;------------------------------------------------------------------------------

s_kao01_1 |薫個別1 シーン1-1 スタート

;------------------------------------------------------------------------------

;-------------------
;背景(教室)
;-------------------

電話でカオルを俺の教室に呼び付けた。案の定、カオルはものの30秒でどこからともなく飛んで来た。

<御社 薫>
「隼人くーーーーん、来たよ! 隼人くんから電話してくれるなんて嬉しいなあ。ボクを呼び出してどうする気?」

<坂本 隼人>
「変な言い方するなよ。俺はカオルを手伝ってやろうと思ってさ」

他のメンバーに、カオルを手伝うことにすると告げると、3人共納得してくれたものの、西友だけは頬を赤らめて「それはよかったです」と言っていた。カオルに気があったのか?

<御社 薫>
「じゃあ、色仕掛けで隼人くんをたぶらかそうと企む女どもを退けて、ボクを選んでくれたんだねっ!」

<坂本 隼人>
「だから変な言い方するなって! 話を聞け! ったく、練習場所さえ決まってないんだからサクサクやるぞ」

ここで言い合うとまたカオルのペースに飲み込まれる。それだけは避けたかった。

なぜならここは俺の教室で、こうしている間にも何人か残っていたクラスメートにじろじろ見られているからだ。

カオルは女装していなくても存在感があるというか、とにかく変に目立つのだ。

<御社 薫>
「場所なら心当たりあるよ。屋上なんてどう? それも、誰も来ない屋上だよ!」

<坂本 隼人>
「屋上はいつも誰かが使ってるイメージなんだが。大丈夫か?」

<御社 薫>
「特別教室がある棟の保健室の上もね、屋上スペースが使えるんだよ。そこは貸切状態だよ!」

<坂本 隼人>
「それは知らなかった。というかカオルはどうして知ってるんだ?」

<御社 薫>
「たまにそこで着替えて帰ったりするんだ。外に階段が付いてるから、私服で校舎の中を歩かなくていいしね」

なるほど、だから時々、女装したカオルと一緒に帰るハメになるのか。

<坂本 隼人>
「とにかくそこに行ってみよう。いつも使ってるからって、今日も空いてるとは限らないからな」

<御社 薫>
「うん! まあ、絶対に空いてるんだけどねー」

腕を組んでくるカオルに文句を言うのも次第に面倒になり、オレ達は好奇の目を掻い潜って屋上へと向かった。

;------------------------------------------------------------------------------

s_kao01_2 | 薫個別1 シーン1-2 スタート

;------------------------------------------------------------------------------
;-------------------
;背景(屋上)
;-------------------

屋上に着いてみると、カオルの言う通り確かに誰もいなかった。

かなり立派な屋上で、カオルとふたりきりで使うのが申し訳ないくらいだ。

屋外は天候に左右されるが、雨の日は今上って来た階段の踊り場を使えばいいだろう。

<坂本 隼人>
「うん、最高じゃないか。よくやったぞカオル」

これで面倒な場所取り問題は解決だ。

<御社 薫>
「ありがとう、隼人くん……」

そう言ってカオルは目を閉じて、顔を近づけて来る。

<坂本 隼人>
「ん? どうした? 目にゴミでも入ったか?」

<御社 薫>
「違うよ! もう、隼人くんって鈍感なんだから! ご褒美のちゅうに決まってるでしょ!?」

<坂本 隼人>
「あー、はいはい。あとでな」

<御社 薫>
「あ、あとで!!!???」

オレはカオルに生返事をして、コンクリートの足元を確かめてみる。

うん、所々欠けたり剥げたりしている部分はあるが、ある程度は飛んだり跳ねたりするトレーニングでも平気そうだ。

<坂本 隼人>
「じゃあ次は練習内容を考えようぜ。断った手前、何もしてませんじゃ部長に何されるか分からないからな」

カオル
「うん、やりたいことはこんな感じでまとめてきたよ」

カオルは持っていた学校指定の鞄から「計画表」と書かれた白い紙を取り出した。

なんだ、思ったより積極的じゃないか。

これで俺も楽できる――なんてオレの認識が甘かったとすぐに思い知らされた。

<坂本 隼人>
「おい、ちょっとこれ読んでみろ」

オレはカオルから手渡された「計画書」をぞんざいに突き返した。

<御社 薫>
「はーい! 『計画表~コード01 友達以上恋人未満~』」

<御社 薫>
「『ミッション内容:手をつなぐ、触る、揉む、感触を確かめる、舐める、そして最終目標はちゅう!』」

<坂本 隼人>
「慈悲で聞いてやるが、その計画表は第何コードまであって最終目標はどこなんだ?」

<御社 薫>
「今の所コード04まであって、最終目標は隼人くんのお母様と仲良くなるところだよ! でも、まだまだミッションは増える予定だよ!」

コイツのことは頭がおかしい変態だと常々思っていたが、ここまで重症だとは。

こいつはまずいな。オレの理性を心配するより、貞操を守る方に力を入れた方がよさそうだ。

<坂本 隼人>
「おいカオル、バカみたいなことばかり言っていると、オレは今から手伝う相手を変えることになるぞ」

<御社 薫>
「え~~~!? そんなあ、ひどいよお」

<坂本 隼人>
「ひどいのはどっちだ。オレが誘ったからとはいえ、やりたいことがあるカオルだから手伝う気にもなったんだ」

<坂本 隼人>
「今のカオルみたいな奴のことは、到底手助けしてやる気にならないな」

オレは屋上の手すりにもたれるのをやめ、カオルを上からじっと睨みつけた。

男にしては背が低い方だから、カオルはオレに見下ろされる格好になる。

<御社 薫>
「ううっ……そ、そんなに怒らないでよう。冗談だよ」

カオルは目から溢れんばかりの涙を溜めた。
唇を噛んで、頬が徐々に赤く震えている。

くそ、オレが弱いものいじめしてるみたいじゃないか。
悪いのはどう見てもカオルだろ!?

だが残念なことに、ここにはオレとカオルしかいないわけで、オレを擁護してくれる奴もいないんだった。

<坂本 隼人>
「お、男のくせにすぐ泣くな! ……しょうがねえな」

<御社 薫>
「許してくれる? もう他の女の話なんかしないって約束してくれる?」

ちょっと表現が大げさだがまあいい。もういい。面倒くさい。

<坂本 隼人>
「ああ、大きな声を出して悪かったよ。一度決めたんだ、オレはカオルの相手をしてやる」

そう言うと、カオルの表情がぱっと明るくなった。情緒の安定しないやつだ。

<坂本 隼人>
「その代わり、明日はちゃんと何やるか考えて来いよ。そしたら、オレも手伝えることがあるか考えてやるから」

<御社 薫>
「分かった。ちゃんと考えて来るから、明日もボク専属の隼人くんでいてね」

はいはい、と適当に返事をしたところで、下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。

<御社 薫>
「あれ、もうこんな時間?」

<坂本 隼人>
「そうみたいだな」

グラウンドやテニスコートから、集合の掛け声とそれに答える声が聞こえてくる。どの部も今日はこれでお開きのようだ。

<坂本 隼人>
「ってことで、今日はこれで解散な。帰るぞ」

<御社 薫>
「やったあ! 隼人くんとお帰りデート!」

<坂本 隼人>
「しょうがねえだろ、家が近所なんだから」

<御社 薫>
「そんなに照れなくてもいいんだよ。着替えるからちょっと待ってて! あ、絶対覗いちゃだめだからね!」

<坂本 隼人>
「おっ、おい! 着替えるって何だよ!?」

カオルはオレの言葉を無視して、校舎の最上階と屋上を繋ぐ扉へ走って行った。

;------------------------------------------------------------------------------

s_kao01_3 | 薫個別1 シーン1-3 スタート

;------------------------------------------------------------------------------
;-------------------
;背景(なし)
;-------------------

五分ほどしてもカオルは戻って来ない。

一度どうしたのかと問いかけてみたものの、「覗いちゃだーめっ!」という鋭い声が返って来た。それはラブコメにおける女子のセリフだろ。

そして、待つこともう五分。

これ以上待たされたら先に帰ろうと考えたところで、カオルが目の前に現れた。

;-------------------
;背景(屋上)
;-------------------

;立ち絵(女子高生薫)

<坂本 隼人>
「……出た」

<御社 薫>
「で、出たって何!!?? オバケみたいに言わないでよ!」

<坂本 隼人>
「悪い悪い。しかしまあ、毎度ながらよく化けるよなあ」

<御社 薫>
「かわいい? ねえ、かわいい? ボク」

ドアを開けて登場したカオルは、先ほどまで男子高校生だった面影が微塵も無くなっていた。

荷物が入ったバッグが学校指定のカオルものだということくらいか。

長い黒髪はさらさらと風に揺れ、左に流れていく。

一応女子用の制服を着ているが、これはうちの制服じゃないな。

紺色のセーラー服に、赤いスカーフ。
膝丈のスカートと白のハイソックスが、男にしては色白で足の細いカオルによく似合う。

似合うが。

<坂本 隼人>
「さっさと帰るぞ。鍵かかっちまう」

<御社 薫>
「えーーーーっ!?? 感想は? 隼人くん、ボクのこと見て、何か思わない?」

<御社 薫>
「やりたいなーとか、やりたいなーとかやりたいなーとかさあ!」

<坂本 隼人>
「オレはいつからカオルの女装を見てると思ってるんだ。今更不純な気持ちなんか湧くわけないだろ」

<御社 薫>
「ちぇっ」

口を尖らせてしゅんと俯くカオル。

あ、今のちょっと可愛いかも。
そう思ったけど、オレはもちろん口にしなかった。

長居をして見回りの先生に見つかったら困る。
女装したカオルと一緒なんて、説明する場面を考えただけで面倒すぎる。

オレはわいわい五月蠅いカオルを引っ張って、校舎を後にした。

;------------------------------------------------------------------------------

s_kao01_4 | 薫個別1 シーン1-4 スタート

;------------------------------------------------------------------------------
;-------------------
;背景(二階以上の階段)
;-------------------

;立ち絵(女子高生薫)

<坂本 隼人>
「で、考えて来たのがこれか」

<御社 薫>
「うん! 1日でやったにしては、よくできてると思わない?」

オレはカオルから「計画書・改」を受け取った。
中身はこうだ。

<御社 薫>
「まず、ボクは見た目は完璧だから、あとは声とセリフだと思うんだ」

まずは発声と基礎トレーニングか。

普通の女が自然に出す声を男が出すためには、練習が必要、と。なるほどな。

それから「セリフの練習」という項目。これはオレでも意味が分かった。

カオルは「口を閉じていれば可愛い」というタイプだ。
その口から暴言と下ネタが発せられない日は無い程だからな。

他のメンバーは、声優やアナウンサーなどの目標があるみたいだが、カオルはふざけた目標しか設定していなかった。

でもこの計画書を見ていると、なんだかこれはこれで壮大な計画のように思えてくる。

あのカオルが、女の子バリに可愛らしい声で甘えたセリフを言ってきたら……。

うん、まだ気持ち悪いな。

オレの魂のステージも同時に上げていかなければならないらしい。

<坂本 隼人>
「いいんじゃないか。これを説明すれば、部長にも雷を落とされずに済みそうだ」

<御社 薫>
「そうでしょう? よかった」

<坂本 隼人>
「ところで、なんでカオルはもう女装してるんだ?」

<御社 薫>
「え? だって、こっちの方が雰囲気出るでしょ?」

まあ、気持ちから作っていくっていうカオルの言い分も分からなくはないが。

トレーニングするのにスカートって、それはそれでダメじゃないか?

<御社 薫>
「早速始めよう。まずは発声練習からね。こんな本を持ってきたから、隼人くんも付き合って」

手渡された参考書を手本に、オレとカオルは探り探り練習を始めた。
まずは呼吸法からだ。

しかし十分もやっていると、オレは「カオルに付き合えば楽だ」なんて考えたあの時のオレを呪い殺したくなった。
かなりきついぞ、これは。

<御社 薫>
「はい、もう1回」

<坂本 隼人>
「おいカオル、ちょっとペース上げすぎじゃないか? そんなに飛ばさなくても大丈夫だぞ」

<御社 薫>
「平気だよ。トレーニングなんだから、ちょっとくらい辛くなきゃ意味ないでしょ?」

おい、オレが諭されてどうする。
大体、手伝ってやるなんて言っておいてオレが息を上げてたんじゃ、かっこ悪いんじゃないか?

オレはカオルに近づいて、もっと別な方法で付き合うことにした。

<坂本 隼人>
「姿勢が悪いぞ」

<御社 薫>
「!? ふぇぇ! は、隼人くん!!??」

オレは並んで呼吸法を練習するのを止めてカオルの後ろへまわり、腹の辺りに手を当てた。

二人一組でやれる場合はこうしろと本に書いてあるからだ。
本来の監督役というのはこういうことだろ。

<坂本 隼人>
「いいぞ、続けろ」

<御社 薫>
「だ、だって、だって……!!!」

カオルがじたばたと手を動かす度に、長い髪が顔に当たって鬱陶しい。
何をそんなに騒ぐことがあるっていうんだ?

オレはカオルが持ってきた本の指示通りにやっているだけなんだが。

<坂本 隼人>
「なんだよ、これじゃ練習にならないだろ」

<御社 薫>
「隼人くんから触ってもらえるなんて思ってなかったから、つい。コード01が……」

ああ、そうか。なんかそんなこともあったな。
男同士だしオレにしてみれば普通のことなんだが、カオルにとってはそうじゃないらしい。

普段から抱き付いてきたり卑猥なことを言ってきたりする癖に、どうして今だけこうも過剰に反応するんだ?

まあ確かに、女装してスカート&長い髪のカオルの腹に手を当てて、後ろから抱きつく格好でいると考えるとちょっと気まずいか。

<坂本 隼人>
「お前なあ、そんなこと言ってたら練習にならないだろ?」

<御社 薫>
「うぅ……」

オレも自分のミスに気が付いたものの、ここで引き下がるわけにはいかない。

止めたらオレまでカオルを意識することになってしまう。
それじゃあ練習にならない。

<坂本 隼人>
「さっさとやるぞ」

オレはカオルの背中を支える手に力を込めた。

カオルはようやくペースを取り戻し、深呼吸をやり始めた。
吐く息がちょっと震え気味なのが気になる所だが、まあいいだろう。

その後も同じ要領でいろいろなトレーニングを積み、オレはサポートするという役割を手に入れた。

;-------------------
;個別1 END
;ジャンプ(s_kao02.ks)
;-------------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年06月17日 18:24