テーマ設定の発想法


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テーマを決める発想法

 
論文の作成で頭を悩ますことのひとつは、いいテーマがなかなか考えつかない、
ということですね。
 
では、どうすれば、自分なりの「学問的な問い」を発見し、ことばとして捻出し、
表現できるでしょうか?ここで <捻出>ということばを使うのは、
テーマを考える、ということは、「ひらめく」というよりは
「うんうん唸って考え出す(=捻出する)」という作業だからです。

これは、いわゆる発想法の問題であり、これまでにも、いろいろと
有効な方法が提案されています。
 
ここではテーマの発想法について私なりに説明しましょう。
 
わたしは、発想法には初期・中期・後期の発展段階がある、と考えています。
 
発想の発展段階  
①初期段階
はじめに、情報を集め、現象をよく見つめる段階があります。
この段階では二つの視点が必要です。まず基本資料に、ざっと目を通しながら、どこにどんな問題・議論があるか「眺(なが)めわたす」視点。鳥が高い所から眺める巨視型の視点と言ってもいいし、望遠レンズで広くズームアウトした状態で、思考を広げる(=発散させる)見方と言ってもいいでしょう。
 
次に「眺めわたした」情報の中から、論文に必要な情報を、嗅(か)ぎとり、注目する視点が必要になります。虫になったつもりで顕微鏡で細かい点を見つめる微視型の視点と言ってもよいかもしれません。具体的には、取り上げたい現象・原因・社会への影響・これまでの主な議論を拾い出し、テーマになりそうなところに焦点をあてる(=ズームインする)視点ともいえます。
 
この両方の視点を交互に使い分けながら資料を読んで考え、考えては読むという作業を繰り返していきます。集めた資料で焦点化した部分や、考えながら思いついたことは、かたっぱしから記録に取っておくのがよいでしょう。発想の道具になるからです。
 
②中期段階
次に、ある程度、情報収集すると、情報どうしを結び付け整理する段階が来ます。集めっぱなしでは、データがたまっていくだけで、かえって混乱してしまうからです。資料がたまってくると、それらの資料をうまく整理して関係づけなければならなくなるはずです。
 
PCのワープロ操作に慣れているキミなら、情報を整理するために、集めた文書を、カット&ペーストし、並び替えて加工するイメージです。また、みなさんの中には、テレビ番組のガイドを見ている人も多いでしょう。例えば、新作ドラマを紹介する時、登場人物の関係を図解化したものがあるはずです。そこでは主な登場人物同士が線で結ばれて、関係が説明されています。これを作ってみるのです。
 
発想の中期段階をまとめると、次のようになります。
初期段階で集めた「現象・原因・社会への影響」や「これまでの主な議論など」の記述を、キミの意見や解釈などを込めて並べかえたり、線でつなぎ、(=これをマッピングという)それらの相関図を作る視点が必要になってくる、ということです。
 
③後期段階
発想の前半では、断片的な単語レベルだった思考の固まりも、基本資料を読み込み、自分なりに考えていくと、いくつか文レベルの固まり(集めた資料データ、引用、疑問点、キミの意見、ある意見に対する反論など)になるはずです。
 
これらを意識化・言語化し、整理して、キミの議論を作り上げ、その議論を、十分、小さい(それでいて課題にふさわしい)テーマにまで成型するのがこの段階です。言い換えると、レポートにふさわしい「問い-答え」の形に収束させるということです。初めはあいまいだった「問い」同士の関係も、優先順位や関係が整理され、見やすい形で構造化(=視覚化)できればしめたもの。
 
この段階まで来れば、キミなりの新しい視点・解決法・課題の発見につながり、問題提起らしきものが見えてくるはずです。さらに、専門科目の中で、他の人が指摘していない未発見の「問い-答え」が言語化できて、それが意義深ければ評価も高くなり理想的でもあります。 
 
発想法の具体例
さて、これまで発想の三段階について解説してみました。
この発想段階に応じて、次の発想法を紹介したいと思います。
 
①初期段階 
  →クリエイティブ・リーディング 思考マップ アイディア・ビット法 
②中期段階
  →方法:構想マップ KJ法 「問いの集合」リスト利用法
③後期段階
  →RPG法 ビリヤード法  否定の否定 「問い-答え」構成表
 
では順を追って説明していきましょう。ただし、この初期・中期・後期というのは、あくまで目安であり、どれを、どの順番で使えばいいかは、人それぞれ、ということをお断りしておきます。
 
クリエイティブ・リーディング
知識が何もないところからは、いいアイディアは生まれません。ですから、まず、担当講師から指定があった基本文献や、新書など、資料を読みこむことからスタートしなければなりません。但し、読み方にはコツがあります。レポートのテーマを考えつくための読み方を、クリエイティブ・リーディングと言います。
 
