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s_kao02_1 |薫個別2 シーン2-1 スタート

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;背景(なし)
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声えん部としての活動を始めて以来、学校がある平日は毎日この屋上に来ている。

今のところ誰にも邪魔されていないし、鍵を持っているカオルのおかげで屋上に上がれない日も無い。

素晴らしい練習環境ではある。

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;背景(屋上)
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;立ち絵(女子高生薫)

ただひとつ残念なのが、オレが今こうして抱きかかえている髪の長い女子高生が男ということだ。

男のままの姿じゃないことに喜ぶべきか?

<坂本 隼人>
「ちゃんとできるようになってきたな。これなら、わざわざこうやってオレが確認する必要もないか?」

腹式呼吸の練習という項目について、カオルが持ってきた本には「練習相手がいる場合、お腹を触って確認してもらうといいでしょう」と書いてある。

相手役に徹すればわざわざ同じ練習をして疲れることも無いと踏んだオレは、相変わらずカオルのサポートをしている。

でも、練習期間も2週間を過ぎて、カオルは腹式呼吸をすっかりマスターしていた。

カオルは見た目によらず要領がいい。
なんとなく気づいてはいたけど、こんなことまで飲み込みが早いとは驚きだ。

他にも発声や滑舌をよくする早口ことばなんかはやってるけど、新しい練習を考えないとな。

<御社 薫>
「えー、もうちょっと触っててほしいのにぃ」

<坂本 隼人>
「カオル、これはトレーニングなんだ。別にお前に触りたくて触ってるわけじゃねえよ」

<御社 薫>
「わあ、今のツンデレ発言いいっ!!」

<坂本 隼人>
「はあ!?」

<御社 薫>
「いいんだよ、隼人くん。もっと別のところを触っても……もっと下とか、触ってみない?」

<坂本 隼人>
「お前、下ネタ以外に考えることないのか?」

って、見た目が女子高生に言うことじゃないよな。

<御社 薫>
「下ネタじゃないよ。 ボクは隼人くんのことが大好きだから、毎日隼人くんと愛し合う方法を……隼人くん、聞いてる!?」

でもカオルは中身が男だから……あれ、でも女になりたいのか? ん?
その場合は中身は……ああっ、ややこし過ぎんだろ!!

もうどっちでもいいや。

とにかく、こいつを口もきけないくらい疲れさせればいいわけだな。

なら、あれしかない。

<坂本 隼人>
「よし、カオル。基礎トレに新しいメニューを加えようと思う」

<御社 薫>
「なになに?」

<坂本 隼人>
「トレーニングといったら、腹筋背筋だろ!」

<御社 薫>
「ええーっ、ボク体動かすのは苦手だよう」

<坂本 隼人>
「苦手だからこそ練習するんだろ。明日から追加するから、何か敷く物持って来いよ」

<御社 薫>
「はあい」

口を尖らせならがも、同意するカオル。

よし、これで明日からもオレは監督という最高のポジションで見てられるぜ。

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s_kao02_2 |薫個別2 シーン2-2 スタート

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;背景(屋上)
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;立ち絵(女子高生薫)

翌日。

カオルは屋上で、薄いピンク色の筒を広げた。ヨガマットを家から持ってきたらしい。

<御社 薫>
「準備はいいけど……本当にやるの?」

準備はいいって、おいおい。

まさか、スカートのままやる気なのか!!?

<坂本 隼人>
「腹筋背筋やるっつっただろ。なんでジャージじゃないんだよ」

<御社 薫>
「だってだって、せっかく女の子になってるのにジャージじゃやだもん! ちゃんとできるもん!」

<坂本 隼人>
「『もん』って言われたってかわいくねえぞ。ったく、本当にできんのか?」

<御社 薫>
「できるよ。さ、始めよう?」

スカートを整えながら尻に敷き、ヨガマットの上に寝転ぶカオル。

<御社 薫>
「隼人くん……早くきて?」

つやつやの髪がマットからはみ出している。
オレの視線は、片膝を折り曲げてできた、見えそうで見えない暗闇に囚われた。

<坂本 隼人>
「や、早くってそれはまずいだろ……」

そういえばスカートの下ってどうなってるんだろう。

<御社 薫>
「え? まずいって何が? まさか隼人くん、ボクのこと見て変な気分になっちゃった?」

カオルが寝転んだまま、オレを見ながらにやにやと笑った。

今オレに力があったら、間違いなくこいつを異界送りにしてやるのに……!!

オレは今何か言うとまた上げ足をとられそうで、ぎりっと睨むだけに留まった。

黙ってカオルの足首を掴む。
スカートの中が見えないように、オレはカオルの膝を抱え込むようにした。

<坂本 隼人>
「まずは何回できるか知りたいから、限界までやってみろ」

<御社 薫>
「ボクは隼人くんとだったら何回でもできると思うよ!」

<坂本 隼人>
「いいからちゃっちゃとやれ」

<御社 薫>
「はあい」

元気よく手を挙げて、カオルは頭の下で手を組んだ。

1回、2回、3回……。体育でも強制的にやらされてるからか、全然できないってことはないな。

でも10回が見えてきたところで、カオルは背中を付けたまま這い上がってこない。

<坂本 隼人>
「もう限界か?」

<御社 薫>
「限界っていうか、やっぱりこれ、恥ずかしいよ」

<坂本 隼人>
「スカートの中は見えないようにしてやってるから大丈夫だよ。まあ見えたってどうってことないけどな」

<御社 薫>
「そういうことじゃないの!! 変な顔になっちゃうから、見られたくないんだもん」

<坂本 隼人>
「ああ、そういうことか」

まあ、オレだって体育の時間、組んでるやつに踏ん張ってる顔を見られるのは嫌だ。その気持ちはわかる。

<坂本 隼人>
「わかった、見ない。目を瞑っててやるから、自分で数えながら
続けろ」

うん、と頷いたカオルを見届けて、オレは目を閉じた。

<御社 薫>
「いち……に、い……さあん……」

さっきので疲れたのか、数を数える声はかなりスピードを落としている。

恥ずかしい、というのも本当だろうが、カオルはやっぱり運動が苦手なんだろう。

10を数えたところで、オレはストップをかけた。

ずっと瞑っていた目が光に慣れてくると、そこには息を荒らげて顔を赤くし、髪と制服を乱して寝転んでいるカオルがいた。

うっすらと浮かんだ額の汗が、夕方の色になってきた太陽に照らされている。

<坂本 隼人>
「どうする? 明日からもやるか?」

<御社 薫>
「これ、持ってくるの大変だし、腹筋はおうちでやることにする。いい?」

<坂本 隼人>
「ああ、じゃあそうしようぜ」

起き上がって身支度を整えるカオル。

スカートを叩いてる間に、オレはカオルが持ってきたヨガマットをくるくると丸めて抱え上げた。

意外に重量感もあるし、やっぱり毎日学校に持ってこさせるにはかさばる。

これでまた、やることが無くなってしまったわけだが。

<御社 薫>
「その代わり、ボクが新しい練習を考えたんだ。今度は基礎トレーニングじゃなくて、ちょっとお芝居も入ってるんだけど……いいかな?」

<坂本 隼人>
「芝居か。オレにも何か役はあるのか?」

<御社 薫>
「あるよ。隼人くんにしかできないことが! それに、隼人くん、マンガとかアニメとか好きでしょ?」

<坂本 隼人>
「そうだな」

<御社 薫>
「ならぴったりだよ! 明日楽しみにしててね!」

にっこり笑うカオルは、部活終わりの運動部の少女、といっても疑われなさそうだ。

今はカオルに任せて、この日はお開きとなった。

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s_kao02_3 |薫個別2 シーン2-3 スタート

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;背景(二階以上の階段)
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;立ち絵(女子高生薫)

この日、春独特の細い雨が降っていた。大降りではないものの、外での活動は難しいだろう。

オレは授業を終えると、屋上へ続く階段を上っていった。

広くとってある踊り場には、もうカオルの姿があった。
何やらバインダーを見つめぶつぶつ呟いてる。

<御社 薫>
「あ、隼人くん!! 新しい練習道具、持ってきたよ~~」

そう言ってカオルは、持っていた簡易ノートをばっと広げて見せる。

<坂本 隼人>
「……なんだ、これ?」

<御社 薫>
「ボクが集めたセリフ集だよ。マンガとかアニメ、ギャルゲから抜き出してきた萌えセリフ満載!!」

<御社 薫>
「気に入ったシチュエーションの短い会話なんかもピックアップして、まとめてきたんだ。ヒロインのボクと隼人くんで掛け合いができるものもあるよ」

<坂本 隼人>
「ヒロインを演じれば、自分もヒロインに近づけるってことか?」

<御社 薫>
「そういうこと!! 隼人くんにも協力してもらわなきゃいけないんだけど、いい?」

おお、なるほど。
ルーズリーフにはパソコンから打ち出された文字がびっちり貼り付けてあって、ところどころ会話になっているようだ。

カオルの持ってくるノート、というとあまりいいイメージは無いが、今度はちゃんと考えてきたみたいだな。

女の子に近づけるように特訓、などというぼんやりとした目標設定で始まったオレたちだが、

これを見せられてようやく「これか!」という実感が湧き上がってきた。

二次元の完璧な女の子達のように振る舞えれば、カオルもいつか、エロいことばかり言わなくなるのではないか。

自分が女の子を演じることによって、その女の子を好きになり、ひいてはオレの尻ばかり追いかけなくなるのではないか。

そんな嬉しい予感がした。

<坂本 隼人>
「いいぞ。手伝ってやる」

<御社 薫>
「ホント!!??」

<坂本 隼人>
「ああ。オレが気に入ったセリフもここに追加してやってもいいぞ」

<御社 薫>
「いいの? やったあ! 隼人くんが好きなシチュエーションが知れるんだね!」

<坂本 隼人>
「まあ、そういうことになるな」

<御社 薫>
「ボク、もっと頑張る!!!」

カオルは両手をぐっと握ってみせる。

<御社 薫>
「早速、読んでほしいセリフがあるんだけど」

手伝う、と言ったわりにオレは今まで手を抜きすぎたからな。
演技の相手役くらいは、ちゃんとこなしてやるぞ。

オレは図らずもテンションが上がってしまい、カオルと一緒にノートを見ながら、初見でセリフ合わせを始めた。

これはオレも読んだことがある。少年誌に連載されているラブコメだ。

シーンのあらすじはこうだ。

幼馴染のヒロインをなんとか落とそうと画策する男が、ある日幼馴染の部屋に許可なく入る。

いつも突然、がお決まりだったものの、この日は運がいいのか悪いのか、幼馴染が着替えているところに入ってしまう。

ちなみにカオルの手によって、男の名前はオレに、幼馴染の名前はカオルに書き換えられていた。

<坂本 隼人>
「わ、わりい!」

<御社 薫>
「悪い、じゃなーい!! なんでいっつもノックしないで入ってくるの!?」

<坂本 隼人>
「お、お前がこんなタイミングで着替えてんのが悪いんだろ! オレはただ、この前貸したゲーム返してもらおうと思っただけで」

<御社 薫>
「そんなことで下着姿見られるなんて信じらんない!! もう!」

<坂本 隼人>
「悪かったって。謝ってるんだから、もういいだろ?」

<御社 薫>
「よくないもん! お嫁に行けなくなっちゃうよう……」

オレは、この後の「じゃあオレが貰ってやる」の辺りでカオルの顔を見るのが怖くなっていた。

<御社 薫>
「ホント……? じゃ、なかった、べ、別に隼人のお嫁さんにして、なんてまだ言ってないもん!」

うわ、ベタだな……。
そう思いながらも、<坂本 隼人>になれたという嬉しさがオレの中にも少し芽生えていた。

これはオレにとっても面白いかもしれない。

恐る恐る隣に目をやると、カオルがキラキラした目でオレを見ていた。

無垢な子供の目というか、新しいおもちゃを発見した子供のような目というか。

あれ、もっとオーバーなリアクションを取られると思ったけど、案外素直な反応だな。

<坂本 隼人>
「こんな感じでいいのか? これから練習して自然に言えるようになれれば、もっと演技もうまくできると思うんだが」

<御社 薫>
「十分だよ、隼人くん! こういう、幼馴染同士の王道なラブコメってボク大好きなんだ!」

<御社 薫>
「これから、もっといっぱいいろんなセリフ言ったり、演技したりしていこうね!!!」

<坂本 隼人>
「ああ」

普段はどうしようもないことばかり言っているカオルだけど、こうして見ると芝居自体が好きなんじゃないか?

オレが萌えセリフを言ってやったからどうこう、というだけでもなさそうなんだが。

<御社 薫>
「でも、もっと練習して、もっとリアリティが出せたら嬉しいなあ。そうだ、今度はちょっとエロいやつもいっぱい集めて……」

<坂本 隼人>
「おい。あんまり過激なやつ持ってくるとオレはやらないぞ」

新人のくせに役を選ぶのか、というカオルの軽口を受け流して、ああやっぱりカオルの中身はカオルなんだ、とオレは少しだけがっかりする。

でもこの先、もっとカオルが女の子らしくなる日がくるかもしれない。

そんなふうに思えた。

この日、オレはカオルの相手役を手に入れた。


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;個別2 END
;ジャンプ(s_kao03.ks)
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