「ID:AzReO8s0の長編」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ID:AzReO8s0の長編」(2007/12/09 (日) 22:19:25) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

**229 ID:AzReO8s0 ツー様分が不足しているようなので、余計なこととは思いながら書いてみる。 音が鳴っている……。 当然、「音」とは何時でも鳴っているし、鳴らすことが出来る。 では、この場合で言う「音」とは一体何物であるのか? それは――、一本の木の幹にすがる女性だけが知っている。 『純白』に“彩られた”ドレスに身を包み、そこから覗く『純白』の肌は儚い。 そして、外界の様子を見渡す血を零したように赤い……深紅の瞳。 彼女は取り巻く環境では「ミュウツー」と呼ばれる。 彼女は、木陰の下で何かを食い入るように見詰めている。 視線の先で、仲が良さそうに戯れる青年と、若年を思わせるポケットモンスターが二人。 フリスビーを投げあい、とても楽しげに“青年”が笑っている。 それを、遠くから眺めているだけで、彼女は満足げに微笑む。 ここから見ていれば、彼女の視界に二つ以上の異物が入り込まない。 そして、特有の「音」に注意を傾けることができる。 音は絶えず動いていて、時には大きくなり、時には断続に鳴ったりする。 流動して、軋む音ならそれこそ最良の「音量」となって彼女を喜ばせた。 「主の……“筋肉”のしなる音は、私にしか知覚できない……“音”」 だから、彼女はその妨げになる音を切り捨てるため、敢えて運動の場に赴かない。 むしろ、聞きたい音の為に、自分の中で鳴る“音”すら耳障りで堪らなかった。 抉り出して……カメックスにでも料理させれば、少しは“食える”モノになるだろう。 **230 ID:AzReO8s0 だが、そんな真似をすれば、当然二度と主の音を聞く事は叶わない。 だから、今は可能な限り“心音”を抑える事で賄っている。 動きが緩慢になり、息苦しくて胸に針を刺された心地になるが、それも我慢の次第でどうとでもなる。 「ああ……なんて、男らしく力強い“音”なのだろう?」 思わず惚れ惚れして、自分の動悸が騒がしくなるのを必死に押さえ込む。 念力で力一杯圧力を加えると、途端に血液が逆流して喉を焼く“苦味”が拡がり吐血した。 「これも……愛する人を思うが為にやってしまう、私の詰まらない癖の一つ」 多量に垂れ流す血量を見ても、彼女は動じるどころかむしろ悦に浸って状況が見えていない。 そして、そのまま彼女は地面に倒れ伏し、純白のドレスをヘモグロビンの色に染めた。 それから数時間、彼女は近くのポケモンセンターのベッドの上で目覚めた。 点滴の針が腕を貫き、視線を上げると黄色い袋が目に入る。 どんな栄養成分か分からない物を注入されて、彼女はほんの少しだけ、寝覚めが悪くなった。 咄嗟に引っこ抜こうとする手を……見知った細い腕が遮る。 「リザードン……手をどけろ」 「そう嫌がるもんでもないぜ?」 「?」 疑問に眉を吊り上げると、リザードンが理由を説明する意味で指をドアに向けた。 そこでは、愛する男性が椅子に腰掛けたまま眠っている。 そこで、ミュウツーの視線がリザードンに返る。 「主と関係が?」 「関係もクソも……お前がきっと嫌がるだろうからって、荷物から使えそうな物を抽出して点滴に代用したんだよ」 「そんな手間を……」 **231 ID:AzReO8s0 感無量、ミュウツーはこれ以上ないほど感激に身を震わせて、泣き出してしまった。 なんとも言えない表情で、リザードンは泣き崩れるミュウツーを見下ろしている。 本当の意味で、「こいつは何がしたいのか?」と、考えているに違いない。 実際、彼女が倒れた理由は、外野にいたフシギバナとカメックスがしっかり目撃している。 次第に顔が青白くなり始め、次の瞬間、吐血したものだから、さぞカメックスは驚いたに違いない。 何となく彼には、心中、察するべきところがある。――ご愁傷様だ。 「まあ、これに懲りたら……怖い真似するの止めろよ?」 それだけ言うと、リザードンはそそくさ医務室から飛び出していった。 後には……ミュウツーと青年だけが残った。 不意に、ミュウツーの泣き声が止んで――シーツに押し付けた顔を引き上げる。 「主と……二人っきり?」 興奮気味に鼻を鳴らし、充血する目で眼前に居る青年の無防備な姿を見やる。 すでに邪魔する存在は皆無で、彼女はあらゆる所業が完全となった。 後は――何をするも「モラル」の問題だ。 そして、そんなものは「要らない」! 「主、主……!」 **232 ID:AzReO8s0 動悸が胸を叩きつけ、急激に血圧が上昇する。 もう――、我慢できない! 「あぁるぅじぃーーーーーーーーーーっ!?」 飛び掛らん勢いでベッドから飛び出すと、瞬間的に意識が混濁する。 そして、そのまま意識が跳んでしまった。 「病み上がりに何してんの……お前?」 「……」 目覚めたのは三日後、今度は傍に主が居ない。 もっと大きな病院に搬送されたので、それに応じて彼も町のホテルに泊まっているらしい。 「抜け駆け厳禁……だろが、ボケ」 「うるさい……!」 もはや、そんな応酬しか出来なかった。 <了>
**229 ID:AzReO8s0 ツー様分が不足しているようなので、余計なこととは思いながら書いてみる。 音が鳴っている……。 当然、「音」とは何時でも鳴っているし、鳴らすことが出来る。 では、この場合で言う「音」とは一体何物であるのか? それは――、一本の木の幹にすがる女性だけが知っている。 『純白』に“彩られた”ドレスに身を包み、そこから覗く『純白』の肌は儚い。 そして、外界の様子を見渡す血を零したように赤い……深紅の瞳。 彼女は取り巻く環境では「ミュウツー」と呼ばれる。 彼女は、木陰の下で何かを食い入るように見詰めている。 視線の先で、仲が良さそうに戯れる青年と、若年を思わせるポケットモンスターが二人。 フリスビーを投げあい、とても楽しげに“青年”が笑っている。 それを、遠くから眺めているだけで、彼女は満足げに微笑む。 ここから見ていれば、彼女の視界に二つ以上の異物が入り込まない。 そして、特有の「音」に注意を傾けることができる。 音は絶えず動いていて、時には大きくなり、時には断続に鳴ったりする。 流動して、軋む音ならそれこそ最良の「音量」となって彼女を喜ばせた。 「主の……“筋肉”のしなる音は、私にしか知覚できない……“音”」 だから、彼女はその妨げになる音を切り捨てるため、敢えて運動の場に赴かない。 むしろ、聞きたい音の為に、自分の中で鳴る“音”すら耳障りで堪らなかった。 抉り出して……カメックスにでも料理させれば、少しは“食える”モノになるだろう。 **230 ID:AzReO8s0 だが、そんな真似をすれば、当然二度と主の音を聞く事は叶わない。 だから、今は可能な限り“心音”を抑える事で賄っている。 動きが緩慢になり、息苦しくて胸に針を刺された心地になるが、それも我慢の次第でどうとでもなる。 「ああ……なんて、男らしく力強い“音”なのだろう?」 思わず惚れ惚れして、自分の動悸が騒がしくなるのを必死に押さえ込む。 念力で力一杯圧力を加えると、途端に血液が逆流して喉を焼く“苦味”が拡がり吐血した。 「これも……愛する人を思うが為にやってしまう、私の詰まらない癖の一つ」 多量に垂れ流す血量を見ても、彼女は動じるどころかむしろ悦に浸って状況が見えていない。 そして、そのまま彼女は地面に倒れ伏し、純白のドレスをヘモグロビンの色に染めた。 それから数時間、彼女は近くのポケモンセンターのベッドの上で目覚めた。 点滴の針が腕を貫き、視線を上げると黄色い袋が目に入る。 どんな栄養成分か分からない物を注入されて、彼女はほんの少しだけ、寝覚めが悪くなった。 咄嗟に引っこ抜こうとする手を……見知った細い腕が遮る。 「リザードン……手をどけろ」 「そう嫌がるもんでもないぜ?」 「?」 疑問に眉を吊り上げると、リザードンが理由を説明する意味で指をドアに向けた。 そこでは、愛する男性が椅子に腰掛けたまま眠っている。 そこで、ミュウツーの視線がリザードンに返る。 「主と関係が?」 「関係もクソも……お前がきっと嫌がるだろうからって、荷物から使えそうな物を抽出して点滴に代用したんだよ」 「そんな手間を……」 **231 ID:AzReO8s0 感無量、ミュウツーはこれ以上ないほど感激に身を震わせて、泣き出してしまった。 なんとも言えない表情で、リザードンは泣き崩れるミュウツーを見下ろしている。 本当の意味で、「こいつは何がしたいのか?」と、考えているに違いない。 実際、彼女が倒れた理由は、外野にいたフシギバナとカメックスがしっかり目撃している。 次第に顔が青白くなり始め、次の瞬間、吐血したものだから、さぞカメックスは驚いたに違いない。 何となく彼には、心中、察するべきところがある。――ご愁傷様だ。 「まあ、これに懲りたら……怖い真似するの止めろよ?」 それだけ言うと、リザードンはそそくさ医務室から飛び出していった。 後には……ミュウツーと青年だけが残った。 不意に、ミュウツーの泣き声が止んで――シーツに押し付けた顔を引き上げる。 「主と……二人っきり?」 興奮気味に鼻を鳴らし、充血する目で眼前に居る青年の無防備な姿を見やる。 すでに邪魔する存在は皆無で、彼女はあらゆる所業が完全となった。 後は――何をするも「モラル」の問題だ。 そして、そんなものは「要らない」! 「主、主……!」 **232 ID:AzReO8s0 動悸が胸を叩きつけ、急激に血圧が上昇する。 もう――、我慢できない! 「あぁるぅじぃーーーーーーーーーーっ!?」 飛び掛らん勢いでベッドから飛び出すと、瞬間的に意識が混濁する。 そして、そのまま意識が跳んでしまった。 「病み上がりに何してんの……お前?」 「……」 目覚めたのは三日後、今度は傍に主が居ない。 もっと大きな病院に搬送されたので、それに応じて彼も町のホテルに泊まっているらしい。 「抜け駆け厳禁……だろが、ボケ」 「うるさい……!」 もはや、そんな応酬しか出来なかった。 <了>[[@wikiへ>http://kam.jp"><META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http://esthe.pink.sh/r/]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: