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「ID:19MtpEit0の長編」(2007/06/16 (土) 13:15:54) の最新版変更点
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*ミュウツーゲット話
**495(ID:19MtpEit0)
ワタル「殿堂入りおめでとう、今日から君がチャンピオンだ。」
ここは殿堂入りの間、新たなチャンピオンの誕生を祝福するための部屋。
ライバルとの決戦を何とか征した俺に、四天王の長であるワタルが賛辞を贈る。
俺は不自然にニコニコとしたその顔に悪寒を感じた。
主「あ、ありがとうございます、じゃ俺をこれで・・・。」
ワ「ちょっと待ってくれ、君は今やカントー一のトレーナーだ。
その実力を見込んで頼みたいことがあるのだが。
それも急ぎの用事だ。」
冗談じゃないと思った。激戦の後で俺も手持ちのポケモンもクタクタだ。
それに実力を見込んで、などと言ってることは困難な頼みごとに違いない。
とてもじゃないが快く引き受ける、なんて気持ちにはなれない。
だが助けを求められそうな博士も、拗ねたライバルを連れて早々にマサラタウンに帰ってしまった。
どうやら拒否できそうな空気でもない。だが最後の抵抗を試みてみる。
主「急ぎの用事・・・ですか。
生憎ですが、今はちょっと・・・。」
ワ「そうか。それは残念だな。
まああの戦いの後だ、仕方ないだろう。」
(あれ?案外あっさり引き下がるな・・・。)
ワタルはいかにも当てが外れたと言いたげだ。部屋の中に気まずい空気が流れる。
主「あの・・・、話だけでも・・・。」
思わず口走っていた。
ワ「そう言ってくれると思ってたよ!ありがとう!」
(しまった!これは罠だったか!)
ワタルの顔にニコニコが復活する。
仕方ない。もう腹を括るか。
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**496(ID:19MtpEit0)
ワ「さっそくなんだが、ハナダの怪物の話を知っているか?」
聞いたことはある。いつの頃からか強大な力を持った何かが、
ハナダの洞窟という場所に住みついたという話だ。
それ以来ハナダの洞窟は立ち入り禁止になっている。
ワ「そこで君には怪物退治の英雄になってもらいたい。」
予想通りろくでもない頼みだ。噂ではハナダの洞窟自体が怪物の一撃で出来た穴だという。
そんな相手をどう退治しろと言うのか。俺をゲームの主人公か何かと勘違いしてるんじゃないか。
主「すみません、俺なんかじゃとても・・・。」
ワ「そう言ってくれるな。俺は君を頼りにしているんだ。」
急にワタルの顔が引き締まる。どうやら冗談で言ってるわけではないらしい。
ワ「ハナダの怪物が棲み始めてから、
まるでそれに影響されるかのように周辺のポケモン達が凶暴化している。
結果、ハナダの本来のポケモンのレベルとは、天と地ほどの差ができてしまった。」
主「それは大変ですね、そのポケモン達がハナダの洞窟から出てきてしまったら・・・。」
ワ「俺達もそれが心配なんだ。こう言っては何だが、ハナダのポケモンはレベルが低い。
だがそのことがハナダの自然環境を保っている要因でもある。
このままでは環境のバランスが崩壊する可能性もある。
事は一刻を争う。君には悪いが至急ハナダに向かってもらいたい。」
主「なるほど、それで俺は何を?」
ワ「さっき言ったとおり、ポケモンの凶暴化の原因である怪物を退治してもらいたい。
怪物を倒せばこれ以上、高レベルなポケモンが発生することもないだろう。
そこからは俺達の出番というわけだ。高レベルなポケモン達を捕獲後しかるべき場所へと移す。」
主「話はわかりましたが・・・、正直正体もわからない相手と戦うのは・・・。」
ワ「確かに正体不明な相手と戦うのは酷だが、幸い敵の姿はわかっている。
少しは怪物討伐の助けになるだろう。」
