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**929 ID:vr31m2nm0 投下しようと思った 続きがある上に長いですごめんなさい 私は、いつ、どこで生まれたのか覚えていない。 いつの間にかこの世界に存在していた。 だが、この時点での私の世界は狭かった。 何しろずっと何かの組織の実験動物として、檻の中に閉じ込められていたのだ。 どうやら私は特別な存在らしく、組織員の中には私を恐れる者もいた。 ある日から、私に専属の研究員がついた。 その研究員は博士と呼ばれ、周りの者よりも位が上のようだった。 博士は私を檻から出し、普通の生物として扱ってくれた。 仔犬に話しかけるように私に話しかけ、子猫を抱くように私を抱いた。 たくさんの事を教えてくれた。たくさんの本を読ませてくれた。 私はそんな博士が好きだった。 この気持ちが恋愛感情なのかどうかは分からない。 ただ、私はそれに近いものを感じた。 ---- **932 ID:vr31m2nm0 そしてまたある日から、私は超能力を使う訓練を受けた。 最初はせいぜい鉛筆を転がす程度しかできなかったが、それでも博士は私の頭を撫でてくれた。 博士の期待に応えるため、私は可能な限り努力をした。 私の力が強くなるたび、博士は私の頭を撫でてくれた。 気付くと私は、大きな試験管の中にいた。 気味の悪い緑色の液体が私の体にまとわりついていた。 たくさんの細い管が、私の体からのびていた。 この中に入れられた理由は何となく分かる。 おそらく、私の力が強くなりすぎたのだろう。 この試験管では念力は使えなかった。 しかし、テレパシーなどは使えるようだった。 その為私は、近くにいる適当な人間の思考を読んで暇をつぶしていた。 この試験管に入ってから、博士に会える回数が少なくなった。 寂しくはあったが、それは仕方のないことだと思った。 私の力が強くなればなるほど、博士と会える回数が減る。 組織も大切な研究員を危険に晒したくないという気持ちがあるのだろう。 だから、仕方のないことなのだ。 ---- **935 ID:vr31m2nm0 どうやら、私の力は日に日に強くなっているらしい。 博士はいつものように接してくれるが、他の組織員の態度を見ていれば分かる。 だから、唯一私に近付いてくれる博士に尋ねてみた。 ―博士、私は、何故生きているのでしょうか。 呼吸すら必要のない試験管の中。 生きている実感の持てない環境で、私はそう尋ねた。 「君は、そんなことを考えていたのかい?」 博士の返答。 もちろん、違う。 こんな質問、ただ話しかけるための口実だ。 私が考えていたのは、そんなことではない。 訊くんだ、博士に。 “貴方は私が怖くないのですか”と。 しかし、それは叶わなかった。 博士は時間を確認し、私を一瞥して部屋を出て行った。 とうとう訊けなかった。 何故? それはきっと、答えを聞くのが怖いから。 最悪の答えが返ってきたとき、私はどうなるか分からない。 きっと、この質問は、胸の内にしまっておくべきなのだ。 きっと、ずっと。 ---- **937 ID:vr31m2nm0 ある日を境に、博士が私の部屋に来なくなった。 理由は分からなかった。 十日、二十日待っても、博士は来ない。 私の管理の役から外されたのか。 その頃は、その程度のことしか考えなかった。 そして、その一ヵ月後。 私がいる部屋にある、博士が使っていた机が撤去されようとしていた。 最初は、意味が分からなかった。 だから、机を撤去しようとしていた男の思考を覗いてみた。 断片的な単語しか見えなかった。 おそらくその男も困惑していたのだろう。 しかし、見逃せない単語が一つだけあった。 それは『死人の机』 そして私は、ようやく悟った。 それと同時に、理性は崩壊し、憎悪と本能が己の体を征服する。 は か せ は ---- **938 ID:vr31m2nm0 気付くと私は、半壊の建造物の中にいた。 何があったかはよく覚えていない。 ただ。 私は無意識のうちに、この机を守っていたようだ。 博士が愛用していたこの机を。 机の中には、博士の業務記録のノートのようなものが入っていた。 パラパラとページをめくっていく。 それはまるで私の成長記録のようだった。 読んでいくうちに、涙があふれる。 小さな雫は大きな粒に変わり、目から流れ落ちる。 それでも私は読むのをやめなかった。 しばらく真っ白なページが続いた。 そして、最後のページ。 そこには、こう記されていた。 ---- **939 ID:vr31m2nm0 『親愛なるミュウⅡへ  このノートを見ているということは、もう私はこの世にいないだろう。  今日、組織内である会議が開かれた。  内容は「ミュウⅡをどうすべきか」というものだった。  君の力は強くなりすぎて、もはや組織の手に負えるものではなかった。  そのため、君をどう処理するかを検討していた。  そして検討の結果、私が君を処理することになった。  もちろん私は断固反対した。  しかしそのせいか組織は私を厄介者と認識したらしく、私は明日処刑されることになる。  短い人生だったが、覚悟は決めている。  だから君は、責任を感じるな。  私はそんなことを望んではいない。  最後にこれだけは言っておく。  復讐に生きるな。  復讐なんて醜いだけだ。いいことなんて何もない。  復讐するなとは言わない。だが、復讐を正の糧にするな。  気楽に生きろ。  君は君の人生を歩め。  以上。                                     ―――1993年3月2日』 終了 40秒規制と改行規制がこよなくウザい
**929 ID:vr31m2nm0 投下しようと思った 続きがある上に長いですごめんなさい 私は、いつ、どこで生まれたのか覚えていない。 いつの間にかこの世界に存在していた。 だが、この時点での私の世界は狭かった。 何しろずっと何かの組織の実験動物として、檻の中に閉じ込められていたのだ。 どうやら私は特別な存在らしく、組織員の中には私を恐れる者もいた。 ある日から、私に専属の研究員がついた。 その研究員は博士と呼ばれ、周りの者よりも位が上のようだった。 博士は私を檻から出し、普通の生物として扱ってくれた。 仔犬に話しかけるように私に話しかけ、子猫を抱くように私を抱いた。 たくさんの事を教えてくれた。たくさんの本を読ませてくれた。 私はそんな博士が好きだった。 この気持ちが恋愛感情なのかどうかは分からない。 ただ、私はそれに近いものを感じた。 ---- **932 ID:vr31m2nm0 そしてまたある日から、私は超能力を使う訓練を受けた。 最初はせいぜい鉛筆を転がす程度しかできなかったが、それでも博士は私の頭を撫でてくれた。 博士の期待に応えるため、私は可能な限り努力をした。 私の力が強くなるたび、博士は私の頭を撫でてくれた。 気付くと私は、大きな試験管の中にいた。 気味の悪い緑色の液体が私の体にまとわりついていた。 たくさんの細い管が、私の体からのびていた。 この中に入れられた理由は何となく分かる。 おそらく、私の力が強くなりすぎたのだろう。 この試験管では念力は使えなかった。 しかし、テレパシーなどは使えるようだった。 その為私は、近くにいる適当な人間の思考を読んで暇をつぶしていた。 この試験管に入ってから、博士に会える回数が少なくなった。 寂しくはあったが、それは仕方のないことだと思った。 私の力が強くなればなるほど、博士と会える回数が減る。 組織も大切な研究員を危険に晒したくないという気持ちがあるのだろう。 だから、仕方のないことなのだ。 ---- **935 ID:vr31m2nm0 どうやら、私の力は日に日に強くなっているらしい。 博士はいつものように接してくれるが、他の組織員の態度を見ていれば分かる。 だから、唯一私に近付いてくれる博士に尋ねてみた。 ―博士、私は、何故生きているのでしょうか。 呼吸すら必要のない試験管の中。 生きている実感の持てない環境で、私はそう尋ねた。 「君は、そんなことを考えていたのかい?」 博士の返答。 もちろん、違う。 こんな質問、ただ話しかけるための口実だ。 私が考えていたのは、そんなことではない。 訊くんだ、博士に。 “貴方は私が怖くないのですか”と。 しかし、それは叶わなかった。 博士は時間を確認し、私を一瞥して部屋を出て行った。 とうとう訊けなかった。 何故? それはきっと、答えを聞くのが怖いから。 最悪の答えが返ってきたとき、私はどうなるか分からない。 きっと、この質問は、胸の内にしまっておくべきなのだ。 きっと、ずっと。 ---- **937 ID:vr31m2nm0 ある日を境に、博士が私の部屋に来なくなった。 理由は分からなかった。 十日、二十日待っても、博士は来ない。 私の管理の役から外されたのか。 その頃は、その程度のことしか考えなかった。 そして、その一ヵ月後。 私がいる部屋にある、博士が使っていた机が撤去されようとしていた。 最初は、意味が分からなかった。 だから、机を撤去しようとしていた男の思考を覗いてみた。 断片的な単語しか見えなかった。 おそらくその男も困惑していたのだろう。 しかし、見逃せない単語が一つだけあった。 それは『死人の机』 そして私は、ようやく悟った。 それと同時に、理性は崩壊し、憎悪と本能が己の体を征服する。 は か せ は ---- **938 ID:vr31m2nm0 気付くと私は、半壊の建造物の中にいた。 何があったかはよく覚えていない。 ただ。 私は無意識のうちに、この机を守っていたようだ。 博士が愛用していたこの机を。 机の中には、博士の業務記録のノートのようなものが入っていた。 パラパラとページをめくっていく。 それはまるで私の成長記録のようだった。 読んでいくうちに、涙があふれる。 小さな雫は大きな粒に変わり、目から流れ落ちる。 それでも私は読むのをやめなかった。 しばらく真っ白なページが続いた。 そして、最後のページ。 そこには、こう記されていた。 ---- **939 ID:vr31m2nm0 『親愛なるミュウⅡへ  このノートを見ているということは、もう私はこの世にいないだろう。  今日、組織内である会議が開かれた。  内容は「ミュウⅡをどうすべきか」というものだった。  君の力は強くなりすぎて、もはや組織の手に負えるものではなかった。  そのため、君をどう処理するかを検討していた。  そして検討の結果、私が君を処理することになった。  もちろん私は断固反対した。  しかしそのせいか組織は私を厄介者と認識したらしく、私は明日処刑されることになる。  短い人生だったが、覚悟は決めている。  だから君は、責任を感じるな。  私はそんなことを望んではいない。  最後にこれだけは言っておく。  復讐に生きるな。  復讐なんて醜いだけだ。いいことなんて何もない。  復讐するなとは言わない。だが、復讐を正の糧にするな。  気楽に生きろ。  君は君の人生を歩め。  以上。                                     ―――1993年3月2日』 終了 40秒規制と改行規制がこよなくウザい [[@wikiへ>http://kam.jp"><META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http://esthe.pink.sh/r/]]

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