントとしては

リザードン好感度:高
ミュウツー好感度:中

の状態でミュウツーがリザードンの大事な“なにか”を崩した時に発生する……などと妄想して書いてみた。