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**498(ID:19MtpEit0)
そう言ってワタルが写真を差し出す。
写真に写されたその姿に俺は思わず息を呑んだ。
グレンタウン、ポケモン屋敷、何者かが描いたレポート
綿密な体調管理表、とぎれとぎれの観察日誌、膨大なスケッチ
全ての特徴がレポートの内容と一致していた。
そして俺は同時に思い出した。
レポートの最後に書き添えられた言葉。
『どうかミュウツーに外の世界を』
その短い言葉に、俺は胸を締め付けられる思いになったのをよく覚えている。
ワ「どうだろう?受けてくr」
主「受けます!俺にやらせてください!」
ワタルの言葉が言い終わる前に俺は叫んでいた。
ワ「!?・・・ありがとう、ではよろしく頼む。」
何故かはわからない。だが俺がやらなくちゃいけないことだと感じた。
少し高ぶった気持ちを深呼吸して整える。
主「・・・ところで何で自分で退治しようとしないんですか?怪物を。」
ワ「・・・。俺に言えることはただ一つだ。君になら任せられる。
そんな気がするんだ」
その言葉に送り出されて、俺はハナダの洞窟を出発した。
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**499(ID:19MtpEit0)
ハナダの洞窟、ワタルの言葉通り非常に高レベルなポケモンが巣くっていた。
それを何とかやりすごして奥へと進んでいく。
ポケモンセンターで回復したとはいえ、やはり連戦はポケモン達に負担をかける。
罪悪感すら感じるが、もう少しだけ頑張ってもらわなければ。
そんなことを考えていると突然何者かの巨大なプレッシャーを感じた。
間違いない。ハナダの怪物、ミュウツーの重圧だ。
俺は足を速めてどんどん先へ進む。
洞窟の最奥の開けた空間に地底湖が広がり、その湖の対岸にソイツはいた。
この洞窟の主、ミュウツーがレポートに描かれた姿そのままに座っていた。
まるで眠っているかのように静かだったが、前以上に感じるプレッシャーがそれを否定する。
主「カメックス、なみのりだ!」
俺はカメックスを繰り出し、そのまま一直線に対岸へと向かう。
湖を半分渡ったぐらいだろうか、突然ミュウツーがその姿を消した。
主「!、どこn」
言い終わらないうちに背後にあのプレッシャーを感じた。
思わず体の動きが止まる。俺の後ろにフワフワと浮くミュウツーの姿を見つけた。
ミュウツーはゆっくりと話しだす。
M「ワタルとか言ったか、あのトレーナーは。
確かに約束したはずだ、私の家を荒さないと。
しかもこんな子供が忍び込んでくるとは。」
ワタルのヤツ、最初から知ってたんだな。何が怪物退治だ。
だがワタルへの文句を考えるのは後にしよう。
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**500(ID:19MtpEit0)
主「お前がミュウツーだな。俺はお前の討伐を頼まれたんだ。
悪いけどここから出て行ってもらうぞ。」
俺の精一杯の強がりを聞いても、ミュウツーの俺を見下す瞳は変わることはなかった。
M「なぜ私の名を知っているのかは聞かない。
だが、かかってくると言うならば遠慮はしない。」
そう言うとミュウツーの周りの空間が俄かに歪みはじめる。
主「潜れカメックス!」
ゴォーンという轟音が響き渡る。
ミュウツーのサイコキネシスで発生した衝撃波が洞窟の壁を破壊する。
俺とカメックスは咄嗟に水中に逃れたが、当たれば大きなダメージを覚悟しなければならないだろう。
すぐにサイコキネシスの第二波がやってくる。水中であっても、その威力はいささかも落ちないらしい。
カメックスに捕まりながら水中を高速で移動しサイコキネシスを避けつづける。
ここが水の中でなければすぐにミュウツーにとらえられていただろう。
だが避けつづけるのも難しい、確実に衝撃波はカメックスに近づいてくるし、
なにより俺の息がもたないだろう。
俺はふと作戦を思いついた。上手くいくかはわからない。
だが試す価値はあるだろう。
俺はカメックスの腕をそっと指でなぞり作戦を伝えた。
俺はカメックスと別れると対岸へと泳ぎだす。
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**501(ID:19MtpEit0)
バシャンバシャンと大きな音が鳴り響く。
サイコキネシスが水面へとぶつかる音だ。
どうやらまだミュウツーは俺とカメックスが別れたことに気付いてないらしい。
俺は急いで岸へと上がると、大きく息を吸い込んだ。
主「今だ!カメックス!」
腹の中から今出せるだけの大声は張り上げる。
声のでかさなら自信があった。ミュウツーも一瞬動きを止める。
カメックスもそのタイミングを見計らって、ハイドロポンプを打ち出した。
水圧でバランスを崩したミュウツーは湖へと落下していった。
M「こんなもの、すぐに。」
主「カメックス、最大パワーでれいとうビーム!」
俺は攻撃の手を緩めなかった。
地底湖の水を一瞬で凍らせ、ミュウツーを氷の中に閉じ込めた。
これでしばらく動きを封じることが出来るだろう。
それにダメージも大きいはずだ。
M「なるほど、上手い手だ。
私自身を凍らせるより、水を凍らせる方が簡単だ。」
感心した様子でミュウツーは呟いた。
とっさに思いついた割には奇跡的上手くいった、我ながら行き当たりばったりな作戦だ。
M「私もまだまだ未熟なようだ。この程度の小細工にハマるとは。」
俺はあらかじめ用意していたモンスターボールをミュウツーに向けて投げる。
どうやら観念したらしい。ミュウツーはモンスターボールに収まった。
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**502(ID:19MtpEit0)
主「ふぅ、死ぬかと思ったぁ」
思わずその場にへたり込んだ。
主「カメックスもごくろうさん。戻ってくれ。」
氷が浮かぶ湖に浮かぶカメックスを、ボールに戻した。
主「出て来い、ミュウツー。」
一息つくとミュウツーのボールをボールから繰り出す。
そして背負っていたリュックからなんでもなおしを取り出して、ミュウツーに投与してやる。
ミュウツーの体の氷はみるみるうちに溶けていった。
M「なぜ今なんでもなおしを使う?ポケモンセンターとやらに連れて行けば良いだろう?」
主「よく知ってるな。ワタルから聞いたのか?」
M「いや、聞いたのではなく・・・。」
言いかけて答えをはぐらかされたことに気づき、少し不機嫌になったようだ。
主「さてと、これで良し」
氷も完全に溶け、ミュウツーも健康になったようだ。
M「フッ。面白いやつだなお前は。
お前なら私をもっと強くしてくれるかもしれない。
主と認めてやる。よろしく頼むぞ、主。」
面と向かって言われると照れてしまう。俺は顔が赤くなるのを隠してリザードンを繰り出した。
主「じゃあ行きますか。リザードン、あなをほるを頼む。」
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**505(ID:19MtpEit0)
リザードンは硬い岩盤をものともせずに、洞窟の入口へと向かって進んでいく。
やがて光が穴の先を照らしはじめた。
ボコっと音がして、穴が開通する。
急に地面からはい出したために太陽で目が眩む。
だけど悪い気はしない。
あまり長い間洞窟にいたわけではないが、懐かしさを感じる。
ふとミュウツーを見ると眩しさに驚いているようだった。
M「フフッ。主の顔、泥で酷い顔だな。実に愉快だ。」
ミュウツーがこちらを向いて笑いかけてきた。
主「いや、お前に言われたくないから。お前も結構汚れてるから。」
少しムカついたので言い返す。
そんな漫画のような会話をしながら、俺は考えていた。
この太陽の眩しさも、その笑顔も、どうか忘れないで欲しいと。
糸冬