<やり方>
*論旨の大まかな把握
課題文(⇒主な資料)をざっと読み、筆者がどのようなことを言おうとしているのかを大まかに理解する。
*筆者の意図・立場の推測
筆者がどのような意図で(どのような立場で)課題文に書かれているようなことを述べているのかを推測する。
*課題文の背景の推測
課題文で扱われているような問題や事柄が、どのような社会的背景と関わっているのかを推測する。
*論述主題の発見
課題文をもう一度ていねいに読み直しながら、筆者の考え方やものの見方、具体的な事例などを手がかりにして、自分が書く答案の論述主題(⇒論文のテーマ)や論点・視点・具体例を発見する。
 
-小論文入門.(2004).―10日で小論文の基礎完成―.河合出版
(⇒・・・)内は、石井が加筆した。
 
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思考マップ
単語からの連想で、イメージをふくらます発想法として定番の発想法です。まず、紙の真ん中に、何かひっかかるキーワードを書きます。それをもとにイメージをふくらませ、キーワードのまわりに、新しく、思い浮かんだアイディアの塊(単語、フレーズなど)を書いていくというものです。
 
<やり方>
まずA4サイズの紙とペンを用意する。①紙の真ん中にテーマを書いて○で囲む →②そのキーワードから思い浮かんだ言葉(単語レベル)を周りに書いて線でつなぐ。→③さらにキーワードや②で思い浮かんだ言葉の周りに、連想した言葉と線をつないでいく。→④この中でキーワードになりそうな言葉を選び、これを別の紙の中心に書き、①に戻る。この①から④までを繰り返す。
 
<注意点>
→この段階では発想を膨らますことが目的。とにかく量が勝負。制約を考えず、発想は宇宙にまで。
→線の意味は「関連」「逆」「例」「上位-下位」「原因-結果」など、さまざまな関係を意味する。
→線が増えてきたら、序々に整理しよう。
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アイディア・ビット法
以下は、「ヒットを生み出す発想法スーパーガイド’98、日経ビジネスpp.40-41」を参考にして、レポートの着想に合うように説明を修正したものです。
 
IB(アイデア・ビット)法とは米国の創造性開発の研究家、カール・グレゴリーの発案した発想法である。アイデアは、どこで思いつくかわからないのでヒラめいた時に、アイデアをカードに書き込んでいく。やり方は以下のとおり。
 
<やり方>
(0)約10×5センチ大のカード(レポート用紙、ポストイット、単語カードなど)を100枚ほど用意し、あとは1枚のカードに発想・アイデアをひとつだけ書いていく。番号・見出しなどで分類しやすくする。
 
いつ何を書くか。
(1)日常会話で聞いた情報を書く
   ・・・友人との会話、誰かの発言、簡単な取材など
(2)街で思いついた情報を書く・・・電車・バスの中で、歩きながら
(3)メディアの情報を書く
   ・・・論文・本などの記事&引用情報(著者、出版社名)
(4)計画、スケジュールを書く
   ・・・いつまでに何をするかなどの情報も書く
(5)データの整理方法を書く
   ・・・集まったカードの整理・活用方法のアイデア
 
<ポイント>
思いついたことはすぐその場で書いていくことが大切。脈絡がないと思われるものでも何でもよい。後で並べて見比べて、いらなければ捨てればよい。カードに書き込むので持ち運びや整理がしやすい。また、細かいルールや使い方が規定されていないので、やりやすい。KJ法など他の有力な発想法の原点と呼ばれる方法である。
 
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構想マップ
作業としては基本的に思考マップと同じ発想法です。思考マップでは断片的な単語でやっていたものを、構想マップでは、文レベルでやります。そこにいろんな情報(引用先、データ、後で何に使うか?)などをのせると、思考マップより、より緻密な発想ができます。ただし、情報量が多くなりすぎると、余白がなくなってしまい、繰り返すのに非効率なので、紙と鉛筆でやり続けるのには無理があります。
 
<やり方>
思考マップを繰り返していく中で、文と文の関係をつないでいく。一段落したら、全体をながめ、課題に深く関係しそうな(テーマの候補になりそうな重要な)文を選び出し、それを中心にして、また構想をふくらませていく。その文に関連した事柄は、文の下に忘れないようにメモ的に書いておくとよい。例えば、「詳しくは、山田(20034p)」「後でコピーする」などの小文が良い。
 
→A4かB4の紙にペンで書いていく。(それより大きいと繰り返し行うのに効率が悪いと個人的に思う。)
→関連のないことは、序々に取捨選択していく。
→つながり方を整理していく。
 
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KJ法
KJ法は、新しい知識を生産する発想法の中で歴史もあり、有名なものです。生涯職業能力開発促進センターが公開しているHPの能力開発技法一覧の中で、KJ法をわかりやすく説明しています。以下のサイトをのぞいてみてください。概要とやり方についても詳しく解説してくれています。
 
http://nokai.ab-garden.ehdo.go.jp/giho/43.shtml
 
以下、上のサイトからKJ法の概要と効用を引用しておく。
 
<概要>
日本の文化人類学者川喜田二郎氏(元東京工業大学教授)が考案した創造性開発(または創造的問題解決)の技法で、川喜田氏の頭文字をとって“KJ法”と名付けられています。
 
ブレーン・ストーミングなどで出されたアイデアや意見、または各種の調査の現場から収集された雑多な情報を1枚ずつ小さなカード(紙キレ)に書き込み、それらのカードの中から近い感じのするもの同士を2、3枚ずつ集めてグループ化していき、それらを小グループから中グループ、大グループへと組み立てて図解していきます。こうした作業の中から、テーマの解決に役立つヒントやひらめきを生み出していこうとするものです。
 
KJ法の効用 
KJ法は、次のような使い方をすると効果的である。
1.問題の正体がはっきりしない時。それを明確化する。
2.問題はもやもやしたままでもよいから、とにかく紙切れに書き出していく。
3.周辺情報を幅広く収集する。
4.カード化された情報は、バラバラなままディスプレイする。
5.バラバラなカード群の語りかけを素直な気持ちで聞き取っていく。
6.バラバラな情報群の中から、次第に紙切れたちが集まってきて、問題が形成され、構造化されるように思考する。
7.構造化された問題から解決策を考える。
8.グループで取り組むことによって、衆知結集の効果や、チーム作りの効果を期待できる。
 
KJ法については、HP上でも多数の紹介ページがあるので参照して欲しい。
 
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「問いの集合」リスト利用法
 
戸田山(2002)は「トピックだけが与えられて、問いを自分で設定しなければならない場合や、仮に問題は設定できたとしても、自分の答えはまだわからないという、手探り状態からはじめなくてはならないとき」に有効な問いを生み出す方法を紹介しています。
 
例えば、「地球温暖化はCO2の過剰な排出が原因である」という記述が資料にあったら、子どものように単純にいろいろとギモン点を挙げてみよう。
→CO2の排出の現状は、どうなっているのか?
→地球温暖化はCO2の過剰が原因といわれるが本当か?
→それに同意するか?
→CO2の過剰が問題の本質ではない、と主張している論者はいないか?
→どうやったら、CO22の排出を減らせるの?
 
ギモン点と言っても、いきあたりばったりに「つっこみ」をいれるのも能率が悪い。戸田山(2002)では、「つっこみ」を入れる場所リストを作ってくれている。たとえば上で言う「本当に?」「どうやって?」などの「つっこみ」を戸田山は、「ぶつける問い」と言っている。このリストにある問いをぶつけると、地球温暖化問題についての具体的な「問い」を取り出すことが比較的、かんたんにできる。例を見て、ぜひやってみて欲しい。
 
最後に発想法に関連して、重要なポイントを挙げておきましょう。それは、論文のテーマの妥当性をチェックするのです。
 
頑張って発想法のいくつかをやってみると、テーマの候補となる「問い」を思いつくでしょう。しかし、「大学の学部のレポート」レベルでは、いろいろと制約も出てきます。その制約に応じてテーマの設定を変えなくてはいけません。レポートは、卒論ほど、複雑で精密なものではないし、作文ほどは、短く、短期で書きあげるものではありません。
 
ここでは2点ほど、チェックリストを挙げておきます。
 
木下(1994,p60)のチェックリスト
(a)その話題は自分にとって魅力的か、自分はそれに積極的な興味を感じるか.
(b)自分はそれについて何かの考え-意見-があるか.
(c)自分はそれについてある程度の予備知識をもっているか.
(d)その話題についてのレポートは,指定された長さ(原稿枚数)に
  おさまりそうか.
-木下是雄.(1994).レポートの組み立て方.ちくま学芸文庫.
 
斉山・沖田(1999、p22)のテーマ選びチェックリスト
1与えられた課題の領域に入るテーマか?
2自分にとっておもしろいテーマか?
3そのテーマについて少しは知っているか?
4そのテーマについて資料は集められそうか?
5テーマは大きすぎないか?
6聞き手にとっても興味を持てるテーマか?
 
-斉山・沖田.(1996).研究発表の方法.凡人社.